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ブラックスワン

 b0041912_21124414.jpgニースの名画座に念願の「ブラックスワン」を観に行ったら、ドアから腰の曲がりかけたマダムが出て来て「私一人しかいないのよ」と不安そうに私を見上げるので「大丈夫、私も観ますから」と言うと、ほっとしたようにまた館内に戻って座り直しました。
 昼間とは言え、サイコスリラーをシネマで一人ぽつんと観るなんて、そりゃ怖いよね。ホラーと聞くから観たくないって、私も友達二人に断られた映画。普段はホラーなんて絶対に観ないのだけど「ブラックスワン」はどうしても観たかったんです。
 結論は、恐れていたほど怖いお話ではなかったので、観るのを躊躇っている人はご安心を。

 NYのバレエ団で踊るニナ(ナタリー・ポートマン)は、バレエが生活のほぼ全て。一卵性母子のように親密な元バレリーナの母と暮らすアパルトマンとバレエ・カンパニーとをひたすら往復する毎日です。
 そんなニナが悲願の「白鳥の湖」のプリマに抜擢され、母親と共に舞い上がるのですが、何せこのプリマは美しく純真な白鳥と妖艶で邪悪な黒鳥の一人二役。バレエ監督(ヴァンサン・カッセル)から「君の白鳥はきれいだけど、王子を誘惑する黒鳥を演じるには官能性が足りない」と指摘され、さしあたって恋人もいないニナは悩みます。
 自傷行為に走るほど神経を張り詰めながら、難しい黒鳥役をものにしようと葛藤するニナ。そこへ、セクシーな新人バレリーナ、リリー(ミラ・クニス)の登場で、ニナの焦燥は更に激しくなります。
 しかも、憧れていた先輩プリマ、ベス(ウィノナ・ライダー)が、落ち目となって役を外された上、事故に巻き込まれてほぼ再起不能となったことでショックを受けたニナは、更に自らを精神的に追い詰めて行くことに。

 色っぽくなれと煽るバレエ監督。そんなニナを挑発するリリー。真面目で完璧主義者のニナは、あまりのプレッシャーに母親との関係もおかしくなり、現実と幻覚とが混同するほど、凶器を帯びて行くのですが、文字通り身を削ってプリマに挑むニナを演じるナタリー・ポートマンがすごい。さすが、アカデミー主演女優賞を取っただけありますね。
 バレリーナとはかくも凄まじい緊張と強靭な精神力を求められるものなのか?とひりひりするようなニナの内面を観客も同時に体験するような思いで、スクリーンに釘付けでした。
 ラスト近く、クライマックスの脚本も実にうまいと思います。

 ところで、スペイン、アンダルシア地方産のキュウリを輸入したドイツで、バクテリアによる死者が続出。ドイツでキュウリを食べたフランス人も入院したため、欧州ではキュウリがすっかり悪者に。
 汚染水が元でキュウリにバクテリアが付き、それが死に至る内臓の出血を引き起こしたのではないかと推測されるそうですが、ドイツでは既に300人余りが発病、14人が犠牲となっているため、怖くてキュウリが買えません。
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by cheznono | 2011-05-30 21:09 | 映画

b0041912_1565951.jpg 今ひとつ盛り上がりに欠けたカンヌ映画祭も昨日で終わり、今週はモナコのグランプリが開幕するコートダジュール。既に日差しはすっかり夏で、ニース市内にはいかにもリゾート地ぽい気の抜けたようなムードが蔓延中です。
 フランスはこの1週間あまり、先日ニューヨークの一泊25万円というソフィテルのスイートルームで、黒人メイドさんに暴行事件を起こしたかどで逮捕された元IMFトップ、ドミニーク・ストロスカーン氏の事件で鉢をつついたような大騒ぎでした。
 国際舞台で活躍するストロスカーン氏(略してDSK)は国民的人気のある社会党のスターで、来年の大統領選で彼が立候補すれば当選間違いないと言われた人物。妻公認の女好きは有名で、現代のカサノヴァとも言われるDSK。女性の方もほおっておかないというもてぶりだったとか。事件の前夜には謎のブロンド美女と食事する姿が目撃されています。
 フランスよりも遥かに性犯罪に厳しい米国では、とんでもない変質者とか倒錯者、金と権力に溺れて何をしても良いと思っている傲慢さ、などという報道も目立ったそうですが、フランスではDSKが誰かの陰謀にはまったのでは?という見方も少なくありません。
 経済財政部門で辣腕をふるい、女性にも不自由しなかった筈のDSKが、果たして昼間の1時過ぎ、娘とのランチの約束の直前に、部屋の掃除に来たメイドにいきなり淫行を強要して、襲ったものかどうか。
 私の周りの女性陣は、「権力欲の強い男は女性に対しても横暴でどうしようもない」という厳しい意見が殆どの反面、どうも男性の方が「いくら何でも考えにくい」という感想が多いような。。

 そんな中、祖父の莫大な遺産を相続したため大金持ちの元キャスターの奥さんアン・サンクレールは全面的にDSKを支援。1億円近い保釈金+4億円の保証金や警備の費用、滞在用のアパルトマンなどは奥さんが出資したため、度重なる不倫や艶聞にもかかわらず、夫を支援し続ける姿が、ピューリタニズムを建前にするアメリカ人にはことさら奇妙に映るようです。
 推定被害者のメイドさんは、ショックで震えが止まらず、大変なトラウマを抱えているため、厳重にかくまわれていますが、事件後すぐに彼女から「ひどい目に合った」という電話を受けたという兄弟を名乗る男性は、実は男友達で血縁関係はなかったなど、謎は深まるばかり。 
 弁護側は私立探偵を雇って被害者の周りを洗っている最中で、当日、スイートルームで起きたことは同意に基づく行為だったということを証明する戦略に出る模様です。
 一方、支持が20%を切り、来年の大統領選の再選が危ぶまれていたサルコジ現大統領は、最大のライバルが失脚した上に、歌手兼女優の奥さんカーラ・ブルーニが懐妊(双子の噂も)したため、今後は理想のパパ像を全面に打ち出して、人気挽回を図るのでは?との見方が濃厚。
 もしかして、誰かがメイドに大金を払ったのか、それとも本当にストロスカーンが色魔と化したのか?ハリウッド映画を地で行くような成行きに、フランス中が息を飲んで経過を見つめています。

 写真は《美術館の夜》の日のアンティーブ、グリマルディ城のピカソ美術館。7年前にジャック・ラング文化相によって創設されたこのイベント、フランス中の主立った美術館が夕方6時からタダで解放され、この日は特別に10時過ぎまで開館されます。
 欧州メディアの統計によると、18歳〜49歳までの首都圏在住の日本人のうち、一度も美術館や博物館、劇場に足を運んだことのない人がなんと42%も。人口が多いから難しいかもしれないけれど、文化省も思い切って《美術館の夜》のようなイベントを企画してくれれば、もっと美術館が身近になるかと思うのですが。  
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by cheznono | 2011-05-24 01:58 | 不思議の国フランス

ブルーバレンタイン

b0041912_013248.jpg 観るのがイタい映画だけど間違いなく傑作、という評をあちこちで目にしたので、期待して観に行った「ブルーバレンタイン」。傑作かどうか私にはわかりませんでしたが、生々しく痛々しい映画でした。
 たった24時間の間に溝が広がり、修復がつかなくなる夫婦の確執を、二人が出会った頃の恋のきらめきシーンを挿入しながら、リアルに描いて行く手法で、二人の関係の光と陰のコントラストを浮き彫りにします。愛し合っていても、価値観が異なる相手と共に暮らし、共に人生を歩んで行くのはかくも難しいと見せつけられる点は、確かにイタいかも。 

 ディーン(ライアン・ゴズリング)とシンディ(ミシェル・ウィリアムズ)は結婚7年目。7歳の娘フランキーを育てながら、看護師として多忙な日々を送るシンディに対し、夫のディーンは朝からビールを片手にペンキ塗りの仕事をして、日銭を稼ぐ毎日。
 上昇志向があり現実的なシンディは、娘には良い父親でも、夢をなくし、のんべんだらりとその日暮らしの仕事に甘んじている夫に不満を募らせています。
 一方ディーンは、最低限のお金を稼ぎ、妻と娘とのんびり幸せに暮らせれば良いというタイプで、イクメンであり、主夫に近いような存在。仕事に骨身を削り、自分を顧みなくなったシンディとの関係をリフレッシュすべく、妻をラブホテルに誘うのですが。。
 二人の出会いは7年前、シンディは医学部の学生で、将来を嘱望されていましたが、軽い気持ちでつき合った身勝手な恋人ボビーの子供を身籠ってしまいます。
 その頃ディーンは、引っ越しのアルバイト中に見かけたシンディに一目惚れ。自分を喜ばせようと一生懸命で陽気なディーンにシンディも惹かれて行き、あっという間に恋仲に。
 シンディに夢中になったディーンは、ボビーの子供と思われる赤ちゃんを宿したシンディにプロポーズして、めでたく結婚。ひっそりと式を挙げた二人の顔は輝いていました。
 さて、ラブホテル行きを渋るシンディを強引に誘ったディーンでしたが、妻がスーパーで偶然ボビーと再会したと知ると、いっきに不機嫌となり、それをきっかけに夫婦の会話はエスカレートして行きます。

 一緒に観た友達は「あんなどうしようもない夫だったら、捨てたくなるよね」と一刀両断にしていましたが、私はディーンが女性でシンディが男性だったら、ありがちな夫婦としてうまくし行ったのではないかと思いました。
 医学生だったシンディと学歴のないディーン。不釣り合いな結婚という劣等感を抱えた夫と、他の男の子供を我が子のように愛する夫に引け目を感じる妻。二人はそれぞれ生い立ちにも家庭的な問題を抱えていて、愛情に飢えていた若い日々。その意味では、優しく愛情深いディーンは、シンディにとって救いの神だった筈なのに。。
 歯車が狂い始めたカップルの行く末は、やっぱり子供の気持ちが犠牲になることで区切りがつくというのが、やるせないです。
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by cheznono | 2011-05-09 00:02 | 映画