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b0041912_22562419.jpg 6月末にフランス映画祭で観た「ミステリーズ 運命のリスボン」。フランスでロングランしただけあって、4時間半近い長編大作にもかかわらず会場は満員で、前評判の高さが感じられました。
 チリ出身でパリ在住だったラウル・ルイス監督が遺言のつもりで撮ったという本作は、気合いを入れて観ないと各エピソードのつながりや時制が呑み込めなくなりそうでしたが、超複雑な構成を上手く料理した手腕はさすが。
 19世紀のポルトガルの文豪カミロ・カステロ・ブランコによる原作は相当読み応えがありそうです。

 ベースとなる舞台は19世紀のポルトガル。過去と現在が交差する物語は、修道院で成長する少年ジョアンと彼の後見役であるディニス神父(アドリアヌ・ルーシュ)を軸に繰り広げられます。
 14歳になるジョアンはディニス神父から自らの出生の秘密と、伯爵夫人である母アンジェラ(マリア・ジュアン・バシュトゥシュ)の悲恋を知らされて動揺しますが、ディニス神父は全てをジョアンに打ち明けた訳ではありません。
 「もの食いナイフ」と呼ばれた凶暴な男に暗殺されそうだった生後間もないジョアンを救ったディニス神父にも出生の謎があり、神父になる前はフランスでかなわぬ恋に身を焦がした過去が。

 成長したジョアン(アフンス・ピメンテウ)はフランスに留学。そこで出会った年上の未亡人エリーズ(クロチルド・エム)に惹かれますが、彼女はブラジル帰りの成金アルベルト(リカルド・ペレイラ)に失恋して以来、引きこもり状態で、アルベルトへの復讐を企てます。
 エリーズはディニス神父のかつての想い人ブランシュ(レア・セドウ)と親友ブノワとの間にできた娘でした。 一方、羽振りの良さでリスボン中の話題をさらったアルベルトは、その昔「もの食いナイフ」と呼ばれた男で、彼はジョアンの実母アンジェラの夫の元愛人を妻にしています。
 ジョアンはエリーズのためにアルベルトに決闘を申し込むのですが。。。

 巧みに織られた糸のように時空を超えた人間関係が交差する物語は見応え充分。でも、4時間半の間ストーリーを追うことに精一杯集中したせいか、意外に見終わった後の余韻が残らなかったのが残念です。見事な構成と美しい画像に終始引き込まれたのは確かだけど、それ程心に残るものが無かったのは、これが文学作品でも歴史大作でもなく、運命の不思議と偶然を駆使したストーリーテリングに近いからでしょうか?

 しかし、なんと言っても嬉しかったのは、上映後にメルヴィル・プポーが登場して、亡き監督の思い出や映画作りについて語ってくれたこと。
 11歳でルイス監督に見出されて以来、監督の11作品に出演したというメルヴィル・プポー。婚約者に振られ、傷心の思いでルイス監督のアパルトマンに泊めて貰った日、夜中にトイレに起きたら、書棚だらけの廊下に迷って自分の寝ていた部屋がわからなくなり、仕方ないからそのまま廊下の本棚の隙間で眠ったとか。
 その時のフィアンセとは、16歳の頃婚約してたというキアラ・マストロヤンニかな?なんて想像してしまいました。
 因みにこの映画でプポーは「ナポレオン皇帝万歳!」と叫ぶだけのゲスト出演です。
公式サイト : http://www.alcine-terran.com/mysteries/
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by cheznono | 2012-10-28 22:57 | 映画

そして友よ、静かに死ね

b0041912_0311048.jpg 男の友情を描いたフレンチノワール「そして友よ、静かに死ね」をやっと観て来ました。監督は警察映画の傑作「あるいは裏切りという名の犬」のオリヴィエ・マーシャル監督。今回も実話を元にした作品で、寡黙で思慮深い主人公モモンに扮したジェラール・ランヴァンの表情が目の裏に焼き付くような映画でした。

 70年代初めに、警察も一目置くほどの鮮やかな手口で銀行強盗を繰り返した伝説の強盗団“リヨンの奴ら”を率いたモモン。25年前にきっぱり足を洗い、今は還暦を迎えたモモン(ジェラール・ランヴァン)は、たいていの人が人生に期待するもの:成功、財産、愛する家族に信頼できる友人仲間などを全て手に入れ、穏やかな毎日を送っていました。
 そこへ13年前に姿を消した親友セルジュ(チェッキー・カリョ)がリヨンに舞い戻ったものの、張っていた警察に逮捕されたから、何とか脱獄させようという連絡が入ります。
 幼い頃、ジプシーのキャンプ出身のために学校でいじめられたモモンを守ってくれたセルジュ。以来、二人は無二の友人となり、19歳の時にさくらんぼを盗んだ罪で収監された時も一緒でした。
 
 やがて、自らの強盗団を結成した二人は、警察によるギャング一掃作戦で捕まるまでの数年間、銀行強盗で稼ぎまくり、フランス中にリヨンのギャングたちの名を轟かせる存在に。
 逮捕され服役した後、足を洗ったモモンに対し、セルジュは麻薬取引にのめり込み、今回その親分を裏切ったため命を狙われる身となり、たとえ刑務所に入っても中で暗殺される可能性が高いという危機に直面していました。
 「家族のことを考えて」と願う妻ジャヌー(ヴァレリア・カヴァッリ)には、セルジュは自業自得だよと言い切るモモンでしたが、やはりセルジュは兄弟のような存在。長年苦労をかけた妻には打ち明けずに、若い連中を使ってセルジュを脱獄させます。
 お陰でモモンは、警察と麻薬取引の組織との両方から目を付けられ、脅される身に。しかも、セルジュが裏切った麻薬組織の陰には大物がいる気配が。しかし、セルジュは自分を救い出してくれたモモンにも真相を話そうとしません。
 荒っぽい麻薬組織はセルジュの娘を狙い、モモンの自宅にも危険が迫って。。

 男同士の強い絆というテーマは「最強のふたり」と同じでも、こちらは生きるか死ぬかの綱渡りギャング人生を送って来た仲間同士なので、友情を貫くにはかなりきわどい道を歩まざろう得ず、最後には哀感漂う結末を迎えることになります。
 
 原作は主人公エドモンド・ヴィダル(モモン)による自伝「ひとつかみのサクランボのために」。ジャン・バルジャンではないけれど、閉店した八百屋から盗んだサクランボのために、半年(実際には63日)の刑務所暮しを余儀なくされたのは、モモンがフランス国籍はあるものの社会的に厳しい差別の対象にされているジプシー(ロマ族)出身だから。
 上告不可、執行猶予なしで収監されたその刑務所でモモンは強盗の極意を学び、出所後はドゴール大統領の闇組織に誘われ、本格的に強盗の道に入って行く、という運命の皮肉。
 
 サルコジ前大統領に目の敵にされたジプシーのロマ族は、キャンピングカーでルーマニアやブルガリアから流れて来る“旅する人々”で、同じヨーロッパ人でもフランス国内での就業などが著しく制限されている受難の民。未だに水道も電気も通わない劣悪な条件のスラムやキャンプ場で暮らし、仕事がないため犯罪に走る率も目立って高いため(この2年間でロマ族による犯罪は70%近くも増加)、フランスにとっては悩ましい存在です。
 政府は断続的に彼らの不法キャンプを強制的に排除しては、わずかなお金や羊を与えて、故郷にお戻り頂くよう国境まで送って行くのですが、しばらくするとまたフランスに戻って来てしまう、といういたちごっこが繰り返されています。
 ロマの人々は故国に戻っても、やはり激しい民族差別とより惨めな生活が待っているだけなのだとか。

 まるで非行の温床のように忌み嫌われるジプシーのキャンプから、モモンのような伝説のギャングが生まれ、今もリヨンの豪邸で家族や仲間を大事にしながら、穏やかに暮らしているというのはどこか感慨深いものが。
 この夏もリヨンを含むフランス各地で不法キャンプが強制撤去され、泣き叫びながら追い出されるロマ族の様子が放送されたのをモモンはどんな思いで観ていたでしょうか?
公式サイト:http://soshitetomoyo.com/
エドモンド・ヴィダルの自叙伝: Pour une poignee de cerises
http://www.amazon.fr/Pour-une-poignée-cerises-Itinéraire/dp/2749914876/ref=sr_1_1? s=books&ie=UTF8&qid=1349537149&sr=1-1
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by cheznono | 2012-10-07 00:40 | 映画