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華麗なるアリバイ

b0041912_154747.jpg 第二次大戦直後の1946年にアガサ・クリスティが発表した「ホロー荘の殺人」を、舞台をフランスの現代に移して映画化した「華麗なるアリバイ」。高校時代に読んだクリスティの原作は、幸い?全く忘れてしまったので、新鮮な気持ちで観て来ました。
 パスカル・ボニゼール監督が原作に登場したエルキュール・ポワロを排除した劇場版のシナリオを採用したのは正解ですね。お陰でミステリーの女王の代表作臭さが消え、ちょっと軽めのフレンチ・サスペンスとして楽しめます。

 上院議員夫妻のアンリ(ピエール・アルディティ)とエリアーヌ(ミュウミュウ)が田舎の屋敷に招いた客9人。売れっ子精神科医のピエール(ランベール・ウィルソン)と妻クレール(アンヌ・コンシニ)、彫刻家でピエールの愛人のエステル(ヴァレリア・ブルーニ=テデスキ)、エステルに横恋慕しているアル中の作家フィリップ(マチュー・ドウミ)、フィリップを慕う靴屋勤務のマルト。
 そこへイタリア人女優のレア(カテリーナ・ムリーノ)が加わったことで、表面的には和やかだったホームパーティに緊張が走ります。かつてピエールと恋愛関係にあったことを露骨にほのめかすレアに、妻クレールも愛人エステルも気が気ではありません。
 思いがけず再会したレアに誘われるまま、熱い一夜を過ごしたピエールは、翌日、プールサイドで撃たれ、傍らにはリボルバーを手にしてクレールが震えていました。瀕死のピエールに呼びかけていたエステルは、ピエールがこと切れると、なぜかクレールの手から銃を払い落とし、凶器はプールの中へ。
 すぐに警察に拘束されたクレールですが、彼女が握っていたリボルバーからは発砲されていなかったことが証明されて、無事釈放されます。二人の子供をもうけながら、浮気者のピエールに悩まされて来たかわいそうなクレールにエリアーヌは同情しますが、実は彼女自身も昔ピエールと関係を持った過去があり、夫アンリは全てを知りながら、今なお妻を愛しています。
 ピエールから「一人だけ本気で愛した女がいた」と聞いていたエステルは、それがレアだったのではないかと思いつつも、捜査官には自分こそが彼のお気に入りの愛人だったという自信を見せます。
 火花を散らす女性たちもピエールに嫉妬する男達も、それぞれピエール殺しの動機があったと言える状況で、今度はパリの高級住宅街にあるホテルで第2の殺人が。それはピエールが女性との逢引に使っていたホテルでした。

 しかし、普通ならかち合わせるのを避けるようなワケありメンバーばかりを集めて、週末のお泊まり付きパーティを企画したエリアーヌとアンリ夫妻って何者?しかも、精神科医ピエールはエリアーヌの昔の不倫相手で、アンリは今も苦い思いをしているというのに。

 レアが連れて来た運転手(なんと人気歌手のダニー・ブリヨン)も含めて、登場人物みんなに動機があるようなないような状況の中で、第2の殺人が起きる割には中盤に緊張感が感じられません。
 とはいえ、果たしてピエールが心から愛し、守りたかった女性は誰なのか?その女性はピエールの行動をどう受け止めていたか?という観点から見ると、この映画が俄然面白くなります。 
 サスペンスとしての面白さはイマイチだけど、意外な人物が見せる深い愛情にちょっと感動して、ル・シネマを後にしました。それにしても、やっぱり人間て複雑だわ。
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by cheznono | 2010-07-31 01:17 | 映画

b0041912_14323953.jpg  人気実力とも押しも押されぬ美形女優セシル・ド・フランスの熱演が観たくて、猛暑の中を出かけて行った「シスタースマイル」、予想以上に良い作品でした。後半、かなり悲惨な末路をたどる実話に対して、映画は意外に明るさと希望を失わない仕上がりになっている点も救われます。
 60年代に世界を席巻し、日本でも大ヒットしたという「ドミニク」の歌を知っている人なら更に興味深く鑑賞できるのではないでしょうか?

 今から50年前のまだまだ保守的なベルギーで、ボーイッシュで自立心の強いジャニーヌ(セシル・ド・フランス)は、自分探しと母親との葛藤との間でもがいていました。修道女から聞いたアフリカ救援活動に憧れるジャニーヌは、早く結婚し家業のパン屋を継ぐのがあなたの生きる道という高圧的な母親に反発。大好きなギターを片手に修道院の扉を叩きます。
 しかし、修道女になる修行は禁欲的で厳しく、自由を愛し、何かと型破りなジャニーヌは、シスター達との摩擦が絶えません。
 ある時、彼女が即興で歌った聖ドミニクを讃える歌に目を付けた神父の尽力で、ジャニーヌの人生は急展開を始めます。
 ミステリアスな歌う修道女として、顔も名前も隠したまま売り出したドミニクの歌は、あれよという間にミリオンセラーを記録。しかし、レコード会社との契約はこの歌の印税を殆ど修道院へ献金するというものでした。
 やがて、修道院から念願のアフリカ行きの機会を与えられたジャニーヌですが、コンサート活動をしたいという気持ちがまさって、準備のための勉強に身が入りません。旧弊なシスター達の価値観にも嫌気がさした彼女は、ついに修道院を飛び出し、学生時代から自分を慕う女友達アニー(サンドリーヌ・ブランク)の元に転がり込みます。
 けれども、還俗し独立した歌手として再出発を図るジャニーヌを、レコード会社は冷たく拒否します。加えて、超ヒット曲の印税にかかる多額の納税義務が発生し、ジャニーヌは金銭的に追い詰められて行くのでした。  

 26歳で修道院に入ったジャニーヌが大ヒットを飛ばしたのが1963年から。古い価値観への決別と女性の解放を求める5月革命がフランスで起きたのが1968年だから、ジャニーヌの誕生がもうちょっと遅ければ、その人生はかなり違ったものになっていたでしょうに。 
 エネルギッシュで個性的、自我の強いジャニーヌは、修道女としては型破れでも、現代っ子ならば珍しくない女性像ですが、若い時、彼女が心から愛せたのは姉妹同然に育った従姉妹だけ。母親との確執がトラウマになっているせいか、ジャニーヌが誰も愛することができないと苦しむ姿が切ないです。
 同性愛者ではなかったジャニーヌが、紆余曲折を経て、レズビアンのアニーを受け入れて行く辺りも、無理なく描かれています。
 この作品では、あたかも還俗してからの生活がとても短かったように見えますが、実際には33歳で修道院を出たジャニーヌが亡くなるまで20年近くあり、死の当日には著作権協会に彼女の重い借金の6倍近い寄付金が集まっていたというから、何とも皮肉なものですね。
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by cheznono | 2010-07-25 14:37 | 映画

b0041912_23311560.jpg リュック・ベッソン監督構想10年という新作「アデル〜ファラオと復活の秘薬」、フランスで4月半ばに公開され、評判を呼んだ作品がもう東京で観られるなんて、何だか嬉しいなと思って早速観て来ました。
 脚本はかつてフランスでヒットしたアニメがベースで、原作ではヒロインが男好きはするけれどたいていの女性には敬遠される、というキャラだったのを映画向けに男女を問わず受け入れ易い人物像にアレンジしたとか。
 お天気お姉さん出身の新星ルイーズ・ブルゴワンが、その名(ブラン=セック)の通り辛口なセリフを機関銃のように乱発して奮闘しています。

 100年前のパリ。植物園付属の博物館に展示されていたジュラ紀の恐竜の卵が突然ふ化し、巨大な怪鳥が夜空へと羽ばたきます。老教授エスペランデュー(ジャッキー・ネルセジアン)が1億3500万年も眠っていた卵を蘇生させてしまったのでした。
 一方、秘境専門のジャーナリスト:アデル・ブラン=セックは、事故で植物状態の双子の妹を救うべく、なぜかエジプトのピラミッドに赴き、ラムセス2世の侍医のミイラを探し当てます。何でも侍医が《復活の秘薬》を使えるとかで、妹を治療するには侍医のミイラが必要だと、王家の谷に潜入したのでした。
 やっとの思いでミイラをパリに運んで来るアデルでしたが、頼みの綱のエスペランデュー教授は凶暴な怪鳥を復活させた罪で逮捕され、死刑の宣告が下されていました。
 エスペランデューが医者のミイラを蘇生させてくれなければ、妹を救うことができません。焦ったアデルは、思いつく限りの方法で、エスペランデューの脱獄を試みるのですが、死刑の日が刻々と迫って来て。。。

 こう書くと、何だか本当に漫画だなという感じですが、映像だと案外自然?に展開します。ただ、鳥の恐竜を手なずけたアデルが空飛ぶシーンは、「アバター」にそっくり。もう少し工夫がほしかったかも。
 「アメリ」と女性版「インディアナ・ジョーンズ」が混じったような、何ともゆるーい感じのアドベンチャー劇、とはいえ、100 年前のパリが舞台だとあまり違和感を感じません。これがニューヨークだったら、いくら20世紀初頭でも中途半端過ぎてお話しにならないでしょうが、パリなのでレトロな映像も美しく、後半のルーブル美術館での「ナイト・ミュージアム」的なシーンも無理なく楽しめました。
 私の好きなマチュー・アマルリックの役には愕然としたけれど、奇想天外なストーリーに加えて、フランスらしいユーモアとエスプリの利いたセリフが魅力の愉快な作品です。
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by cheznono | 2010-07-10 23:32 | 映画