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最強のふたり

b0041912_1311013.jpg オードリー・トトウの「アメリ」の記録を抜き、過去20年間に世界中で一番ヒットしたフランス映画となった「最強の二人」。昨年末から今春にかけてフランスでロングランした時は、まさに社会現象となるほど話題をさらった作品で、実話を元にしたとは容易に信じられないくらい映画らしい展開が楽しめる、それは愉快なコメディかつみごとな人生讃歌に仕上がっています。
 
 パリの豪邸に暮らす障害者のフィリップ(フランソワ・クリュゼ)は、首から下が麻痺してしまった自身の介護者を募集。多数の応募者の中からこともあろうに移民街出身の粗野な青年ドリス(オマール・シー)を採用します。
 教養あふれるインテリ大金持ちのフィリップに対して、介護の経験はおろか真面目に仕事を探す意思さえなかったドリス。自分の邸宅内に治療室を設け、秘書はもちろんのこと専属の看護士や理学療法士を抱えるフィリップと、貧しい移民街の団地で子だくさん一家に育ったドリスとではピンキリに近い格差があり、二人の会話が噛み合わないこともしばしば。
 介護の方法も周りがハラハラするほど乱暴なドリスの、しかし、雇い主に媚びることもなく、中途半端な同情や憐憫のかけらも見せない態度にフィリップは何とも云えない居心地の良さを感じ、二人は障害者と介護補助者という関係を超えた友情を築いて行きます。
 ドリスが実は窃盗罪で服役して、刑務所から出てきたばかりと聞いてもフィリップは全く動揺しません。 初めは傍若無人なドリスに辟易していた屋敷の雇い人たちも、次第に本音で生きるドリスのユーモアや心根の優しさに魅了され、フィリップの豪邸には久々に笑いと明るさが戻って来た感じでした。 
 しかし、それもつかの間。ドリスの家族に問題が生じたことで、フィリップは住み込みのドリスを家族に戻すことを決意。 みんなに名残りを惜しまれつつ、ドリスは屋敷を後にします。
それぞれが元の自分の世界に戻ったかのようでしたが、ある夜、ドリスの携帯が鳴って。。

 診療室も医師も看護士も全て自前という主人公の金持ちぶりには目を見張りますが、実在のフィリップもコルシカ島の古くからの貴族の家柄で、幾つかの高級な不動産を相続した上、自らはシャンパンの会社で実業家として活躍。愛する妻と子供に囲まれ、理想的な生活を送っていました。怖いものなしの幸せな毎日に影がさしたのは、奥さんに乳がんが見つかってから。 
 そして、42歳の時、出張の帰りに趣味のパラグライダーを楽しんだ際、落下事故にあったフィリップは九死に一生を得たものの、四肢が麻痺して車椅子生活を余儀なくされ、辛いリハビリを受けることに。
 加えて、3年後、闘病生活を送っていた妻の一縷の望みをかけた最後の手術が失敗に終わり、最愛の人を失ったフィリップはうつ病を発症、孤独に苛まれます。
 何とかこの辛い毎日を変えたいと思っていた矢先に出会ったのが、尊大で粗野だけどとても人間的なアルジェリア系の青年だったそうです。

 フィリップは今、モロッコで現地で知り合った奥さんと二人の養子を育てながら、穏やかな日々を過ごしているとか。やっぱり人生って塞翁が馬、本当にすごい!と思わせてくれます。
 フィリップが綴った自伝を元にしたドキュメンタリーを観たのをきっかけに、映画化を成功させたのが脚本と監督を手がけたエリック・トレダノとオリヴィエ・ナカシュ。常に一緒に映画を作ってきたという彼らもやはり堅い絆で結ばれているのですね。
 
 文句なしのこの作品、惜しむらくは邦題がちょっと喰い足りないことかな?誰も立入ることができない友情を日本語のタイトルにするのは確かに難しいので、じゃあもっと良い題をつけてみてと云われると困るけど、「最強の」はちょっとニュアンスが違う気がするのです。
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by cheznono | 2012-09-21 01:31 | 映画

b0041912_142714.jpg ナチスドイツ占領下のポーランド、アウシュビッツ収容所で出会い、手に手を取って脱走した若い男女。しかし、逃亡生活の中で生き別れになり、互いに相手の死を告げられたため、それぞれの道を歩んだ二人が39年後に再開したという実話を元にした映画「あの日 あの時 愛の記憶」。事実の重さに圧倒されるラブストーリーです。

 1976年のニューヨーク。研究者として成功した夫(デヴィット・ラッシュ)の大事なホームパーティの日、ハンナ(ダグマー・マンツェル)はBBCのインタビュー番組を偶然観かけて、愕然とします。
 テレビで強制収容所時代の恋と脱走の経験を語っていた人こそ、ハンナをアウシュビッツから救い出してくれたかつての恋人トマシュ(マテウス・ダミエッキ)でした。
 今は優しい夫と娘とブルックリンで何不自由ない暮らしを送るハンナですが、20代の初めにユダヤ系ドイツ人のためアウシュビッツへ収容され、過酷な強制労働に耐えた過去が。
 ハンナ(アリス・ドワイヤー)が奇跡的に脱走できたのは、政治犯として収容所で働いていたトマシュのお陰でした。一時はトマシュの家族にかくまわれるハンナですが、レジスタンス運動のパルチザンとして任務に戻ったトマシュとは離れ離れに。
 トマシュの母親(スザンヌ・ロタール)に息子に災いをもたらす存在として忌み嫌われたハンナは、身重の身ながら一人で厳寒のポーランドを彷徨い始めるのでした。

 映画は30数年前に亡くなった筈の命の恩人で恋人だったトマシュが生きていると知り、動揺と混乱の中、ホームパーティを打っちゃってトマシュの連絡先を捜し始めるハンナを焦点に、過去の壮絶な体験が挿入される形で進行します。  
 ハンナを心配する夫と娘を拒絶し、トマシュとの遠い記憶をたどりながら、ひたすら彼の連絡先を問い合せるハンナがじっくりと描かれますが、印象深いのはむしろ強制収容所という極限状態の中でハンナを見初め、大いなる危険を冒して関係を持ち、ひいては命がけで彼女を守る政治犯トマシュの若い情熱と機知に富んだ脱走作戦の方でした。

 トマシュと共にレジスタンス活動に投じた兄夫婦に起こったことに象徴されるように、ソ連に侵攻され、ナチスドイツに占領された当時のポーランドの厳しい状況を踏まえると、ポーランド語を話せないハンナが一人生き延びて、米国に渡ったのはまさに奇跡としかいえません。
 しかし、何度も強調されるハンナが身籠ったトマシュの赤ちゃんはどうなったのでしょう?推して知るべし、という演出なのでしょうが、トマシュの母親や義姉がハンナの妊娠に気づかなかったとは思えないし、30数年後にハンナからその事実を打ち明けられるトマシュの気持ちにも触れられないのはちょっと不思議です。

 とはいえ、壮絶なストーリーと長い時の流れを、わずか2時間弱に収めたパメラ・カッツの脚本はたいしたもの。うら若き娘時代に悲劇的な運命を背負わされたハンナが、トマシュと夫という二人の卓越した男性の深い愛情に恵まれたことは、観客にも強い希望をもたらしてくれるように感じました。 
監督はアンナ・ジャスティス、公式サイトは http://ainokioku.jp/
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by cheznono | 2012-09-06 01:06 | 映画