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ある秘密

b0041912_021729.jpg 去年のカンヌでグランプリに輝いた「少年と自転車」では、母国ベルギーを舞台に養護施設から預かった男の子に類いまれな母性愛を発揮していたセシル・ド・フランス。そのセシル・ド・フランスの美しさが輝いている映画「ある秘密」が、東京のシアター・イメージフォーラムでフランス映画未公開傑作選の1つとして公開されています。
 フィリップ・グランベール原作のベストセラー(高校生の選ぶゴンクール章受賞作品)の映画化で、今春亡くなったクロード・ミレール監督の最後の作品。2007年秋のフランス公開時に観た時はものすごい衝撃を受けました。

 セシル・ド・フランスの相手役にパトリック・ブリュエル(歌手兼俳優でポーカーの名手でもある)、リュディヴィーヌ・サニエ(フランソワ・オゾン監督の秘蔵っ子)、マチュー・アマルリック、ジュリー・デュパルデューと豪華キャストで繰り広げられるヒューマンドラマは、息を詰めるような緊張感の漂う傑作です。

 1985年パリ、戦後生まれのフランソワ(マチュー・アマルリック)が孤独で劣等感に苛まれた子供時代を振り返るところから物語が始まります。
 スポーツマンの父マキシム(パトリック・ブリュエル)と水泳が得意な美しい母タニア(セシル・ド・フランス)というユダヤ人カップルの一人息子フランソワは病弱でスポーツが苦手、華やかな両親の陰でコンプレックスを感じながら成長します。
 父が自分を見る目に不肖の息子であることを否応なく感じるフランソワは、空想の中でスポーツ抜群の「兄」を作り出し、両親の期待に軽々と答える理想的な子供の「兄」を密かな心の友にしていました。
 ある日、自分に兄が実在していたことを知って愕然とするフランソワ。両親が自分にひた隠しにし、周囲にも封印していた過去に迫って行きます。

 実は父マキシムには戦前、アンナ(リュディヴィーヌ・サニエ)という妻がいました。なのに二人の結婚式の当日、タニアに初めて会ったマキシムは一目で惹かれます。けれど、タニアはアンナの弟の奥さんでした。
 マキシムとアンナにはシモンという息子が生まれ、みんなに可愛がられます。シモンは運動神経抜群で父親の自慢の息子でした。やがて、ヒットラーの台頭が始まり、第二次大戦が勃発。フランスにもナチスのユダヤ人弾圧が暗い影を落とします。
 ナチスのユダヤ人狩りから逃れるため、マキシムは入念に計画を練ります。一方で、ユダヤ人迫害への恐怖に加え、夫のタニアへの気持ちに気づいたアンナは精神的に追い詰められて行くのでした。

 繊細で線の細い妻アンナと穏やかな家庭を営みながら、気が強くて華やかなタニアを諦め切れないマキシム。危うい均衡を保つマキシムの一家が否応なく戦争とユダヤ人弾圧の暗い世相に巻き込まれて行き、やがて悲劇につながる様子がサスペンス調に描かれます。

 両親に引け目を感じているとはいえ、今も熱々の両親のもとで平和に暮らしていた少年が、今の穏やかな暮らしやひいては自分の誕生までも、両親がひた隠しにしている過去の出来事と大きな犠牲の結果としてそこにあるということを知り、内省的な大人への成長を遂げるきっかけとなるプロットが実にうまく構成されていて、忘れがたい印象を受けた作品です。

公式サイト  http://www.eiganokuni.com/meisaku5-france/
フィリップ・グランベール著「ある秘密」新潮クレストブックス
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by cheznono | 2012-05-18 00:08 | 映画

b0041912_1652046.jpg 早くも一ヶ月余りが過ぎましたが、今日は3月に4日間に渡りパリで開かれた本の見本市サロン・デュ・リーブルについて。
 私が行った日はあいにくの冷たい雨だったにもかかわらず会場入口は長蛇の列で、ダフ屋もたくさん出ているほど。その人気ぶりにはびっくりです。
 さすがはポルト・デ・ヴェルサイユ、アルベール2世公園で開かれるニースの本の見本市とは規模が桁違いで、半日程度では見切れないほどのブースの数に、思いっきり圧倒されました。パリってすごい!
 とはいえ、ニースやカンヌの書籍見本市もお勧めです。青空見本市だから参加作家たちがリラックスしていて、皆さんとてもサンパ、こじんまりしている分、ゆっくり全部を見て回れるし、入場無料です。パリは10ユーロ近くかかるというだけで一瞬ひるんだ私ですが、十二分に元が取れる内容で大満足でした。

 何せ参加した出版社(フランス国内はもちろん世界中から)やメディアの数も半端じゃない上、今をときめく人気作家の面々がキラ星のごとく並んでいるので、ファンにはたまりません。今年は日本が特別招待国ということもあって、日本に関するイベントも催され、日本の書籍の仏訳本コーナーも繁盛していたし、生け花のデモンストレーションも人気を呼んでいました。

 今年参加された日本人作家や漫画家は、角田光代さん、江國香織さん、島田雅彦さん、萩尾望都さん、ヤマザキマリさんなどなど22人。原発再稼働の反対を訴えたノーベル賞作家の大江健三郎さんを初め、討論会や対談に臨まれた作家も多く、多いに来場者の関心を引いた模様です。

 サロン・デュ・リーブルの魅力はなんと言っても話題の本や愛読書について、著者からじかに話を聴けること。中には贔屓の作家の全著作を持ち込んで、作家が悲鳴を上げるまで次から次に本を出してはサインをもらう男性も。
 作家たちにとってもサロン・デュ・リーブルはだいじな営業活動なので、それぞれブースに座り、通りかかった来場者に対して熱心に自らの著作の説明や宣伝をしてくれます。自分が全く知らない小説家でも、最新刊のあらすじを情熱をこめて話してもらったり、絵本作家や漫画家に目の前でイラストを描いてもらうと、つい本を買ってしまうのは、自然な成行きでしょう。
 作家から直接作品の魅力や著書への思い入れが聴けるコミュニケーションの場だからこそ、サロン・デュ・リーブルが多くの来場者(今年は19万人)を惹き付けるのもむべなるかな。
 実際、旅行鞄や大きなキャリーバッグを持ち込む人も少なくなく、会場内で買い込んだたくさんの本や雑誌などでパンパンに膨れたバッグを片手にタクシーで帰宅する姿も目立ちました。

 写真はこのブログでもご紹介した「恋は足手まとい」や「夏時間の庭」に出演した売れっ子俳優のシャルル・ベルラン。(「皇帝ペンギン」でも声の出演)
 ひときわたくさんの人が並んでいるブースが気になって横から覗いたら、シャルル・ベルランがいてその隣には人気ロックバンド:ディオニソスのボーカルで作家でもあるマティアス・マルジョ、その手前にはやはり俳優で作家のリシャール・ボーランジェが。思わず大興奮。特にシャルル・ベルランは、来場者一人一人に時間をかけて丁寧に応対していて、暖かい人柄が感じられます。
 既に歩き回って疲れていたため、これからまた列に並ぶのもなあと思い、ぶしつけに横からカメラを向けた私ににっこり微笑んで挨拶してくれたシャルル・ベルラン、なんてサンパで親切なんでしょう!
 昨年、モロッコ出身の母親の生涯について本を出版し、作家デビューも果たしたシャルル・ベルランは、歌手としての活動も開始して、この春にはアルバムをリリース。マルチな才能を発揮しています。
 最近、カーラ・ブルーニ・サルコジらと一緒にコンサートも開いたシャルル・ベルランですが、大統領選では社会党候補のフランソワ・オランド氏を支持。因みに彼と同世代の人気俳優ヴァンサン・ランドンも積極的にオランド氏の支持に動いています。大統領選の決戦投票まであとわずか。オランド氏優勢とはいえ、刻々と変わる投票予想からは目が離せないGWです。
 
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by cheznono | 2012-05-01 16:45 | 不思議の国フランス