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葬式泥棒

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 「こわれゆく世界の中で」の原題は《不法侵入》で、ロンドンの建築事務所へ繰り返し泥棒が入る事件が軸となっている作品でしたが、コートダジュールも泥棒や空き巣の被害が絶えません。観光客やお金持ちの退職者が多く、かつイタリア国境と接しているから、よそから泥棒集団が入り込み易いためでしょう。
 まず、不審者対策としてアパルトマンの出入り口は100年前の建物でもオートロック式。オフィスやお金持ちはセコムのようなセキュリティサービスと契約し、一戸建てや商店はお弁当箱のような警報機をつけ、庭があれば猛犬を飼って、不法侵入の泥棒を防ごうと努力しています。
 とはいえ、オートロック式は日本と同様、センサーつきの鍵を持つ住人の後に続いて、配達の人や作業服の見知らぬ人がにこやかにひょいっと入って来るのはしょっちゅうだし、警報機が突然ウーウー鳴り出して止まらなくなっても、隣人や道行く人は知らん顔。ニースのような都会だと、気づいた誰かが警察に通報してくれるなんてことは殆どないため、警報機はただ無意味に鳴り続けるだけ、ということもしばしばです。泥棒対策まで非効率だから、フランスの犯罪率は高いままなのでしょうか。
 一戸建ての場合、夜遅くまで外出する時には部屋のランプを一箇所つけ、TVかラジオをつけっぱなしで出かけたりする家庭も多いようです。留守だとわからないようにするのは一番手っ取り早い方法の一つですが、ヴァカンス旅行の時はそうも行きませんね。
 知り合いのマダムは、30代の娘さんをニース‐カンヌ間の自動車事故で亡くし、悲嘆に暮れてお葬式から帰って来ると、アパルトマンはしっちゃかめっちゃかで宝石類が全部消えていたそうです。プロの空き巣は、地元紙ニース・マタンに載る市民の訃報欄をチェックし、葬儀の日取りや時刻を確認して、その留守宅を狙うのが常套手段になっているのだとか。お葬式の際は、一家をあげて留守になるし、たいていは肉親を失った悲しみで泥棒の被害へのショックや怒りが普段より薄いから、だと言われています。人の弱みに付け込む葬式犯罪が横行する社会なんて、と暗澹たる思いがしましたが、悲しいかな、先進国はいずこも似たり寄ったりなのかも知れません。
警視庁の事件犯罪発生マップ:東京都の地域別に空き巣などの発生度がわかります。
http://www.keishicho.metro.tokyo.jp
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by cheznono | 2007-05-26 23:12 | 不思議の国フランス

輝ける女たち

b0041912_23452670.jpg ニース旧市街にあるキャバレー《青いオウム》を巡って、落ち目の手品師とその元妻と子供達、加えて幼馴染みや美人歌手との複雑な人間関係やそれぞれの心情を描いた「輝ける女たち」。豪華なキャストと秀逸なシナリオで、心地よいひとときを過ごせること請け合いの映画です。
 《青いオウム》のオーナーがニースの海岸で自殺したため、彼の息子同様だった手品師は店の相続を予期したのに、意外にもオーナーは店も屋敷も手品師の息子と娘に遺したのでした。共に30代初めのハンサムな息子と不機嫌な娘は異母兄弟で、いい加減な芸人人生を送って来た父親に反抗的。相続税のためもあって、赤字の店と屋敷を売り払い、早くパリに帰りたくていらいらしています。
 独立戦争のため15歳でアリジェリアからニースにたどり着き、《青いオウム》のオーナーに拾われてから、いつも彼の人生のより所だった店を売り払うと子供達に宣言された手品師は、唯一の救いを美人歌手のレアに求めます。そこへかつての妻で息子の母であるアリスが現れ、手品師の幼馴染みで、娘の母でもあるシモーヌと対決、一波乱の後に、二人の女性の意外な過去が浮き上がって来ます。
 一方、父親の浮き沈み人生に反発し、互いの母親にも複雑な感情を持つ不仲の子供達は、さっさと店を処分してパリに戻るつもりが、店の踊り子達の心意気に触れたり、かつては大人気を博したこともある父親の芸への思い入れが多少とも理解できるに連れ、少しづつ《青いオウム》へ愛着が湧いて来て。。
 好き勝手な人生を送って来た手品師が、店のオーナーの死によって、芸の場も住む場所も失い、かつて愛した女たちにはそれぞれ裏をかかれ、子供達には愛想をつかされて、おろおろしつつも美人歌手を追いかけて、自分なりの活路を見出そうとする姿がいかにもフランス映画的。かかわった女性達は皆んな彼の知らない過去を持っていて、手品師を唖然とさせますが、全員が徹底した個人主義を貫きながらも、最後にはやっぱりみんな家族であり仲間であると確信できる点が胸を打ちます。
 カトリーヌ・ドヌーブとエマニュエル・ベアールばかりでなく、手品師のジェラール・ランヴァンやオーナー役のブラッスール、踊り子の振り付け師ヴァレリー・ルメルシーなどベテラン俳優を贅沢に使っているし、同性愛の息子役のミヒャエル・コーエンなんてうっとりするくらい素敵。本当にハンサムはホモセクシャルが多くてもったいないと改めて思わせてくれました。
 今のニースで展開する話にしては、それらしさが夜景とラストのプロムナード・デザングレくらいしか感じられなかったのが、ちょっと残念です。もっとニースの雑多な喧騒を入れてくれると、もう少し現実味が増すでしょうに。 
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by cheznono | 2007-05-21 01:36 | 映画

こわれゆく世界の中で

b0041912_1101289.jpg 「イングリシュ・ペイシェント」のアンソニー・ミンゲラ監督の最新作で、ジュリエット・ビノシュが再登用された映画「こわれゆく世界の中で」。鳴り物入りのわりには、フランスでも比較的地味な作品として扱われていましたが、ジュード・ロウがとても人間臭い、等身大の人物を演じていて、私には印象的な作品でした。
 建築家のウィル(ジュード・ロウ)は、ロンドンのキングス・クロス付近の再開発プロジェクトに携わりますが、初日からオフィスを窃盗グループに荒らされてしまいます。自ら夜中のオフィスを見張って、犯人を突き止めたウィルですが、盗賊団の手先になっている少年はボスニアからの避難民でした。
 恋人とその連れ子と暮らすウィルは、二人を愛しながらもこのところ恋人ともその娘とも軋轢が絶えず、精神的に疲れていたため、戦火を逃れてロンドンの下町でひっそり暮らすボスニア少年の母アミラ(ジュリエット・ビノシュ)への同情を募らせてゆきます。アミラが息子を守りたいためにウィルを受け入れたとは気づかず、ウィルはアミラとの情事に足を踏み入れるのですが。。
 ニースでチェチェンからの家族を連れて避難して来た青年や政情不安なスリランカから非難して来た女性と話す機会があったので、好景気に沸くロンドンで苦労している母子に出会ったウィルの気持ちの動きが、結構身近に感じられました。でも、見所はやっぱり敏腕な建築家として成功しながら、娘の病気のために神経過敏になっているパートナーと、実の娘同様にかわいがっているその娘との関係に悩むウィルの人間的な姿でしょう。
 カップル間の感情のズレに、今ヨーロッパが直面してる社会的な問題をからめて、仕事への情熱と私生活での愛情深さと気の弱さ、そしてずるさを併せ持った人間的な人物像をさらりと描いたのは、さすがミンゲラ監督だと感心したのでした。
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by cheznono | 2007-05-16 01:57 | 映画

瀟洒な村ムージャン

b0041912_181639.jpg 白いジャスミンの香りがむんむんするコートダジュールから日本に戻って来たら、我が家の近所でもあちこちにジャスミンが咲き乱れているし、今年は気候も同じような感じなので、以前ほど帰国した時の違和感がありません。圧倒的に違うのは、空の色と光の強さ。東京は晴天でも空気どこか濁っているし、光も鈍いので、ニースのくらくらするようなまぶしさから離れて、ちょっとほっとしています。
 ひそかに期待した劇的な番狂わせもなく大統領に選ばれたニコラ・サルコジが、マルタ島でのクルーズというゴージャスなヴァカンスを非難されて、慌ててパリに戻ったみたいですね。計12人が立候補していた大統領選第一回投票で、フランスで一番サルコに投票した人が多いかったことで話題となった村が、カンヌの近所のムージャンです。
 丘の上に立つこの村には、中世の家並みが続き、コート・ダジュールというよりプロヴァンス地方の村のような雰囲気が漂っています。大統領選の決戦で健闘した社会党のセゴレーン・ロワイヤルが別荘を持っている村なのに、大半がサルコに投票したのは皮肉ですが、ムージャンの住人はお金持ちが多いし、とても右寄りの風土が根強い上の投票結果と言えるかもしれません。
 ピカソやマン・レイが気に入ったというムージャンは、アーティストや俳優にも人気だったそうで、今はおしゃれなギャラリーやアトリエが点々と並んでいます。と言っても、エズやサン・ポールのように観光的ではありません。プロヴァンス料理で知られるロジェ・ヴェルジェの料理学校があるせいか、ここはグルメの町とも言われ、ちょっと気取ったお値段のレストランが何軒か連なっています。
 週末にはアート系のマルシェも開かれるムージャン。カンヌからグラース行きのバスで15分くらいなので、時間があったら是非寄ってみて下さい。復活祭からもうひっきりなしにやって来る観光客がぞろぞろのニースやカンヌの喧騒とは別世界の、穏やかでのんびりした古いたたずまいと絵のギャラリー、お財布に余裕があればおいしい料理と、心地よく過ごせる村ではないかと思います。
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by cheznono | 2007-05-10 01:54 | コート・ダジュール散歩

爪を研ぐ大統領候補

b0041912_04396.jpg ここ数年、フランスで空港や列車内での外国人の入国チェックがうるさくなったり、道路上での職務質問が増えたのはニコラ・サルコジのせいと言われています。内務大臣時代、フランス一のトップ警官と呼ばれたサルコが、何かにつけ移民取締りに活を入れた結果、警察が「我々はちゃんと仕事をしています!」と国民とサルコにアピールするため、移民や外国人チェックが厳しくなったのだとか。
 自身もハンガリー移民2世のサルコですが、農民活動家ジョゼ・ボベに「サルコはルペンの私生児だよ」と批判されたほど、フランスの治安を乱しているのは移民たちという視点では極右のルペンと共通しています。「小児愛者は生まれたときから小児愛嗜好を持って誕生する」などと遺伝子学者が真っ青になるような暴言も目立つし、マスコミ操作もしばしば噂される策士で野心満々のサルコですが、女性議員を殴ったり、サッカーのフランス代表チームに対して「選手は移民ばかりで、フランス代表とは言えない」なんて豪語するルペンに比べれば、まともな指導者と言えるのかも知れません。
 ちなみにルペンはイギリス軍からフランスを救ったジャンヌ・ダルクを党のシンボルに掲げ、前回の大統領選では《移民を制限している良い例》として、「日本を見習え」と言ってました。一方、サルコは移民全否定ではなくて、「今後はフランスがほしい移民だけ選んで滞在させたい。」と提案。つまり、研究者が足りなくなれば研究職の移民を、医者が足りなくなれば医療関係者を受け入れる、と主張して、有益な移民は歓迎するけれど、一般の移民は遠慮してもらいたいという意図が見えます。
 フランスには政情不安などの理由で避難民として逃げ込んで来た外国人や何年も滞在している留学生も多くて、今までは比較的楽に滞在許可証を更新し、国からの補助も受けられたけれど、排他的な大統領が当選すれば、この先も問題なくフランスに滞在できるかどうかを心配する人は少なくありません。
 でも、「じゃあなぜフランスには移民が多いわけ?自分達のして来たことや歴史は忘れてしまったの?」と私達も耳が痛くなるような声が聞こえます。自らの植民地政策のつけと、安い労働力を求めた結果、次々と流入した移民たちですから、まるで抵抗勢力のように扱うのはおかしいのですが、マスコミも当選後に仕事がやり難くなるのが目に見えているため、有力候補者への批判はとても弱腰です。
 アメリカ嫌いのド・ゴール派であるシラク大統領やヴィルパン首相とは違って、サルコはがぜん米国寄り。サルコが当選したら、中国とアメリカ重視の経済政策が取られるのは必須でしょう。うなぎ登りのユーロがこのまま上がり続けたら、どうしよう?と私はハラハラしながら6日の決戦を待っている所です。 
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by cheznono | 2007-05-04 01:11 | 不思議の国フランス