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b0041912_23262018.jpg かの名作「輝ける青春」で影のある弟を演じて印象的だったアレッシオ・ボーニが破天荒の画家カラヴァッジョに扮し、才能あふれるアーティストの生涯を熱演している「カラヴァッジョ/天才画家の光と影」。ちょっと中だるみはあるものの、とても見応えのある作品です。

 16世紀後半、ミラノで画家の修行をしていたカラヴァッジョは、法王のお膝元ローマにやって来ます。
 子供の時から憧れていたコロンナ侯爵夫人のお陰で、デル・モンテ枢機卿の庇護を受けることになったカラヴァッジョは、教会の宗教画を任され、めきめきと頭角を現して行きます。
 独特な光と影のコントラストとリアリズムあふれるその画風は、人々を感嘆したり唖然とさせたり。ライバル画家はモデルを使うカラヴァッジョの手法を邪道だと批判しますが、本人は意に介しません。
 作品が高く評価される一方、酒に娼婦、バイセクシャル、そして喧嘩早い激しい気性と無軌道な私生活のせいで、しょっちゅう周囲との摩擦を起こしてしまうカラヴァッジョ。
 法王庁から依頼された聖母の絵を、普通の庶民をモデルに写実的に描いたために教会の反発を買い、しかも決闘騒ぎを起こして相手を刺し殺してしまったが故にお尋ね者となったカラヴァッジョは、ほうほうのていでマルタ島に逃亡。
 コロンナ侯爵夫人の息子の支援で、マルタ騎士団に迎えられたカラヴァッジョは、マルタで描いた絵も絶賛され、つかの間の平穏を得るのですが、ここでも挑発に乗って問題を起こしてしまい、マルタ島脱出を余儀なくされるのでした。

 今年はカラヴァッジョの没後400年。カラヴァッジョの絵は有名でも、画家自身については全く知識のなかった私には、これ 1本でカラヴァッジョの栄光と不遇の38年の人生を知ることができた充実の歴史ドラマです。
  故郷のカラヴァッジョ村からミラノ、そしてローマ、ナポリ、マルタ、シチリアと、流れて行ったカラヴァッジョは、流浪の画家とも言われ、絵画の報酬が入ると放蕩三昧に走り、激情的な性格も災いして敵も多かったとか。
 この映画は、無軌道な生活と生み出される作品の芸術性との対比をわかり易く際立たせています。
 そして、三人の女性:侯爵夫人(エレナ・ソフィア・リッチ)と娼婦フィリデ(クレール・ケーム)、聖母のモデルとなった恋人レナと画家で同性愛の相手であるマリオ(パオロ・ブリグリア)という、カラヴァッジョが愛した4人が、それぞれ自分の身を危険にさらしてもカラヴァッジョを助けようと努力する点が印象的です。

 本国イタリアやフランスではテレビ用シネマとして製作された作品ですが、カラヴァッジョの名作が仕上がるまでを丁寧に描き、ロケもふんだんに使って当時の様子を再現しているので、まるで本当に16世紀のイタリアの生活を観ているような気分になりました。
 でもやっぱり映画は楽しい方が良いという面々には「モリエール:恋こそ喜劇」の方がお勧めかも。こちらは歴史ドラマというよりも喜劇の要素が強いので、それほど入り込めなかったけど、ラストはじーんと来て、余韻が残りました。 
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by cheznono | 2010-03-31 23:26 | 映画

すべて彼女のために

b0041912_0255160.jpg  この所、出演する映画が次々に高く評価されているヴァンサン・ランドン主演の「すべて彼女のために」。「ジョボーダンの獣」辺りからフランスシネマ界で流行っているフランス映画の精神とハリウッド的エンターテイメントをブレンドした作品の中でもこれは出色の出来なので、帰国したらこの映画が公開されていたのがとても嬉しかったです。

 高校教師の夫ジュリアン(ヴァンサン・ランドン)と幼い息子と幸せな家庭を築いていたリザ(ダイアン・クルーガー)がある日突然、逮捕されます。勤務先で彼女が上司と口論した日、職場の地下駐車場で上司が殺害され、たまたま居合わせたリザが犯人だと疑われたのでした。
 愛する妻の無実を信じるジュリアンは、男手ひとつで子供を育てながら、リザの釈放に尽力しますが、状況証拠からリザの有罪が確定。弁護士の努力もむなしく20年の禁固刑が言い渡されます。もともと持病を持っているリザは、絶望から精神不安定となり、ついに刑務所内で自殺未遂を図るほどに。
 リザが生きる希望をなくしてしまったことに動揺したジュリアンは、「脱獄人生」という自叙伝を執筆した脱獄の達人(オリヴィエ・マーシャル)に接触、脱獄の極意を伝授してもらいます。
 脱獄王のアドヴァイスに従い、偽造パスポートを用意して、命がけで多額の費用を手に入れるジュリアン。しかし、いくら脱獄が絶えないフランスとはいえ、実際の脱獄はたいていグループによる組織的な支援の賜物です。果たしてジュリアン単身で、最新構造の刑務所からリザを脱獄させ、無事に逃走することができるのでしょうか?

  後半は少し荒っぽい手口が続くものの、覚悟を決めたジュリアンが、目的達成のために裏社会と取引し、とりつかれたように表情が険しくなってゆく様子を演じるヴァンサン・ランドンは、さすがという感じ。サスペンスとしても一級の面白さだと思います。
 長編映画デビュー作とは思えないフレッド・カヴァイエ監督の手腕にはただただ感嘆するのみ。リザとジュリアンが熱々カップルだったこと、リザがなぜ逮捕されたか、実際にはどういう事件だったのか、などの大事なプロットをわずかなカットを挿入するだけで明確にしてゆく手法が実にうまいです。
 
 この映画を観て、最愛の家族が思いもかけない冤罪で投獄された時、いったい自分にどういう行動ができるか?を真剣に自問したフランス人も多かったとか。
 ただ、すべて彼女のために、という邦題の「すべて」には、ちと引っかかるものが。確かに原題は「Pour elle :彼女のために」だけど、中盤でジュリアンが呟くように《自分にも息子にもリザが必要》だから、また家族三人一緒になりたいがために全身全霊をつぎ込んで一世一代の賭けに出るわけで、それを「すべて彼女のために」とすると、必要以上に甘いニュアンスが加わって、全編に漂うキリッとしたリズムや緊張感が少しそがれるように感じられるのです。
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by cheznono | 2010-03-25 00:33 | 映画

誤認逮捕の顛末

b0041912_17397.jpg バンジーが警察に捕まったらしい、と大家さんから聞いた時、「おお、ついに?」と思った私。なぜなら、彼は敷地内のガーデニング用品やガレージに置かれた資材などを無断拝借することで知られ、バンジーが通ると物が消えると囁かれていたのです。
 私の予約していたアパルトマンを昨年末に不法占拠した輩を手引きしたのも、実はバンジーではないかと疑われていました。
 ハンガリー人の平均月収は約500ユーロ(約62500円)と言われ、フランス人の平均の三分の一以下、加えて経済危機が追い打ちをかけているので、ニースにもハンガリーを初め東欧からの流入者が目立ちます。
 フランスに出稼ぎに来て2年余りになる23歳のバンジー君もその一人。ちょっとモラルには欠ける彼だけど、まさか他所で悪さするとは思えないのに、警察に捕まったとは!?
 そんなバンジー君ですが、飼い主に虐待されていた大型犬ロットワイラーを自分で引き取ったり、ネズミ獲り用に飼った子猫を溺愛するような優しい心の持ち主でもあるのです。

 しかし、よく聞いてみたら、バス停にいたバンジーの年格好が押し込み強盗未遂犯に似ていたというだけで、彼が警察にしょっぴかれたことが判明。まずいことにバンジー君はまだ仏語がイマイチのため、警察官とのやり取りもツーカーとは行かなかった模様です。
 しかも、警察に通報したヴィラのマダムにバンジーを見せたところ、「そう、この人だと思うわ!うちに押し入ろうとしたのは」と証言したため、ニース警察は気合を入れてバンジーを取り調べたのでした。バンジー、ピンチです。
 たまたま身分証明書を携帯していなかっただけで、なぜ自分が強盗未遂犯に仕立てられているのか、全く事情が飲み込めないまま、署で質問攻め合ったバンジー君、「殴られこそしなかったけど、警官の取り調べ方はものすごく乱暴だった!僕の携帯電話も床に叩きつけられたし」と後でぼやいていました。

 そして、家宅捜査状もないのに、警察官は彼の住まいを強制捜査。身分証明書は無事出て来たものの、身に覚えのない罪を被せられたバンジー君、強制捜査には内心ヒヤヒヤだったとか。  
 というのは、彼は夜勤が多くて不眠症ぎみのため、睡眠導入剤の代わりに寝る前にマリファナを吸う習慣があったというのです。フランスではマリファナは簡単に手が入るため、吸っている若者は多いようですが、非合法には違いありません。
 不幸中の幸いか、警察はベッド脇のマリファナには目もくれず、盗難品らしき物も発見できずに虚しく家宅捜査を終了。またバンジーを連れて署に戻った所に、くだんのマダムの夫から電話が入り、強盗未遂犯の仏語には訛りがなくて、バンジー君ではあり得ないことが判明しました。

 捕まってから半日後、晴れて無罪放免となったバンジー君。もちろん、ニース警察からは謝罪のひと言もありませんでした。やれやれ。
 それを聞いた大家さん、「なぜバンジーは弁護士を立てると言わなかったのかな?家宅捜査状もなしに自宅の強制捜査なんて、警察権力の横暴だよ。しかし、君も身分証明書は携帯してないとダメだよ、何があるかわからないからね」と私も釘を刺されました。

 何ともお粗末なニース警察の誤認逮捕劇。でも、現大統領になってからの外国人労働者の締め付けは厳しくなるばかり。日本人旅行者だから平気、と思っていても、日本人のフランス滞在は3ヶ月以内ならヴィザ不要であることを知っている警察官は稀というのが現状です。
 なので、フランス滞在中はやはりパスポートを常に身につけていた方が無難かも知れません。因みに隣のイタリアは、あまりにスリが多いので、パスポートのコピーがあればOKと聞いています。
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by cheznono | 2010-03-16 01:17 | 不思議の国フランス

ニースは安全か?

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  イタリア国境に近く、観光客も多いことから、決して治安が良いとは言えないニースやカンヌの犯罪率が、不況下にもかかわらず2009年はぐっと下がったとの警察発表がありました。フランスの大都市の中で、際立って犯罪が減ったのはニースだけ、とニース市は自らの治安対策と警察官の有能ぶりをアピール。でも果たして実態は、どんなものでしょうか?
 犯罪と言っても血生臭い事件は稀で、多いのはスリ、泥棒、空き巣、押し込み強盗の類。特に目立っていた路上に駐車中の二輪車や車の盗難がカンヌでかなり減少、ニースでも放火される車は大幅に減ったとか。
 車が放火?なんて恐ろしい街、という感じですが、さすがにニースの街中で車が燃えているというわけではなくて、被害は主にニース郊外の要注意地域に偏っています。
 路上の盗難が減った理由は、お巡りさんが増えたのとビデオカメラの設置が進んだから。とはいえ、ニースだけで一年間で2000台近いバイクと1000台余りの車が盗まれ、しかも空き巣と押し込み強盗は増加傾向で、昨年度ニースとカンヌで泥棒に《訪問》された世帯は4000件に上ります。

 そんな中、1月の末、ニースの我が滞在先から遠くない丘の上にあるヴィラに泥棒が入ったと警察に通報がありました。駆けつけたパトカーに、ヴィラのマダムが、「私たちが気づいたから何も盗られなかったけど、怖いわ。」と言うので、事情聴取をした警察官、犯人はどんな男でした?「そうね、白人の若い男で、身長が180cm位あったわ」そうですか、マダム、では犯人を探してみましょう。
 いくらラテン系で小柄な人が多い南仏と言っても、一応ヨーロッパなので、180cm位で若い白人なんてゴロゴロいるのに、警察はそれだけの情報を得て満足したのか、パトカーを転がしてヴィラ付近の探索を始めまたのです。

 その頃、いつもはスクーターで職場に向かう我らが隣人のハンガリー出身のバンジー君が、なぜかその日、一人ぽつんとバスを待っていました。そこへ通りかかったパトカー、バンジー君を見て、「おい、あいつの身長180cm位じゃないか?」と顔を見合わせたお巡りさん達、早速バンジーに近寄って、身分証明書の提示を要求したそうです。
 あいにく身分証明書を自宅に置いて外出したバンジー君、弁明しても警察官は有無を言わさず、署に来るようにとパトカーに誘導。バンジーは素直に警察署に連れて行かれたのでした。バンジーの運命はいかに? つづく
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by cheznono | 2010-03-13 01:15 | 不思議の国フランス

b0041912_13449.jpg  うかうかしていたら、もうホワイトデーまで1週間となってしまい、バレンタインの話なんて気が抜けたシャンパンみたいですが、今年のバレンタインは珍しく日曜日だったせいか、例年以上に男女を問わず赤いバラの花束やケーキの箱を抱えた人を見かけました。私は14日の午後はイタリアに出かけましたが、イタリアではレストランでも意外に家族連れやグループが多くて、ニースの方が花やお菓子の箱を持った人が目立ったのは、やっぱりアムールの国フランスだからでしょうか?
 とはいえ、かつてはカップル至上主義だったフランスも、現在《特定の相手がいない人》は1500万人。フランスの人口は日本の半分で、子供は日本よりずっと多い国だから、この数字は案外高めです。
 そこで、ここ数年、バレンタインが近づくとメディアに引っ張りだこになるのが、フランス初のプロのラブコーチ、フローランス・エスカラヴァージュさん。彼女はいわゆる恋愛相談師を目指してアメリカに渡り、既にラブコーチが職業として普通に市民権を得ている(らしい)米国で修行をした後に、帰国。
 その後、恋愛関係についての本を出したり、アドヴァイスのビデオを販売したりして、恋に悩める男女や、カップル生活に問題の生じたフランス人のメンターとして活躍しています。
 そのフローランスさん曰く、女性が男性を夢中にさせるコツとは、自信を持って(これが肝心)長所や自分らしさをアピールすること。加えて、女性らしさを伴った自立と自主性が大切とか。彼女自身は理解あるパートナーと10年間余りうまくやっているそうです。
 
 因みにニースを初めアルプ・マリティーム県では3月14日までラブレター、または愛の詩を募集中。特定の相手に宛てたものから、イメージを膨らませて創作したものまで、期間中この地方にいて、渾身の愛の手紙や詩を仏語で書いた人は、県内のあちこちに設置された愛の郵便箱に投函してみて下さいね。
 写真は、アーティストと高校生達のコラボによって完成した愛の郵便箱。この中に投函された手紙は、来週末から21日まで開催されるポエト・ポエトのお祭りで読み上げられたり、地元のラジオで取り上げられたりするようです。
詳細はhttp://www.unepetitevoixmadit.com/actualites.html
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by cheznono | 2010-03-07 01:10 | フランスの四季