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アデル、ブルーは熱い色

b0041912_2385213.jpg 去年のカンヌ国際映画祭でパルムドールを受賞した「アデル、ブルーは熱い色」。アブデラティフ・ケシシュ監督だけでなく、主演の二人の女優:レア・セドウとアデル・エグザルコプロスも共に表彰されて話題になりました。メディアが諸手を挙げて絶賛したこの映画、原作はフランスで人気のコミックです。

 物語は「17歳」と同じく、高校生のアデルの性の目覚めから始まりますが、こちらは女性同士の純愛ストーリー。カンヌで審査委員長を務めたスティーブン・スピルバーグは、「今世間を賑わしている空気は関係ないよ、僕たちは彼女達の愛の物語に心打たれたんだ」とこの映画を讃えましたが、そこは政治色や社会問題が焦点となるカンヌ、とても言葉通りには受け取れません。メディア票は満場一致でも、観客の感想は真っ二つに分かれた作品です。

 舞台はベルギー国境に近い街リール。映画はドキュメンタリー風に高校生アデル(アデル・エグザルコプロス)の日常を描きます。上級生の男の子と親しくなり、ベッドを共にするものの何かもの足りず満たされないアデル。
「17歳」で高校生に朗読させるのはランボーの詩ですが、ここでは伯爵夫人のアバンチュールを描いたマリヴォーの古典「マリアンヌの生涯」が登場して、思春期の恋愛感情を触発します。(原題はこの作品タイトルにかけています。)
 ある日、偶然出会った美大生エマ(レア・セドウ)に強く惹かれ、二人はたちまち恋仲に。アートの世界に通じる大人びたエマに夢中になったアデルは、肉体的にも彼女にのめり込みます。長々と実写で繰り返される二人のベッドシーンのそれは濃厚でエロティックなこと。

 芸術家の卵仲間に囲まれ、画家として自立する道を探るエマに対して、文学少女で家庭的なアデルは大学を出て幼稚園の先生に。アデルの両親にとって同性愛は別世界のお話。人生に大切なのは確実に食べて行ける職につくことという典型的な保守派ですが、エマの実家はリベラルでレズビアンの娘を温かく見守り、アートに囲まれた暮らしを楽しんでいる様子。
それぞれ典型的なフランスの家庭ですが、トマトソースにまみれたスパゲッティ・ボローネーゼがアデルの育った家庭の象徴で、エマの家では食感がエロティックと言われる生牡蠣が並びます。どちらも月並みな人気料理だけど、この両者に二人の生い立ちや感性の違いを反映させているところがミソ。

 教養あるアーティストの世界にいるエマは、アデルに文学の世界を広げることを望み、自分のために家事や料理にいそしむアデルが次第に物足りなくなります。あれほど親密だった関係に隙間風が吹き始め、アデルは寂しさに負けて男性の同僚との火遊びに走ります。
 それに気づいたエマは、唐突にきっぱりとアデルを自分の住まいから追い出すのでした。

 互いに一目惚れで始まった大恋愛のときめきから終焉までの数年間を頻繁な表情のアップによる心理描写とリアルなベッドシーンで描いたこの映画、二人の間に通った愛情は心打つものがあるにせよ、3時間は長過ぎる。二人が同性愛であること以外はよくある恋愛の顛末で、それ以上の深みが感じられません。

 ではなぜパルムドールを獲得したか?折しもちょうど一年前のフランスでは同性愛者同士の結婚が国会で承認されたばかり。パリや大都市ならゲイカップルが珍しくないお国柄なのに、この結婚法案に対する保守派の国民の抵抗はあっけに取られるほど強く、連日のようにあちこちで過激な反対デモが行われていました。
 隣のイギリスでは同性愛結婚がすんなり公式に認められたのに、なぜフランスでこんなにも反対が強いのか?普段は隠れている保守的な農業国の伝統が思いっきり顔を出したことに戸惑う人々も多かったようです。なので、スピルバーグ審査員長がどう言おうと、この映画の受賞には明らかなメッセージ性を感ぜずにはいられません。
 個人的には、同性である女性に対してここまで強い恋愛感情と欲望を抱けることに軽いめまいを覚えました。映画で男性ゲイカップルのベッドシーンを観てもこうした違和感を感じないのは、やはり自分が女性だからなのでしょうね。 
公式サイト:http://adele-blue.com
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by cheznono | 2014-04-21 02:41 | 映画