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ハートブレイカー

b0041912_22555076.jpg ロマン・デュリスとヴァネッサ・パラディ主演で、フランスでは大ヒットしたコメディ「ハートブレイカー」が、有楽町でひっそりと公開されています。70人ちょっとしか入らない部屋での公開されているため、サービスデイは毎回満席。驚いたのは同時上映されている「エンディングノート」の人気ぶりです。ヒューマントラストシネマは珍しく老若男女さまざまな世代であふれていました。

 策士の姉夫婦と組んで、プロの別れさせ屋を営んでいるアレックス(ロマン・デュリス)。娘がしようもない男に夢中で困りきっているとか、妹が破滅的な恋愛にのめりこんでいて何とかしたい、といった依頼主から仕事を請けては、持ち前のお茶目な魅力でターゲットに近寄り、相手の関心が自分に向いてめでたく彼氏と別れたら、はいさようなら、という生活を送っています。
 アレックスのポリシーでは、別れさせるのは不幸せな恋愛をしている女性だけ。仕事である以上、相手に深入りは禁物。女性が不毛な恋愛に気づいて彼氏と別れれば、彼の役目は終了です。

 モロッコでの仕事を終えて、姉夫婦とパリに戻ったアレックスを待っていたのは金持ちの娘ジュリエット(ヴァネッサ・パラディ)と婚約者の英国人実業家ジョナサン(アンドリュー・リンカーン)との結婚を阻止すること。依頼主であるジュリエットの父親から法外な謝礼を提示されます。
 でも、モナコでの結婚式は10日後に迫っているし、ジュリエットとジョナサンはお似合いのカップル。熱々の二人を何ゆえ別れさせなくてはいけないのか?

 実は多額の借金を抱えているアレックス。お金のために原則を曲げてジュリエットの結婚式を中止させるべく、モナコに向かいます。
 ひとまずボディガードとしてジュリエットに接近したアレックスですが、気が強く、どこか屈折しているジュリエットは、いっこうに隙を見せません。あの手この手で彼女の気を引こうとするアレックスチームの努力は空回りするばかりです。
 しかし、別れさせ成功率100%のアレックスチーム、ここで引き下がるわけには行きません。
 そこへ、予定より早く婚約者ジョナサンがモナコに到着。しかも、急遽予定を変更して、式はラスベカスで挙げると言い出したため、さすがのアレックスはお手上げ状態に。。

 母親の死後、10年間も不仲だったジュリエットと父親。裏の世界にも通じている父親が、なぜ大金持ちでイケメン、理想的に見える娘の婚約者を嫌って、アレックスに肩入れするのかちょっと不思議ですが、不安定な隙間稼業に生きるアレックスに自分と共通する心意気とヤマっけを感じたからかも。
 
 突っ込みどころは満載でも、気の利いた会話とユーロ危機とは別世界のバブリーなシーンがふんだんに楽しめます。そしてもちろんロマン・デュリスの魅力が映画の要と言えましょう。ダンスシーンが圧巻です。
 ただ、モナコを舞台にしたコメディは、どこか似通った雰囲気が漂うのも否めません。オードリ・トトウが金持ちの援助交際相手を探す「プライスレス」もしかり。
 なんかかんか言ってもアメリカ文化が大好きなフランス人。ハリウッド的なロマンチックコメディをフランス風に仕上げた作品は、若い世代を中心にこれからますます増えて行くのでしょうね。  
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by cheznono | 2011-11-26 23:26 | 映画

ウィンターズボーン

b0041912_047138.jpg 今週の1本は久しぶりのアメリカ映画「ウィンターズボーン」。沢木耕太郎氏のレビューを読んで興味を持ちました。フランスメディアもこぞって絶賛、観客評もかなり高い作品です。
 しかし、レアリズムには圧倒されるものの、これが今のアメリカ中西部の山村の現実とはとても信じられません。ウォール街を占拠せよのデモに参加している人たちは、まだ恵まれた米国民なのでしょうか?
 
 舞台はミシシッピー川沿いにあるミズーリ州の山あい。あばら家に暮らす17歳のリー(ジェニファー・ローレンス)は、心を病んで言葉を話さない母親と幼い弟と妹の面倒をみながら、かつかつの暮らしを送っています。
 食べる物にも困るようなある日、保安官がリーの家に立ち寄って、麻薬の密造で捕まった父親が保釈中に失踪したため、もし裁判にも現れなければ保釈金の担保になっている自宅を差し押さえると警告します。
 家を追い出されたら、家族の生活を守ることができなくなってしまう。何が何でも父親を見つけ出す決心をするリーですが、親戚や心当たりを頼っても、相手にされません。
 これといった産業や仕事のない貧しい土地で、どうも住民達は見えない掟の下にまっとうでない方法で日銭を得ている模様。でも、必死で父親を探すリーに協力しようとしないのはなぜなのか?
 初めはリーの父親探しをあきらめさせようとした麻薬中毒の伯父も、覚悟を決めて行動するリーの強い意志に自らの血筋を感じて、彼なりの方法で手を差し伸べるのですが。。

 カンサスシティーやセントルイスといった観光都市を抱えているミズーリ州。所得も全米の中で真ん中辺りで特に貧しい地域ではないようです。が、この映画では、土地も人の心もあまりにすさんでいるため、果たして希望の見出せる展開になるのかどうか、終盤まで不安でした。

 こんな環境で育ち、17歳にして家族の世話が両肩にかかっているリーの強さ、一途さには感嘆させられます。一方で、今の生活を守るためにここまでしなくてはいけないのかという思いと、行政はどうなっているのだという疑問を抱えたまま映画館を出たら、外は冷たい雨。昼間見た天気予報は夜まで晴れマークだったのに。しばらく雨宿りしても小やみにならないので、仕方なく雨の中を濡れながら帰る羽目となりました。 
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by cheznono | 2011-11-18 00:57 | 映画

フェア・ゲーム

b0041912_233856100.jpg ブッシュ政権によるイラク戦争突入に強い疑問を持ったが故に、ホワイトハウスに裏切られた実在の夫婦を描いた政治サスペンス「フェア・ゲーム」。国家による大いなる嘘の恐ろしさに震撼とさせられます。

 CIA勤務のヴァレリー(ナオミ・ワッツ)は一度に幾つものプロジェクトを抱え、世界中を飛び回る活躍ぶりで一目置かれるタフで優秀な諜報部員。家庭的には元大使の夫ジョー(ショーン・ペン)と双子に恵まれ、表向きには金融キャリアウーマンとして充実した日々を過ごしていました。
 2001年9月の同時多発テロ後、米国務省は、イラクが核兵器製造に使用するためにニジェールから大量の濃縮ウランを買い込んでいるふしがあると疑います 。
 イラクへのウラン輸出を調査すべく、元ニジェール大使のジョーがアフリカに派遣されますが、現地を見たジョーは、ニジェールがイラクにウランの大量輸出をしている様子はないと政府に報告。
 妻のヴァレリーもイラク国内の化学者と接触し、パパブッシュが引き起こした湾岸戦争後は戦車の部品も不足しているイラクで、核兵器の開発などできる状況ではないと確信します。

 しかし、夫婦それぞれの報告は闇に葬られ、2003年アメリカはイラクに戦線を布告。ジョーは新聞への寄稿を通して、自分の調査結果にもかかわらず戦争に突入した政府に疑問を投げかけます。
 しかし、激しい攻撃の末、イラク国内に核兵器を初めとする大量破壊兵器が見つからないことに焦りを感じていたホワイトハウスは、ジョーの寄稿に大困惑。腹いせに妻ヴァレリーがCIAの諜報部員であることをメディアに漏らしてしまいます。
 その日を境にヴァレリーとジョーの生活は一変。ヴァレリーはCIAを追われ、一家は世間の白い目にさらされ、夫婦のストレスは最高潮に。
 ホワイトハウスの権力には抵抗できないと黙り込むヴァレリーに対して、政府の間違いを積極的にTVで告発するジョー。国を愛し、国に尽くしてきた二人の間にも溝が広がって行くのですが。。
 
 ジョーもヴァレリーもそれぞれがアメリカを愛し、強い愛国心と信頼の元に活動して来たのに、その国家がいとも簡単に自分達を裏切ったという事実が、妻を黙らせ、夫を言葉による抵抗に向かわせます。
 先進国でも政府は平気で国民に嘘をつくし、個人を見捨てるということを原発事故で身に沁みた後では、国家権力とその嘘がいかに怖いか、この映画で更に強く感じさせられました。しかし、こうした生々しい話題をすぐに映画化する(できる)点でもアメリカはすごい。
 国家が自分を見捨てた時、個人としていったい何ができるのか。。ラストに登場する実物のヴァレリー本人の映像に拍手を送りたくなる作品です。
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by cheznono | 2011-11-05 23:54 | 映画