<   2006年 08月 ( 6 )   > この月の画像一覧

幸せのポートレート

b0041912_0304822.jpg 先週は上映が終わりかけた映画2本を観て来ました。20世紀を代表するフランスの写真家アンリ・カルティエ=ブレッソンのドキュメンタリー「瞬間の記憶」とサラ・ジェシカ・パーカー主演のアメリカ映画「幸せのポートレート」です。
 「幸せのポートレート」は原題がファミリー・ストーン。クリスマスを祝うため家族が集合したストーン家に、立派なビジネスマンの長男が婚約者メレディスを連れて行く所から始まります。引退したインテリ夫婦に息子3人、娘2人のストーン家。長男は祖母が遺した指輪を自分が選んだ女性にあげて良いと母親から約束されていたのに、ストーン家のメンバーとは全然相容れない独善的なキャリアウーマンのメレディスは家族から総スカンを喰ってしまったため、クリスマスに約束の祖母の指輪を渡してプロポーズという長男のロマンティックな計画は果たせそうになくなります。つまり、原題はストーン家と祖母からのジュエリーを掛けたしゃれたタイトルなのに、邦題はウン?という感じ。
 いずれも成人してそれぞれの道を歩んでいるストーン家の5人の子供たちと両親の関係は、南仏的というかラテン的。言いたいことをどんどん言い、本音をぶつけあっても暖かい絆で結ばれていて、同姓愛の三男とその恋人も何の偏見もなく家族に溶け込んでいます。一方、長男が連れて来たメレディスは神経質で突っ張っていて、モラルも非常に清教徒的。なるほど、南フランス的な家族にアメリカ清教徒のキャリアウーマンが入ろうとするとこういう感じなのかな?と思いながら観たので、ヒロインのメレディスに一瞬たりとも共感できなかった割には楽しめました。「私だってあなた達と変わらない良い人なのよ!」と何度も叫ぶメレディスですが、ストーン家の面々は長男に「何で彼女を選んだの?」と首をかしげるばかり。この辺の長男とメレディスの感情のやり取りは全然描かれていないため、観ている方もいったいどこに惹かれて彼女を選んだのか、不思議でした。
 孤立したメレディスは助っ人に妹を呼びつけ、駆けつけた妹はブロンド美人でどうみてもお姉さんよりまともで魅力的だったために、それぞれの関係は脱線して行きます。こんな妹を呼んだら更に自分の立場が悪化するのは充分想像できたはずなので、この辺りの運びから終盤に到る展開は全くのコメディです。これで、本当にあの「ラブ・アクチュアリー」を超える動員数があった作品なんでしょうか?ただ、ダイアン・キートン演じる母親が既に不治の病にかかっていて、子供たちにはそれを隠して明るく接し、従来通り中心となって家族を支えようとする姿勢には心温まりました。
 クリスマスの物語を猛暑の夏休みに公開する日本のセンスもいかがなものかと思うけど、こういう映画を絶賛するアメリカ人も面白い人たちだなって思いながら映画館を後にして、魚専門の居酒屋に流れたのでした。
[PR]
by cheznono | 2006-08-31 01:14 | 映画

b0041912_23364466.jpg
 夏のプロヴァンス・コートダジュールを走る国鉄の特別列車をご紹介しましたが、ニースから近い町や村を巡るにはやっぱりバスが便利。ニースのバスターミナルに行くと、いろいろな目的地への時刻表がひと目でわかるようになっています。
 コート・ダジュールのバスは今年から一律に1.30ユーロ(約190円)となりました。ニースからカンヌ、モナコ、マントン、アンティーブなどかなり長距離を乗っても1.30ユーロだから、これを利用しない手はありません。例えば、去年の暮れまで片道5.50ユーロ(820円)位していたニース-グラース間が、いまや往復でもその半額以下、ずい分お得になったものです。じゃあ去年まで払っていた3倍近いバス代はなんだったの?と釈然としない思いもないわけではないけれど、物価高、ユーロ高の時代に市内バスと同じ料金でカンヌまで行けるのは大助かり。ただし、ニース-カンヌ間は片道2時間近くもかかるので、時間のない方にはお勧めできません。
 この料金改定で一番納得がいったのは、ニース-サン・ポール間ではないでしょうか?ニース-ヴァンス間は路線バスが走っていたため、以前から1.30ユーロで行けたのに、去年まではその手前にあるサン・ポール・ヴァンスで降りると4ユーロ取られていたのです。つまり、ヴァンス行きに乗って途中のサン・ポールで降りると4ユーロ、終点のヴァンスまで行くと1.30ユーロという矛盾がずっと続いていました。なぜなら、ヴァンスにはニース市内のバス会社も乗り入れているのに対して、ドル箱のサン・ポールは長距離向けのバス会社が独占していたから。同じバスがサン・ポール経由でヴァンスに着くのに、より遠いヴァンスまでのバス代は3分の1だなんて、思えばすごくフランスらしい料金設定だったわけです。
 晴れて今年からこうした変な料金格差も解決して万々歳ですが、ではなぜ3倍も違っていたバス代を、安い市内バス料金に合わせて値下げしたのでしょう?これは、車を減らしてなるべく公共の輸送機関を使ってもらおうという試みの一つなようです。特にシーズン中は観光客の車であふれるコート・ダジュール。フランス国内はもちろん、近隣諸国からも車族が集まる人気の観光地から車を減らすには、格安のバスを走らせるのが一番だと思ったのでしょう。
 事実、この計画は大当たり。ただでさえ平均年齢の高いこの地方、おまけにドライバーのマナーは国内最悪という中で、どこへ行くにも車を使っては渋滞に巻き込まれ、やっと目的地に着いても今度は駐車するのに一苦労、という思いをするよりも、家や宿に近いバス停からひょこっとバスに乗って遠くに行く人が格段に増えたとか。ガソリン代も高い今日この頃、どこまで乗っても格安のバス利用は本当にお勧めです。 とはいえ、トラム工事であちこち掘りこまれ、迂回も多いニース市内をスムーズに観光するには、プティ・トランや馬車を利用する方が楽しいかも知れません。
[PR]
by cheznono | 2006-08-25 00:33 | コート・ダジュール散歩

ラベンダー列車

b0041912_1717404.jpgラベンダー街道の南東に位置するラバンディン高原とも呼ばれるラベンダーの栽培地の話をご紹介して来ましたが、では、どうしたらこの辺りのラベンダー畑に近づくことができるでしょうか?車があれば問題ないけれど、パリを初めさすがにフランスも車社会を見直しつつあります。かといって、主だった都市からの路線バスも走っていないようなヴァランソルのように小さい村のラベンダー祭りに行きたいと思ったら?
 まず、エクサン・プロヴァンスの観光協会の前から、7月8月に数回だけですが、ラベンダー街道巡りの観光バスが出ます。僧院の前のラベンダー畑で知られるセナンク修道院はアビニョンからも半日観光バスが出ています。ただ、バスで高速を使い、いくつか見所を回ってくれると確かに効率的ですが、ツアーと似ていてお任せコースで次々に町を移動するため、意外に訪れた場所の印象が薄くなったりしがち。そこで今年から、より経済的に、なおかつ自分の足で回るという気分も味合わせてくれる「列車で行くラベンダー畑」というアイディアが生まれました。なんて、実際には車を減らして環境を大切にという傾向とフランス国鉄の採算性が一致しただけなのでしょうが、ともあれこの夏から、その名もラベンダー列車がマルセイユ~マノスク~シスタロン間を、そして北上する牧場列車と繋がってブリアンソンまで走っています。期間は7月の2日から8月27日まで、日曜など主なイベントのある日に限って運行しているようです。この列車の特長は、バスガイドならぬ車内案内嬢付きで、交通の便の悪いヴァランソルやフォルカルキエなどに最寄の国鉄駅から乗り継ぎのバスを出していること。キップも往復有効で2300円位と格安です。
 ここ数年、フランス国鉄は雪の列車とか牧場列車、青い海岸列車など観光者向けのテーマ別列車を季節ごとに運行していますが、このラベンダー列車もその一つ。この夏のコート・ダジュール・プロヴァンス地方では、その他にもマルセイユとイフ島などを巡る海の電車とかグラースに行く香水列車、カマルグを訪ねる騎士とフラミンゴの列車などが走っていて、名前だけでも旅情がそそられるのでした。
[PR]
by cheznono | 2006-08-18 00:56 | プロヴァンス賛歌

マッチポイント

b0041912_18301397.jpg 去年フランスで大ヒットし、ニースのシネマクラブでも推薦されたウッディ・アレンの「マッチポイント」が、来週からいよいよ公開されますね。シネマクラブであるマダムが「あの不道徳な映画」と発言したら、皆んながいっせいに反対し、「不道徳ではなくて、無道徳な内容」なのだと主張したので、いったいそのニュアンスの違いがわかるだろうかと思いながら観に行ったら、これがあのウッディ・アレン?と思うほど、今までのイメージとは違うサスペンスに息を呑んだ作品です。
 アイルランドの質素な家庭に育ったクリスはプロのテニスプレイヤーを辞めて、ロンドンの高級テニスクラブのコーチになります。そこで、上流階級のおぼっちゃんトムにテニスの指導をするうち、彼と親しくなり、すぐにトムの姉クロエに見初められ、付き合い始めます。でも、クリスが本当に惹かれているのはトムの婚約者、アメリカ人の女優の卵ノラ。セクシーなノラのことが頭から離れないまま、クロエと婚約したクリスはもうテニスのコーチではなくて、クロエの父が経営する大企業の良いポストを与えられ、順調に出世の階段を上りつつあります。
 高級アパルトマンでクロエと新婚生活を始めたクリスは、トムがノラと別れ、別の女性と結婚することを知って激しく動揺。かつて、一家の別荘で一度だけ愛を交わしたノラが忘れられず、彼女の行方を捜すクリスは、ついに偶然テートモダンでノラを見かけます。躊躇するノラを押し切って、彼女のアパルトマンで密会を始めるクリス。一方で、妻のクロエは子作りに躍起になります。何不自由ない新婚生活で唯一欠けているものが赤ちゃんなのでした。妻との関係がギクシャクし始めた頃、ノラはクリスの子供を身ごもり、彼にクロエとの離婚を迫ります。とんとん拍子で手に入れた上流生活とセクシーな愛人との間にはさまれたクリスは、とんでもないことを思いつき。。
 ストーリーだけを追うと、テレビドラマのありがちな筋のようにも取れますが、そこはウッディ・アレン。今も厳然と存在するイギリスの階級社会への皮肉をにじませながら、特権階級の優雅な生活をリアルに描き、そこに入った若者の野心と苦悩をものすごく上手に浮き上がらせています。確かに道徳のないクリスの行動ですが、でも観客がつい応援したくなるような実在感があり、落ちも見事。2時間余りの上映中、全く気をそらすことがありませんでした。
[PR]
by cheznono | 2006-08-13 19:43 | 映画

ラベンダー泥棒

b0041912_0523918.jpg
 今日は猛暑の中、所要で日本に立ち寄ったニースの友人の家族を秋葉原に案内して来ました。帰りに駅前で話題のメイド喫茶のレトロな衣装に身を包んだ若い女性がビラを配っているのに遭遇。あれがパリのジャパン・エキスポでも長い行列を作ったメイド喫茶のコスチュームですよって教えたら、「あら、フレンチかんかんに似てないでもないから、そこに行ってお茶を飲みましょう。」と上品な物腰のマダムが興味を示したので、ちょっと慌てて多分私たちには向かないところだと思うからと、銀座に戻ってお茶することを勧めました。でも、本当はどんなところか知らない私、良い機会を逃してしまったのかも知れません。
 さてさて、ラベンダー祭りの帰路、夕暮れの田舎道をまた連なる麦畑を越えて車を走らせた友人たち、突然またラベンダー畑の端に車を停めて「どうする、この辺にしようか?」と相談しています。疲れて後部座席でボーっとしてた私が、写真はさっきもう撮ったし、どうしたのかなって思っていると、車から降りたドライバーのムッシュウ、「おおい、この辺の奴でいいのかい?」と助手席のパートナーに確認。彼女がうなづくと、いきなり手にした小さい鍬を振って、ラベンダーの一株をごそっと掘り出しました。ええ!?もしかして、ラベンダー泥棒をしてるの?
 一気に目が覚めた私、恐る恐るいったい抜いたラベンダーをどうするつもりか聞いてみると、あっさり「帰って庭に植えるのよ。」はあ?でも、既に彼らの家にはラベンダーが勢いよく咲いていたはず。「あのう、お宅の庭にもラベンダーが咲いてたけど、あれもまさかここのを植えてたわけ?」「あれは違う。前に誰かが植えたんじゃないかな。」ああそう、ちょっと安心したけれど、でもラベンダー農家の人が丹精に栽培しているに違いないラベンダー畑が稲の水田のように続く中、たとえ一株とはいえいきなり抜いて持ち帰るのは余りに心苦しいではないですか。明日の朝かもっと後か、この辺の畑の持ち主がすみっこにぽっかり空いた小さな穴を見つけた時、いったいどんな思いがするでしょう?そう思うと再び走り出した車の中ですっかり悲しい気持ちになり、暮れなずむ畑が窓の向こうに流れて行くのを見つめていました。オート・プロヴァンスのラベンダー農家の方、本当にごめんなさい。もう絶対しないように友人にもお願いしました。
[PR]
by cheznono | 2006-08-08 01:38 | フランスの四季

ラベンダーの村

b0041912_22292060.jpg
 昨日はついにニースが観測史上初めての最高気温という38℃を記録、内陸側は更に40℃まで上がったそうで、涼しい東京に帰っていて本当に良かったと思いました(笑)。
 さて、帰国前にラベンダー祭りに出かけたものの、ラバンディン(ラベンダーの一種)で栽培で知られるヴァランソルに着いた時は既に夕刻。村に入ろうとすると胸にラベンダーの花束を抱えた女性が出て来るところでした。もしやもうお祭りはお終い?と焦りましたが、なんのなんのラベンダーの香りが漂う広場ではプロヴァンス・プリントの民族衣装に身を包んだ男女がダンスをして盛り上がっています。でも、ラベンダーの山車は既にからっぽの巨大な荷台と化していて、ラベンダー色のリボンだけが淋しげにひらひらするばかり。ラベンダーを山のように積み上げたこの山車の上から、ラベンダーの花束を皆んなに配ったらしいのですが、生憎それには遅過ぎました。
 とはいえ、村はまだダーっと連なるラベンダーのマルシェでにぎわっています。ヴァランソルはラベンダー栽培の他に小麦とはちみつの産地としても知られているかわいい村。よって、マルシェにはラベンダーをあしらった品や小麦やはちみつを使ったありとあらゆる商品が、まるでそのアイディアを競い合うかのように並んでいました。その他にこのラベンダー祭りでは、ラベンダー農場の見学と収穫の体験やハイキング、ヘリコプターでラベンダー畑を空から見学などのイベントが企画されていたようです。
 ラベンダーの花の香りで満たされた車で帰路に着いた私たち。夕暮れのヴァランソルの村は少し離れて全景を見るととても美しく鷲ノ巣村のような姿で、辺りにはゴッホの絵で描かれたようなプロヴァンスの景色が広がってとても趣きがありました。この近くには、ローマ人の築いたこの地方最古の村リエズやルネッサンスのお城が残るアルマーニュ・アン・プロヴァンスなど、興味深い村が点在しています。
[PR]
by cheznono | 2006-08-02 23:18 | プロヴァンス賛歌