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サラの鍵

b0041912_23175294.jpg 昨年フランスで公開が続いたヴィシー政権下のパリでのユダヤ人一斉検挙の悲劇を扱った映画の一つ「サラの鍵」。検挙され収容所送りとなった少女と、60年の歳月を経て現代に生きるジャーナリストの人生を交差させつつ、さまざまな疑問にぶつかりながら、過去の発掘を通して自らの人生をも大きく変えて行く女性の姿を描いた秀作です。
 「黄色い星の子供たち」を観た方なら、当時の様子がよりリアルに迫ってくるでしょう。
 
 1942年早朝のパリ。フランス政府によるユダヤ人検挙の命令に従って、少女サラのアパルトマンにも警官が押しかけ、一家は冬季競輪場に収容されます。
 その直前、10歳のサラは弟を納戸に匿い、鍵をかけました。サラはまたすぐに家に帰れると思っていたから。

 60年後、フランス人の夫と娘とパリ在住のアメリカ人記者ジュリア(クリスチャン・スコット・トーマス)は、ナチのユダヤ人迫害に協力したヴィシー政権によるユダヤ人迫害について取材をする中で、夫(フレデリック・ピセロ)が祖父母から相続したマレ地区のアパルトマンが、1942年の一斉検挙でアウシュヴィッツに送られたユダヤ人一家の住まいだったことを知り、愕然とします。

 すし詰め状態の冬季競輪場から収容所送りとなったサラは、弟を閉じ込めた納戸の鍵を握り締め、なんとしてもパリのアパルトマンに戻るべく命がけで脱走を図ります。

 夫と暮らすアパルトマンがユダヤ人検挙のお陰で手に入ったのではと疑うジュリアに夫の家族は口を閉ざし、夫も過去を蒸し返すなと不快さを隠しません。
 加えて、45歳にして妊娠したジュリアに、夫は今さら子供に振り回されたくないと生むことを歓迎していない様子。妊娠を喜ぶジュリアは多いに失望させられます。
 
 果たして、サラはホロコーストを生き延びたのでしょうか?サラが納戸に隠した弟の運命は?
 周囲の戸惑いをひしひしと感じながら、少女サラの存在を知ってしまった以上、彼女のその後を突き止めずにはいられないジュリアは、真実を求めてパリから出身地ニューヨークへ、そしてイタリアのトスカーナ地方へと取材を続けるのですが。。

 前半は幼い弟を助けたい一心で納戸の鍵を閉めたまま収容所送りとなってしまったサラの苦悩が痛いほど伝わって来て、サラの行方を心配するジュリアと心を1つにする思いでした。
 今になって忌まわしい過去を掘り返してほしくない周囲との摩擦を感じながら、真実を明らかにしたいという欲求に正直なジャーナリストの宿命をベテランのクリスチャン・スコット・トーマスがおさえた演技で体現しています。
 ジュリアの探究心が、埋もれていたサラの人生にはっきりとした輪郭を与え、やがてそれがジュリア自身の人生にも大きな意味を持って来る過程が、この作品の醍醐味。歴史の波にもまれ悲惨な体験を経ながらも、命の輪が連綿とつながっていることが、静かな喜びとして伝わって来る映画です。

 原作は世界的に大ヒットしたタチアナ・ド・ロネの「サラの鍵」(新潮クレスト・ブックス)。
公式サイト:http://www.sara.gaga.ne.jp/  
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by cheznono | 2011-12-18 23:18 | 映画

b0041912_17291862.jpg やっと観ました、ソフィー・マルソー主演の「マーガレットと素敵な何か」。マザー・グースから採った甘ったるいキャッチコピーにはひるみましたが、さすが「世界で一番不運で幸せな私」のヤン・サミュエル監督、ひねりの利いた不思議な魅力のある映画で、男性にもお勧めです。
 しかし、この邦題は何とかならなかったのでしょうか?こんな題をつけられたら、ソフィー・マルソーファンの男性陣は観に行きにくいでしょうし、そもそもクールでかっこよい自分になりたくて、英語名マーガレットを使って来たヒロインが、本名のマルグリットに戻って行く過程を描いているのだから、原題の「物心つく頃」の方が平凡でも良かったと思うのに。
 
 マーガレットは、アレバを思わせる原子力産業でトップの座を狙うほどの切れ者キャリアウーマン。お金と出世が優先の人生ですが、プライベートでは英国人の同僚マルコム(マートン・コーカス)と結婚目前。
 40歳の誕生日、原子力プラントを中国に売る交渉に没頭するマーガレットの元に、生まれ故郷のプロヴァンスから公証人(ミシェル・デュショーソワ)が訪ねて来ます。
 既に引退した公証人が携えたのは、マーガレットが7歳の時に未来の自分に宛てた手紙でした。
 少女マルグリットが、幼いながらあらゆる工夫を凝らして綴った手紙と同封の古い写真に、手紙も公証人の存在も忘れていたマーガレットはひどく動揺します。
 物心つく頃、家が破産し、父親が出て行ったため、残された母と弟と共に食べ物にも困るような貧しい生活を余儀なくされたという辛い記憶がいっきに蘇る一方で、女の子らしい将来を夢見たり、幼なじみと過ごした甘酸っぱい思い出がマーガレットの胸を去来し、肝心な商談さえもうわの空に。
 遠い昔、いつの間にか少女マルグリットの目標は、勉強を頑張って、仕事で成功することとなり、そのために過去を封印し、名前も英語名に変えて突っ走ってきた筈だったのですが。。

 自分が本当にしたかったことは、鉄の意志で原子力発電プラントを世界中に売りまくることだったのか?次々に届く7歳の自分からの手紙に、仕事と出世レースに追われ、心の潤いをなくしていたマーガレットは、今の自分を否定したくない反面、その胸中に現状に対する強い疑問が生じ始めます。
 この辺りの心の葛藤と変化を、幼なじみとの初恋のエピソードを交えながら、テンポ良くユニークに描きつつ、ほろりとさせられる演出がにくいです。

 マーガレットからひどい言葉をぶつけられ、何度拒否されても、子供の頃の彼女の純粋な気持ちを知っているから平気と言わんばかりに余裕の包容力で、マーガレットの存在を肯定し、その生き方の修正を暗に促す元公証人役のミシェル・デュショーソワが秀逸。
 因みにマーガレットの故郷で、隠居の公証人がペタンクを楽しむプロヴァンスのソー村は、ラベンダー畑で知られ、8月にはラベンダー騎士団によるお祭りで賑わいます。
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by cheznono | 2011-12-06 17:39 | 映画