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王妃に別れを告げて

b0041912_0232.jpg フランス革命勃発時のヴェルサイユ宮殿で、蜂の巣をつついたように右往左往する宮廷人たちを尻目に王妃マリーアントワネットへの忠誠を貫くうら若い朗読係シドニー。彼女から見た緊迫の3日間を描く「王妃に別れを告げて」。 
 ベテラン、ベノワ・ジャコー監督は、シドニーの王妃への思慕と王妃のポリニャック夫人への寵愛という三角関係を軸に、沈むタイタニック号のようなヴェルサイユの様子を映画にしたかったと語っています。
 フランスメディアがこぞって絶賛したこの作品、観客の感想は賛否両論でかなり分かれましたが、私もいまひとつピンと来ませんでした。グザヴィエ・ボーボワ(「神々と男たち」の監督です)のルイ16世もさることながら、一番違和感があったのは、ダイアン・クルーガーの王妃役。加えて、怪しく美しい同性愛的関係の強調です。キルスティン・ダンスト(ソフィア・コッポラの「マリーアントワネット」の主役)の方がまだ雰囲気が実像に近かったのでは?

 突然のバスティーユ陥落で今後の身の振り方を苦慮する貴族やさっさと逃げ出す宮廷人の中で、王妃の朗読係シドニー(レア・セドウ)は、敬愛するマリーアントワネットに忠誠を誓います。
 故郷オーストリアに避難したいのはやまやまの王妃でしたが、ルイ16世がヴェルサイユにとどまる方を選んだため、王と行動を共にすることに。
 王妃は大のお気に入りであるポリニャック公爵夫人(ヴィルジニー・ルドワイヤン)が自分と同様、革命派のギロチンリスト上位に載っていると知り、即座に亡命を勧めます。王妃の本音は、そうはいっても自分を見捨てて行かないで、という思いだったでしょうが、ポリニャック夫人はあっさりと逃亡を承諾。
 最後まで王妃に仕えるつもりだったシドニーは、その身代わりを頼まれ動揺します。それは、命がかかった危険な使命。けれども、孤児のシドニーに選択の余地はありません。 
 かくて、ヴェルサイユを後にしたシドニーはポリニャック夫妻と共に、革命派が目を光らせる国境へと向かうのでした。

 宮殿での外ではオーストリア女、浪費家、レズビアン(その前は浮気女と呼ばれていた)等々と中傷され、目をかけた取り巻きたちに去られて孤立する王妃に、変わらぬ純真な思慕を寄せる朗読係に扮したレア・セドウが光っています。
  王妃のポリニャック夫人への過度な思い入れにジェラシーを感じるシドニーが、「あなたを見捨てないわ」と言ってくれた王妃から、ポリニャック夫人の身代わりを命じられて、その場で彼女の衣装を身にまとい、死を覚悟して階段を降りて来る時の凛とした表情が忘れられません。
 しかし、気に入った使用人にはとても思いやりがあったというマリーアントワネットが、朗読係にこういう任務を課したとは信じ難い気が。。

 原作はフェミナ賞に輝いたシャンタル・トーマの同名小説。原作者も映画と小説は別物と言っていますが、設定や解釈がかなり違っていたため、ちょっと戸惑いました。でも、華やかなヴェルサイユで、貴族と使用人を合わせると3000人余りの人々が、住む部屋も足りずにひしめき合って暮らしていた様子は、まさにこの映画の通りだったに違いないそうです。

「ヴェルサイユ宮殿に暮らす優雅で悲惨な宮廷生活」ウィリアム リッチー ニュートン (著), 北浦 春香 (翻訳)
映画を観てから、ヴェルサイユ生活の舞台裏が詳しく記されているこの本を読むと、当時の宮廷事情がより興味深く感じられるかも知れません。
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by cheznono | 2012-12-26 00:03 | 映画