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伯父を送る

 80を超えていたとはいえ、いつも健康そうで、顔の色つやも良く、二人の弟達よりも長生きするに違いないと言われていた伯父が、突然病魔に襲われて半年余り。先週末、他界してしまい、納棺の儀と告別式のため、日野まで二往復して来ました。
 年に一度くらいしか会う機会がなかったけれど、私たちには常に穏やかで優しかった伯父を送るのは、とても悲しい経験でした。祖父母がもうけた5人の子のうち、残るは父と叔父だけ、とにかく二人には97歳で逝った祖母を超えるくらい長生きしてほしいものです。
 伯父が喉に違和感を覚えたのは今年の2月初旬。行きつけの市民病院での診断は気管支炎でしたが、薬を飲んでも一向に良くならずに痩せて来たので、CTを取ったけれど、異常なしと言われたそうです。
 しかし、喉に魚の骨が刺さったような痛みが続くため、大学病院で組織を取って再検査。その結果、咽喉がんの一種である中咽頭がんと判明したのは3月になってからで、それから、通院で放射線治療が始まりました。
 咽頭がんはフランス、イタリア、ロシアやインド、東南アジアに多い病気で、日本では比較的まれな癌だそうです。発病は圧倒的に男性に多く、長年の酒や喫煙、熱過ぎるお茶などによる喉の刺激が原因ではないかと推測されています。伯父は30年以上前に煙草をやめていますが、お酒は大好きで強い方でした。
 伯父は放射線治療を3ヶ月続けましたが、6月のある朝、喉からコップ一杯もの出血。大学病院にて緊急手術に。でも、担当医は喉の癌を取り切らずに、悪い部分を40%残したため、伯父の状態は極めて不安定なものとなってしまったのです。
 喉の手術後は、話すことも食べることもできなくなってしまった伯父。歩くことはできたけれど、話は筆談で、食事は胃から流動食を流し込むという入院生活を余儀なくされました。
 術後、いったん病状が落ち着くとすぐに大学病院は追い出され、療養系の病院に転院。そこで、復院長先生から、転移はしていないけれど今度喉から大量に出血したら危ないので、覚悟をするように、と言い渡された父と末弟はがっくり肩を落として、この世に神も仏もいないとため息をつくばかりでした。  
 お見舞いに行っても、病室で一人しょんぼりしている伯父を励まそうにも言葉につまる私たちでしたが、伯父は私たちを心配させまいとか、弱音を吐くことも愚痴をこぼすこともなく、病気と闘う前向きの姿勢を見せてくれました。
 病院の庭に出て、花壇をゆっくり散歩したりしていた伯父の容態が急変したのは先週末。危篤の電話で父が駆けつけた時はまだ意識があって、何か言いたそうに筆談を試みたけれど、もう字にはならなかったそうです。7ヶ月余りの闘病の末に、伯父は永眠しました。僕は自然に還ります、という言葉を残して。
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by cheznono | 2009-10-29 13:24 | いつもの暮らし

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 「空港で荷物にご用心で」でフランスの防犯対策担当者がスーツケースや旅行鞄の名前タグも要注意と言っていた旨を書いたら、仕事で世界中を飛び回っているロンドンの友達から、少なくともフタのある荷物タグを使用すべきというアドヴァイスを貰いました。
以下のようなカバー付き名前タグなら、他人が簡単にトランクの住所氏名を見ることができないかも。
http://www.flotoimports.com/LuggageTag.html

 その昔、私が某電話会社に就職した頃は、国際電話用のカードの全盛期でしたが、他人のカード番号を不正使用する輩が続出して、対応に苦慮した時代があります。この場合のカードはNTTのテレフォンカードのような差し込み式ではなく、クレジットカード方式で、オペレーターにカード番号を告げるか、自分でカード番号を入力してから電話をかけるというもの。
 当時、特に米国系の電話カードの番号が不正使用の的になっていましたが、どうやってカード番号が他人に漏れるかというと、持ち主が公衆電話を利用する時、手元にカードを用意して番号を見ながら電話をするため、望遠鏡でカード番号を盗み読むグループがいるらしいという噂がまことしやかに流れたものでした。
 だとしたら、スーツケースの名前札も望遠鏡で盗み読みされる可能性が無きにしもあらず?早速、カバー付きの名前タグを買わなくちゃという気になりますね。とはいえ、日本の住所を書いた名前タグなら欧州で読み取られた所で、旅行中の留守宅が空き巣に合う可能性はまずないでしょうが、詐欺もひったくりも国際化、かつ組織化時代。用心に越したことはないかも。

 成田で他人のトランクを間違えて持って来てしまったイタリア人のような事故を防ぐためには、
http://www.zoombits.co.uk/travel-accessories/luggage-straps/glo-luggage-id-(glo-pink)/13803
のようなカラフルな荷物タグがお勧めだそうです。しかも、これは分解しないと中身の住所が見えないのだとか。

 それにしても、前原大臣の羽田ハブ空港構想には大いに期待しています。以前、アビニョンにいた時に知りあったニーム在住のイギリス紳士は、かつてビジネスマンとしてアジアへの出張の多い生活を送っていたそうですが、「日本には懲りたよ」と言ってました。
 聞けば、東京に出張した時、成田に到着したらいつもの癖で、空港からタクシーに乗って都内のホテルを目指したとか。「しかし、高速を行けども行けども目的地に着かない。やっと丸の内のホテルに着いた時には、メーターの数字に目を剥いてしまった。用意してた日本円では足りないので、慌てて両替に走ったよ。」以来、二度と東京には行かないようにしていると聞いて、苦笑い。
 日本を訪れた外国の友人知人は、口を揃えて空港の遠さと都内への交通費の高さをぼやくから、visit Japanを活気づけるためにも空港の利便性が求められると思うのです。 
 写真はニース・コートダジュール空港。
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by cheznono | 2009-10-18 01:30 | いつもの暮らし

b0041912_1401313.jpg 小さな劇場の再生に奮闘する裏方たちを描いた、心温まる半ミュージカル映画「幸せはシャンソニア劇場から」。「コーラス」の制作チームによるこのヒット作がフランスで公開されたのは、リーマンショックの真っただ中。不況、閉鎖、失業、ストライキなど、身につまされるような時代状況の中で、仲間との連帯と再生を描いたこの作品に元気を貰って、見終わった後は思い切り歌いたくなったり、踊りたくなったりしたフランス人も少なくなかったようです。

 1936年、パリの下町のミュージックホール:シャンソニア劇場が、おりからの世界不況のあおりで閉鎖に追い込まれます。劇場は地域を仕切るボスに差し押さえられ、ベテラン裏方のピゴワル(ジェラール・ジュノ)と組合活動家気取りのミルー、そして芸人のジャッキー(カド・メラッド)は失業。特にピゴワルは浮気な妻にも逃げられ、失業者に養育の資格なしと愛する息子ジョジョも取り上げられて、途方に暮れてしまいます。
 息子を取り戻したいピゴワルは、失業状態から抜け出そうと一念発起して、劇場を差し押さえた地元のボス:ギャラピアに掛け合い、劇場仲間のミルーとジャッキーとも力を合わせて、ミュージックホールの再建へと奔走。
 そんな時、亡き母の縁故を頼って現れた田舎娘ドゥース(ノラ・アルネゼデール)の若い魅力に、ギャラピアとミルーはぞっこんです。
 美人で歌えるドゥースの登場で、劇場はかつてのにぎわいを取り戻せるかのように思いきや、またもや劇場は危急存亡の危機に直面してしまいます。歌手として自信をつけたドゥースが更なるステップを求めて、あっさり劇場を出て行ったからでした。
 しかし、劇場脇で20年も引きこもり、ジョジョにアコーディオンの手ほどきをしたくらいで、世間からは遠ざかっていたラジオ男と呼ばれる紳士が、雷に打たれたかのように突然立ち上がり、歌姫ドゥースを探しに旅立ちます。なぜ、何のために?その昔、劇場の指揮者で才能ある作曲家でもあったラジオ男の恋の記憶が、ドゥースを再び下町の劇場へと向かわせるのですが。。

 仲間との連帯に下町の人情、そして、いかにも往年のシャンソン風のメロディや「海に行こう」などの楽しいミュージカル場面に浮き浮きさせられますが、その合間には常に暗い社会状況が重要な要素として織り込まれます。
 当時のフランスは、大不況下で左派の新政権が生まれ、労働者が結集して組合的な活動に目覚めたという変換の時期。でも一方で、隣国ドイツのヒットラー政権やイタリアのファシズムの影響で、右翼の台頭も目立ち出し、第二次大戦が目前でした。そんな不穏な空気の中、こうした小劇場の存在は、パリの庶民につかの間のエンターテイメントと希望を与えてくれたに違いありません。
 映画ではどこまでも人のよいピゴワルやジャッキーにこれでもかと辛い体験や運命を強いますが、ラストは救いを用意してくれているので、ハッピーな気持ちで映画館を出ることができます。
 しかし、こそばゆい邦題はいかがなものか?降りかかる苦難を乗り越え、皆で力を合わせて、下町の小劇場を生まれ変わらせたのだから、やっぱり原題の「フォーブール36」(新劇場名)を生かしてほしかったのに。因みに、ここでのfaubourgは下町、場末などの意味で、モンマルトルを彷彿とさせますが、エッフェル塔まで見える設定から、架空の場所とわかります。かのブランド地区サントノレ通り(フォーブール・サントノレ)の場合はサントノレ街通りという感じでしょうか。
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by cheznono | 2009-10-06 01:41 | 映画