<   2006年 03月 ( 12 )   > この月の画像一覧

美しい村の役目

b0041912_17423567.jpg
 スミレの村トゥーレット・シュル・ルーの近所にある鷲ノ巣村グルドンは、フランスの一番美しい村の一つに選ばれている人気の観光地です。この村は7世紀、日本が大化の改新に揺れている頃、地中海から度々襲って来るサラセン人の攻撃を見張る目的で、高い崖の上に作られました。美しい村はもともとは要塞だったのです。
 高い崖に張り付いた鷲ノ巣村は、敵から身を守るには絶好の立地ですが、暮らしはかなり不便だったのでしょう。中世になってからグルドンは崖の上の鷲ノ巣村とそのふもとの村とに別れ、ふもとではブドウ畑を耕したり、香水の原料となる花を栽培して近くのグラースに運んでいました。見張りのために作られた要塞からの見晴らしは今も素晴らしく、穏やかな地中海の海岸線が見渡せます。この村もアーティストのアトリエやガラス工房、かわいいお店やレストランがひしめいています。要塞の村も今は観光一筋という感じ。12世紀に作られたグルドン城の庭は、ベルサイユ宮殿の幾何学的な庭をデザインしたルノートルの設計によるもの。要塞がだんだんと洗練されていって、ついには生活感の薄い美しい村になっていった長い歴史が興味深い村といえます。
[PR]
by cheznono | 2006-03-31 18:19 | コート・ダジュール散歩

ナルニア国物語

b0041912_0314584.jpg 「永遠の愛に生きて」でアンソニー・ホプキンスが演じたC.S.ルイスのファンタジー、「ナルニア国物語」。「指輪物語」のトールキンと同じオックスフォード大学の教員として親しかったというルイスが、子供向けに書き上げたナルニアのシリーズは、中学生の頃に夢中になって読んだ筈ですが、既にストーリーは全く頭から抜けていました。ああ情けない。お陰で映画は新鮮な気持ちで先入見なしに観ることができたけど。
 第二次大戦下、田舎に疎開した4人兄弟の末娘ルーシーが、疎開先のお屋敷のワードローブの奥に雪で閉ざされたナルニアを発見し、やがて兄や姉たちもナルニアの世界に入り込んで、行きがかり上、思わぬ冒険に巻き込まれます。ナルニアは100年もの間、白い女王に支配されて冬だけの時代を送っている国。そこの不思議な住人たちの信じる、4人の子供がナルニア国を悪女の独裁から救い出すという予言に兄弟たちが当てはまると言われ、彼らはナルニアの真の王、ライオンのアスランとその配下に力を貸す決心をするのですが。。
 若い頃は無神論者だったというC.S.ルイスがキリスト教徒に改宗し、ファンタジー作品にも自身のキリスト教感を強く投影させていったと聞いていましたが、みんなの待ち焦がれた救世主を象徴するアスランの描き方にもそれ程は宗教の暗示を感じませんでした。アスランが人間の身代わりに処刑され、復活を遂げるくだりはともかく、100年間雪と氷に閉ざされていたナルニアにいっきに春をもたらすというドラスティックな変化とキリスト教の誕生がしっくり結びつかないのは、私の聖書の理解が浅いせいでしょうか?
 リーアム・ニーソンのアスランの声がナルニア住民の尊敬と敬愛を一身に受ける真の王としての威厳と良心がにじみ出ていて印象深かったです。魅惑された声と言えば、ヴィム・ベンダース監督の「アメリカ~家族のいる風景」で西部劇のロケ現場から突然逃亡を図ったサム・シパードを追うティム・ロスが知的な発音のイギリス英語でぼそぼそしゃべる声にもすごく惹かれました。やはり、声と話し方はその人の印象をかなり左右するものですね。
[PR]
by cheznono | 2006-03-28 01:11 | 映画

スミレの鷲ノ巣村

b0041912_17522481.jpg ニース辺りで見かける葉っぱに囲まれたスミレの花束はトゥーレット・シュル・ルーという小さい村で育ったもの。ここは今でもスミレ栽培を主産業としているフランス唯一の村で、毎年10月から3月にかけて、香りの高いスミレが畑を彩ります。この村で栽培されたスミレの大部分はグラースに運ばれ、香水の原料となりますが、他はスミレのコンフィ(ジャムに近いもの)やチョコレートやキャンディなどのお菓子、石鹸などに利用されるようです。
 3月の初めにはスミレ祭りも催され、カーニバルのようにスミレの花で形作られた山車が村を行進したり、フラワーパレードが行われるとか。このお祭りは一度見物したいものです。
 トゥーレット・シュルー・ルーにもアーティストやアルチザンが居を構えていて、エズやサンポールのように細い道の両側にさまざまなアトリエや工芸品のお店が続いています。この村の好きなところは、観光客に人気のアトリエやお店が軒を連ねているのに生活感が漂っていること。旅行者が絶えない中世の家並みとモダンなアトリエの融合したたたづまいの中にも、村人たちの生活の息吹が感じられることです。ヴァンスからバスで近いので、マチスのロザリオ礼拝堂を見物した後にでも時間があったら是非足を伸ばしてみてください。
[PR]
by cheznono | 2006-03-24 18:34 | コート・ダジュール散歩

スミレの花咲く頃

b0041912_2047391.jpg ミモザと並んで春の気配を運んでくれるスミレの花。この時期はニースの街角でもスミレの小さいブーケが出回ります。コート・ダジュールで見かけるスミレの花束は、ヴァンスに近い鷲ノ巣村トゥーレット・シュル・ルーで栽培されたもの。現在フランスでスミレの栽培を主要産業としているのは、この村だけになってしまいましたが、フランス4番目の都市トゥールーズもかつてはスミレの生産で有名でした。ベルエポックの時代には、この街からパリまで何トンものスミレのブーケが次々に運ばれたそうです。トゥールーズ-パリ間は今でもTGVで5時間、急行で6時間半もかかるのに、20世紀の初めにたくさんのスミレをパリまで輸送するのはいったい何時間かかったのでしょう?
 トゥールーズは《トゥールーズのスミレ》という名前の香水やスミレの花びらの砂糖漬け、スミレのリキュールなどのスミレ商品が人気ですが、手のかかる割りに実入りの少ないスミレ栽培はすたれてしまい、今はスミレ雑貨の専門店も1件しか残っていません。時代は変わっても、スミレは街のシンボル。この街で国際スミレ会議が開かれて以来、毎年2月にはスミレフェスティバルが開催されるようになったし、エリザベス女王がエア・バス工場の見学に訪れた際は、エレガントなスミレ色のドレスと帽子に身を包んで、スミレの花束を受け取っていました。 
 南仏のスミレもヴィオラの一種ですが、匂いスミレのように香り高いのが特徴で、料理の香り付けにも使われ、パティシエたちにもスミレの味が注目されて、ケーキやお菓子、カクテルなどに利用されています。
 葉っぱ付きのスミレのブーケの花言葉は秘めた恋。スミレの花束をもらった人には《あなたの魅力は上品で繊細なところ》というメッセージがこめられているとか。こんなかわいいブーケだったらさりげなくプレゼントできそうだし、スミレの独特な香りで華やかな花束よりもかえって印象付けられるかも知れません。
[PR]
by cheznono | 2006-03-22 22:09 | フランスの四季

フランス映画祭

b0041912_0175683.jpg 今年から東京でも開催されることになったフランス映画祭が今日で終幕。日本公開されない映画が観られたり、各映画に関わったゲストが訪日するのが魅力ですが、実際に観に出かけたのは今回が初めて。フランスで好評だったのに見逃してしまった「パリ警視庁・オルフェーヴル河岸36」を楽しむことができて大満足でした。ダニエル・オートゥイユ扮する昔かたぎのデカと、彼に恋人を奪われた過去を持ち、出世のためには手段を選ばないライバル刑事(ジェラール・ドパルデュー)の確執が悲劇の連鎖をもらたしていき、その過程に凶悪事件やサスペンスを織り込んだ深みのある作品です。
 舞台挨拶は実際にパリ警視庁の刑事だった異色の監督オリビエ・マーシャルとこの映画では地味な役のアン・コンシニュイで、なぜかこの日はガラガラの客席に向かって作品への思いを語ってくれました。
 「灯台守の恋」でヒロインの娘を演じた時になかなか魅力的な女優さんだなと思ったアン・コンシニュイですが、この日の挨拶は結構ずっこけてました。「私はほんのチョイ役での出演だったけど、フランス映画界の三人の巨人たちと共演できて、すごく誇りに思っています。だって、アンドレ・デュソリエでしょ、ジェラール・ドパルデューでしょ、それになんて名前だったかしら、あのちっちゃい小人、そうそうダニエル・オートゥイユだわ。」あらまあ主演のダニエル・オートゥイユのことを小人だなんて、いくら遠い日本だからとはいえそんなこと言っていいのかしら?
 小人とねえと上映中も注目して観ましたが、確かにジェラール・ドパルデューと比べれば小型のオートゥイユだけれど、ドパルデューも私がフランスで観た女たらしのホームレスの役の時よりはずっと痩せて引き締まっていたからそれほど体格の差は感じませんでした。「監督については今私の隣にいるから何も言わないわ。」って付け加えていたアン・コンシニュイ、普通だったら必ず目の前にいる監督や共演者を持ち上げるのに、面白い女優さんです。
 因みにフランス映画祭で紹介された作品のうち日本公開が決まっているものの中では、「パリ警視庁」の他に「戦場のアリア」と「サンティアゴ・・メッカ」が一押しで、「ロシアン・ドールズ」と「パレ・ロワイヤル」がその後に続く感じです。
[PR]
by cheznono | 2006-03-20 01:29 | 映画

b0041912_23184150.jpg フランスのシネマは毎週プログラムが変わるので、うかうかしていると佳作でもあっという間に終わってしまいます。ハリウッド映画の大作や日本で公開予定の「戦場のアリア」のような大ヒット作は1ヶ月以上上映されるけれど、地味な作品だと一週間で消えてしまうこともしばしば。だから、水曜日ごとに発行される各映画館のプログラムを載せたパンフは、映画ファンには必需品です。
 去年の秋、カンヌ映画祭で好評だった「フリーゾーン」という映画もすぐに終りそうというので、ニースでお気に入りの映画館に駆けつけました。何とか間に合ったと思ったら、切符売り場のマダムが「あら、もう30分も前に始まってるわよ。《3度の埋葬》にしたら?」と言うではありませんか。「えっそんな筈ない、お宅のプログラムに今からって出てるから走って来たのに!?」と唖然とする私。マダムはあっさりと、「あ、そのプログラム間違ってるのよ。《フリーゾーン》は時間変わったの。《3度の埋葬》にしなさいよ。」そんなあ、なんで間違った上映プログラムを平気で配るのよ?今を逃したらもう《フリーゾーン》は観られそうにないのに。
 でもせっかく来たんだからまあその《3度の埋葬》とやらを観るかと気を取り直し、それって面白いの?と聞くと、マダムは顔を輝かして「すごく良い作品よ!」と自信たっぷり。それでも半信半疑で観た「メルキアデス・エストラーダの3度の埋葬」はとても新鮮で確かな見応えのあるに内容でした。後から知りましたがカンヌでは「フリーゾーン」よりもこちらの方が評価が高かったんですね。
 メキシコからの不法移民が絶えないテキサス国境で、トミー・リー・ジョーンズ演じるベテランカウボーイ:ピートが親しかったメキシコ人メルキアデスの不慮の死後、「もしも自分が死んだら、故郷のヒメネスに葬ると約束してくれ」という生前の彼の願いをかなえるため、馬に遺体を乗せて険しい国境を越える遥かな旅に出ます。カウボーイだったメルキアデスを間違えて射殺してしまった若い国境警備員のマイクを無理やりお供に従えて、2頭の馬と共に砂漠や山の中をひたすらヒメネスを目指す過酷な旅。不法移民の射殺を秘密裏に片付けたい国境警備隊の追っ手が迫る中、奇妙な一行は何とかメキシコ側に抜けるのですが。。
 メルキアデスの射殺は不幸な事故だったと言い訳に終始するマイクが、無茶苦茶に近い国境越えの旅でぼろぼろになった挙句、犯した罪の重さを認識し、贖罪の意味でこの過酷な旅につき合わせたピートとの間に不思議な友情が芽生えて行く過程が感動的です。
 ニースで知り合ったフレンチメキシカンの男の子が、ある日青い顔をしてお腹を押さえ気分が悪そうなので心配していると、「僕がもし死んだら、遺体は絶対メキシコに戻してね。」って言うので驚いたことがあります。フランスは彼のお父さんの国ですが、決してフランスには眠りたくない、必ず育った国メキシコに戻りたいからお願いだよって言う彼はまだ20歳。そんなことを意識してるなんて何だか不思議でしたが、この映画を観て、あの時の彼の気持ちが少しわかったような気になりました。
[PR]
by cheznono | 2006-03-18 01:26 | 映画

フランスのいじめ

b0041912_17183855.jpg フランスの学校でのイジメというと、エリート養成のグラン・ゼコールに難関を突破して入学した新入生が先輩たちからイジメの洗礼を受けるという伝統が有名です。これは公衆の面前でおかしな格好をして芸をさせられたり、下品なことを要求されるため、苦にして自殺した新入生もいたくらいです。それに、企業に就職してからのイジメが結構多いのは、「自由、平等、友愛の個人主義の国」の意外な影の部分ではないでしょうか。
 「灯台守の恋」で人間関係の濃い島に派遣された新米灯台守のアントワーヌが、結束の固い灯台守たちの間でよそ者として敬遠され、嫌がらせを受けたり無視されたりしますが、こういうことは島に限らず、フランスの職場ではよくあるようです。いじめの対象になりやすいのは、コネで入社した人や契約社員、そして純粋なフランス人ではない人が多いとか。既に多民族国家とはいえ、よそ者に厳しい排他的な国民性が職場でも出るのでしょう。お局様が幅を利かせている職場もたくさんあって、いじめる側もいじめられる側も男女を問いません。
 ニースの友人の一人が努めている語学学校のお局先生は、気に入らない同僚にはボンジュールも言わないし、2週間の教育実習を終えた研修生が実習終了のサインを求めても無視したので、大学に提出しなくてはいけない書類はそのまま宙に浮いてしまいました。ある大学では事務の女性が病休明けで戻って来たら、パソコンの中に同僚が自分の悪口を上司に克明に報告した文章を見つけて青くなっていたことも。契約社員として働いている友人もある日出社すると、自分のロッカーの中身が勝手に全部出されてしまっていて、日ごろから意地悪な上司に「今日からこのロッカーは他の人が使うから、もうあなたのロッカーはありません」と言い渡され憤然としていたし、大勢の同僚全員から一言も口を聞いて貰えない女性が職場にいたと言う話も聞きました。フランスのいじめの特徴は直接的(つまり露骨)で、でも短期間で終わるとも言うけれど、ターゲットになった人にはたまったものではないでしょう。
 ジェラール・ドパルデュー出演の映画「メルシー人生」で、日系のコンドーム会社に勤める冴えない中年サラリーマンのダニエル・オートイユが、ティエリー・レルミットを筆頭とする同僚たちからしつこくいじめられる姿を素直に笑えなかったフランス人は案外多かったかも知れません。
[PR]
by cheznono | 2006-03-14 17:09 | 不思議の国フランス

灯台守の恋

b0041912_16335489.jpg すごく観たかったのに見逃してしまった「灯台守の恋」と「理想の女」の2本立てを飯田橋ギンレイでやっていたので、昨日滑り込みセーフで観て来ました。かつて場末の名画座というイメージだったギンレイホールもすっかりきれいになっていて、しかも大入り。1万円で年間会員になれば映画が観放題なるため、会員パスポートを利用している人も多いようでした。今は数少なくなってしまった名画座ですが、ホームシアターの流行に負けず、これからもずっと良い映画を上映し続けてほしいものです。
 1963年、ブルターニュ地方ブレストの沖にあるウェッサン島に、新米の灯台守としてアントワーヌがやって来ます。泥沼化したアルジェリアの独立戦争で心と手に深い傷を追って帰還したアントワーヌは、財務局や郵便局といった事務職のオファーを断って、気候の荒い辺境の地で過酷な仕事につくことを選んだのでした。
 ベテラン灯台守のイヴォンとその妻マベの家庭に迎えられたアントワーヌは、よそ者の素人灯台守として閉鎖的な島の仲間たちから拒絶されます。それでも、懸命に灯台守になり切ろうと努力するアントワーヌ。粗野な島の男たちとは明らかに肌色の違う柔らかい物腰の彼は、島の女性たちからは歓迎され、瞬く間にイヴォンの妻マベと惹かれ合うようになります。
 初めはアントワーヌをよそ者扱いしていたイヴォンも、共に荒海の中の灯台で働くうちに不思議な友情を感じるようになり、彼を仲間として受け入れようとしますが、革命記念日のお祭りの日、海岸で花火のあがる中、アントワーヌとマベはついに結ばれてしまい、それまで何とか自分の気持ちを抑えていた二人は更に苦しむことになって。。
 「ボン・ボヤージュ」で新鮮な演技を見せてくれたグレゴリー・デランジェールのアントワーヌと「仕立て屋の恋」のサンドリーヌ・ボヌールのマベが、道ならぬ恋に揺れる姿を情感豊かに演じてすごく魅力的です。脚本もよく練れていて、過酷な労働に支えられていた灯台の照明も今はすっかり自動化され、地の果てのようだったウェッサン島には観光客とパリからのバカンス客が増え、昔からの島民は年老いて、という現在との対比や、イヴォン夫婦に長い間子供ができなかったという伏線、アントワーヌがアルジェリア戦争中に経験した辛い体験をなぜ皆んなの前で語ったかなどが後から胸に迫って来て、上質の文学作品を読み終わったような満足感がありました。 
[PR]
by cheznono | 2006-03-11 17:41 | 映画

ミュンヘン

b0041912_2357776.jpg スピルバーグ監督の話題作「ミュンヘン」。主演のエリック・バナには「トロイ」ですっかり魅了されたし、衝撃的な史実を基にしているので、気合を入れて観に行きました。1972年、ミュンヘン・オリンピックでイスラエルの選手団がパレスチナゲリラ「黒い9月」の人質となり、ドイツ政府による解放交渉もうまくいかず、11人全員が殺害されてしまいます。激怒したイスラエル政府は復習を誓い、情報機関モサドのメンバーだったアヴナーを中心にしたにわかチームを結成して、莫大な予算をつぎ込み、首謀者全員の暗殺を企てるのですが。。
 欧米によってやっと自分たちの国を得たイスラエルと、そのために祖国を奪われたパレスチナとの長く深い軋轢を小出しに織り込みながら、あくまでも中心は、オリンピック村で起きた残虐な事件とその報復に命をかけるアブナーチームが、危ない橋を渡りつつ一人また一人と暗殺してゆく過程に置かれています。初めは祖国のため同士のための復讐だと暗殺を正当化していたアブナー達が、やがて自分たちの行為に疑問を持ち始め、やっと相手を消してもすぐにその後釜が出現するといった図式に頭を抱えます。そして、人を殺めれば自分たちや家族も相手から報復の的にされることに気づいて苦悩するアヴナー。テロにはテロの復習劇の虚しさや報復しても問題は何も解決しないということが強いメッセージとして伝わって来ます。
 でも私が最も注目したのは、フランス人キャストの多彩さでした。アブナーチームの爆弾製作担当を熱演しているマチュー・カソビッツ。アブナーたちに標的の動向を知らせては報酬を得るフランス人情報屋の親子にミシェル・ロンスダールとマチュー・アマルリック。他にもイヴァン・アタルやヴァレリア・ブルーニ・テデスキetcと、さすがスピルバーグ作品。お互い腹を探りあいつつもアブナーと不思議な友情を交わす情報組織の父子の「国は裏切るから、自分たちは国のため組織のためには働かない」というモットーが印象に残りました。
[PR]
by cheznono | 2006-03-09 00:02 | 映画

買い占める英国人

b0041912_065011.jpg ピーター・メイルがリュベンロンの村メネルブでの生活を綴った「南仏プロヴァンスの12ヶ月」のお陰で、すっかりブームになったプロヴァンス暮らし。初版から既に15年が経過し、地元の人には必ずしも評判が良くなかったというメイル氏がとっくにフランスを去った今、またイギリス人たちにプロヴァンスが買い占められています。 以前からお金持ちのイギリス人にとって、プロヴァンス・コートダジュールは人気の保養地でしたが、最近は庶民が気軽に不動産を買う傾向が目立つとよく話題になるし、私も南フランスにアパルトマンを買ったイギリス人を何人も知っています。
 もう長年元気のないフランス経済に対して、EUの中でも特に好調なイギリス経済。ロンドンを初め通勤圏の不動産はうなぎ上りに値上がりしたため、湿っぽい気候のロンドン周辺に無理して高い家を買うよりも、南仏やスペインに手ごろな持ち家を買って、年に何回かヴァカンスを過ごし、退職後は英国を離れ温暖な南の地でゆったりと暮らせばよいから、という人が増えたようです。しかも、イージージェットやライアンエアーのような格安の航空会社がフランス各地とイギリスを往復しているため、東京ー名古屋間くらいの料金で英仏間を飛ぶことができ、所要もわずか1時間半。EUのメンバーだから滞在許可証も労働許可証も要らず、フランスでお金を稼ぐこともできます。
 かたやフランス側は、自分の不動産を高値でイギリス人に売った人たちは大満足ですが、景気が悪いのに外国人によって住宅価格が吊り上げられたわけですから、迷惑をこうむる人も続出です。もともと人気の町はどこも物件が少ないため、アパルトマンの相場や家賃は見る見る値上がり、感じの良いブティックや安くておいしいレストランが家賃高騰のため、閉店に追い込まれることもしばしば。人気の観光地でも半年くらいで次々にお店が変わったり、がらんとした空き店舗となってしまうのは、フランスを放浪するだけの私にとっても淋しい光景です。ただ、藤巻兄弟のお兄さん:健史氏の本によると、特に2004年は欧米で不動産が買い占められ、世界のあちこちで不動産価格が急上昇したそうですから、南仏の住宅高騰もあながちイギリス人だけのせいではなく、時の運なのかも知れないのですが。
[PR]
by cheznono | 2006-03-07 01:06 | プロヴァンス賛歌