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スリ天国

b0041912_0412214.jpg フランスは今週末から公式に夏のヴァカンスに入るため、恒例のコートダジュール方面へ車の大移動が始まるでしょう。春の復活祭から旅行客が増えてざわつくニースですが、特にこれからはレストランもホテルも稼ぎ時。浜辺や町の中心地はフランス語より英語やイタリア語の方が耳につくくらい、観光客があふれる季節の幕開けです。
 同時に、旅行者を狙うプロやアマも集まって来るから、夏に南仏旅行を計画されている方は用心してください。ヴァカンス・シーズンのコートダジュールは、海風と強い日差しの開放的な空気の中でナンパはし放題、スリも売春も盛んになります。警察の取り締まり強化とは言われても、被害が減る程の効果は出ていないようです。
 全国的なお祭りである夏至の日の音楽祭:フェト・ド・ラ・ミュジークを初め、夏の南仏は屋外でのイベントが多く、その度に会場になった地域はスリ天国と化します。犯人は一匹狼のスリはもちろん、10代の少年少女がいたずら半分(でも腕はプロ級)にバッグを狙ったり、東欧辺りから集団で送り込まれたスリ・グループだったりとさまざま。
 パリではメトロの中が危ないように、ニースもバスの中でよくバッグを開けられます。そして、特に狙われるのが、国鉄のニース駅付近から、マセナ広場に向かう目抜き通りのようです。
 去年の夏、友人が泊まっていた「地球の歩き方」にも紹介されているホテルに寄った時にオーナーから聞いた話によると、日本人の女性客が駅からホテルまで歩いて来たところ、チェックインの際に財布もパスポートも無くなっていることに気がつき、パニックになったとか。オーナーが日本に電話をして、ホテル代は日本にいる女性客のお母さんのクレジットカード番号で決済し、当面のお金を貸してあげたので、女性は何とかその場を凌いだそうです。駅からホテルまで、徒歩10分間の出来事でした。
 さて、いつも背中に小型デイパックを背負っている私も、バスの中や繁華街でしょっちゅう背中のバッグを大きく開けられます。これはニースに限らず、パリ、リヨン、アビニョン辺りでは本当に笑ってしまうくらいバッグのファスナーが開いてるのですが、貴重品は入れてないし、入ってたにしてもバッグの底に沈んでいるため、幸い中身が無くなったことは一度もありません。私のデイパックのふたは自分でも結構開けにくいのに、全くよくやってくれるよと思います。でも、めったに気がつかないほど開け方がうまいから、知らずにバッグのふたを大きく開けたまま人ごみを歩いていることもしばしば。なんて恥ずかしい。
 その点、東京は繁華街でも満員電車の中でも、背中のバッグのファスナーが開けられたことは皆無だから、安心してお財布を入れて歩けますね。いつまでもこういう状態が続いてくれることを祈るばかりです。
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by cheznono | 2007-06-29 02:04 | 不思議の国フランス

女帝

b0041912_0163311.jpg 今日、6月21日は第26回目のフェト・ド・ラ・ミュジーク:音楽祭の日で、夕方からフランス中の町がにわかコンサート会場と化し、春が終わって正式に夏を迎えるのを祝います。町中あちこちで大小のグループがロックやらジャズやらポップスやらをガンガン演奏して夜中まで盛り上がるため、やたらやかましい夕べとなることは必須。こんな日に例えばエクサン・プロヴァンスのような小さい町に滞在していると、うるさくてたまらないという目に合うかも知れません。
 さて、「蜘蛛巣城」や「乱」の黒澤明監督作品以来、アジアでは初のシェイクスピア劇を翻案した「女帝~エンペラー」、素晴らしい美術・衣装は見応えがありましたが、深みのない時代劇に仕上がっていて、ちょっと物足りなかったです。
 「ハムレット」を踏まえたドラマは、10世紀の中国・唐王朝滅亡後の戦乱の時代が舞台で、ある皇帝が毒殺され、若く美しい妃ワンは、次の皇帝となる亡き夫の弟リーとすぐに再婚します。都から離れて修行に励んでいた皇太子ウールアンは、父親が叔父に暗殺され王位を奪われたことを知って、密かに都に戻り、今は叔父の妃となった義理の母と再会しますが、彼も新帝から生命を狙われていました。
 義理の母とはいえ、ワンは皇太子よりも年下で、二人はかつて惹かれ合った仲。新帝の妻におさまりながら、婚約者のいる皇太子を今なお強く思うワンは、新帝の追っ手から彼を守るために非情な手段も辞さず、一方で亡夫の死に対する復讐も忘れてはいなかったのですが。。
 富が集中した中国王朝の絢爛豪華な宮廷文化には圧倒されましたが、ストーリーに中だるみがあるのと、主演のチャン・ツィーが女帝で悪女というには線が細過ぎる印象です。しかも、この映画、この春フランスでまあまあヒットしたチャン・イモー監督の「紫禁城」(これは仏題で、原題はかなり違う筈)にとても似ています。時代設定といい、非情な皇帝に輪をかけてえぐい女帝が陰謀をめぐらすという内容といい、雰囲気がそっくり。中国映画界は今、古代時代劇スペクタクルが流行りなんでしょうか?
 もっとも、どこかの映画祭の衣装賞を取ったという「紫禁城」の方は、リア王を滅茶苦茶にしたようなかなり奇妙なストーリーでしたから、その点は「女帝」の方が一応話の流れが一環してただけましと言えるでしょう。でも、「紫禁城」の女帝はコン・リーで、これはチャン・ツィーより遥かに存在感と迫力がありました。もちろん、年齢や経験の差が大きいから、二女優の存在感の違いは当然なのかも知れませんが、「女帝」では、繊細な印象の踊れる女優チャン・ツィーの持ち味があまり生かされていなくて残念です。それに、女帝なのに副題がエンペラーでは、整合性がなくて違和感がありますね。
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by cheznono | 2007-06-22 01:48 | 映画

ニースのピンクパレード

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 ブログへの接続がめちゃ悪くて、自分のブログが蒸発してしまったかと思ったくらいですが、エキサイトブログ全体の不具合が続いているようです。せっかく見に来てくださった方、なかなかブログが表示されなくて、ごめんなさい。
 「あるスキャンダルの覚え書き」では、孤独でプライドの高いバーバラが頼りなげなシーバに対して同性愛的な強い関心を向けたことから話が展開しましたが、フランスの大都市では、一部の世代に限れば10%弱が同性愛的な傾向にあると聞きます。この数字の真偽は定かではありませんが、6月はニースでもピンク・パレードが催され、相当な人出を呼ぶというので、去年の今頃、噂のデモ行進をちらっと見に行きました。
 妻子に愛想をつかされ、職場でも自信をなくしたダニエル・オートイユが、ひょんな誤解からパレードの花形になった映画「メルシー人生」で見たような、パリの華やかに仮装した大デモ行進を期待したのですが、ニースのピンク・パレードはずっと素朴な集まりでした。とはいえ、その参加者の多いこと。驚いたのは、女性の参加が目立ったことです。全体的には男性のカップルが多いけれど、女性同士や一人でも楽しげに踊りながら行進していたり、愛犬連れの人も結構いました。
 山車の上で踊っている人たちもたいして派手に仮装していなかったのは、ちょっと期待はずれでしたが、各山車はニースの有名なゲイバーが出したもので、お店の名前を宣伝した幕が張られています。とにかく、参加者は皆んなとても楽しげに踊りながら行進しているので、見物の人も誘われて一緒に踊りだしたり、声を上げたりして、和気藹々のパレードでした。「ブロークバック・マウンテン」の時代から40年、あの二人が想像もしなかった世の流れでしょう。
 このパレードのため、一行が行進する道路は一時的に封鎖されてはいたのですが、パレード行進の後ろには、たくさんのパトカーがのろのろと付き従い、そのまた後ろにはお客を乗せた路線バスが何台も連なっています。いい迷惑なのはバスの中のお客さん達で、前方を踊ったり叫んだりしながら、ぞろぞろ行くピンク・パレードが早く進まないかとイライラするばかり。暑い中、バスに閉じ込められて、前方には所在無く連なるパトカーが見えるものの、パレードの後姿は遠過ぎてよく見えないだろうし、外の野次馬からは哀れな目で見られるし。。
 どうせ時間を決めて道を封鎖するなら、もっと徹底的に交通制限すれば良いのに、ピンクパレードに限らず、デモ行進がある度に、後ろに続く路線バスや乗用車が途方に暮れる光景が毎回繰り返されるのは、本当にフランス的不効率の証明だと思いながら、パレードを見送りました。
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by cheznono | 2007-06-16 01:48 | いつもの暮らし

b0041912_0225071.jpg フランスでも評価の高かった「あるスキャンダルの覚え書き」ですが、個人的にはブッカー賞の最終候補にまでなったというゾイ・ヘラーの原作を先に読みたかったです。イギリス人お得意の心理スリラーは、映像で見るよりも小説を読む方が、展開を楽しめる方なんですね。
 とはいえ、迫力あるジョディ・デンチと、ケイト・ブランシェットの攻防は、見る者をうならせるうまさでした。特にケイト・ブランシェットは、「バブル」での役柄と日常生活に満足していない二児の母という点では共通しているのに、いつもの強気な女性役とは打って変わり、40歳を過ぎているとは思えない美貌のお嬢さん教師が合わせ持つ二面性を演じきっていたので、見とれてしまいました。
 定年間際の独身教師バーバラは、愛猫だけが友達の孤独な生活を送っていて、厳格で嫌味のある言動のため、職場でもうとまれています。そこへ繊細なお嬢さん主婦タイプのシーバが転任して来て、自分の意にかなう若い女性を密かに捜し求めていたバーバラの関心を引き付けます。
 20歳年上の夫と二人の子供に恵まれた中産階級のシーバは、人を疑うことを知らないようなナイーブな面を持ち、でも一方で温和な生活と自分自身に不満を抱いていて、ベテランの同僚のバーバラに信頼を抱き始めます。
 バーバラはシーバを観察しては、妄想も含めて毎日日記にシーバのことを綴りますが、ある時、校内でシーバと彼女の15歳の教え子との情事を目撃し、その事実を盾にシーバを自分の支配下に置こうと決心するのですが。。
 原作者がヒントにしたという実際にアメリカで裁判沙汰になった既婚の女性教師と中学生との交際は、二人の間に子供までもうけたため、より複雑な様相を呈していたそうですが、一見、何不自由なく幸せに見えるシーバの心の隙間にストンと入り込んだ15歳の熱情や、定年を迎えたら更に孤独な老後が待っているバーバラの偏執的な感情は、今の欧米社会では決して人ごとではないところが、この作品のテーマでもあり、怖いところだと思います。
 想像を超えたスチュエーションのようで、実は誰もが巻き込まれ得る事件だから、原作も映画もヒットしたのでしょうし、主演の二人は身近にいそうな人物の、互いに自己中心的な心の動きをみごとに表現していましたが、観終わった後味は良くありませんでした。 
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by cheznono | 2007-06-11 01:40 | 映画

モネ展

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 今年オープンしたばかりの六本木の国立新美術館で開かれているモネ展に行って来ました。もう来場者が40万人に達したとかで、印象派の画家の中でも日本で一番人気のモネの集客力はすごいですね。共催のオルセー美術館を初め、あちこちから集まったモネの作品が100点近く、その他にスーラなどモネに影響を受けた画家の絵も少しありました。
 驚いたのは、日本国内の大小の美術館から出展されたモネの作品がとても多かったこと。フランスでモネを初め印象派の画家達が集めた日本の浮世絵の数もすごいけれど、日本国内で保有しているモネの作品も想像以上でした。展覧会の出口前に、ジヴェルニーのモネの元にせっせと通っては、モネの作品を日本に紹介した日本人の資料も展示されていて、興味深かったです。
 このモネ展では、モネの作品がテーマごとに紹介されています。《風景》《セーヌ川》《庭》、《海》《雪景色》《ヴェニス》《ポプラ》《ロンドン》、そして《睡蓮》と、それぞれのテーマを描かれた年代によって比較できるモネ展は、とても珍しいのだとか。なるべく一つ一つの作品の微妙な光や色の使い方、風の流れ方、水面の描き方などに注目してじっと鑑賞するように努めてみました。
 睡蓮の絵は、池の水面に出ているもの、水面に反射しているもの、そして水面の下に見えるものの三点に気をつけるように、と教えて貰いましたが、ついに私には水面の下にあるものが見えて来ず、ちょっと情けなかったです。
 今回のモネ展で一番心に残ったのは、ヴェニスをテーマにした数点の絵でした。水に言い知れない魅力を感じていたというモネが、69歳にして初めてヴェニスを訪れ、描いた作品は、この町の特質をとても魅力的に捉えているように思います。20世紀初頭のヴェニスは、まだまだ観光ずれしていなくて、ヴェネツィア共和国時代の面影を強く残していたことでしょう。できるなら、私もせめて100年前にヴェニスを旅したかったです。
 週末は特に混雑するというモネ展ですが、平日の夕方は比較的すいていて、黒川紀章の設計による、館内を部屋にはっきりとは分けず、人が流れるように回れるという特色が、生かされているように見えました。
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by cheznono | 2007-06-05 17:53 | いつもの暮らし

輝くニース港

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 カンヌやアンティーブの港に比べるとずっとこじんまりした印象のニース港。旧市街の城跡の丘の向こうにちょこっと納まっていて、サントロペに停泊しているような高級ヨットも少ないですが、今の季節は光に輝いてうっとりするほど美しく見えます。
 映画「輝ける女たち」の主人公の手品師は、15歳の時に泥沼化したアルジェリア独立戦争から逃れて、はるばる北アフリカからニース港にたどり着き、途方に暮れていた所をキャバレー《青いオウム》のオーナーに拾われ、芸人に育て上げられたという過去があります。
 19世紀からフランスの植民地だったアルジェリアには、早くから入植したフランス人が大勢暮らしていて、利権を握り締めていたため、1962年にド・ゴール大統領がアリジェリアの独立を認めるまで、フランスは7年に渡る惨い戦争を続けたわけです。
 いよいよ戦況が厳しくなった60年初頭には、アルジェリアで生まれ育ったフランス人の本国への引き揚げラッシュが続き、ニース港やマルセイユ港には多くの引き揚げ船が到着しました。中には手品師のように家族とばらばらになった若者や、泊まる所がない人もたくさんいて、ニースの浜辺のあちこちに行き場所のない引き揚げ者が目に付いたそうです。
 映画の中で、ミュウミュウ扮する手品師の幼馴染みが、カトリーヌ・ドヌーブに向かって「アルジェリアから引き揚げて来た私達には、正統派のフランセーズのあなたがまぶしかったわ。」と昔からのコンプレックスを打ち明ける場面がありますが、植民地とは言え家を捨て、今まで築き揚げた財産や持ち物を諦めて、トランク一つで知り合いもいないフランスに逃げ戻った人たちには、とても辛い経験だったに違いありません。でも、20代のカトリーヌ・ドヌーブが、ニース旧市街辺りでブロンドの髪をなびかせてたら、誰にだってまぶしいに違いないのにって、ついチャチャを入れたくなっちゃうのですが(笑)。
 そういう過去の面影は微塵もない今のニース港は、いつも穏やかで、コルシカ島やイタリアのサルディーニャ島へ向かうりっぱな客船が停泊し、たまに地中海一週+アフリカ行きの観光船も出たりします。シーズン中はニース~ヴィルフランシュを周る短いクルーズ船もあるので、プロムナード・デザングレを散策したら、是非港まで足を伸ばして見てください。
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by cheznono | 2007-06-01 02:00 | コート・ダジュール散歩