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イヴ・サンローラン

b0041912_23384434.jpg 高級プレタポルテに縁のない私にはせいぜい化粧品と香水でお馴染みという程度のイヴ・サンローラン、デザイナー自身の実像は殆ど知りませんでした。しかし、2008年のサンローランの死後、ピエール・ベルジェがフランスメディアに登場しなかった月はないほどで、二人がいかにフランスで存在感のあるカップルだったかは推して知るべし。
 激動のファッション界の第一人者として生き抜いた二人の栄光と葛藤を描いたこの作品はとても興味深く感動的でもあります。

 アルジェリア戦争真っ只中、21歳のサンローラン(ピエール・エネ)は急逝したクリスチャン・ディオールの後継デザイナーに指名されます。周囲の嫉妬やいぶかいの目をよそに、サンローランの初コレクションは大成功。画家ベルナール・ビュッフェの愛人だったピエール・ベルジェはサンローランの才能に感服し、その内気で繊細な姿に惚れ込みます。ビュッフェと別れたベルジェはサンローランと暮らし始め、服作り以外は子供のように世間知らずのサンローランを公私ともに支えます。
 両親がアルジェリアに残っているのに兵役で招集されたサンローランは精神を病んで病院へ。ディオール社は彼をクビにします。
 憤慨したベルジェとサンローランは独自のメゾンを立ち上げることを決意、モデルのヴィクトワール(シャルロット・ル=ボン)の協力もあって、1961年、二人はイヴ・サン=ローラン社を創立。オート・クチュールから大量生産のプレタポルテが主流になって行く過渡期に、サンローランはまさに身を削ってエレガントで斬新なモードを作り出して行きます。

 実務的には無能に近いサンローランに代わって、経営や営業などのビジネス面やメディア対応は全てベルジェが引き受け、デリケートなサンローランが服作りに専念できるよう必死で彼を守ります。しかし、自分の才能だけを頼りに次々に新しいデザインを発表しなければいけないサンローランはプレッシャーとストレスに押しつぶされ、次第に酒に飲まれ、薬に手を出し、刹那的な快楽に身を任せるように。
 そんなサンローランに手を焼くベルジェは、カール・ラガーフィールドの愛人ジャックとの愛欲に溺れるサンローランから、ジャックの美点と彼を愛しているんだと聞かされます。「でも、生涯の男は君一人だよ」の一言に、やはりサンローランを守り抜く決意を新たにしたベルジェ。ジャックにサンローランと手を切るように諭します。
 ベルジェは、ジャックに去られて荒れるサンローランをまるで父親のように受け止めるのでした。

 画面を彩るサンローランのコレクションの数々は、ピエール・ベルジェ=イヴ・サンローラン協会が貸し出した本物の衣装を使用。ピエール・ベルジェの全面的な協力で制作された作品だけあって、あくまでもベルジュの視線で描かれてはいますが、50年間に渡るベルジェの父性愛にも通ずるサンローランへの愛情には感動を覚えずにいられません。
 コメディ・フランセーズから参加した主演のピエール・エネの演技を観た時、あまりに若き日のサンローランに似ていたために思わず涙したというベルジェ。
いかにサンローランが類いまれな才能に恵まれていたにしても、ベルジェの深く大きな愛情とビジネスの才覚あってこその成功だったことは疑う余地がないでしょう。
 
 フランスでは今週、イケメン俳優ギャスパー・ウリエルがサンローランに、ジェレミー・レニエがピエール・ベルジュに扮した「サンローラン」が封切られ、前評判も上々なので、こちらも是非日本公開を期待したいですね。

 ちなみに画家のビュッフェは、ベルジェと別れた後、歌手で作家の奔放な女性アナベルに一目惚れ。結婚後は彼女の絵を描きまくっています。
 
イヴ・サンローラン公式サイト:http://ysl-movie.jp
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by cheznono | 2014-09-25 23:43 | 映画

b0041912_0515819.jpg 久々のブログ復帰です。今年、これまでに観たフランス映画の中でピカイチだった「グレートデイズ!夢に挑んだ父と子」。(まるでドキュメンタリーのような邦題なのは、ニルス・タベルニエ監督がバレエ・ダンサーの記録「エトワール」をはじめ、主にドキュメンタリー作品を手がけて来たから?)
今回は主演の車椅子の青年にフランス中の障がい者施設をまわって見つけたというファビアン・エローを起用。脳障がいを持つというファビアンですが、笑顔も感情表現も素晴らしく、父親役のジャック・ギャンブランとまるで本当の親子のよう。意志の強いジュリアンの成長の物語であると同時に、人生に疲れていた父ポールが自信や愛を取り戻す物語でもあるのがこの作品をより深みあるものにしています。

 アルプスのロープウェイ修理技師ポールが仕事をクビになって妻子の暮らす山荘に戻って来ます。けれどポールは、父親の帰宅を楽しみにしていた17歳のジュリアンには目もくれず、美容師の妻クレール(アレクサンドラ・ラミー)ともまともに向かい合おうとしません。
 夫の留守を守り、車椅子の息子を支えて来たクレールは、ポールの態度に不満炸裂。息子が誕生した時はとても喜んだポールでしたが、その子が歩けないと知った日からその現実を受け入れられず、全てを妻に任せて仕事に逃げて来たのです。

 一方、何とか父親の気を引きたいジュリアンは、昔ポールが数々の大会に出場したスポーツマンで、トライアスロンの鉄人レースにも参加していたことを知り、夢を膨らませます。父と組んで一緒にアイアンマンレースに挑戦したい!両親の説得を試みますが、即座に大反対されてしまいます。
 息子の提案を全く相手にしなかったポールですが、ついに頑固で熱心な息子に根負け。二人乗り自転車でレースの練習を開始します。お陰で父子の距離はこれまでになく縮まりますが、肝心のニースのアイアンマンレース審査会はジュリアンのハンディキャップを理由に父子のエントリーを却下。過酷なアイアンマンレースに参加を拒否され、ポールはむしろほっとするのですが。。

 タベルニエ監督は、アメリカの退役軍人の男性が脳障がいを持つ車椅子の息子と共に数々のマラソン大会やトライアスロンに出場し、アイアンマンレースも何度か完走したという実話にヒントを得てこの映画を製作。息子を乗せたボートをロープで結びつけて地中海を泳ぎ、更に猛暑の中を自転車で山越えするという想像を絶する過酷なレースに向けて、親子が初めて真剣に向き合い、難関に挑むことで絆を深めて行く。崩壊寸前だった家庭も二人の挑戦を応援し協力することでまた一つになり、再生するという過程が無理なく描かれていて、観客も明るい希望とパワーが貰えます。
 難しい気質で頑固なジュリアンに振り回されたけれど、だからこそ今の自分があるという、ジュリアンの姉が弟の誕生日ディナーの時に読み上げる手紙も感動的。 

 アルプスのふもと、アヌシー地方の山村の映像も目にしみるような緑が美しいし、後半のニースのシーンもかなり美化されていて嬉しくなりました。
アイアンマンレースはフランスが公式ヴァカンスに入った6月末に開催されます。我こそはという方は是非2015年の大会に挑戦あれ。参加申し込みは以下のサイトから。http://www.ironman.com/fr-fr/triathlon/events/emea/ironman/france-nice.aspx#axzz3DCmg2kL3

「グレートデイズ」公式サイト:http://greatdays.gaga.ne.jp/
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by cheznono | 2014-09-14 00:52 | 映画