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プレイ-獲物-

b0041912_0322510.jpg 演技派俳優アルベール・デュポンテルがハリウッドアクション並みのタフな役に挑戦している「プレイー獲物ー」。フランスとベルギーをを震撼とさせた実在の変質的殺人犯からヒントを得て制作されたサスペンスで、目を覆うようなシーンもあるため誰にでもお勧めできる映画ではないけれど、猛暑に観るにはぴったりのよく出来た作品です。

 エクサン・プロヴァンスの銀行強盗容疑で服役中のフランクは、早く出所して美人妻アナ(カテリーナ・ムリーノ)と言語障害のある幼い娘アメリとの暮らしに戻ることを目標に、看守や囚人仲間のイヤがらせに耐える毎日です。
 なにせ、銀行強盗で奪った金の隠し場所を知っているのはフランクだけなので、刑務所の連中は何とか彼に金の在り処を口割らせようと躍起になっていました。
 そんな中、フランクと同房の未成年者レイプ犯モレル(ステファン・デバク)の容疑が晴れて、釈放が決定 。これまでの経験から他人を信用しないのを信条にしているフランクでしたが、気弱で真面目そうなモレルにふと気を許し、アナへの重要な伝言を頼みます。

 しかし、面会に来た元警官から、冤罪で釈放された筈のモレルは、実は少女ばかりを狙う連続暴行殺人犯だったと知らされたフランクは、塀の中で身悶えすることに。しかもモレルは、出所前にフランクの所有物からDNAを収拾していて、自らの犯行の濡れ衣を着せるつもりです。

 ある日、千載一遇の機会を得たフランクは脱獄を決行。妻子の住む団地に駆けつけますが、既に二人の陰も形もありません。敏腕女性刑事(アリス・タグリオーニ)の追っ手が目の前に迫る中、やっとのことで金の隠し場所にやって来たフランクを待っていたのは、冷たくなったアナでした。
 妻も金も失ったフランクの怒りは頂点に達し、さらわれた娘アメリを救うため、モレルを捜す危険な旅が始まります。

 近年フランスで社会問題化している刑務所内での受刑者の自殺。あまりに増加しているため、各刑務所で受刑者の生活の改善が目標となっていますが、この映画のような看守によるいじめや虐待が横行しているなら、受刑者の自死が増加するのもむべなるかな。フランスの刑務所には絶対に入りたくないですね。
 でも、面会に来た家族と水入らずで過ごせるダブルベッド付きの寝室があるのもさすがフランス。もしかして、日本の刑務所にもこんな気の効いた配慮があるのかしら?

 凶悪指名手配犯と見なされ、モレルを追いつ警察には追われつの命をかけたフランクの追走劇は、コートダジュール地方の鷲ノ巣村でクライマックスに。地中海の風が間近に感じられるようなラストのニースの映像も印象的。
 不死身のアルベール・デュポンテルに乾杯したくなるような上出来サスペンスの監督は、最近注目されているエリック・バレットです。
 公式サイト  http://www.alcine-terran.com/prey/
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by cheznono | 2012-07-24 00:37 | 映画

星の旅人たち

b0041912_1285457.jpg ブログに書けないうちに終わってしまうかと思ったら、意外にロングランしている「星の旅人たち」。エミリオ・エステヴェスが実父マーティン・シーンのために制作したというこの作品、映画としての面白さは「サンジャックへの道」にかなわないけれど、リアリティ度は断然こちらに軍パイが。
 いつかサンチャゴ・デ・コンポステーラへ巡礼の旅に出てみたい人にはもちろん、聖地巡礼に参加した気分になりたいだけの人にもお勧めです。

カリフォルニアの眼科医トム(マーティン・シーン)は、40歳間近の一人息子ダニエル(エミリオ・エステヴェス)がピレネー山中で急死したという報せを受け、急いで渡仏します。
 ダニエルが南仏に旅立ったことも秘書から聞くまで知らなかったトムですが、息子がなぜサンチャゴ・デ・コンポステーラを目指したかったのか、自ら巡礼の道を辿ることで少しでもダニエルに近づこうと決心します。
思えば最後まで何を考えているのか理解できなかった息子。しかし、自分は彼に自身の価値観を押しつけていなかったか?父子の距離を縮める機会もないまま、あっけなく息子は逝ってしまった。

トムはダニエルのリュックを背負い、道すがらダニエルの遺灰を要所要所に置きながら、自戒の思いも込めて息子が歩こうとしていた800kmの道程を進みます。
 途中、人の良いオランダ人(ヨリック・ヴァン・ヴァーヘニンゲン)、ヘビースモーカーでシニカルなカナダ女性(デボラ・カーラ・アンガー)、アイルランド人の旅行ライター(ジェームズ・ネスビット)に出会い、互いに共感したり、反発し合ったり、うんざりしたりしながらもやはり旅は道連れ、4人は共に聖地を目指すことに。
 昔も今も800kmを一月余りかけて徒歩で打破するのは過酷な旅。トムは所々で、亡き息子の穏やかな視線を感じながら、一歩一歩巡礼路を歩んで行くのでした。

 いつかわかり合えると思っていたダニエルのまさかの事故死に動揺し、胸の中で亡き息子と対話しながら一人静かに巡礼するつもりだったトムが、思わぬ旅の同伴者たちをうっとうしく感じながらも次第に彼らと固い連帯感を紡いで行く過程が自然で、無理がありません。
 取り立ててドラマチックなことは何も起こらず、巡礼途中のエピソードも実際にありそうなことばかりで、自分がそこにいても違和感なく溶け込めそうな現実感が心地良いです。
 4人がついに大聖堂にたどり着いた時の達成感も実に爽やか。長い巡礼で、身体も心も浄化されたような気分を観客にもお裾分けしてもらえる感じで、気持ち良く家路に着くことができました。

 「アーティスト」でハリウッドを湧かしたジャン・デュジャルダンが企画して、ジル・ルルーシュと主演した浮気者の映画「プレイヤー(les infideles)」。はて、日本で受けるかなあ?と思ってたら、やっぱりあっさり終わってしまいましたね。確かにフランスではヒットしたし、面白い映画ではあるけれど、ちょっとやり過ぎのような。
 ともあれ、この10年ノリに乗ってるジャン・デュジャルダン、才能あふれる彼の次回作に期待したいです。 
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by cheznono | 2012-07-15 01:39 | 映画