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皇帝と公爵

b0041912_0425725.jpg 「ミステリーズ・運命のリスボン」のラウル・ルイス監督の遺したプロジェクトを、長年のパートナー:ヴァレリア・サルミエントが完成させた「皇帝と公爵」。名匠ルイス監督にゆかりのあるフランスの俳優陣が参加している歴史絵巻と聞き、公開を楽しみにしていました。

 今回も舞台はポルトガル。1810年、ナポレオンからポルトガル征服を命じられたマセナ元帥(メルヴィル・プポー)は、大軍を率いてブサコを目指します。既にポルトガル国王はブラジルに避難していて、フランス軍の進軍を迎え撃つのはウェリントン公爵(ジョン・マルコヴィッチ)率いる英国軍でした。(イギリスは対フランス同盟軍に加わっていて、当時商業的に利用していたポルトガルを守るため)
 マセナ元帥率いるフランス軍は圧倒的な数の力で進軍。素行が悪く、略奪や婦女暴行を躊躇わなかったためにポルトガル市民から憎まれ、ポルトガルの兵士達は必死の抵抗を試みます。

 一方、ウェリントンはフランス軍との決戦を避けて撤退したと見せて、実際には防衛のためにリスボンの手前に広大な砦:要塞トレス線を建設させていました。
映画の中のウェリントンはゆうゆうと構え、ひたすら画家レヴェック(ヴァンサン・ペレーズ)に士気を鼓舞するための戦争絵画を描かせます。
ナポレオンにいたってはいっさい姿を見せません。

 映画は、フランス軍の侵攻で傷つきながらも祖国を守るため、果敢に前線から離れまいとする兵士たちやその周りの女性達、砦建設に従事する若者、戦乱の巻き添えをくらう一般市民などなど、視点を主にポルトガル側に向けて、戦争の世の理不尽さをあぶり出します。ゴヤがナポレオンのスペイン侵略時について描いた絵をもじったシーンも。
 
 ナポレオンの侵略命令のお陰で、いかにポルトガル市民や兵士が傷つき、悲喜劇に翻弄されたか、は丁寧に描かれているので、その意味で観て良かったと思います。

 ただ、カトリーヌ・ドヌーヴ、ミシェル・ピコリ、イザベル・ユペールを初め、肝心のメルヴィル・プポーも152分中わずかに顔を出すだけなのは、何とも残念。せいぜいマチュー・アマルリックのマルボ男爵のナレーションが引き立つくらいで、ルイス監督へのオマージュのための友情出演とはいえ、そうそうたるフランス俳優陣がおまけのようなのはちょっと肩すかしです。
重点的に描かれたポルトガル側の俳優がみんな良い味を出しているのだから、世界的に名の売れた俳優達をわざわぜちょい役に使わなければ、もっと印象に残る映画になったのではないでしょうか?
ちなみにフランスメディアはこぞって好評価、でも観客評はイマイチでした。

 ナポレオンにその手腕を買われたマセナはニース出身。軍師としては優秀でしたが、粗暴で女好き、このブサコの戦いにも愛人ユサルド(キアラ・マストロヤンニ)を男装させて同行したほど。ニースの中心、あのマセナ広場はこの人の名前を冠しているそうです。
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by cheznono | 2014-01-18 00:46 | 映画

鑑定士と顔のない依頼人

b0041912_17211665.jpg ジョゼッペ・トルナトーレの映画にはずれはないよねと気合いを入れて観に行った「鑑定士と顔のない依頼人」。《極上のミステリー》かどうかはわからないけれど、確かに「英国王のスピーチ」のジェフリー・ラッシュがすごい。何一つ見逃さないぞと最後まで緊張してスクリーンを見つめましたが、あまり意味はなかったような。

 超一流の絵画鑑定士ヴァージル(ジェフリー・ラッシュ)は、世界中のオークションで引く手あまた。潔癖性で人間嫌いの彼は、一方で長年の相棒ビリー(ドナルド・サザーランド)と組み、八百長スレスレな方法で名だたる名画を自分の秘密のコレクションに加えています。
多忙な日々を送る中、両親の遺した美術品を売りたいという若い女性から鑑定を依頼され、古い屋敷に赴くヴァージル。しかし、依頼人クレア(シルヴィア・ホークス)は、思春期のある事件をきっかけに広場恐怖症になって以来、引きこもり状態で、殆どいっさい人との対面を拒絶。ヴァージルは声だけで姿を現さない彼女に翻弄されます。

 ある日、ついにクレアの姿を垣間見たヴァージルはその外見に魅了され、何とか彼女を普通の暮らしに戻したいと尽力します。息子のような歳の美術品修復家ロバート(ジム・スタージェス)にその経過を逐一報告。これまで女性と交際した経験のないヴァージルは、ロバートのアドヴァイスに従ってクレアと信頼関係を築き、親密な関係に進むべく情熱を傾けるのですが、、

 年末に沢木耕太郎氏が「今年の一作」とも言うべき作品かも知れないと書いていたので、うーむ?と思いましたが、こう言っている男性は多いですね。もしかして、この映画は男性と女性で感想に結構差があるかも知れません。

 ある種のサスペンスとしてはかなり面白いけれど、ミステリーとしては背景に深みが足りないと感じましたが、沢木氏も結論で書いていたように、私もこの映画は一種のハッピーエンドに違いないという印象です。代償は大きかったにせよ、私生活はいたって単調だった主人公がこれまで知らなかった世界を知り、ドラスティックな体験したわけだから。だからこそ、ヴァージルはプラハを訪れたのではないかと思うのです。
 ミステリー仕立ては監督の遊び心、ジョゼッペ・トルナトーレはここでも人間の本質を浮き彫りにしています。
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by cheznono | 2014-01-12 17:39 | 映画

 あけましておめでとうございます。
2014年が皆さまにとって、健やかで実り多い一年となりますように。

 遅ればせながら昨年観た映画を振り返り、独断と偏見に満ちた2013年ベスト5を選んでみました。
昨年は全然映画を観に行けなかった月もあるため、映画館で観た作品は合計25本。

 まず5位は「クロワッサンで朝食を」かな。中年女性が一人異国で働くことの難しさや、十分な遺産があっても異国で老いる老婦人の孤独に、エッフェル塔の佇まいが冷たく迫って来るような映画でした。
b0041912_12588.jpg  4位はベン・アフレック監督・制作・主演の「アルゴ」(正確には2012年秋公開映画)。1979年、イラン革命が激化するテヘランで、アメリカ大使館が過激派によって占拠され、52人が人質に。混乱の最中、どさくさに紛れて逃げ出したアメリカ人6人がカナダ大使の自宅にかくまってもらいます。
 しかし、イラン側の執拗な捜査の手が迫ったため、CIAが救出作戦を練るのですが、担当者トニー・メンデスのあまりに奇抜な脱出作戦に6人は疑心暗鬼となり。。。
ハリウッドで「アルゴ」という架空のSF映画を企画、6人をその撮影スタッフに偽装してイランから出国させようとするトニー・メンデスの冷静かつ人間的な人物像が実に魅力的。サスペンス劇としても一級で、結末がわかっていても、あまりのスリルに後半は心臓の動悸が止まりませんでした。

 b0041912_162612.jpg 3位は18世紀のデンマーク王室を舞台にした「ロイヤル・アフェア 愛と欲望の王宮」。精神を病んだ国王クリスチャン7世の元に嫁いだ英国王ジョージ3世の妹カロリーネ。王の侍医で親友ともみなされたドイツ人のストルーエンセと恋に落ち、子供を身ごもります。
 フランスの啓蒙主義に感化されたストルーエンセは、王の信頼を受けてデンマークの政治改革を進めて行きますが、貴族たち特権階級の反感を買い、王妃との不倫も明るみになって、反逆罪に問われ失脚。
 薄幸の王妃カロリーネ・マティルダは、マリー・アントワネットとほぼ同世代です。デンマークでは有名な歴史的事実を新たな解釈で映画化したというこの作品、非常に見応えがありました。

 2位は「最後のマイウェイ」。究極のエゴイスト的な面もあるけれど、類いまれな才能に恵まれ、ジョニー・アリデイに追いつけ追い越せの勢いで自身の実力を頼りに上り詰めて行ったクロード・フランソワへのオマージュです。

b0041912_182213.jpg 迷った挙げ句の1位は「ライフ・オブ・パイ 虎と漂流した227日」。ブッカー賞を受賞したベストセラーをアン・リー監督が映画化。3Dで見応え十分の海洋アバンチュールであり、同時に哲学的示唆に富んだ作品。奇想天外なストーリーに加えて、ラストの衝撃は「鑑定士と顔のない依頼人」どころではありませんでした。
 インドから家族で乗りこんだ北米行きの貨物船が遭難、一匹のトラと救命ボートで漂流することになった少年パイ。動物園を経営する父親が一家でカナダ移住を決め、動物たちも一緒に貨物船に乗せてインドを出航したものの、大嵐に遭遇して船が沈没。必死で救命ボートに飛び乗ったパイは、そこに体重200キロ強のベンガルトラが潜んでいるのに気づいて驚愕します。
 かくて、パイと猛獣を乗せた救命ボートは太平洋上を漂い、227日に渡る壮絶なサイバイバルゲームが繰り広げられるのですが、、

 今年も新春から話題の映画が続々公開されるので、大いに期待しています。
本年もどうぞよろしくお願い致します。
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by cheznono | 2014-01-03 01:09 | 映画