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b0041912_189279.jpg「庭師との対話」というベストセラー本を「ピエロの赤い鼻」のジャン・ベッケル監督が映画化した「画家と庭師とカンパーニュ」。フランスの田舎暮らしの美しい映像とともに、二人の男性の深い友情、そして庭師の生き様に目頭が熱くなる佳作です。
 絵描きとして成功した画家(ダニエル・オートイユ)ですが、度重なる浮気が元で妻に別れを告げられ、パリの生活にも疲れて、生まれ育った田舎の家に戻って静かな暮らしを送ることを決意します。長年ほおったかされた荒れ放題の庭の手入れに雇われた庭師は、画家の幼なじみ(ジャン・ピエール・ダルッサン)でした。
 画家は、ヌードモデルを前にするとつい口説いてしまうため、娘と同世代の若い愛人にはこと欠かないくせに、妻に離婚を突きつけられると多いに動揺。何とか妻に戻って来てもらおうと必死です。
 庭師は地道に働いて来た元国鉄職員。何より自然を愛し、日々草花を愛でながら妻と二人、つましく暮らしています。人気アーティストとして華やかなパリの生活を送って来た画家とは、経済的にも社会的にも好対照ですが、庭師は二人の違いを全く自然に受け止め、画家に問われるままとつとつと自らの人生観を語ります。
 一般的には教養も経験も上回っている筈の画家ですが、庭師の持つ価値観や哲学的な物の見方に、パリでの楽しく賑やかで、でもどこか表面的な生活とは対照的な素朴な人生の基本のようなものを感じ、一方で絵画芸術とは縁のなかった庭師は、画家から絵の魅力を教わります。
 低所得者住宅に住む庭師は、でも毎年ニースでヴァカンスを過ごしては、愛する妻が泳ぐ姿を眺めて満足するという彼ならではの休暇を毎年の楽しみにしていて、いつも同じヴァカンスというその忠実な繰り返しが、画家には新鮮に映ります。
 庭師の作ったオーガニック菜園で、自給自足の野菜を食べる楽しみを分かち合い、まるで少年時代に戻ったように釣りを楽しむ二人。でも、悲しいかな、二人の心温まる交流も、長くは続きませんでした。
 ちょっと浮ついた教養人が妻の愛情を取り戻そうとおろおろする姿は、ダニエル・オートイユお得意の役柄。そして、朴訥な庭師のジャン・ピエール・ダルッサンが、まるで小津安二郎の映画に出て来そうなひょうひょうとした人物像を、細部まで素晴らしく自然に演じていて、フランスの良心ここにありと言った印象です。庭師が折々に淡々と語る、どこか哲学的なセリフが、いつまでも胸にこだまして、切なく暖かい余韻を残してくれる作品です。
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by cheznono | 2008-07-31 18:22 | 映画

北イタリア秘境の滝

b0041912_21205555.jpg  コート・ダジュールにくらげが襲来して、カンヌやモナコを初めあちこちの海岸で注意を呼びかけています。発生しているピンク色のクラゲは、刺されると病院行きになるほどの毒性があるらしく、海岸沿いではクラゲよけの網を張るなどして防衛しています。
 その点、ロチェッタ・ネルヴィーナの水たまりは、クラゲに刺される心配もなく、
森林浴と水浴びを一度に楽しめて爽やか。ニースの砂利海岸で照りつける太陽のもと、潮風に吹かれるのが苦手な私には、やっぱりこうした内陸の秘境の方が楽しめます。
 この辺りでは以昔、山で村人がヤギや羊を放牧していたらしく、滝のさらに上流にはかつて羊飼いが通ったような細い道が山奥まで続いていました。
 ここまで来ると、レストランのメニューも地中海料理ではなく山の料理になって、特にウズラがおいしいのだとか。メニューに大好きなリゾットがないのはがっかりでしたが、代わりに大きなマスをたいらげてから、帰途につきました。
 さて、山を下って国境のヴァンテミリアで高速へ乗ろうとした所、巨大なトラックの群れが道をふさいでいて大渋滞。なかなか料金所にたどり着けません。フランス側は革命記念日の祝日だけど、イタリアは週明けの月曜だから長距離トラックが多いのかしら?しかし、トラックの数が異常に多い。
 のろのろとやっと料金所に到着したので、なんで大量のトラックが国境を越えるのかをドライバーにイタリア語で聞いてもらうと、係りのムッシュウは当然のように「フランスが革命記念日だからだよ」の意味不明な回答。
 革命記念日だとなぜフランスに向かうトラックが大量発生するのでしょう?何せやっと国境を通過し、フランス国内に戻ったものの、二車線ある高速の一車線は完全に巨大トラックがふさいでいて、その列はマントンは愚か、モナコを過ぎてチュルビーを通り、ニースの出口までずっと連なっていたのです。その数何千台。これだけ大量のトラックを見たのは、生まれて初めて。
 もう何年も、フランスはイタリア経由で入って来るブランド品の模造品に悩まされているため、国境では警備を厳重にしています。ルイ・ヴィトンやエルメスの酷似品が、イタリアの工場からフランスに逆流し、それがBRICSなどの新興国に安く流れて行くことで、国内の目玉の一つであるブランド産業が脅かされることに危機感が増しているから、国境警備隊は不法移民の入国と同様に、偽ブランド品の流入阻止に躍起になっています。
 しかし、革命記念日には警備隊も手薄になって、いちいち通関でトラックの積み荷をチェックすることもない筈。なので私の想像は、あの大量のトラックの中には、模造品やら関税の高い商品やらかんやら怪しげな物が詰まっていて、フランス側がお祭り気分で休息している間に、一気に運び込もうという魂胆では?というものですが、同行の友人達は私の説に全然納得してくれませんでした。
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by cheznono | 2008-07-25 21:23 | イタリア絵日誌

革命記念日のイタリア

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 昨日どうも病院前にパパラッチが増えたなと思ったら、アンジェリーナ・ジョリーが退院して行ったそうです。双子の赤ちゃんは、ニースの名誉市民だとか。在仏10年のモロッコ人の女性が、フランス生まれの子供も何人かいるのに、未だフランス国籍がもらえないというのに、ハリウッドスターがたまたまニースで出産した赤ちゃんは、生まれたとたん名誉市民だから、びっくりです。 
 革命記念日の祝日にニースにいてもしようがないから、イタリアに行こうと友達が言うので、先週は憧れの鷲ノ巣村ロッチェタ・ネルヴィーナに行ってきました。
 半壊したお城の残るドルチェ・アクアをさらに北上したところにあるロッチェタ・ネルヴィーナの奥には、知る人ぞ知る滝があるとかで、その滝の下で水浴びをするのが目的です。
 朝テレビでパリ祭の様子を観てから、雲一つないニースを出て、高速をイタリアへ。国境を越えると気温が一気に21℃に下がったので、涼しさを喜びながら、例によってヴァンテミリアの猫一族が住む海岸でピクニック。それから峠に入り、ドルチェ・アクアを通り過ぎて、いよいよロッチェタ・ネルヴィーナに到着です。
 川沿いに切りたった崖のように高くそびえる村が、青空に映えてまぶしいこと。その名の通り、大きな岩がごつごつとした地形を利用し、川辺の1階から数えると7階から8階にも及ぶ、まるで石造りのアパルトマンのような構造のロッチェタ・ネルヴィーナ。その姿に、外敵から身を守るために工夫して村を作りあげた中世の人々の心意気と苦労を思わずにいられません。
 さて、肝心の滝を探すため、村の地図に「湖」とある川の上流を目指して、岩のごつごつとした川沿いの狭い山道を上って行くと、次第に川の流れが岩でとぎれとぎれになって、大きな水たまり、つまりミニ湖が点々とつながっているような地形になって来ました。水は驚くほど澄んだエメラルド色。欧州一水が澄んでいるというアヌシー湖に負けず劣らずの澄み方です。
 つま先を水に浸すと、ぴりっと冷たいけれど、大きな岩をよじ上っては、スッポンポンで水たまりに飛び込む若者達は楽しげに泳いでいます。こんな秘境に入って来る人は少ないから、地元のイタリア人が遊んでいるのかと思ったら、意外に飛び交う言葉はドイツ語やスカンジナビア系でした。聞けば、アクア・ドルチェ辺りは、ドイツ人の別荘が多いのだとか。北イタリアのこんな峠の奥も、太陽を求めて南下する北ヨーロッパ人の間では、もうかなり前から人気だったのですね。 
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by cheznono | 2008-07-21 01:28 | イタリア絵日誌

マセナ美術館

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 この春、就任した新しいニース市長は、今や《カーラ・ブルー二の夫》に過ぎないと言われるほど不人気のサルコジ大統領と大の仲良し。だから、政策的には期待できないという声の中、意外にニース市民や観光客のため、なかなかオツな改革を進めています。
 まず市長当選御礼にトラムとバスを一律1ユーロに値下げ。今月からはニース市運営の美術館が全て無料になりました。これは、パリ市立の美樹館を無料にしたドラノエ市長に倣ったのでしょう。(ニース市長はもちろん右派で、ドラノエさんは左派ですが。)
 ニース市主催の無料コンサートも新市長が市会議員時代に始めたもの。新市長は生粋のニースっ子だからか、市の文化的な改善に積極的なのは羨ましいです。
 
 19世紀の終わりに着工されたマセナ邸は、ネグレスコの横に立つ、イタリアのヴィラ風のなかなか優雅な建物。第1次大戦後にマセナ美術館となり、見応えのある展示品が詰まっていると聞いていましたが、ずっと工事中で閉鎖されていました。
 それが、7年間ものやたら長い改築工事を経てやっと再開され、しかも無料なので、暑い中見学に行ってきました。
 さて、中に入ってびっくり。古き良き時代を彷彿とさせるきらびやかなサロンにナポレオン由来の絵画が展示されていて、雑然とした街からすると別世界に紛れ込んだよう。世界の大金持ちのヴィラが並ぶサン・ジャン・カップ・フェラの邸宅に共通するような雰囲気です。
 上階にはニース市の歴史に由来する絵や調度品、将軍ガリバルディにまつわる展示品が豊富で、イギリスやロシアの貴族がそぞろ歩いたベルエポックや第二次大戦にドイツ軍に破壊される以前の美しかったプロムナード・デザングレが偲ばれる絵が楽しめます。
 ニースのカーニバルも、かつてはヴェネチアのカーニバルに似ていたというのも新鮮な発見でした。いつから今のハリボテ人形のお祭りに変わってしまったのでしょう?
 海を前にした美術館の庭は、庶民の憩いの場になっていて、今の季節、蚊の心配さえなければ、木陰で涼むに絶好の場所のよう。プロムナード・デザングレ(イギリス人の散歩道)に面しているせいか、イングリッシュ・ガーデン調の設計らしいですが、ヤシの大木の揺れるイングリッシュ・ガーデンなんてアリかしら?
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by cheznono | 2008-07-14 02:48 | コート・ダジュール散歩

ニースのミラベル

b0041912_202975.jpg  アンジェリーナ・ジョリーが双子の出産のため、ニースのランバル病院に入院し、ブラッド・ピットも参上と話題になっています。お隣りのヴァール県に別荘を買ったブラピー夫妻は、カンヌ映画祭の時に、ニースで出産する手はずを整えたとか。
 ハリウッドスターの病室は、プロムナード・デザングレに面した海を見下ろせる一番デラックスな部屋だそうで、毎日のようにランバル病院の前を通る私は興味津々なのですが、病院前は特にマスコミが張っている様子もなく、ましてブラピーの姿なんて全く見かけません。
 それもそのはず、彼らはヘリコプターで病院の屋上に乗り付けたとかで、下の入り口が平常なのは当然なのかも?
 
 暑さ負けしないようにと、この所、梅の代用品としてミラベルの酢漬けを食べています。実は、グラースの香水の老舗モリナールが出しているミラベルの香りを知って以来ずっと、ミラベルって何?って思っていました。桃の香りを彷彿とさせる甘いフルーツの香りは、いったいどういう植物から摂れるのかしら?とイメージを膨らませてから数年後、ニースのアパルトマンの庭でミラベルの木を発見した時は、とても嬉しかったです。
 小さい黄色い実をたわわに付けるミラベルは、プルーンやプラムの一種で、各種ビタミンやペクチン、繊維などが豊富。摘みたてのミラベルは甘やかで、結構あっさりした口当たり。私は面倒くさがりなので、そのまま食べるか、数週間お酢につけて梅ジュースのようにするくらいですが、ジャムに煮詰めて、お菓子に使うのが一般的なようです。お酒との相性も良く、ブランデーや白ワイン(ミュスカデ)につけ込むと、フルーティーで香り高い果実酒ができあがり、夏に冷やして飲むにはぴったり。
 本来、アルザス地方の産物として知られるミラベルですが、中国に自生していたのが
巡り巡って、十字軍が15世紀にフランスに持ち帰ったのが根付いたそうで、今ではすっかり北フランスの特産物に。メッスを初め、アルザス付近では毎夏ミラベル祭りが開催されています。
 アルザス特産と言われても、暑いニースでほおっておいても毎年びっしり実をつける
ミラベルだから、日本でも簡単に栽培できそうなのに、全く見かけないのは残念です。それとも、寒冷地では栽培されているのでしょうか?
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by cheznono | 2008-07-09 02:12 | フランスの四季

サガン

b0041912_22151856.jpg 日曜から3日間、待ちわびたシネマ祭りが開催され、計6本の映画を観て来ました。これは、最初に通常料金で映画券を買うと次回からはどの映画も2ユーロで観られるというお祭りで、レンタルビデオ並みの料金でロードショーを楽しめる大チャンス。ニースは映画館の入りが悪いらしく、一部の館では4日間に延長してくれたのに、今年はあいにく心そそられる作品が少なくて、ちょっと残念でした。
 初日はあまりの暑さにひるんで、やっと出かける気になったのが夕方。まあシネマで涼もうと、入口の長い列に並んでいたら、係りの人が出て来て、「エアコンが壊れちゃいました。中は結構暑いけどご了承の上、券を買って下さい。その代わり割引き料金で提供します」とのこと。涼みに来たつもりがエアコンなしの館内で、しかも友達が絶賛した映画は、イスラエル軍によるレバノンでの虐殺がテーマだったため、何とも重ーい映画祭りの出だしとなってしまいました。

 翌日、仕切り直しに観た作品の一つが、シルビー・テスチュ(ピアフの映画で親友を演じた女優)のそっくりぶりが話題の映画「サガン」。スキャンダラスと言われた彼女の生涯を知る良い機会です。
 18歳で「悲しみよこんにちわ」を発表し、一躍時代の寵児となったフランソワーズ・サガン。裕福な家庭に育ち、父や兄に溺愛され、小説の成功でフランスでもアメリカでもちやほやされ、取り巻きに囲まれてパーティに酔い、スポーツカーを乗り回した若い作家は、大交通事故を起こして九死に一生を得ます。
 23歳で結婚し、カジノで当てた大金でノルマンディーに屋敷を購入。でも結婚生活は短く終わり、その後再婚したアメリカ人との間に男の子が誕生。発表する作品は売れ、恵まれた人生のように見えますが、仲間と面白おかしく騒ぐことが好きな反面、シャイで繊細、神経質なサガンは、常に強い孤独感と戦っていました。
 車のスピード感や賭け事、パーティ、アルコール、子育て。それでも拭えない孤独感に苛まれ、やがてコカインに手を染めるサガン。去って行く取り巻きは追わず、気の合う女性を見つけては共同生活を送ります。
 才気に満ち成功に酔うお茶目な若い女から、ドラッグと孤独感で言動もアグレッシブになり、一人息子も遠ざけて、心身ともに病んで行く人生後半の対照的な姿をシルビー・テスチュが全身全霊で演じていて、見ごとです。折々にナレーションで入るサガンの自分を客観的に見つめるエスプリの利いた文章にも心を打たれました。
 日本もサガンのファンが多い国だから、日本公開もそう遠くないのではないでしょうか?
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by cheznono | 2008-07-03 22:23 | 映画