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愛、アムール

b0041912_1152130.jpgカンヌ映画祭でパルム・ドールを受賞した後、アカデミー賞で外国語作品賞に選ばれたミヒャエル・ハネケ監督の「愛、アムール」。フランスに比べて遥かに家庭で介護するケースの多い日本では、ここに描かれた老老介護の過程はまさに身近な現実です。
カップルであっても親子であっても一人であっても、身体が効かなくなる人生の終盤とどのように向かい合うか、改めて考えさせられました。

パリに暮らす音楽家夫婦のジョルジュ(ジャン=ルイ・トランティニャン)とアンヌ(エマニュエル・リバ)。悠々自適な引退生活を送る二人でしたが、ある時、アンヌが脳疾患で発作を起こします。
半身不随の車いす生活となったアンヌは、夫にもう病院には戻さないでと頼み、ジョルジュは妻との約束を守るべく自宅での介護生活に踏み切ります。
トイレもシャワーも夫の手を借りないと用を足せなくなったアンヌ。必然的にアパルトマンに引きこもりとなった二人の間にはこれまで以上に濃密な絆が育まれ、逆に時折ロンドンからやって来る一人娘(イザベル・ユペール)とは距離感が深まります。

ようやく介護のリズムに慣れた頃、アンヌに二度目の発作が襲い、アンヌの病気はいっきに進行、意思の疎通も難しい状態に。
しっかり者だった母親とまともな会話も成立しなくなってしまったことが受け入れられない娘と、頑に自宅での介護を続けようとする夫。孤立する老夫婦に容赦なく病状は悪化して行き。。

妻への愛や同情ゆえに、自宅で介護にかかりきりになるジョルジュが精神的に追いつめられて行く過程は、日本のあちこちで日常的に起こっている現実と重なる部分も多いでしょう。
確かに夫婦愛には打たれますが、北欧には及ばないにせよ、社会保障制度が恵まれているフランスで、ブルジョワの文化人カップルが選択した老老介護のあり方にショックを受けました。
例えば、訪問介護士を自費だけで雇い、契約も口約束だけどの個人取引で済ませるなんて、問題が起こるのは自明の理では?
とはいえ、家政婦さんを雇う時はもちろんのこと、住まいの賃貸契約も代理店を通さず個人契約する場合が多いお国柄では、さほど不自然ではないのかも知れません。

ケアマネージャーが訪問介護事業所を探してくれ、たとえ短期のヘルパーさん派遣であってもきちんと契約を交わし、ケアマネ立ち会いのもとに何枚もの書類に署名捺印する日本のシステムは、責任の所在もはっきりしていて素晴らしい。

ヨーロッパの街角でよく見かけるアンヌとジョルジュのような熟年カップルが、尊厳のある自立した生活を孤立することなく続けられる社会とは?難問を突きつけて来る作品ですが、ラストのイザベル・ユペールの仕草には不思議と希望が見えるようでした。
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by cheznono | 2013-04-14 01:18 | 映画