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セクシーな見本市

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 秋到来でめっきり冷え込んだフランスで、唯一暖かく太陽いっぱいのコートダジュールに戻って来ました。お陰で蚊も元気なため、早速蚊よけの液体を購入。9月末ならもう蚊取り線香も液体ムヒもいらないだろうと高をくくっていたのが甘かったみたいです。
 フランクフルトで乗り換えたニース行きの便に、珍しく日本人の乗客がちらほら、というか結構目立ったので、今頃コートダジュールで何か催し物ものがあるんだっけ?と思いきや、ニースでエロティカ見本市が開かれたという情報をキャッチ。なるほど、だからドイツからの乗り継ぎ便に日本からの男性客が目立ったのか?!
 というのは冗談で、私が着いた日は今年のエロティカ見本市の最終日。なので、欧州内便で乗り合わせた皆さんは、純粋に観光か国際会議か何かのイベントにやって来たのでしょう。
 エロティカ・ドリーム見本市は、さまざまな大人のおもちゃの展示と説明、セクシーな下着の紹介、そしてポルノ女優達によるショーで構成され、入場に30ユーロもかかるのに、今年も盛況だったみたいです。
 女性やカップルでの来場も多くて、《もはやセクシートーイはタブーではなく、開けっぴろげに明るく語る時代》なのだそう。好きだねこの国は、と半ば呆れてしまいますが、このエキスポ、フランスだけでなく10月半ばにはオーストリアのシドニーで開催予定だし、既に世界あちこちで開かれていたのですね。もしかして、東京ビックサイトでも開催されていたりして? 
 見本市に出展したお店によるとオンラインショップが好調で、顧客の年齢層は25歳から80歳と幅広く、しかもお客の80%は女性なのだとか。別のお店もこの不況の中、昨年の売上高は前年より30%も高かったらしいです。
 地元紙が取材した去年のエロティカ・ドリーム見本市の様子は以下のリンクから。
 http://www.nicematin.com/video/salon%20erotica
 
 因みにこの見本市、次は12月にリール市で開かれます。
画像の絵画は、アンリ4世の公式寵妃ガブリエル・デストレとその妹
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by cheznono | 2010-09-29 20:24 | 不思議の国フランス

瞳の奥の秘密

b0041912_184420.jpg 本国アルゼンチンで大ヒットを記録し、去年のアカデミー賞外国語映画賞を受賞した「瞳の奥の秘密」。サスペンスと大人の恋を交差させながら、政情不安定だった当時のアルゼンチンの司法の歪みを告発するエンターテイメントで、評判通り、見応えのある作品でした。

 刑事裁判所を定年退職したベンハミン(リカルド・ダリン)は、25年前に担当した殺人事件について回想的な小説を書くべく、かつての職場に当時の上司イレーネ(ソレダ・ビジャミル)を訪ねます。
 その残酷な事件は、米国で法学博士の学位を取ったキャリア組のイレーネが、ベンハミンのいる裁判所に配属されたことと重なっていて、25年間ベンハミンの心に忘れ得ぬ記憶を残していたのです。
 ブエノスアイレスで甘い新婚生活を送っていた23歳の美人教師が、自宅でレイプの上に殺害された現場を検証したベンハミンは、被害者の夫リカルドの協力のもと、顔見知りの犯行と断定。犯人を割り出しますが逮捕に至らず、事件はいったん捜査打ち切りに。
 一年後、リカルドが一人で妻殺しの犯人探しをしている姿に胸を打たれたベンハミンは、上司のイレーネに頼み込んで捜査を再開し、ついに犯人逮捕にこぎつけます。
 軍事政権下ながら、既に死刑制度が廃止となっていた当時のアルゼンチンで、犯人は終身刑に服す筈でしたが、軍事警察の思惑は別にあり、実際にはベンハミン達の予想もしない現実が待っていました。
 ベンハミンが思いを寄せるイレーネは唐突に同僚との婚約を発表、事件の捜査の結果、ギャングから命を狙われる身となったベンハミンは遠い地方裁判所へ転勤に。以来、定年退職を迎えた今まで、二人は別々の人生を歩んでいたのですが。。

 リカルドの亡き妻への深い愛情と強い喪失感に触発されたベンハミンの事件へのこだわりが、そのままイレーネへの秘めた想いに重なる点が、この作品の大きな要となっています。
 25年経た後、事件についての小説を書くことで、自分の心に正面から向き合い、決着をつけようとするベンハミン。
 その小説を書くのに使うのが、かつての職場にあったAの文字が打てない古いタイプライターというのが、ラストに素晴らしい意味をもたらします。その辺、細部まで本当にうまい演出です。
 加えて、「瞳の奥の秘密」というタイトルが素晴らしい。主要人物それぞれの瞳が、実に雄弁におのおのの思いを語っていて、これだけ厚みのある話をこの題に集約させているのは見事と思います。

 ベンハミンの捜査を手伝うアル中の部下パブロが「時とともに全て変わる。何もかも変わるけど、ただ1つ変わらないものがある。それは情熱だ!」と酔っぱらう度に叫ぶのが、さすがラテンのお国柄という感じ。日本人の感覚からすると、情熱こそ時と共にフェイドアウトし易いような気がするのに。
 一方、職場でのキャリア組とノンキャリアの差に怯んでか、今一歩イレーネとの恋に踏み出せないベンハミンの非常に抑制した情念は、ラテン系とは思えない慎重さです。フランスにも意外にこういう男性がいるから、簡単に”ラテン系”とか”草食系”なんてくくれないのかも知れません。
 この映画も「フェアウェル さらば哀しみのスパイ」も、80年代に入っているのに政治状況に翻弄される主人公を描いているため、このすぐ後にバブル景気に突入した日本に照らし合わせると何とも複雑な思いがします。 
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by cheznono | 2010-09-17 01:14 | 映画

b0041912_1301093.jpg あの名作「戦場のアリア」のクリスチャン・カリオン監督による東西冷戦時代の実話フェアウェル事件の映画化。今回も私の好きなギョーム・カネ出演と聞いて、もっと早く観たかったのに、あまりの暑さに気がくじけ、先週ようやく観て来ました。
 ペレストロイカに至る過程で、ソ連を揺るがしたスパイ事件があったとは、さすが今尚、体制に不都合なジャーナリストがロンドンの日本食レストランで毒を盛られたり、イギリス人ビジネスマンと結婚したロシア人美人妻が、実は国際スパイだったというようなお国柄だけあるけれど、暗澹とさせられる結末でした。
 でも、こうした事実を知って良かった。日本のような国に生まれて良かったと思いました。

 1981年、ブレジネフ政権下のモスクワ、フランスから派遣された民間人技師ピエール(ギョーム・カネ)は、上司からの依頼で、KGB幹部のグリゴリエフ大佐(エミール・クストリッツァ)が西側に流す機密情報を仲介するはめになります。大佐のコードネームはフェアウェル。
 万が一バレたら、自分はおろか愛する妻子をも危険にさらすことになる任務に巻き込まれたピエールは、上司に抗議して役目を降りようとしますが、次第にグリゴリエフ大佐に不思議な友情を感じ、彼が流す国家秘密をフランスに持ち込みます。
 時の大統領ミッテランは、その情報を持ってアメリカのレーガン大統領と対応を協議。西側はグリゴリエフ大佐に亡命を提案したり、情報漏洩への報酬額を交渉しようとしますが、どちらも大佐は拒否します。
 命がけで見返りを求めずに極秘情報を西側に流すグリゴリエフの真意がつかめぬピエールでしたが、「ソ連の体制を変えなくてはいけない、自分には間に合わなくても息子の時代には違う未来のある国にしなければ」と大佐に打ち明けられ、二児の父として共感を覚えます。
 折しも、ゴルバチョフがソ連にはペレストロイカ:改革が必要だと主張し始めます。 
 しかし、KGB当局の手がグリゴリエフ大佐とピエールに迫っていました。

 当時のモスクワでは、フランス人居住区の住人の日常生活も厳重にチェックされ、外出・帰宅時間、交際範囲なども把握されていて、寝室には隠しマイクが仕込まれていたというのが驚きです。
 グリゴリエフ大佐の私生活の問題も織り込みながら、機密情報を渡すためにピエールと会うシーンを丁寧に積み重ねて行きますが、後半はいっきに緊張が高まり、そして、あっという裏事情も明らかに。
 図らずも素人スパイになってしまったピエールの戸惑いと祖国を憂い息子を思うグリゴリエフの苦悩が、淡々と進むドラマの中で浮き彫りになって行く過程を、ギョーム・カネとエミール・クストリッツァが熱演しています。特にクストリッツァ監督が素晴らしい。この方、俳優として観るのは初めてですが、すごい存在感ですね。
 冒頭の雪原に出て来る狼が、中盤から大きな意味を持って来るのも印象深かったです。後半にグリゴリエフが暗唱する《狼の詩》には目頭が熱くなりました。 
  ゴルバチョフ書記長がペレストロイカを進めるのは、この事件から4年後。この映画のフェアウェル事件は、その後の鉄のカーテン崩壊に大きく貢献したと言われています。
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by cheznono | 2010-09-07 01:37 | 映画