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 「地上5cmの恋」では、黒人ジャズシンガー、ジョセフィン・ベイカーの歌にのってヒロインが踊り出すシーンが随所に入って、映画をより魅力的に見せていますね。
 1920年代からパリで一世を風靡したジョセフィン・ベイカーについて私が知ったのは、ボルドーの東、ドルドーニュ地方の田園の丘に建つラ・ミランド城を訪ねた時でした。セントルイス出身のジョセフィンは、歌とダンスの卓越した才能がありながら、黒人であるがため差別された故国アメリカよりも、自分を大スターとして高く評価してくれたフランスを愛し、第2次大戦中はフランスのレジスタンス活動に協力します。
 戦後、風光明媚なドルドーニュの人里離れたラ・ミランド城を買い取り、莫大なお金をかけ城を自分の理想に合わせて改修。テニスコートやミニ・ゴルフ場も作り、城の農園には大量の鶏や牛、豚や孔雀を飼ったそうです。
 その頃、フランス人の指揮者ジョー・ブイヨンと5度の目の結婚をしたジョセフィンは、すっかりリフォームした城に養子を迎える計画を進め、1954年に来日して、まず2歳の孤児アキオと養子縁組。それから、北欧に飛んで白人の孤児を、南米に飛んでヒスパニックの子を、アフリカやインドに行ってまた孤児をと、地元フランスの孤児も含め、肌の色や宗教の違うあらゆる人種の子供たちを次々に養子に向かえ、ラ・ミランド城で養育します。《虹の大家族》と名づけた孤児の総勢12人。
  故郷セントルイスで、父親に見捨てられ、母親には虐待とネグレクトを受け、貧しさと人種差別の中で悲惨な幼児期を送ったジョセフィンは、その不幸な生い立ちのためか孤児たちにのめりこみ、贅沢なものを与えて、教育費も惜しげなく使いました。
 政治的活動や社会運動にも貢献したジョセフィンのコンセプトは素晴らしかったのに、パリの大スターだったゆえか、金銭感覚には欠けていたようです。
 夫ジョー・ブイヨンも父性愛が強かったため、初めの数人を養子にした頃は協力的でしたが、妻が世界中からどんどん孤児を集めて来ては湯水のようにお金を使うのに閉口して、パリへ別居。そのまま離婚に至ってしまいます。
 城の改修と12人の孤児たちの養育費、加えて、年間何十万人という訪問客をもてなす費用など、彼女の借金はうなぎ登り。やがて債権者が城に押しかけて来ます。ついに破産したジョセフィンに債権者が城の明け渡しを迫ると、彼女はなりふり構わず猛烈に抵抗。追い詰めらたジョセフィンは、群がる債権者や記者をシャットアウトして、ラ・ミランドに篭城を決め込みます。
 八方塞りのジョセフィンに救いの手を差し伸べたのは、モナコのグレース王妃でした。同じ米国出身で、友人でもあったグレース王妃は、モンテカルロの屋敷に彼女と孤児たちを引き取ります。その頃、アルゼンチンでフレンチ・レストランを始めていた前夫ブイヨンも、孤児の一人を引き取ったようです。
 68歳でパリで最後の公演中に亡くなったジョセフィンは、今もモナコの墓地に眠っています。
 15世紀に建てられたルネッサンス様式のラ・ミランド城は今、お城の多いドルドーニュ地方でも、一番人気を誇る観光名所。フランス革命でかなり破壊されたため、その後19世紀に再建され、現在はジョセフィン・ベイカー記念館をかねています。ステージ衣装を初め数々の記念品や、ジョセフィンがこの城に託した夢が再現されていて、訪れる人はその壮絶な人生をたどることができるでしょう。城の庭では、ふくろうやミミズク、鷹など猛禽類の小屋も楽しめます。
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by cheznono | 2008-03-30 01:46 | 不思議の国フランス

地上5センチの恋

b0041912_1717246.jpg 昨年観た映画の中で、一番笑わされ、何よりも幸せな気分にしてくれた「地上5センチの恋」。お伽話のようなストーリーですが、監督の実体験から生まれた作品と聞きました。春にふさわしい、一押しのコメディです。
 ベルギー南部の町で、デパートに勤めるオデット(カトリーヌ・フロ)は、夫と死別して、年頃の二人の子供とつましく暮らしています。美容師の息子はゲイで、娘はどうしようもない男と恋仲。夜は家計の足しに内職をするオデットの現実は、それなりに厳しいと言えますが、彼女はお気に入りの作家バルタザール・バルザンの著書を読むことで、現実逃避をはかるのを日々の支えにしています。
 ある時、ブリュッセルでバルザンのサイン会があると知ったオデットは、自分が夢中になれる本の作者である彼にお礼を言いたくて、長距離バスで首都へ向かいます。おめかしして、浮き浮きどきどき。人生の一大イベントのごとく楽しみにしていたサイン会なのに、ハンサムなバルザンといざ面と向かえば、ろれつも回らなくなるほど緊張するオデット。それでも、何とかファンレターを渡すことができました。
 一方、人気作家のバルザン(アルベール・デュポンテル)ですが、著名な評論家には「所詮、ミーハー受けする大衆小説家に過ぎない」と酷評され、愛する妻もなんとその評論家と浮気していると知って、激しく落込み、生きる希望もなくしかけている所でした。
 そんな折に渡されたオデットのファンレター。すっかり自信をなくしていたバルザンにとって、その手紙はどんな書評よりも身にしみる、勇気百倍の内容だったのです。しかも、文章が素晴らしい。
 このファンレターをくれた本人に会うべく、オデットの小さいアパルトマンを訪ねるバルザン。しかし、再会したオデットは、プルーストもゴンクール賞も知らない無教養な女性で、いっぱしの文学小説家であるバルタザール・バルザンは、眼を丸くしてしまいます。
 けれど、オデットには何ごともポジティブに考え、周囲の人々を幸福な気分に導くという類まれな才能が携わっていることに気づいたバルザンは、しばらく彼女のアパルトマンにホームステイすることになるのですが。。
 日々の暮らしに追われながらも、何かあるとジョセフィン・ベイカーの曲を歌いながら踊っては気分転換するオデット。私の大好きなカトリーヌ・フロの才能が存分に生かされている役柄です。そして、何よりセリフが秀逸。脚本の良さはもちろんのこと、細部まですごく計算された会話の面白さには感服しました。
 私は、ニースの名画座で隣り合わせたカトリックのシスターと何度も顔を見合わせて笑いまくり、お陰で観終わった後、何日も楽しい気分に包まれていることができました。加えて、フランスとは似て非なるベルギー庶民の暮らしぶりも新鮮です。
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by cheznono | 2008-03-23 18:11 | 映画

そして、恋の終わり

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 「イングリッシュ・ペイシャント」のアンソニー・ミンゲラ監督が54歳で亡くなったのですね。去年観た「こわれゆく世界の中で」の印象がまだ残っているのに、とても残念です。
 さて、ホワイトデイが過ぎてしまいましたが、バレンタインにシネマで出会ったベアと青年の話に戻りますね。ベアもその仲間も「つかみどころがなくて、なかなか心を開いてくれない」と感じた青年でしたが、それなりにかっこ良いし、ベアと会うのも嬉しそうです。
 「確かに彼は31歳のフランス人にしてはシャイで神経質そうだけど、年上の自分がリードして付き合えば、もっと打ち解けて親密になれるわ。」3回目のデートで、ベアは彼を自分の2Kのアパルトマンに招待しました。
 広くはないけれど居心地の良いリビングで、チーズをつまみながらワインを片手に語り合う二人。夜も更けて、いい雰囲気です。ジャン・ジャック・ゴールドマンのCDを聞きながら、楽しげに話すベアの横で、彼はひっきりなしに煙草を吸ってましたが、ムードは高まって来て、、、
 ここまで、にやにやしながらいきさつを聞いていた私たちに、急にベアが声を潜めて言いました。「でもね、彼は今まで一度も女性と付き合ったことがないって告白したのよ」ええっ、31のフランス人が!?
 どうも彼は神経過敏で、男女を問わず、誰かと深い関係になることが苦手なタイプのよう。親友には「少し頭を冷やして考えたら?」と言われても、そこは面倒見の良いベアのこと。前の彼と恋に落ちたのは、彼19歳、彼女31歳の時で、以来7年間、学生だった彼をずっと支えて来た経験もあるし、「自分の力で彼を一人前にしたいと思ったの」だそうです。
 しかし、アパルトマンで過ごした日から、彼の様子はますますおかしくなりました。よく聞いてみると、どうも彼の話はつじつまが合わず、言うことが支離滅裂な時もあるとか。友達には「アパルトマンに誘ったのが早過ぎたのでは?」と言われるし、そのうち、青年がベアに付きまとうようになったため、見かねた仲間が「あきらめたら?」とか「もうやめとけ」と真剣に忠告。さすがにベアも決心がついて、彼に別れを宣言したそうです。
 バレンタインの出会いから、約一ヶ月。はかない恋の結末を迎えましたが、ベアは「今回はついてなかったけど、シネマは出会いの宝庫よ」とさして懲りてはいないようでした。
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by cheznono | 2008-03-19 01:56 | 不思議の国フランス

4ヶ月、3週と2日

b0041912_1404467.jpg 1987年、チャウシェスク政権崩壊の2年前のルーマニアを舞台に、ルームメイトの二人の女性の過酷な一日の体験を描いた「4ヶ月、3週と2日」。去年のカンヌでパルムドールを受賞した作品なので観ておきたかったのですが、何とも後味の悪い気持ちの沈む映画でした。
 同じ違法な中絶補助をテーマにしたイギリス映画「ヴェラ・ドレイク」を頭において観たら、全然違う切り口だったから、面食らったのも確かです。
 鑑賞後、重苦しい気持ちを掃うべくワインを飲みながら、映画の暗さがそのまま独裁政権下の当時の東欧の陰鬱さだったことに気づき、同時期をバブルで浮かれていた国で過ごした私たちが、今この重苦しさをたった2時間弱でも共有したことに意義があるという思いに至りました。
 ドキュメンタリーのようなカメラの手法で、あまり知られていなかった共産主義時代の東欧の生活を描いた、圧倒的リアリティのあるドラマであることは間違いありません。
 大学寮で部屋をシェアするオティリアとガビッツァ。物不足の中で学生達がいろいろ工夫しながら、闇で物資をやり取りしている様子などが描かれ、やがて、しっかり者のオティリアが、望まない妊娠をしたガビッツァのために中絶の手はずを整える手助けをしていることがわかって来ます。
 当時、ルーマニア政府は労働力の確保のために出産を奨励し、中絶は違法でした。そうした政策と物不足のせいで、避妊具やピルも闇市でしか手に入らず、高価な品の部類だったようです。
 苦労して確保したホテルの部屋で、胡散臭い中年の医者がガビッツァに堕胎の方法と胎児の始末の仕方を説明しますが、彼が二人に、人工中絶が重い罪に問われ、いかに自分が危険を犯さなければいけないかを強調する辺りから、事態はとんでもない方向に向かい始めます。
 ルームメイトを助けたいオティリアの緊張や苛立ちに対して、肝心のガビッツァはノンシャランとしていて嘘を連発したりと、ことの重大さを甘く見ている様子が腹立たしい程です。でも、ガビッツァのようでないと独裁主義国家の重い重圧の下では、かなり生きにくいのかも知れません。
 それにしても、大学寮の様子などは、今のフランスの地方都市の大学寮と大差ないし、オティリアが顔を出す恋人の家のパーティでの来客たちの会話も、フランスの家庭の夕食会で交わされるものと変わりないのが、興味深かったです。個人の自由が制限され、物資も乏しい独裁政権下であっても、人々はたくましく毎日を楽しむすべを心得ていたという側面が、この映画の救いでした。
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by cheznono | 2008-03-12 01:49 | 映画

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 シネマで見かけた青年から、早速「愛しています」のメールを貰ったベアは、さすがに戸惑いました。そりゃあ見知らぬ女性から置手紙を貰った青年は、悪い気はしなかったでしょうし、調子の良いフランス人のことですから、「僕に関心を持ってくれたなんて、そんなあなたが大好きですよ」くらいのことは言いかねませんが、「愛してる」はやっぱり特別な表現で、顔も知らない相手へ使うのはちょっと行き過ぎ。
 とはいえ、バレンタインの夜に出会ったことは何かの縁で、相手もそれを感じたに違いないのでしょう。ベアと青年は何度か携帯メールをやり取りした後、いよいよレストランで初デートすることになりました。
 さて、待ち合せに現れた彼は31歳。職業は技術系で、主にPCで仕事をする毎日だとか。ベアより7歳下だから、年下好みの彼女にはぴったりです。ただ、初メールに「愛しています」と書いて来た割に、その勢いは微塵もなく、ちょっと神経質そうで、落ち着きがありません。
 ベアが青年と打ち解けようとしても、初対面の女性を前にして緊張しているせいか、彼は次々に煙草を吸うばかりで、今ひとつ会話がはずみませんでした。
 一般に10代のうちに社交的なスキルを身につける若者が多いフランスでは、目の前に異性がいたら、自分についての情報公開をしたり、相手を褒めたり、くどいたりと、とりあえず関心を惹こうと努力をする筈ですから、この青年は結構珍しいタイプかも?
 「好青年なんだけど、何だかつかみどころがなくて、、」
そんな初デートの報告を聞いたベラの親友、
「じゃあ、今度のホームパーティに連れてらっしゃいよ。初対面で一対一のデートで緊張していた彼も、みんなに混じってわいわいやれば地を出せるし、打ち解けるでしょ。そうすれば、どういう人かがわかってくるわよ」と提案。
よって、2回目のデートは友達主催のホームパーティに決まり、ベアは彼を誘って友人宅に出向きました。
 やがて、楽しいパーティは無事に終了。しかし、やっぱり皆んなの印象も同じで、「うーむ、どうもつかみどころがない青年だね。もうちょっと様子を見たら?」という感想が多かったそうです。
 シャイな彼もいずれ心を開くに違いないわ。青年に惹かれていたベアは、既に二人の仲を深めて行く決心をしていました。 つづく
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by cheznono | 2008-03-07 22:58 | 不思議の国フランス

バレンタインの出会い

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 「ラスト、コーション」をバレンタインデイのデートで観に行かれた方も多かったのではないでしょうか?2月14日は、フランスでは年に一度、一番バラの花が売れる日で、この時期にフランスにいる時はお花屋さんの前を通るのが楽しみです。
 さて、もう時効になったと思うので、あるバレンタインデイから始まったフランス流恋の話をしてみましょう。知的でとても感じの良い30代後半の女性ベア(仮名)の体験した出会いは、カップルで賑わう映画館の中でした。当時彼女は、同棲していた一回り年下の恋人と別れた後で、寂しさを乗り越えるため、積極的に外出していました。
 バレンタインの夜を一人で過ごしたくなかったベアが親しい男友達と一緒にシネマに行くと、後ろの席に素敵な青年が一人で座っているのに気づいたそうです。
「見て見て、後ろの彼、バレンタインに一人で映画を観に来てるなんて、独身かしら?」ベアは隣の友達に囁きました。
「そうだね、でもああいうタイプは女性に興味があるとは限らないよ。」そうその夜、彼女をエスコートしていた男性はホモセクシャルで、たまたま彼もパートナーがいない時期でした。
「ちょっとスカートの裾を上げてみて。」と男友達に耳打ちされたベア。
「えっ、なんで?」
「スカートを上げてさ、見えた君の脚に、ヤツが反応したら女性に興味がある証拠だから」
なるほどと彼女は素直にスカートの裾を膝上までたくし上げて、二人で後ろをチラッとみると、くだんの青年の視線は彼女の脚に注がれていたそうです。
「おっ、君の脚を意識しているから、彼はホモセクシャルじゃないね」男友達はちょっぴり残念そうでしたが、映画が終わると、二人はその青年をつけてみることにしたのです。
 夜の街中を青年をつけて行くと、彼は古いアパルトマンに入って行きました。一般にフランスのアパルトマンは、入り口のドアの脇に並ぶブザーに各住人の名前が貼ってあり、ブザーを押して住人と話さないと建物のドアが開かないオートロック式が多いのですが、たまたま青年のアパルトマンはドアが開いていて、中に入った彼が自分の郵便箱を確かめるのが見えたから、ラッキーでした。
  「君ついてるよ、彼の郵便箱に名前が一人分しか書かれてない」フランスは同棲カップルが多く、誰かと二人で住んでいれば、たいてい郵便箱の名前は連名ですから、この様子では青年が一人暮らしの可能性は高いでしょう。
 これはチャンスとばかり、彼女は映画館で見かけて気になったことと自分の携帯の番号を書いたメモを青年の郵便箱に入れて、ようやく帰宅したのでした。
 そして翌日、何気に職場で携帯をチェックしたベアに早速、昨晩の青年からメールが届いていたそうです。それもいきなり《愛しています》と。早くも大恋愛の始まりの予感、、かも?つづく
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by cheznono | 2008-03-01 02:07 | 不思議の国フランス