<   2008年 05月 ( 5 )   > この月の画像一覧

プロヴァンスのアスパラ

b0041912_1243399.jpg

 肌寒いと思ったら急に真夏日になったりと、お天気の変化が激しいせいか、とても疲れ易くて、渡仏が目の前に迫っているというのに、思うように準備がはかどりません。そこで、滋養強壮、疲労回復に効果があるというアスパラガスを茹でて、一度にたくさん食べてみました。これで、疲れが取れるかしら?
 先日、目白のイタリアンで友達が頼んだメニューのアントレは、フランス産野生のアスパラガス入りのサラダ。きっと南仏から届いたアスパラに違いないと思うと、頬がゆるみました。
 地中海沿岸が原産のアスパラは、プロヴァンス地方を初め、石灰質の荒地に自生していて、たけのこ掘りのように、野生のアスパラ積みを楽しむこともできるようです。かのルイ14世もアスパラガスが気に入って、ベルサイユ宮殿の庭でアスパラの栽培を命じたけれど、寒さと土壌に合わず全然収穫できなかったとか。でも、日本では長野や北海道など、寒冷地で栽培されていますね。
 秋にプロヴァンスの友達が紅葉を見たいと来日した時、スーパーのアスパラを見て「なんで今頃、アスパラが取れるの!?フランスでは、5月6月だけでおしまいなのに。」ってびっくりしたので、それまで、アスパラはほぼ一年中食べられるような気がしていた私は、思った以上にハウス栽培や輸入農作物に頼っている日本の現状を改めて自覚させられたものです。
 アビニョンのその友達のお宅では、今頃の季節、必ず新鮮で逞しいアスパラガスが食卓を飾ります。友達は、白いアスパラも青いのも、長いまま丁寧に皮をむいてから蒸し器で調理し、レモンとオリーブオイルだけで頂くのですが、それはとても柔らかくて、甘みがあって、いかにも春らしい味がしました。
  今が旬のアスパラは、アスパラギン酸、ルチン、カロチンやビタミンC、Eを含んでいて、体力回復だけでなく、高血圧や動脈硬化、貧血にも良いというから、なかなかの万能野菜ですね。もっとアスパラを見直して、旬のうちにたくさん食べて、免疫力をつけなくちゃ、と思うこの頃です。
[PR]
by cheznono | 2008-05-26 01:39 | フランスの四季

譜めくりの女

b0041912_0585768.jpg  おととい銀座で会った友達に「とてもフランス的な映画だから是非観て」と勧められたので、その帰りに「譜めくりの女」を滑り込み鑑賞して来ました。意外にもドウニ・デルクール監督は、京都滞在中に脚本を書き上げたため、かなり日本的な作品に仕上がったと語ってますね。果たして、どの辺がフランス的で、どこが日本的なのかを考えながら観ると、さらに面白い作品かも知れません。
 地方都市の肉屋の娘、メラニーはピアノの才能に恵まれ、音楽学校への入学試験に挑戦します。「もしも失敗したら、お金のかかるピアノの個人教授は諦めるから」と父親の負担を思いやり、子供ながら退路を断って強い意志で臨んだ実技試験の日、審査委員長である著名なピアニスト、アリアーヌ(地上5cmの恋のカトリーヌ・フロ)が見せた無造作な振る舞いに動揺したメラニーは、自信のあった演奏を中断してしまうのでした。
 ピアニストの夢を諦めたメラニーは、美しい娘に成長。売れっ子弁護士ジャンの法律事務所に研修生として採用されます。真面目な仕事ぶりで信頼を得たメラニーは、ジャンの出張中、その息子トリスタンの世話係として、一家の暮らすシャトーに住み込むことに。
 実は、弁護士ジャンの妻はメラニーの夢を破るきっかけを作ったあの人気ピアニスト、アリアーヌでした。ジャンは、交通事故の後遺症で精神的に不安定な妻を気遣い、自分の出張中、家族の世話役を引き受けてくれる人を捜していたのです。
 若く美しくクールなメラニーの登場は、優しい夫と裕福な生活を送って来たアリアーヌとその演奏仲間たちに微妙な影響と変化をもたらします。
 アリアーヌはピアノの譜面が読めるメラニーが気に入って、演奏時の譜めくりを頼むようになり、メラニーの音楽的センスの良さから加速度的に彼女への信頼を深めて行きます。一方でメラニーは、幼いトリスタンとも独特の方法で距離を縮め、二人だけの秘密を守らせるのに成功します。
 おとなしく清楚な外見の陰に気性の激しさを秘めるメラニーは、アリアーヌへの敬慕をその視線と動作だけでほのめかし、夫の庇護のもとにピアノの才能を培って来た世間知らずマダムのアリアーヌは、いつの間にか妙な気持ちに捕われてしまいます。
 口数こそ少ないけれど思わせぶりなメラニーに、アリアーヌの心はどんどん揺さぶられ、まるで思春期の少女のごとく、ますます敏感に不安定になって行くアリアーヌ。やがて、真綿でくるむように自分の計画を進めて来たメラニーがいよいよシャトーを去る日が来て。。。
 穏やかな田舎のシャトーの贅沢な暮らしに、一見違和感なく溶け込んで行く肉屋の娘メラニーが、わずかなセリフだけで、アリアーヌとトリスタンに見えない罠を仕掛けてゆくサスペンス的緊張感が魅力の映画です。
 一緒に生活している相手が自分を気に入ってくれても、情に流されることもなく、感情を抑制して、少しの動作とセリフで、相手を追い込んで行くメラニーの戦略は、とかく直情的、直接的なフランス女性が多い中で異質に見えます。日本びいきの監督が 、能など日本の伝統芸術から得たヒントは、もしかして、この遠回し的復讐方法だったとか?という思いが頭をかすめたのですが、監督が取り入れた日本的要素は間の取り方などにあるみたいですね。トリスタンが可愛がっている鶏の名前が《嫉妬》というのが、メラニーの気持ちを言い当てているようで、思わず苦笑いでした。
[PR]
by cheznono | 2008-05-19 01:02 | 映画

b0041912_134526.jpg 色鮮やかなカーネーションが並ぶ花屋さんの前を通ると、お母さんのいる人が羨ましくなる時期ですが、今はお花以外のプレゼントを贈る傾向が強いみたいですね。
 母の日にカーネーションを贈る習慣は、20世紀の初めにアメリカで始まり、フランスにもすぐに伝わって、母の日を祝い出したそうですが、実はナポレオンの発案だったという説もあります。輸入されたお祝いではなく、もともと自国の習慣だったと思いたいフランス気質がそう言わせるのかも。
 フランスの母の日は原則として5月の最終日曜日(暦によってたまに6月の第一日曜日)。1ヶ月以上前から、どのお店も大々的に母の日のプレゼント用キャンペーンを張っては派手に宣伝を仕掛けるので、その甲斐あってか、毎年かなりの売り上げが期待できるそうです。
 ニースから路線バス25番で北上したところにあるファリコンは、17世紀の教会や礼拝堂などが残り、ヴィクトリア女王が訪ねたという曰くのカフェもあるかわいい村。
 花の咲き乱れる村の一つに選ばれているこの鷲ノ巣村では、毎年3月にカーネーション祭りが開催されます。この時は村中がカーネーションで飾られ、一番きれいなブーケを選ぶコンテストもあるとか。
 眼下にニースの市街を見下ろすファリコンは、あっという間に歩き回れるような小さい村ですが、ここに通う観光客が絶えないのは、2つ星レストラン:パルクールがあることが大きいでしょう。エズのシェーブル・ドールで腕を磨いたシェフのお店で、残念ながら私たちは外から睨めただけですが、コースが50ユーロ前後で楽しめるようです。
[PR]
by cheznono | 2008-05-11 01:37 | フランスの四季

b0041912_183423.jpg  フランスでも絶賛された「ゼア・ウィル・ビー・ブラッド」。ダニエル・デイ・ルイスを観るのは「ギャングズ・オブ・ニューヨーク」以来ですが、石油亡者になり切った会心の演技は、鬼気迫るものがありました。これだけの俳優がイタリアで靴職人の修行をしていたというのも、デイ・ルイスらしい離れ業なのでしょうね。
 19世紀末、ゴールドラッシュ後のカリフォルニアで、黙々と一人、粗末な設備で採掘するプレインビュー。事故死した炭鉱仲間の赤ん坊H・Wを養子にしたプレインビューは、地下に石油が眠っているという情報を得て、周囲の荒れた土地を地上げしては買占め、本格的に石油を掘り始めます。
 人間不信の塊のようなプレインビューの拠り所は、石油と金。人を好きになったことがないという彼ですが、自分の右腕になりそうな人物を必要としていて、不器用ながら人間的な感情を滲ませる面も無きにしも非ず。
 一方、土地の持ち主の息子であるイーライ(ポール・ダノ)は、若く情熱的な聖職者で、荒涼とした町に教会を建て、地元住民への布教に力を注ぎます。
 プレインビューの掘り出した石油のお陰で、町には活気が戻りますが、イーライは当初プレインビューが約束した寄付を反故にされたため、だんだんと本性を表して来ます。村人の前では、狂信的なまでに神を崇拝する牧師に見えるイーライも、実は金と名誉欲にとり付かれていたのでした。
 キリスト教離れが進む欧州に対して、先進国の中で随一の信心深さを誇るアメリカ。国会すら大統領が聖書に手を置いて開会されるというピューリタニズムが、今も厳然と政治や社会に息づいています。その建前のピューリタニズムの裏側で、石油の利権を獲得するためには手段を選ばず、よその血がいくら流れても平気といった米国政府の姿勢が、この作品に投影されているようで、アンダーソン監督の力量を感じずにはいられません。
 人嫌いのプレインビューが、それでも相手に抱いた信頼や期待を裏切られた時に見せる残酷さ。神への忠誠を熱狂的に説きながら、自らの欲望に破滅する聖職者。一見、対照的に見えて、本質は同じ穴のムジナのような二人の確執が不気味な後味を残す作品です。
[PR]
by cheznono | 2008-05-04 18:06 | 映画

b0041912_1242454.jpgおととし、フランスで大ヒットした「モンテーニュ通りのカフェ」。東京ではスクリーンの小さい単館上映なのが残念ですが、ノリに乗っているセシル・ド・フランスやヴァレリー・ルメルシエを初め、豪華俳優陣による、いかにもフランス的というかパリらしい群像劇を堪能できる佳作です。
 優しい祖母(シュザンヌ・フロン)が若い頃に憧れた華やかなパリの生活。銀幕に憧れた祖母の夢はかなわなかったけど、その思いを胸に、パリに上京したジェシカは、シャンゼリゼに交差するモンテーニュ通りのカフェ・デ・テアトルに奇跡的に採用されます。
シックなエリアの劇場街にあるカフェは、セレブな俳優やアーティストたちのたまり場で、ジェシカの胸はときめきますが、やがて、有名人たちもそれぞれ仕事や私生活の悩みを抱えて、もがいていることがわかってきます。
 著名なピアニスト(地上5cmの恋のアルベール・デュポンテル)は、格式張ったコンサートにうんざりし、自分らしい自由なスタイルの演奏を望んでいますが、愛する妻は採算の合う格調高いコンサートにこだわっています。
 人気のTV女優(ヴァレリー・ルメルシエ)は、演技派として自分の力が発揮できるような芸術作品への出演を志望しているのに、元夫の演出家とは意見が合わず、いらついては当たり散らす毎日。 
 病に冒された美術収集家(クロード・ブラッスール)は、これまでに収集した美術品を全てオークションにかけようとしています。息子フレデリックとの確執に悩みながら、亡き妻との思い出の品まで出品しようとする収集家。
 私生活でも迷走しているフレデリックは、ジェシカに出会って、新しい未来が開かれるのを予感して。。
 名だたるカフェに採用されたジェシカが、登場人物を何となくつないで、それぞれが自らの希望を実現して行く構成が魅力的です。この映画を観た時は知らなかったのですが、私の大好きな名女優シュザンヌ・フロンが、撮影直後に亡くなったのは、とても残念です。この作品でもジェシカの祖母として、心にしみるセリフを幾つも語りかけてくれていますが、もう次回の出演はないのは淋しい限りです。
[PR]
by cheznono | 2008-05-01 01:26 | 映画