フェア・ゲーム

b0041912_233856100.jpg ブッシュ政権によるイラク戦争突入に強い疑問を持ったが故に、ホワイトハウスに裏切られた実在の夫婦を描いた政治サスペンス「フェア・ゲーム」。国家による大いなる嘘の恐ろしさに震撼とさせられます。

 CIA勤務のヴァレリー(ナオミ・ワッツ)は一度に幾つものプロジェクトを抱え、世界中を飛び回る活躍ぶりで一目置かれるタフで優秀な諜報部員。家庭的には元大使の夫ジョー(ショーン・ペン)と双子に恵まれ、表向きには金融キャリアウーマンとして充実した日々を過ごしていました。
 2001年9月の同時多発テロ後、米国務省は、イラクが核兵器製造に使用するためにニジェールから大量の濃縮ウランを買い込んでいるふしがあると疑います 。
 イラクへのウラン輸出を調査すべく、元ニジェール大使のジョーがアフリカに派遣されますが、現地を見たジョーは、ニジェールがイラクにウランの大量輸出をしている様子はないと政府に報告。
 妻のヴァレリーもイラク国内の化学者と接触し、パパブッシュが引き起こした湾岸戦争後は戦車の部品も不足しているイラクで、核兵器の開発などできる状況ではないと確信します。

 しかし、夫婦それぞれの報告は闇に葬られ、2003年アメリカはイラクに戦線を布告。ジョーは新聞への寄稿を通して、自分の調査結果にもかかわらず戦争に突入した政府に疑問を投げかけます。
 しかし、激しい攻撃の末、イラク国内に核兵器を初めとする大量破壊兵器が見つからないことに焦りを感じていたホワイトハウスは、ジョーの寄稿に大困惑。腹いせに妻ヴァレリーがCIAの諜報部員であることをメディアに漏らしてしまいます。
 その日を境にヴァレリーとジョーの生活は一変。ヴァレリーはCIAを追われ、一家は世間の白い目にさらされ、夫婦のストレスは最高潮に。
 ホワイトハウスの権力には抵抗できないと黙り込むヴァレリーに対して、政府の間違いを積極的にTVで告発するジョー。国を愛し、国に尽くしてきた二人の間にも溝が広がって行くのですが。。
 
 ジョーもヴァレリーもそれぞれがアメリカを愛し、強い愛国心と信頼の元に活動して来たのに、その国家がいとも簡単に自分達を裏切ったという事実が、妻を黙らせ、夫を言葉による抵抗に向かわせます。
 先進国でも政府は平気で国民に嘘をつくし、個人を見捨てるということを原発事故で身に沁みた後では、国家権力とその嘘がいかに怖いか、この映画で更に強く感じさせられました。しかし、こうした生々しい話題をすぐに映画化する(できる)点でもアメリカはすごい。
 国家が自分を見捨てた時、個人としていったい何ができるのか。。ラストに登場する実物のヴァレリー本人の映像に拍手を送りたくなる作品です。
[PR]
# by cheznono | 2011-11-05 23:54 | 映画

さすらいの女神たち

b0041912_2352438.jpg 公開を楽しみにしていたマチュー・アマルリック監督主演作品「さすらいの女神(ディーバ)たち」。何せ私の好きなマチュー・アマルリックが去年のカンヌで最優秀監督賞を受賞した映画なので、気合いを入れて観に行きました。
 最近パリでも話題になっているニュー・バーレスクショーの華やかさと、好き勝手に生きてきた中年男の悲哀とのコントラストが際立つ作品です。

 かつては人気のTVプロデューサーだったジョアキム(マチュー・アマルリック)ですが、パリにいづらくなって渡米。数年後、アメリカからニュー・バーレスクのダンサー達を引き連れてフランスに戻って来ます。
 ニュー・バーレスクとは年齢も体型もさまざまなダンサーが、それぞれが自分で工夫した演出で歌って踊るストリップ系のエンターテイメントのこと。女性の身体は自分達のもの、自分自身がその身体を存分に楽しませなくてはというコンセプトのもと、ノルマンディーのナイトクラブを皮切りに、彼女達はフランス各地でのショーを大成功させます。

  しかし、ジョアキムの組んだ巡業ツアーはなぜか大都市をはずして中小の港町ばかり。アメリカ人ダンサー達はパリでの公演を楽しみにしますが、実現できるかどうかおぼつきません。
 ジョアキムは、自分を業界から追放した仲間に一矢を報いたく、パリへ凱旋することを必死で画策するのですが、何せ資金がない。加えてその自己中心的かつ嫌味な性格が災いして、かつての同僚や大先輩、元愛人から次々とそっぽを向かれてしまいます。
 ダンサー達には虚勢を張ってみせるジョアキムですが、八方塞りに焦るばかり。自主独立精神に富むダンサーたちともしっくり行かなくなるのですが。。  
 
 才能はあるけれど周りはかなり迷惑、それでもどこか憎めない自分勝手な男をマチュー・アマルリックが実に楽しそうに魅力的に演じています。
 ジョアキムの本質を見抜きながら、自信と包容力で受け止めるダンサーのミミと彼女がふっと見せる孤独な陰がジョアキムのそれと呼応するあたりが印象的です。

  この映画で観客の男も女も湧かせるダンサー達は、みな現役のニュー・バーレスクのダンサーで、普段は個人で活動しているのだとか。今は女性だけでなく、男性の活躍も目立つというだけあって、この映画でもルイ14世のストリップが大うけしていました。
 実際にフランス中を公演して回ったニュー・バーレスクのサイト。
http://www.cabaretsnewburlesque.com/
[PR]
# by cheznono | 2011-10-15 00:01 | 映画

ゴーストライター

b0041912_0575783.jpg ロマン・ポランスキー監督が昨年のベルリン国際映画祭銀熊賞を受賞した話題のサスペンス、「ゴーストライター」。大西洋に浮かぶ寒々とした孤島で展開するストーリーは緊張感にあふれ、まるで自分も殺伐とした島内にいるかのような気持ちにさせられます。
 「戦場のピアニスト」とは全く違う手法ながら、これも一種の反戦映画スリラーと言えるかもと思いながら、最後まで食い入るようにスクリーンを見つめていました。

 いつか本物の作家になりたいと願いつつ、ゴーストライターに甘んじている青年(ユアン・マクレガー)が、元英国首相アダム・ラング(ピアース・ブロスナン)の自叙伝を1ヶ月で書き上げるという仕事をゲットします。
 破格の報酬を約束されたゴーストライターは、アメリカの孤島にあるラング元首相の別荘に招かれ、ラング夫人ルース(オリヴィア・ウィリアムズ)と秘書のアメリア(キム・キャトラル)の半ば監視下で、ラングについて取材を開始。
 しかし、元首相の忠実な右腕とも言われた前任者マカラが不可解な状況で溺死したこと知ったゴーストライターは、滞在先兼職場である別荘の居心地の悪さに加え、ラング自身とのインタビューでも違和感を感じます。
 そのラングは、イラク戦争中にイスラム系テロ容疑者を拷問にかけるべくCIAに加担した疑いがあると告発されていました。
 ケンブリッジ大学時代、政治には無関心だったというラングの言葉に矛盾を見出したゴーストライターは、前任者の死に深い疑問を抱くようになり、事実を探ろうとします。
 そして、かつては熱心な学生党員だった筈が、今や政治への関心よりも夫と秘書アメリアの関係に神経を尖らせているルースと心ならずも接近して行くのですが。。
 
 共同脚本も手がけた原作者ロバート・ハリスは、BBCの政治記者を経てトニー・ブレア元首相の就任中、首相の近くにいたという人物。だからこそ、アメリカに追随してイギリスをイラク戦争に巻き込み、多くの英国兵を犠牲にしたかどで告発されたブレア元首相をモデルにした政治スリラーには信憑性が感じられるような。。
 フランスではまるでブッシュのプードルと揶揄されたブレア氏、果たしてこの映画を観たでしょうか?

 ルースから女性関係のことを聞かれたゴーストライターが、過去に恋人以上パートナー未満の女性がいたと答えますが,うーむ?と考え込んでしまいました。原作では恋人も登場するそうなので、手にする機会があったら読んでみるつもりです。
[PR]
# by cheznono | 2011-10-05 01:10 | 映画

b0041912_23325528.jpg
 ネイチャー・ドキュメンタリーが十八番のBBC、特にこの「ライフ」シリーズは最新の技術を集結し、最新鋭のカメラを駆使して世界中のさまざまな生き物の生態を追った大プロジェクトで、公開されている「ライフ いのちをつなぐ物語」はその劇場版です。
 88分という比較的短い作品ですが、天地創造の不思議や自然の摂理、連綿と続く生命の営みについて考えさせられます。厳しい自然条件の中で生き抜こうとする動物はもちろんのこと、小さい身体で思いのほか知恵をしぼる昆虫や両生類の生き様がとりわけ印象に残りました。

 寒さ厳しい北国に暮らすニホンザルが、人間と同じく温泉を利用して凍える冬を乗り越えるのは日本でお馴染みの光景ですが、温泉に入って温まれるのは力の強い一部のサルだけで、その他の群れは、露天風呂の周りで温泉につかるサルを羨ましげに眺めているだけ。ニホンザルの共同体も一部の特権階級が利権を握る格差社会なのですね。

 先日、スーパーの魚売り場で半額になっていたから買った水だこのお刺身。ちょっと大味だけどおいしかった。その水だこが、実は一生に一度しか産卵しないとは全く知りませんでした。しかも、水だこのお母さんは、生んだ卵をじっと見守り、やがて無事に孵化するのを見届けてから、静かに自分の命を終えるという宿命だったのです。親が命をかけて生んだ水だこを半額のお刺身として安易に食べていた自分がかなしくなりました。

 南米に生息するハキリアリは、青い葉っぱを噛み切ってはせっせと巣に運んで、特殊なきのこを栽培しています。自分達の巣にきのこ農園を作り、きのこの菌から糖分を吸い上げて女王蟻に進呈するのですが、ハキリアリたちがひたむきに葉を切っては、大きな葉っぱを持ち上げて黙々と巣に向かって行進する姿からは、《蟻の7割は休んでいて、1割は一生働かない》とはとても信じられません。
 「働かないアリに意義がある」長谷川 英祐著によるとアリもハチもその7割はボーッとしており、約1割は一生働かないことが証明されたらしいですが、蟻の働き方も生息地や種類によって違うのでしょうね。

 中でも一番印象的だったのが、中米コスタリカに生息するイチゴヤドクガエルの子育て。雨蛙よりも小さい真っ赤なカエルですが、卵を産んだ後もその1つ1つが天敵の目を逃れてオタマジャクシに孵れるよう、驚異的な策を取るのです。

 地球は広い。環境もそこに暮らす生き物も実にさまざま。創意工夫に満ちた生き物たちの生態を彼らの目線で映した映像を見ながら、改めて原発事故の罪深さを感じさせられました。こんなにもさまざまな生き物が必死に生きている地球を分け合っているのだから、これからも共存して行くためにCO2の削減や少なくとも地震国の原発廃止は急がなくてはいけないという思いを新たに帰路につきました。
[PR]
# by cheznono | 2011-09-24 23:33 | 映画

b0041912_2325694.jpg 今週の1本は南イタリアの麗しい町とラテン的ブルジョワ一家の暮らしぶりが楽しめる「あしたのパスタはアルデンテ」。図らずもダブルカミングアウトする兄弟とその家族の話で、兄弟たちの祖母をキーパーソンに、周囲の期待に背いても自分の望む人生を歩むべきというメッセージを発信する佳作です。

 イタリアのかかとの部分にあたるバロック様式の町レッチェ。祖母の代からパスタ会社を営むカントーネ家で、長男アントニオ(アレッサンドロ・プレツィオージ)の社長就任を祝う身内の晩餐会が開かれます。
 ローマでボーイフレンドと暮らす末っ子の文学青年トンマーゾ(リカルド・スカマルチョ)も実家に帰省。旧弊な父親から勘当されるのを覚悟でカミングアウトする決心を固めています。 
 ところがトンマーゾの決意を知った兄アントニオが、家族の前で先にカミングアウトしたために、寝耳に水の一同は唖然呆然。怒りに任せて即座にアントニオに勘当を言い渡した父親は、ショックのあまり心臓発作で病院行きに。
 自慢の跡継ぎ息子だった長男を勘当、長女の夫は気に喰わないナポリ男とあって、父親の期待はいっきにトンマーゾへ向かいます。兄に出し抜かれた形のトンマーゾは、カミングアウトはおろか恋人の待つローマに戻ることもできず、共同経営者の娘で勝ち気なアルバ(ニコール・グリマウド)と共に、パスタ工場の経営を押し付けられる羽目に。
 作家になる夢とローマの恋人を思いながら、仕方なく会社経営の修行をするトンマーゾと、同性愛者と知りながら彼に惹かれるアルバが微妙な関係になった頃、突然ローマから恋人マルコとゲイ仲間が尋ねて来たからびっくり、何も知らない両親の手前、トンマーゾは窮地に立つことに。。

 あらすじと変な邦題を見る限り、ラテン的どんちゃんコメディかのようですが、そこは自身もホモセクシャルであるベテラン、フェルザン・オズペテク監督の作品、イタリアといえども南部の地方都市でのゲイの住み難さや偏見との葛藤、疎外感や苦悩、家族との調和の難しさをユーモアにくるみながら上手に描いています。

 家業を継ぐのが当然のこととして期待され、同性愛を押し隠して来たアントニオが、ローマの大学に進学して自由を謳歌していた弟をうらやんでいたこと、男好きの叔母の若い頃の駆落ち話などワンシーンで語られるエピソードや、とりわけ祖母の秘められた恋が美しい映像と共に織り込まれて、この映画を重層的にしているのが魅力的です。
 自分の時代にはかなわなかったけれど、たとえ肉親であろうとも他人の望む人生を選ぶことはないと孫を励ますおばあちゃんは、嫁ぐ前から愛していた夫の弟と天国で添い遂げるつもりなのかも。

 北イタリアでは山あいの小村でもホモセクシャルを表す虹色の旗が窓に翻っているのをよく見かけるので、南イタリアではここまで世間体を気にするのかと意外でした。
 もっとも、大都市ではゲイカップルが1割近いと言われるフランスでも、地方出身のゲイの男性が、「地元では差別が強くて暮らし辛かったけれど、パリのマレ地区に行って初めて解放された気持ちになった」などと語る様子が5月17日の同性愛差別反対の日に放送されていたので。まだどこかカトリックの呪縛が根強いのか、そもそも少数派を差別したくなるのが人間の悲しい性なのか。
 でも、映画のラストには、古い価値観から抜け出して多様性に寛容となる兆しが見られ、カントーネ一家も私たちも、明るい希望に包まれます。
[PR]
# by cheznono | 2011-09-11 23:16 | 映画

黄色い星の子供たち

b0041912_2355217.jpg 観なくてはと思いつつ、重いテーマについひるんでいた「黄色い星の子供たち」をやっと観て来ました。年末に公開予定の「サラの鍵」に共通するフランスによるユダヤ教徒迫害や同時に行われたジプシーの収容所送りを扱った作品がフランスではここ数年次々に公開されています。
 歴史的な暴挙を反省をこめて客観視するのは、加害者側であるフランス国民にとってイタいことに違いありませんが、事実から目を背けずにこうした映画を公開し、ヒットさせる土壌には感心させられます。
 もっともフランス政府がユダヤ人一斉検挙の事実を認めたのは、戦後50年も経ってからでしたが。

 1942年、ナチスドイツに占領されヴィシー政権下のフランスで、ヒットラーがフランス政府に対して国内のユダヤ人の引き渡しを要求。フランス側は、国民感情や国際社会の反応を慮って躊躇しますが、フランス警察のトップは、交渉を有利に運ぶべく、ドイツ側にユダヤ人検挙の際の交換条件を提示するのでした。

 その頃、ユダヤ系ポーランド移民のヴァイスマン家は、モンマルトルの丘の小さなアパルトマンで、つましくも楽しい日々を送っていました。黄色い星を胸につけなくてはいけないユダヤ人はパリでも差別の対象となっていましたが、成績優秀なヴァイスマン家の少年ジョーは、親友シモンとその弟ノノと遊ぶのが日課で、優しい父(ガド・エルマレ)と美しい母(ラファエル・アゴゲ)、二人の姉に囲まれ、幸せな日常でした。  
 そんな中、フランス政府によるユダヤ人検挙の噂が流れ、不穏な空気に疑心暗鬼となったジョーの姉が、家族で逃げようと強く主張しますが、「ここはフランス、政府がユダヤ人をナチスドイツに引き渡すわけがないよ」と両親に受け流されます。
 当時パリには、ナチスを恐れたユダヤ人がドイツを初めロシア、オーストリア、ポーランドなどから大勢移り住んでいました。彼らは、既に多民族国家で、自由と人権の国フランスならユダヤ教徒を守ってくれると信じていたのです。

 しかし、7月16日の未明、パリ警察がいっせいにユダヤ人検挙を開始します。対象はパリ在住の24000人の移民系ユダヤ教徒全員。国民感情を気にしたフランス政府は、生粋のフランス人ユダヤ教徒を避けて、外国籍のユダヤ人をナチスに差し出すことに決め、住民名簿を頼りに寝込みを襲って、子供を含めたユダヤ教徒を13000人を検挙、その半分を冬季競輪場に閉じ込めます。
 ジョーの一家も全員競輪場に送られ、食料も水も不足する中、劣悪な環境で5日間を過ごすことに。赤十字から派遣されたフランス人新米看護士のアネット(メラニー・ロラン)は、競輪場の惨状に息を飲みますが、黙々と同胞の診察をするユダヤ人医師(ジャン・レノ)の姿に心撃たれ、5日後に彼らが移送されたロワレ県の収容所にもついて行く決心をします。
 しかし、そこでアネットが目にしたものは、更に過酷な状況でした。しかも、やがて大人たちはアウシュビッツ行きの列車に乗せられることに。。

 涙なしには観れない作品で、「サラの鍵」よりも強い衝撃を受けました。生き残ったジョゼフ・ヴァイスマンの経験談と目撃者の証言を元にして、入念に作られた映画のため、主要な登場人物は全て実在したそうです。
 それにしても、人間はなんと愚かで残酷なことができることか。収容所の子供たちと対照的な環境で、愛情を注がれ何不自由なく暮らすヒットラー周辺の女性や子供たちの映像が挟まれるのも、不条理を際立たせています。 
 一斉検挙の対象となった24000人のうち、1万人余りはパリ市民によってかくまれたり、警官に見逃されたりして、検挙を免れたことがせめてもの救いです。
[PR]
# by cheznono | 2011-09-03 00:08 | 映画

ツリー・オブ・ライフ

b0041912_2139376.jpg 今年のカンヌでパルムドールを獲得した「ツリー・オブ・ライフ」。テレンス・マリック監督による詩情あふれる作品です。
 でも、カンヌを沸かしたわりにはフランスでの批評は中程度で、半ば成功、半ば不発の寓話とまで言われる始末。宗教的で、監督の哲学が大きく反映されている静謐な作品は、カトリック国フランスよりもむしろ禅的な文化を背景にもつ日本の方が評価が高いかも知れません。

 1950年代のテキサス。典型的な中流家庭オブライエン家の長男ジャックは、厳格な父(ブラッド・ピット)と優しく美しい母(ジェシカ・チャステイン)、そして二人の弟達と自然に恵まれた環境で育ちます。
 安定した生活を与えてくれる父親でも、自らの考えを息子達に押し付けようとする姿勢に反発を感じる少年ジャック。
 とはいえ、母親に慈しまれながら、弟達とじゃれ合って過ごした穏かな日々は、確実に自分の人生の基礎となっていることを今や中年を迎えたジャック(ショーン・ペン)が回想します。そして、19歳で亡くなってしまう弟の死が、家族に落とした深い影も。。

 前半、ジャックの回想シーンの後、スクリーンに無限の宇宙や天地創造を象徴するかのような映像が20分ほど流れ、その唐突さと長さには面食らいました。地球や生命の進化と連鎖、その神秘を語りたかったのでしょうけど。
 何千年も昔の大自然の営みから、50年代のアメリカ南部の家族の日常と子供の成長、そして、建築家として成功した中年ジャックの喪失感を、映画は極力セリフを省いて、その代わりかクラシック音楽を駆使しながら、静かな映像美で描いて行きます。
 美しい芸術作品ではあるけれど私的で、暗示的で抽象的な描き方に終始するので、2時間20分を楽しめるかどうかは人を選ぶ作品といえるでしょう。

 「私が幸せでいる唯一の方法は、愛すること」というセリフの通り、慈愛に満ちた母親役が印象的なジェシカ・チャステインは、《アメリカの良心》を体現しているかのよう。彼女が身につけている50年代~60年代モードを思わせる数々のドレスも素敵です。
 
 カンヌの熱狂が苦手というマリック監督は、映画祭には全く姿を現さず、表彰式や挨拶などはブラッド・ピットが一手に引き受けて、話題となりました。テレンス・マリックは次作の撮影のためパリに滞在していたにもかかわらず、パルムドールの受賞を人任せにしたわけで、カンヌを誇るフランスメディアが白けるのもむべなるかな。だから、辛口評が目立ったというわけでもないでしょうが。。
[PR]
# by cheznono | 2011-08-23 22:19 | 映画

この愛のために撃て

b0041912_22404565.jpg 『すべて彼女のために」で華々しいデビューを飾ったフレッド・カヴァイエ監督による2作目「この愛のために撃て」。手に汗を握るサスペンス度にますます磨きがかかって、ラストまで緊張感が途切れません。
 なのに、なぜこんなに面白い映画ががら空きなのでしょう?公開されたばかりのレディースデイだったのに、まるでニースの映画館のように人影がまばら。なんてもったいない。35℃の東京から一瞬にして21℃のパリに連れて行ってくれる作品で、主人公と共に息もつかせぬ85分間が過ごせること受け合いです。

 パリの病院で看護助手を務めるサミュエル(ジル・ルルーシュ)は、臨月の妻ナディア(エレナ・アナヤ)を心から気遣う優しい夫。しかし、夜勤の晩、交通事故で重傷を負った患者サルテ(ロシュディ・ゼム)のベッドから逃げ出す怪しい男を目撃したことから、命がけの逃走劇に巻き込まれることに。
 明け方、アパルトマンに押し入った何者かが帰宅したサミュエルの目の前で身重の妻を誘拐。3時間以内に患者サルテを病院から連れ出して、自分たちに引き渡すよう要求されたサミュエルは、人質となった妻を取り戻すべく、知恵をしぼります。
 実はサルテは指名手配中の強盗犯で、入院中も警察の管理下にありました。それでも何とかサルテを病院から連れ出したサミュエルですが、お陰でサルテ脱走の共犯として警察に追われる身となってしまいます。
 一刻も早く妻を救出に行きたいサミュエルに傷の手当をさせるべく、自分の隠れ家に寄ったサルテに早くもパリ警察殺人捜査課の手が。警察の素早い動きには、前夜殺された富豪と何か関連があるらしいと気づいたサルテは、自分をはめた陰謀の裏側にある警察チームの汚職を知って、愕然とします。
 しかし、自分たちの悪行を知られた警察チームは、必死の追跡劇でサルテとサミュエルを追い詰めるのでした。

 警察の執拗な追跡を交わしながら、何が何でも妻を救うべく、パリ中を駆け回るサミュエル。特にメトロの地下通路内での逃走劇が圧巻です。ハリウッドアクションを意識した作りとはいえ、アメリカ映画のような現実離れがないのもさすが。
 サルテに応援を頼まれた裏社会の大物が、警察を混乱させるために使う手口もユニーク。
 脚本の完成度はもちろんのこと、複雑な話の展開を見事にさばいた演出とカメラワークにも脱帽しました。中身の濃い現代版フレンチノワール、お勧めです。
[PR]
# by cheznono | 2011-08-12 22:42 | 映画

人生、ここにあり!

b0041912_23394833.jpg 話題になっているイタリア映画をちょこっと観て来ようと銀座に行ったら、予想よりずっと混んでいたので驚きました。30分前に着いたのに、もうあまり席が残っていなかったとはさすがレディースデイ、というか、この映画の魅力が口コミで広がったためでしょう。
 本国イタリアでは大ヒットしたという2008年作の「人生、ここにあり!」。だのに、なぜかフランスでは劇場公開されなかった作品です。

 1983年のミラノ、労組の旗手だったネッロ(クラウディオ・ビジオ)ですが、その熱心さを煙たがられて左遷されてしまいます。ネッロの異動先は、閉鎖された精神病院の元患者達のための協同組合でした。

 当時イタリアではその5年前に導入されたバザリア法によって精神病院の廃止に踏み切り、患者達を社会に溶け込ませようという試みが始まっていました。とはいえ、症状の程度や家庭の事情などから、元患者を全員家族の元に戻すわけにも行かず、自立することもできない患者達は、病院付属の協同組合で暮らし、単純な切手はりの仕事を与えられていたのです。

 統合失調症や誇大妄想などの精神疾患を抱える個性的なメンバーを前に、ネッロは彼らを特別扱いせず、台頭に向き合おうとします。
 「俺たちはイカレているけどバカじゃない」という彼らに生き甲斐を持たせるには、まずやりがいのある仕事を、と尽力したネッロの期待通り、元患者達は寄木細工のフローリングに才能を発揮。紆余曲折を経て、お店や住宅の床リフォームの仕事が舞い込んで来るように。
 しかし、ネッロが協同組合付きの精神科医に懇願して、元患者達に処方されている強い薬の量を減らして貰った結果、これまで薬でおさえられていた彼らのリピドーが活発になり、やがて予期せぬ事態へとつながって行くのでした。

 コメディが得意なジュリオ・マンフレドニア監督によるタブーの映画化だけあって、重いテーマを扱ってもユーモアがあちこちに。しかも、実話を元にした作品というから、イタリアの懐の深さを感じさせられます。
 何より、ネッロの元患者達を尊重して社会復帰を後押しする姿勢が、生来の温かな人間性に裏打ちされていて、とても感心させられました。
 今から、28年も前のイタリアが舞台なのに、あまり時代の違いが感じられず、イタリア現代社会を描いているかのよう。でもこの頃は日本のファッション業界も上り調子で、既に日本モード界はイタリアの上客だったのですね。
 やればできる!偏見や思い込みに縛られず、前へ踏み出してみよう、というメッセージが心地良く伝わって来る作品です。
[PR]
# by cheznono | 2011-08-05 23:41 | 映画

水曜日のエミリア

b0041912_188533.jpg 帰国後初の映画は「水曜日のエミリア」。どちらかと言えば評価の高いサスペンス「アリス・クリードの失踪」が観たかったのですが、こちらも意外に奥行きのある複合家族の再生物語でした。
ドン・ルース監督による米国の人気女性作家の小説の映画化。主演のナタリー・ポートマンが製作指揮も受け持っています。フランスでは劇場公開しないで、テレビ映画として放送されました。

 ハーバード大学を卒業し、弁護士となったエミリア(ナタリー・ポートマン)は、弁護士事務所の上司ジャック(スコット・コーエン)と恋に落ち、やがて妊娠。既婚者だったジャックは、精神科医の妻と離婚して、エミリアと生まれて来る子供との生活を選びます。
 望んだものを全て手に入れたかに見えたエミリアですが、生まれて来た娘はあえなく天国へ。強い喪失感に苛まれるエミリアは、夫の連れ子で利発なウィリアムの言動やその裏に見え隠れするジャックの元妻のあてこすりに神経を逆撫でされ、切れまくる毎日です。
 それでも、何とかウィリアムの心をとらえようと努力するエミリア。そんな折り、娘の死を引きずるエミリアを慰め、励ますべく、自身も流産を経験した親友がセントラルパークで行われる夭逝した子供を持つ家族のための慰霊マーチに誘います。
 初めは気乗りのしなかったエミリアも家族三人で参加することになり、当日セントラルパークに向かうと、なんと自分が子供の時に離婚した両親もやって来ていました。
 判事だった父の女好きに泣かされた筈の母親なのに、再び仲良さそうな両親を目にしたエミリアは、カッとなって父親に激しい言葉を投げつけます。そんなエミリアの態度に、夫ジャックも愛想を尽かしてしまうのでした。

 美人で頭がよく、エリート人生を歩んで来たエミリア。ついには他人の夫まで手に入れたのに、夫の離婚・再婚への切り札だった赤ちゃんの突然死以来、どうしようもない喪失感と挫折感に支配されてしまい、自分では感情のコントロールができないほどに。
 そんなエミリアのぎすぎすした言動や態度を理解するのは困難ですが、エミリアの感情の揺れを間近で受け止めざろう得ないジャックとウィリアム父子がかなり良い味を出しています。特に8歳のウィリアムは、両親の離婚と新しい母親というドラスティックな環境の変化があったにもかかわらず、幼いながらも機知に富んだセリフでエミリアに応酬。欧米の子供は成長が早いと言うけれど、小さい時からこうやって鍛えられているせいなのでしょうか?

 「君は愛する者に厳しい」というジャックの言葉にドキッとさせられます。確かに、家族やごく親しい人たちには心を許していることもあって、つい言い過ぎたり、きつい言葉をぶつけてしまうことがありがちかも。
 エミリアが抱えていた《秘密》の真相が明らかになった時、一皮むけて成長した彼女がそこに。登場人物みんなが、新たな気持ちで前進して行くことが期待できるラストでした。 
[PR]
# by cheznono | 2011-07-17 18:15 | 映画

BIUTIFUL ビューティフル

b0041912_2228375.jpg「21グラム」や「バベル」等、群像劇の名手アレハンドロ・ゴンザレス・イニャリトゥ監督が、黒澤明監督の「生きる」にヒントを得て製作したという「Biutiful:ビューティフル」。欧州の厳しい現実の中で、余命宣告を受けながら子供たちのためにできる限りのことをする父親に扮したハビエル・バルデムの鬼気迫る演技が強烈な印象を残す作品です。

 バルセロナの片隅で、二人の子供との生活を維持するため、複数の仕事を掛け持ちしているウスバル(ハビエル・バルダム)。薬中毒でエキセントリックな別れた妻の面倒も見るウスバルは、少しでも多くの金を稼ぐために裏社会の怪しい仕事にも手を染めています。
 不法移民の労働を仲介し、彼らからも頼りにされているのに、親切心が裏目に出て痛ましい事故が起きてしまい、落込むウスバル。
 そんな折り、体調の不良を訴えたウスバルは、こともあろうに末期がんであることが判明、奈落の底に突き落とされるような気持ちに陥ります。子供はまだ小さく、成人するまでの費用をどうにかしなくては。ドラッグから足を洗えず情緒不安定な母親に任せるわけにはいかないし。
 ウスバルに残された時間はわずか2ヶ月。さまざまな思いが交差する中、子供たちに残すべくなるべく多くのお金を稼ぎ、彼らの記憶に中に父の思い出が生き続けることを願って、懸命に生きる努力を続けるウスバルに、幼い時に死に別れて記憶にない筈の父親が黙したまま語りかけるのでした。

 若者の失業率が30%に迫りつつあるスペイン。もっとも豊かな地域として知られるバルセロナも経済危機のあおりで生活苦が目立つという現実の中、さまざまな隙間仕事をつなぎながら、子供たちのために現金を稼ぐウスバルに、次から次に降り掛かる難題。そして、極めつけの余命宣告。
 いったい希望はどこにあるのか?と首を傾げる私をよそに、ウスバルは孤独と絶望を自身の中に封じ込めて、淡々と運命に対して行きます。
 子供に事実を悟られないように、平常を装いながら身を削って仕事に奔走するウスバルのしていることは不法でも、家族を守りたい一心のその姿がとてもストイック。特に子供を前に「自分のことを覚えておいてほしい」と囁くシーンには泣かされます。
 イニャリトゥ監督らしい痛切なリアリズムに圧倒され、ラストにわずかな希望を見て、シネマを後にしました。

 公式に夏入りしたフランスでは、この週末から恒例の映画祭りが始まり、最初の1本を定価で観れば、その後は各映画が3ユーロで観られるという嬉しいイベント中。以前は3日間だけだった期間も今や1週間になって、まさにシネマの大盤振る舞い。
 この春は、「アバター」のような大作がなかったこともあり、去年に比べて客足が11%も減ったというフランスの映画館、この1週間でいっきに挽回できると良いのですが。
[PR]
# by cheznono | 2011-06-26 22:41 | 映画

b0041912_21144250.jpg
 よく聞いてみたら、荒れ果てているのはローマからフランスに通じる海沿いの旧街道であって、ハンブリー庭園の入口は別にあり、入場料を払えば18ヘクタールに渡る広大な庭園をゆっくり楽しめるのだとか。
 19世紀に紅茶と絹の貿易で財を成したハンブリー卿は、ヨット遊びのためにやって来たリヴィエラが気に入り、フランス国境目の前のこの岬にヴィラを建て、英国式の自然に任せた庭園を築いたそうです。
 世界5大陸からありとあらゆる植物を集めたという庭園は、現在ジェノヴァ大学によって管理され、 地元の人の憩いの場になっている模様でした。
 しかし、今回我々は庭園に入らず、岬に向かう岩場をひたすら歩いた次第で、噂によると、岬の向こう側の海岸はゲイビーチとなっており、男性同士の出会いの場なのだとか。

 岸壁海岸のハイキング後、夕食のためにヴァンテミリアからドルチェ・アクアを抜け、ロッチェタ・ネルヴィーナのレストランへ。久しぶりに鱒のグリルでも食べられるかと期待したのに、マダムが出て来て「今日は休業よ、でもせっかく来てくれたのだから、ラビオリで良かったら作るけど?」と言うので、きのこソースでラビオリを食べることになりました。
 さすがにその辺で買うラビオリとは違って、マダムお手製のラビオリは皮が薄く、中身のほうれん草がはっきり透けて見える。フランスではシュウマイや餃子の類いを中華ラビオリと呼ぶけれど、なるほど外見はミニ餃子風です。デザートは大きなティラミスの森のソース添え。

 さて、アントレとデザートのみの夕食をすませ、ニースに戻ろうと立ち上がったら、左足の甲に激痛が。ついさっきまで元気だったのに、もはや片足でしか立つこともかなわず、強い痛みのために歩けなくなっているではないですか。
 夕方岩場で転んだけど、その後2時間余りも歩けたのに、なぜ今になってこんなに痛いのだろう?くるぶしをひねった記憶もないが、これが捻挫なのか?抱えられるようにして何とか車に戻り、夜遅くニースに帰宅。家の中も片足けんけんしないと歩けないため、不自由きわまりないし、もしも骨にひびが入っていたらと頭の中は不安でいっぱい。痛みとショックで翌日は半日ベッドの中でした。
「多分捻挫だから2日安静にしていればまず大丈夫。当日は冷して、丸一日経ってからは暖めて」という大家さんの忠告を半信半疑で聞いていた私でしたが、本当にその通り。足を伸ばして安静にしていたら、3日目から歩けるようになりました。あー良かった。下手すると帰国まで松葉杖状態になるかと思った。
 軽い捻挫の場合、当初はあまり感じなくても、後から痛みが増すことがあるそうで、私もそのケースだったのでしょう。日頃の運動不足をいたく反省させられる出来事でした。今後はハイキングの前にも準備体操が必要かも。
 写真はフランス側のリヴェイエラ、サン・ミッシェルの丘。軽いハイキングなら、こちらの方がお勧め。
[PR]
# by cheznono | 2011-06-19 21:18 | イタリア絵日誌

b0041912_21472755.jpg
パリ・エクス10日間の旅から戻って、少しのんびりしたいと思った先週末でしたが、天気が良いのでニースの端の丘で軽くハイキングしてから、今年のベルリン映画祭で金熊賞を受賞したイラン映画「A Separation:別離」を観て帰宅。
 翌日、大家さん夫妻がイタリア国境にある19世紀に英国貴族ハンブリー氏が遺したという庭園を観に行こうと言うので、イタリアン・リヴィエラでイングリッシュ・ガーデンが観られるのかと本気で思い込み、付いて行きました。
 買い出しに寄ったヴァンティミリアで、シーフード入りリゾットを頼むと、結構待たされたのになんと冷たい。しかも、リゾットなのに水分が殆どなくてピラフのよう。チンしただけだったのね。そういえば、モンマルトルのカフェで食べたタラも冷たかった。地元の人で賑わっていたから、安くてもおいしいのかと思ったのに。
 食にうるさいフランスでも、今は多くのレストランで調理済みの冷凍した料理をチンして出すお店が急増しているとか。《メトロ》など業者向けの大型スーパーで、レストラン向けの既に調理した料理を仕入れて来るだけのオーナーが多いため、あちこちのレストランで似通った料理を出すと聞くから、もう腕利きの料理人はいらないということか?

 昼食後、目的のモルトーラ岬のハンブリー庭園に向かったものの、野性味あふれる緑の中に現れたのは単なる荒れ果てた庭でした。岩ごつごつの海岸に下るフランスへ通じる旧街道を囲む広大な庭園は、石壁に閉ざされ、数々の錆びた門は全て施錠されていて入りようもありません。見たこともない植物があれこれ生い茂っているのは面白いけど、イングリッシュ・ガーデンはおろか、秘密の花園のような夢もなく、あるのは野性味だけ。
「花のリヴィエラ海岸の海に面した美しいヴィラと庭園」とは、いったいいつの時代のこと?などと思いながら岸壁海岸まで降りたら、すっぽんぽんで日焼けにいそしむカップルなど、数人の人影が。知る人ぞ知る秘境なのかしら? 

 海岸の岩の上を用心しながら岬の先に進んでいた時、ちょっと高さのある岩から降りようとした際、やばいと思った途端しっかり足を滑らせて落下。左足がとても痛かったけど、立ち上がってまた歩き始めたら、別に何でもなかったので、一安心。それから約2時間、岩海岸をハイキングする羽目となりました。つづく
[PR]
# by cheznono | 2011-06-16 21:49 | イタリア絵日誌

ブラックスワン

 b0041912_21124414.jpgニースの名画座に念願の「ブラックスワン」を観に行ったら、ドアから腰の曲がりかけたマダムが出て来て「私一人しかいないのよ」と不安そうに私を見上げるので「大丈夫、私も観ますから」と言うと、ほっとしたようにまた館内に戻って座り直しました。
 昼間とは言え、サイコスリラーをシネマで一人ぽつんと観るなんて、そりゃ怖いよね。ホラーと聞くから観たくないって、私も友達二人に断られた映画。普段はホラーなんて絶対に観ないのだけど「ブラックスワン」はどうしても観たかったんです。
 結論は、恐れていたほど怖いお話ではなかったので、観るのを躊躇っている人はご安心を。

 NYのバレエ団で踊るニナ(ナタリー・ポートマン)は、バレエが生活のほぼ全て。一卵性母子のように親密な元バレリーナの母と暮らすアパルトマンとバレエ・カンパニーとをひたすら往復する毎日です。
 そんなニナが悲願の「白鳥の湖」のプリマに抜擢され、母親と共に舞い上がるのですが、何せこのプリマは美しく純真な白鳥と妖艶で邪悪な黒鳥の一人二役。バレエ監督(ヴァンサン・カッセル)から「君の白鳥はきれいだけど、王子を誘惑する黒鳥を演じるには官能性が足りない」と指摘され、さしあたって恋人もいないニナは悩みます。
 自傷行為に走るほど神経を張り詰めながら、難しい黒鳥役をものにしようと葛藤するニナ。そこへ、セクシーな新人バレリーナ、リリー(ミラ・クニス)の登場で、ニナの焦燥は更に激しくなります。
 しかも、憧れていた先輩プリマ、ベス(ウィノナ・ライダー)が、落ち目となって役を外された上、事故に巻き込まれてほぼ再起不能となったことでショックを受けたニナは、更に自らを精神的に追い詰めて行くことに。

 色っぽくなれと煽るバレエ監督。そんなニナを挑発するリリー。真面目で完璧主義者のニナは、あまりのプレッシャーに母親との関係もおかしくなり、現実と幻覚とが混同するほど、凶器を帯びて行くのですが、文字通り身を削ってプリマに挑むニナを演じるナタリー・ポートマンがすごい。さすが、アカデミー主演女優賞を取っただけありますね。
 バレリーナとはかくも凄まじい緊張と強靭な精神力を求められるものなのか?とひりひりするようなニナの内面を観客も同時に体験するような思いで、スクリーンに釘付けでした。
 ラスト近く、クライマックスの脚本も実にうまいと思います。

 ところで、スペイン、アンダルシア地方産のキュウリを輸入したドイツで、バクテリアによる死者が続出。ドイツでキュウリを食べたフランス人も入院したため、欧州ではキュウリがすっかり悪者に。
 汚染水が元でキュウリにバクテリアが付き、それが死に至る内臓の出血を引き起こしたのではないかと推測されるそうですが、ドイツでは既に300人余りが発病、14人が犠牲となっているため、怖くてキュウリが買えません。
[PR]
# by cheznono | 2011-05-30 21:09 | 映画

b0041912_1565951.jpg 今ひとつ盛り上がりに欠けたカンヌ映画祭も昨日で終わり、今週はモナコのグランプリが開幕するコートダジュール。既に日差しはすっかり夏で、ニース市内にはいかにもリゾート地ぽい気の抜けたようなムードが蔓延中です。
 フランスはこの1週間あまり、先日ニューヨークの一泊25万円というソフィテルのスイートルームで、黒人メイドさんに暴行事件を起こしたかどで逮捕された元IMFトップ、ドミニーク・ストロスカーン氏の事件で鉢をつついたような大騒ぎでした。
 国際舞台で活躍するストロスカーン氏(略してDSK)は国民的人気のある社会党のスターで、来年の大統領選で彼が立候補すれば当選間違いないと言われた人物。妻公認の女好きは有名で、現代のカサノヴァとも言われるDSK。女性の方もほおっておかないというもてぶりだったとか。事件の前夜には謎のブロンド美女と食事する姿が目撃されています。
 フランスよりも遥かに性犯罪に厳しい米国では、とんでもない変質者とか倒錯者、金と権力に溺れて何をしても良いと思っている傲慢さ、などという報道も目立ったそうですが、フランスではDSKが誰かの陰謀にはまったのでは?という見方も少なくありません。
 経済財政部門で辣腕をふるい、女性にも不自由しなかった筈のDSKが、果たして昼間の1時過ぎ、娘とのランチの約束の直前に、部屋の掃除に来たメイドにいきなり淫行を強要して、襲ったものかどうか。
 私の周りの女性陣は、「権力欲の強い男は女性に対しても横暴でどうしようもない」という厳しい意見が殆どの反面、どうも男性の方が「いくら何でも考えにくい」という感想が多いような。。

 そんな中、祖父の莫大な遺産を相続したため大金持ちの元キャスターの奥さんアン・サンクレールは全面的にDSKを支援。1億円近い保釈金+4億円の保証金や警備の費用、滞在用のアパルトマンなどは奥さんが出資したため、度重なる不倫や艶聞にもかかわらず、夫を支援し続ける姿が、ピューリタニズムを建前にするアメリカ人にはことさら奇妙に映るようです。
 推定被害者のメイドさんは、ショックで震えが止まらず、大変なトラウマを抱えているため、厳重にかくまわれていますが、事件後すぐに彼女から「ひどい目に合った」という電話を受けたという兄弟を名乗る男性は、実は男友達で血縁関係はなかったなど、謎は深まるばかり。 
 弁護側は私立探偵を雇って被害者の周りを洗っている最中で、当日、スイートルームで起きたことは同意に基づく行為だったということを証明する戦略に出る模様です。
 一方、支持が20%を切り、来年の大統領選の再選が危ぶまれていたサルコジ現大統領は、最大のライバルが失脚した上に、歌手兼女優の奥さんカーラ・ブルーニが懐妊(双子の噂も)したため、今後は理想のパパ像を全面に打ち出して、人気挽回を図るのでは?との見方が濃厚。
 もしかして、誰かがメイドに大金を払ったのか、それとも本当にストロスカーンが色魔と化したのか?ハリウッド映画を地で行くような成行きに、フランス中が息を飲んで経過を見つめています。

 写真は《美術館の夜》の日のアンティーブ、グリマルディ城のピカソ美術館。7年前にジャック・ラング文化相によって創設されたこのイベント、フランス中の主立った美術館が夕方6時からタダで解放され、この日は特別に10時過ぎまで開館されます。
 欧州メディアの統計によると、18歳〜49歳までの首都圏在住の日本人のうち、一度も美術館や博物館、劇場に足を運んだことのない人がなんと42%も。人口が多いから難しいかもしれないけれど、文化省も思い切って《美術館の夜》のようなイベントを企画してくれれば、もっと美術館が身近になるかと思うのですが。  
[PR]
# by cheznono | 2011-05-24 01:58 | 不思議の国フランス

ブルーバレンタイン

b0041912_013248.jpg 観るのがイタい映画だけど間違いなく傑作、という評をあちこちで目にしたので、期待して観に行った「ブルーバレンタイン」。傑作かどうか私にはわかりませんでしたが、生々しく痛々しい映画でした。
 たった24時間の間に溝が広がり、修復がつかなくなる夫婦の確執を、二人が出会った頃の恋のきらめきシーンを挿入しながら、リアルに描いて行く手法で、二人の関係の光と陰のコントラストを浮き彫りにします。愛し合っていても、価値観が異なる相手と共に暮らし、共に人生を歩んで行くのはかくも難しいと見せつけられる点は、確かにイタいかも。 

 ディーン(ライアン・ゴズリング)とシンディ(ミシェル・ウィリアムズ)は結婚7年目。7歳の娘フランキーを育てながら、看護師として多忙な日々を送るシンディに対し、夫のディーンは朝からビールを片手にペンキ塗りの仕事をして、日銭を稼ぐ毎日。
 上昇志向があり現実的なシンディは、娘には良い父親でも、夢をなくし、のんべんだらりとその日暮らしの仕事に甘んじている夫に不満を募らせています。
 一方ディーンは、最低限のお金を稼ぎ、妻と娘とのんびり幸せに暮らせれば良いというタイプで、イクメンであり、主夫に近いような存在。仕事に骨身を削り、自分を顧みなくなったシンディとの関係をリフレッシュすべく、妻をラブホテルに誘うのですが。。
 二人の出会いは7年前、シンディは医学部の学生で、将来を嘱望されていましたが、軽い気持ちでつき合った身勝手な恋人ボビーの子供を身籠ってしまいます。
 その頃ディーンは、引っ越しのアルバイト中に見かけたシンディに一目惚れ。自分を喜ばせようと一生懸命で陽気なディーンにシンディも惹かれて行き、あっという間に恋仲に。
 シンディに夢中になったディーンは、ボビーの子供と思われる赤ちゃんを宿したシンディにプロポーズして、めでたく結婚。ひっそりと式を挙げた二人の顔は輝いていました。
 さて、ラブホテル行きを渋るシンディを強引に誘ったディーンでしたが、妻がスーパーで偶然ボビーと再会したと知ると、いっきに不機嫌となり、それをきっかけに夫婦の会話はエスカレートして行きます。

 一緒に観た友達は「あんなどうしようもない夫だったら、捨てたくなるよね」と一刀両断にしていましたが、私はディーンが女性でシンディが男性だったら、ありがちな夫婦としてうまくし行ったのではないかと思いました。
 医学生だったシンディと学歴のないディーン。不釣り合いな結婚という劣等感を抱えた夫と、他の男の子供を我が子のように愛する夫に引け目を感じる妻。二人はそれぞれ生い立ちにも家庭的な問題を抱えていて、愛情に飢えていた若い日々。その意味では、優しく愛情深いディーンは、シンディにとって救いの神だった筈なのに。。
 歯車が狂い始めたカップルの行く末は、やっぱり子供の気持ちが犠牲になることで区切りがつくというのが、やるせないです。
[PR]
# by cheznono | 2011-05-09 00:02 | 映画

戦火のナージャ

b0041912_23305465.jpg

 ニキータ・ミハルコフ監督が親子で出演している「戦火のナージャ」。16年前にカンヌ映画祭で絶賛されたという「太陽に灼かれて」の続編ですが、あいにく私は肝心の「太陽に灼かれて」を観ていないため、省略や暗示の多いこの続編を完全には理解できませんでした。
 これも大震災の後に観る映画としては、いかがなものか。ドイツ-ソビエト戦の圧倒的な破壊力や悲惨さ、無力さは、大地震・津波の悲劇に通ずるものがありますが、戦争は究極の人災。その虚しさをこれでもかと突きつける映像にはぐったり。結構しんどい2時間半でした。

 スターリンによる大粛清で、革命の英雄だったコトフ大佐(ミハルコフ)は、反逆者の汚名を着て逮捕・処刑され、妻子も行方知れずに、、なった筈でした。
 7年後の1943年、当時コトフ大佐をスターリンに引き渡したKGB幹部のアーセンティエフ大佐(オレグ・メンシコフ)は、スターリンに呼ばれ、コトフ大佐が生きているのでは?という疑問を突きつけられます。
 アーセンティエフ大佐は、コトフの妻マルーシャの元恋人で、実はマルーシャとその娘ナージャ(ナージャ・ミハルコフ)をかくまっている張本人でした。
 実はコトフ大佐は1941年、第二次大戦の勃発時に奇跡的に強制収容所を脱出。妻子は既に死亡したと聴かされていたためか、今は懲罰部隊の一員となり、雪原の中、要塞作りに従事しています。そこに背後からドイツ軍の戦車が迫って来て。。
 一方、ナージャはアーセンティエフ大佐の言葉からまだ父親が生きていると確信。父コトフ大佐を捜すべく従軍看護婦に志願して戦場に赴きます。
 しかし、傷痍兵と共に赤十字の船に乗って海原を航行中、あろうことかドイツ軍の爆撃機に攻撃され、あえなく船は沈没。ナージャは海に投げ出されてしまいます。
 果たして、対ドイツ戦の真っただ中で翻弄されるコトフ親娘はどこかで再会できるのでしょうか?

 ミハルコフ監督は、若い世代にナチスドイツを前にした無力さと、今のロシアの生活がこれだけの犠牲の上に成り立っていることを伝えたかったと言われますが、ともかく戦争の熾烈さは生々しく、強烈なリアリズムが感じられます。
 一人、二人の仲間が犠牲になった仕返しに、やっきになって赤十字の船を沈めたり、静かな田舎の村人を皆殺しにしたりと、抵抗できない者を根こそぎ絶やそうとするドイツ軍の残虐さと執念が浮き彫りにされ、やり切れない気持ちに。
 この映画は三部作で、ミハルコフ監督は既に終章となる第三部に取りかかっているとか。観ているのが辛い第二部だったけど、やっぱり終章が気になります。でも、その前にまず名作の誉れ高い「太陽に灼かれて」を観るべきかも知れません。
[PR]
# by cheznono | 2011-04-23 23:32 | 映画

わたしを離さないで

b0041912_0484251.jpg  カズオ・イシグロ原作「わたしを離さないで」。原作、映画とも感動した「日の名残り」がから早くも18年、この作品も結構なベストセラーになったと聞くし、原発事故不安を紛らわせたらと観て来ました。
 でも、地震以来初めて観る映画にこれを選んだのは失敗だったようかも。気が晴れるどころか、更にずしりと重い気持ちで帰宅することに。限りある青春の痛いような恋愛ストーリーよりも、臓器提供ドナーたちの惨い宿命が何とも衝撃的で、節電中の銀座がよりいっそう暗く見えた帰り道でした。
 とはいえ、生きとし生けるものとして、一日一日をもっと大切に生きて行かなくては、という思いを新たにさせられる作品です。

 イギリスの美しいカントリーサイドにある寄宿学校で、少年少女達が厳しく管理されながらもスポーツや絵の創作を楽しみ、健やかに成長しています。キャシー、ルース,トミーの3人は特に仲良し。優しく理知的な少女キャシーは、草食系少年のトミーに惹かれ、互いに淡い恋心を抱いている様子なのをちょっとおませなルースは気づいています。
 厳格な校長(シャーロット・ランプリング)のもと、正統派の教育を施されているように見える生徒達ですが、実は臓器提供を運命づけられていて、長くは生きられないらしいことがわかって来ます。
 18歳を迎え、寄宿学校を卒業した3人は、農場のコテージをシェアして暮らし始めますが、いつの間にかルースがトミーの恋人となっていて、キャシーは一人淋しい思いを味わいます。
 学校を出た《卒業生》たちは、その日が来るまで、旅行や恋愛が許されていました。そして「恋人同士が心から愛し合っていることを証明できるなら、ドナーとなる日が数年間猶予される」という噂が伝わり、《卒業生》の間に同様が広がるのですが。。。

 SFなのに、未来でなく今より少し過去に設定しているためか、妙な現実感があり、それだけに《卒業生》たちを待ち受けている運命の残酷さが際立ちます。
 何より印象的なのは、主人公達がドナーとしての宿命を従順に受け止め、未来につなぐかすかな希望は持っても、生まれながらに自らに課せられた任務への抵抗や脱走はいっさい試みない点でした。
 寄宿学校で《情操教育》を受けていることもあってか、3人は繊細で傷つき易い心を持っているためいっそう従順さと諦観が胸を打ちます。しかも、情操教育に見えたものの真の目的がわかった時の衝撃は痛いくらいです。
 
 私は、クローンを生み出した現代文明への警鐘と受け止めましたが、カズオ・イシグロやマーク・ロマネスク監督は、ドナーの限りある青春における恋愛に重きを置いたようですね。
 主要人物には「17歳の肖像」のキャリー・マリガン、「ソーシャルネットワーク」のアンドリュー・ガーフィールド、そしてお馴染みキーラ・ナイトレイを起用。それぞれが、待ち受ける運命の恐怖と戦いながら、内省的なキャシーとトミー、限られた青春を必死で楽しもうとするルースを熱演しています。
[PR]
# by cheznono | 2011-04-08 00:49 | 映画

原発ラプソディー

b0041912_1261492.jpg
 先日、ニコラ・サルコジ大統領が中国訪問のついでに3時間だけ来日しましたね。滞在わずか3時間でフランス大使公邸で首都圏在住のフランス人達と集う会を開き、菅首相と会談し、原子力安全に対する国際基準を設ける宣言をして去って行ったのですから、なかなかのパフォーマンス。
 対して、菅さんが地震・津波以来、3週間も経ってから被災地入りしたというニュースを、フランスの公営放送が呆れた調子で流していました。首相同様、支持率が20%余りにまで落ちているサルコですが、フランス国内で何か起こると即現場に飛んで行くフットワークの軽さが売りの大統領なので、中国のついでとはいえ、外国として日本へのお見舞い訪問一番乗りを印象づけたかったのかも知れません。でも、日本に寄るか寄らないかでは結構揺れた模様です。
 理由はもちろん放射線でしょう。福島第一原発の水素爆発後、フランス大使館の対応は素早く、福島近県を初め関東周辺に住むフランス人に、直ちに西に移動するか、一時帰国を奨励。すぐにエールフランスの特別便を手配し、帰国したい人へは700ユーロで切符を提供。(特別サービス料金というから往復700ユーロかと思ったら、しっかり片道料金、因みに日本に戻る便も同じ料金で提供。)エアフラは一日2本あるパリ-東京定期便に加えて、原発疎開特別便を数日間に渡って飛ばした挙げ句、ひとまず京都辺りまで逃げたフランス人を拾うため関空にも迎えに行ったりして、全面的に帰国をサポートしました。
 この間、フランスの報道は叫び出さんばかりの大騒ぎで、日本政府と東電は事故を過小評価している、原発から250kmの距離なんてすぐに放射線に包まれる、首都圏の日本人が普段通りに仕事をこなしているのは宿命を諦観しているからか?と言われる始末。
 エコロジストの日本女性による「政府は私たちを欺いている。これまでさんざん原発は安全だと繰り返して来たのにこの結果なのだから、事故後の放射線の影響も本当のことを言ってないと思う」といった発言も大きく取り上げられました。
 今東京にいる私に来た電話やメールも緊迫感にあふれるものばかり。「親も連れて早くニースに戻って来るように」はもちろんのこと、「まさかまだ東京にいないよね?」「絶対に外出しちゃ行けないよ。窓を閉めて、換気扇も開けないように」「こんな状態をどうやって耐え、東京の人はいったいどのように生活しているの?」etc。
  気の小さい私はまるで悲鳴のようなメールやフランスメディアの報道に動揺して、留まるべきか疎開すべきか、逡巡する羽目に。報道規制、隠蔽工作、TV に出ているのは御用学者、などなどの噂は絶えないし、半径30km以内の避難にも手こずって、方針がコロコロ変わる政府が、都民1200万を避難民にしたら、全くお手上げ状態、大パニックになってしまうから、もしてかして重要な事実を黙っているのかも?そう思うと疑いは際限なく膨らむばかり。
 私が持っているニース行きの切符はルフトハンザのもの。予約変更してすぐに渡仏するほど切羽詰まっているとはとても思えないうちに、ルフトハンザは成田を避けて中部空港と関空に疎開してしまい、アリタリアやスイス航空も次々に成田を敬遠して、関空へ避難したのには本当にびっくりでした。いくらチェルノブイリで懲りているとは言え、千葉の放射線量は東京よりも低いのに。
 
放射線の影響
http://www.kahoku.co.jp/news/2011/03/20110321t73060.htm

東大病院チーム
http://tnakagawa.exblog.jp/

 あれだけ騒いだ欧州でしたが、さすがに過剰反応だったと気づいたのか、煽るようなメディアのトーンも落ち着いたし、いったん東京から疎開したフランス人たちも戻って来て、既に仕事を再開、今週からフランス人学校(lycee franco-japonais)も授業を始めるし、ルフトハンザも成田に戻っています。
 フランス大使館が日本在住フランス人向けに配信しているメールによると、日本政府は予測能力に欠ける向きがあるにせよ、発表している情報は信頼できるとのこと。
 原発事故から早くも3週間余り。残念ながら好転の兆しはいっこうに見えませんが、IAEAを初め、アメリカ、フランスと世界的な知恵と技術が投入され始めたので、これからの進展を切に期待したいです。
 
中部大学:武田邦彦先生のサイト
http://takedanet.com/

技術者として20年間原発で働かれた平井憲夫さんの記録
http://www.iam-t.jp/HIRAI/pageall.html 
[PR]
# by cheznono | 2011-04-04 01:27 | いつもの暮らし

神々と男たち

b0041912_23333459.jpg 昨秋、フランス中に異例の修道士旋風を巻き起こしたグザヴィエ・ボーヴォワ監督の「神々と男たち」。2010年のカンヌ映画祭ではグランプリを獲得し、今年のセザールでも3冠に輝いた作品で、美しいカメラワークのもと、厳しい修行や戒律で知られるシトー会の修道士たちのストイックで利他的な生き方に圧倒されます。特に「白鳥の湖」の流れる中、修道士一人一人の表情を追う最後の晩餐は圧巻。滅多に出会えない秀作と言えるでしょう。

 1996年、アルジェリアの山あいにある修道院で、8人のフランス人修道士が、祈祷と瞑想、そして労働や奉仕を日課とし、イスラム教徒の地元の人たちにも頼りにされながら、静かに暮らしていました。
 しかし、内戦化したアルジェリアでは、イスラム武装集団が次々にテロを行い、修道院のある村にも物騒な空気が漂い始めます。
 双方が多大な犠牲を払って、1962年にフランスから悲願の独立を果たしたアルジェリアですが、一党独裁による締め付けが続いたため、国中に貧困がはびこり、政治や社会に向けて積もった不満が、イスラム原理主義を掲げる武装集団を過激化させて行ったという背景があります。
 軍の弾圧に抵抗するイスラム武装集団は、知識人や外国人をテロの標的に選んだため、修道士達の身にも危険が迫るという緊張した状況に、アルジェリア政府からは帰国を勧告されます。
 やはりフランスへ帰るべきだと意思表明する修道士。帰国すべきか留まるべきかを自問する修道士。迷わずに淡々と日課をこなす老修道士。
 彼らのまとめ役である修道院長のクリスチャン(ランベール・ウィルソン)も、果たして任務半ばで発つべきか、それとも危険を覚悟で残るべきかの選択に逡巡し、容易に結論を出すことができません。
 旧宗主国フランス出身のカトリック修道士は、イスラム武装集団の恰好の標的になりかねないため、いよいよフランス政府からも帰国命令が下され、クリスチャンの迷いは深まるばかり。。
 しかし、これまで何かと修道士達に助けれて来た貧しい村人らは、修道士に残ってほしいと頼むのでした。 
 
 質素、禁欲、献身をモットーにするシトー会の修道士達が、命の危険を前に、信仰や自らに課した使命と身の安全の確保との間で迷う人間的な姿、ジレンマの後に全員が下した決断、そして、悲劇的な結末が、観終わった後に深い余韻と悲しみを残します。
 グザヴィエ・ボーヴォワ監督は、自己中心的な消費社会において、イスラム教徒にも心を開いて手を差し伸べた修道士達の生き方に魅了されたと語っていますが、私もこの映画の鑑賞直後は、普段のゆるーい生活をとても恥ずかしく思ったものでした。

 お祈りの際に修道士達が歌う聖歌を吹き替えにせず、俳優達が自ら歌っている点も素晴らしい。カトリック国とはいえ、フランス人でも修道士達の日常に触れる機会は稀らしく、この映画で彼らの共同生活の様子を具体的に知った人が多いとか。
 15年前に起きた修道士誘拐・殺害事件は、今なお多くの謎に包まれたまま。複雑な政治的背景があるようですが、折りしも北アフリカ諸国の革命があちこちの独裁政権を揺さぶっている今、この事件の真相が解明されることを願ってやみません。
[PR]
# by cheznono | 2011-03-07 23:19 | 映画

b0041912_117558.jpg  今回もレビュー掲載がとっても遅くなりましたが「ソーシャル・ネットワーク」、すごく面白い映画でした。さすがデビッド・フィンチャー監督!
 この作品が昨秋フランスで公開された時、それはそれは話題になったのに、フェイスブックやってないし、IT青年の成功談なら観なくても良いかなって思ってしまった自分がいかに浅はかだったことか。
 フェイスブックに興味がなくても、SNSはmixiで充分でも、引き込まれること受け合いの作品です。

 2003年、ハーバードの学生で19歳のマーク・ザッカーバーグ(ジェシー・アイゼンバーグ)は、やっとできた可愛いガールフレンド:エリカにあっさり袖にされ、憤然として大学寮に戻って来ます。  
 ふられた腹いせに、エリカの悪口を自分のブログに書き連ね、その上ハーバードの女子学生の容姿をランク付けするサイトを作ったため、当然女子からは総スカン。でも男子学生達をわかせます。
 その才能に目をつけたボート部の花形双子ウィンクルボス兄弟(なんと北京五輪では6位に入賞)に、学内の男女交流サイト作りに協力してほしいと頼まれたマーク。いったんは承諾するものの、何かと言い訳していっこうに作業を進めようとしません。 
 実際には双子達のアイデアを元に、親友のエドゥアルド・サベリン(アンドリュー・ガーフィールド)に出資を頼りながら、フェイスブックの作成に没頭していました。
 ハーバードの学内交流サイトとして立ち上げたフェイスブックは、たちまち爆発的な人気を呼び、やがて他大学の学生達も参加する交流サイトに成長。共同創始者としてエドゥアルドも資金集めや営業に尽力します。
 しかし、二人がネットの音楽配信サービス:ナップスターで成功を治めた青年実業家ショーン・パーカー(ジャスティン・ティンバーレイク)に出会ったことから、マークとエドゥアルドの間に溝が生じます。

 マークを上回る誇大妄想的なショーンにすっかり取り込まれたマークは、大風呂敷にも聴こえるショーンの提案に乗って、フェイスブックを世界的な規模に拡大させるべく突き進み、結果としてエドゥアルドを手ひどく裏切ることに。
 怒ったエドゥアルドはフェイスブック創業者の一人として復権を要求。一方、双子のウィンクルボス兄弟からは、企画を盗用されたと告訴され、マークは両者と裁判で争うことになってしまうのでした。

 頭は抜群に切れるけど、極めて偏った頭脳の持ち主で、社会性に欠け、相手とうまくコミュニケーションを図れない若者が、女の子にふられたのをきっかけに、ネット上での自己実現を目指して大成功。少しもフレンドリーでないマークが作ったサイトが、世界をつなぐコミュニケーションサイトだったというのがいかにも現代的です。
 ネット社会の申し子が作り上げたのは、人間関係のこれまでにない新しい形だったけれど、世界中の膨大な参加者を得た後、二つの訴訟を抱えても尚、社会性を身につけられない主人公の孤独な横顔にほろりとさせられます。
 
 ボート部の屈強な花形選手:ウィンクルボス兄弟が、自分たちが暖めて来たアイデアを登用したマークに一矢を報いたいのはやまやまだけれど、伝統あるハーバードの学生はこうあるべきという自らの倫理観との間で逡巡する姿も印象的です。ハーバード大学はクラブに入会するにも条件があって敷居が高く、何度も面接をクリアしなくてはいけないし、所属するクラブによっても優劣があるなんて、エリート達の学生生活はシビアですね。
 今26歳のマーク・ザッカーバーグ氏は、新しいガールフレンドと幸せそう、と報道されていましたが、億万長者とはいえ、まだ生々しい訴訟の内幕などプライバシーを容赦なく映画化されて、いったいどんな気持ちでいるのしょう?
[PR]
# by cheznono | 2011-02-19 01:18 | 映画

しあわせの雨傘

b0041912_114736.jpg 原案はフランソワ・オゾン監督が10代の時に気に入った芝居をいつか映画化したいと暖めて来た戯曲で、2007年の大統領選における社会党の美人候補セゴレーン・ロワイヤルに対する女性蔑視的扱いに疑問を感じたため、女性応援歌のような気持ちで製作したという「しあわせの雨傘」。
 ヒロインのシュザンヌ(カトリーヌ・ドヌーブ)は、容姿も性格もロワイヤル候補とは似てませんが、彼女を運命の女性と信じる共産党系市長モーリス・ババン(ジェラール・ドパルデュー)は、フランス労働組合代表のベルナール・チボー氏と年齢こそ違うものの雰囲気はそっくり。
 ジェラール・ドパルデューは、これまでに7回ドヌーブと共演して、何度もカップルを演じて来た仲。「僕はカトリーヌに夢中になったけど、でも一度も手は出してない。カトリーヌはまるで戦士のようで、男だったら理想的な性格」なのだとか。
 ドパルデューがあそこまで太ってしまったのは、やはり息子ギョーム・ドパルデューを失った哀しみとストレスのためでしょうか?「自分の性格のせいでギョームとうまく行かなかった、僕と違ってカトリーヌは皆に好かれるんだ」と雑誌のインタビューで語っていました。

 1977年、フランス北部の町に暮らすシュザンヌは、典型的なブルジョワ主婦。シュザンヌの父親の遺した雨傘工場の経営を引き継いだ夫ロベール(ファブリス・ルッキーニ)は 、妻は独自の意見など持つ必要はなく、夫の考えに従えば良いという亭主関白ぶり。
 保守的な母親を歯がゆく思う娘のジョエル(ジュディット・ゴドレーシュ)も既に二人の子持ちですが 「パパのお飾り的な妻に甘んじているママンと違って、私はもう夫に我慢できないから、離婚したい」と宣言して、シュザンヌを慌てさせます。
 その頃、雨傘工場の労働者達は、独裁者的社長のロベールに反旗を翻し、大規模ストへ突入。ロベールは従業員達によって社長室に監禁されてしまい、シュザンヌは、かつて互いに一目惚れしたババン市長に助けを求めに行きます。
 そんな騒ぎの最中、ロベールが心臓発作で入院。急遽、女性社長の座に着くことになったシュザンヌは、意外にも殺気立つ労働者達の気持ちをなだめ、雨傘のデザインに乗り気となった息子ローラン(ジェレミー・レニエ)とタッグを組んで、思いがけない経営手腕を発揮します。
 一方、ババン市長は、シュザンヌの息子ローランの父親は、ひょっとして自分ではないかという希望に心ときめかせます。30年間、おっとりした良妻賢母で、夫ロベールの飾り物的な存在に見えたシュザンヌだったのに、実は夫より一枚も二枚も上手だったりして?!

 1968年の5月革命から、劇的に女性解放への道を歩んで来たと言われるフランスですが、実際には今もまだ一皮むけば男尊女卑な風潮が否めないという中、その性格や行動の賛否はともかく、大統領選初めての女性候補として47%もの支持を獲得したセゴレーン・ロワイヤル氏はたいしたもの。彼女が選挙運動中にかなりのセクハラ的攻撃を受けたのを、オゾン監督は苦々しく思っていたようです。
 70年代が舞台とは言え、現サルコジ政権への皮肉や批判が織り込まれているのも、フランスで大ヒットした理由の1つでしょう。
 ただ、この映画は女性への讃歌というよりも、ドヌーブ讃歌という感じのコメディに思えました。67歳とは思えないドヌーブの魅力がスクリーンいっぱいにはじけ、「8人の女」ほどではないにしても、歌って踊るシーンが楽しめます。
[PR]
# by cheznono | 2011-02-04 01:03 | 映画

君を思って海を行く

b0041912_1261759.jpg 2009年早春に公開されてから、フランスではかなりのロングランを記録した大ヒット映画「君を思って海を行く」。フランスの抱える難民受け入れ問題に純愛を絡ませることで、現サルコジ政権の移民政策を批判した社会性の強い人間ドラマです。
 秀逸な邦題にには脱帽しますが、原題はWelcome。フランス社会の本音と建前を皮肉ったタイトルで、実際にフィリップ・リオレ監督は、当時の移民担当大臣に対して怒りをぶつけ、フランス政府の難民対応の改善を提案しています。
 
 かつては水泳のオリンピック選手として地元カレの花形だったシモン(ヴァンサン・ランドン)ですが、今は市民プールの水泳コーチをしていて、妻マリオン(オードレイ・ダナ)とは別居中。既に恋人のいるマリオンからは、離婚を請求されています。
 ある日、偶然出会ったクルド難民の若者ビラル(フィラ・エヴェルディ)に頼まれ、クロールの指導をすることに。
 17歳のビラルは、恋人ミナのいるロンドンを目指して、遥かイラクから歩いてカレまでやって来たものの、イギリスへの密航に失敗。もはや目の前のドーバー海峡を泳いで渡るしかないと思い詰めていました。それに、英国へ渡れば、いつかはビラルの憧れのサッカーチームに入団できるかも知れないのです。

 初めは、冬の英仏海峡を10時間もかけて泳ぎ切ることは不可能だと反対するシモンですが、ビラルの一途で真摯な思いに心動かされます。
 難民支援のNPO活動をしている妻マリオンの気を惹きたい気持ちもあって、次第にビラルに手を貸すシモン。ついにビラルとその仲間を自宅に泊めてしまいますが、それは法律違反として取り締まりの対象になる危険な行為でした。
 そんな折り、ロンドンのミナが、両親の意向で親族との結婚を強制されそうだと、ビラルに電話で訴えます。もはや、時間がない。何が何でもドーバー海峡を渡らねばと、大決心をするビラルでしたが。。

 人生の目的を見失いかけていたシモンが、一途なビラルの純粋さとエネルギーに触発されて、生きる意欲と希望を取り戻してゆく姿を、カレの難民達の窮状とビラルの情熱を交えて描いている過程がとても自然で、全く押し付けがましくありません。
 難民や不法入国者の辛い実状、地元住民の不安、強制結婚など、欧州の抱える現実が無理なく盛り込まれ、過酷な運命とその先に見えるわずかな希望を静かに捉える視点が暖かいです。

 フランスはもともと難民の受け入れに比較的寛容だったのに、現サルコジ大統領が内務大臣に就任後から、移民政策の強化を進めて来ました。治安を心配する地元の住民からは、そうした政府の対応を歓迎する声が少なくないのが現実です。
 ドーバー海峡の対岸にあたるノルマンディ地方カレには、大規模な難民キャンプがあって、金融危機まではバブル景気に沸いていた英国への密航を図る人々が後を絶たないという状況でしたが、英国政府からの要請もあり、フランスは2009年に難民キャンプの解体・撤去を実行。
 その結果、EUから、難民の人権を尊重するようにとのお叱りを受けています。
 町にたくさんいる難民に、たいして関心のなかったシモンが、逮捕の危険を冒してまで援助するようになって行く変化に、自分が同じ立場だったらいったいどうするだろう?と多くのフランス人が考えたことでしょう。
[PR]
# by cheznono | 2011-01-23 01:27 | 映画

クリスマスストーリー

b0041912_0202089.jpg やっと観ましたアルノー・デプレシャン監督の「クリスマスストーリー」。贅沢なキャストで織りなすヴェイヤール家の辛口なクリスマス物語は、フランスでメディア評が高く、観客評はまあまあだった作品ですが、私にはとても面白かったです。
 2時間半、実際にフランスのある一家の生々しいやり取りの中に放り込まれたような気分が味わえます。

 ベルギー国境近くの小さな町ルーベで、工場を経営するアベル・ヴェイヤールと妻ジュノン(カトリーヌ・ドヌーヴ)には、初め2人の子供がいましたが、長男は幼い時に白血病を発症、6歳で亡くなっています。
 長女エリザベート(アンヌ・コンシニ)は、今や脚本家として成功。夫クロードも高名な数学者ですが、高校生の息子ポールは精神を病んでいます。
 白血病の長男のために骨髄移植の希望を託されて生まれた次男アンリ(マチュー・アマルリック)は、骨髄が適合しなかったせいで、生まれた時から母親に距離をおかれ、しっかり者の姉とはそりが合わず、一家の問題児として成長。
 末っ子のイヴァン(メルヴィル・プポー)は、内気で内向的でしたが、兄アンリや従兄弟シモン(ローラン・カペリュート)とも親しかったシルヴィア(キアラ・マストロヤンニ)と結婚して、今は二児の父に。

 ある日、母ジュノンが夭逝した長男と同じ血液のがんに冒されていることが判明。治療に有効なのは家族からの骨髄移植のみと言われた夫アベルは、クリスマスに子供たちを呼び寄せ、骨髄の適合テストを受けるよう頼みます。
 5年前、詐欺まがいの事業計画して失敗し、その借金を姉エリザベートが支払う代わりに絶交を言い渡されて以来、家族とは疎遠となっていたアンリは、新婚時代に妻を事故で失い、今やアル中寸前。でも、今回は甥ポールの誘いに応じて、久しぶりに実家に戻って来ます。

 雪景色の中、一見典型的なフランス中産階級のクリスマスの集いが始まったものの、白血病を宣告されながらも尚、次男アンリを愛せないジュノン、早速アンリと衝突するエリザベート夫婦、妻の病気に落ち込む父アベルと、それぞれが緊張感を抱えて、複雑な感情がぶつかったり、和んだり。
 両親の死後、ジュノンに育てられたシモンと末っ子イヴァン、どこか線が細く消極的な二人が家族の緩衝帯のような役割を果たします。
 一方、シルヴィアはレズビアンだったアベルの亡き母親(子供達の祖母)の恋人ロゼメから、イヴァンとの結婚を巡って思いがけない事実を聞かされ、ひどく動揺するのでした。

 白血病で長男を失ったトラウマが今も見え隠れするヴュイヤール家で、男性陣は誰もがデリケートで壊れ易い心を抱えています。両親に愛され、社会的にも成功している長女まで鬱病ぎみの中、白血病を宣告された母ジュノンだけが一人超然とし、家族に死への恐怖を見せないようにしながら、自分のエゴは貫くという姿はドヌーヴならではという感じ。「しあわせの雨傘」のシュザンヌ役も良いけれど、ジュノンのような役をやらせたらドヌーヴの右に出る者はいないのでは?
 そして、母ジュノンの愛に飢え、憎まれっ子の問題児のまま大人となってしまい、酒の力を借りて家族を挑発するアンリを演じたマチュー・アマルリックもさすがです。
 そのアンリが連れて来たユダヤ人の恋人フォニア(エマニュエル・ドゥヴォス)は腹が据わっていて、どこかジュノンに共通するクールさと安定感が見られます。だからこそ、アンリが惹かれたのかも。

 家族ならではのむき出しのエゴイズム、感情のぶつかり合い、それでいながら切っても切れない家族の絆。根底にはやはり暖かいぬくもりが流れているのですね。
 親子姉弟の確執や近親憎悪、そして血液のがんという重いテーマを扱いながら、悲壮感が漂っていないし、安易な結論も出していない点が魅力的です。観終わって帰宅した後も、不思議な余韻の残る作品でした。
[PR]
# by cheznono | 2011-01-19 00:21 | 映画

デザートフラワー

b0041912_1321960.jpg ソマリア出身のスーパーモデル:ワリス・ディリーのベストセラー自伝小説を映画化した「デザートフラワー」。想像を絶するワリスの数奇な半生に関心があって観に行きましたが、むしろ、アフリカで今も行われている恐ろしい因習の廃絶に向け、問題を喚起する作品で、非常に考えさせられました。

 ソマリアの遊牧民の娘ワリスは13歳の時、年配の金持ちの4番目の妻にさせられそうになったため、家出を決意し、一人着の身着のままで砂漠の中を彷徨いながら祖母の住むモガデュシュを目指します。
 殆ど飲まず喰わずのまま、死に物狂いで首都モガディシュに着いたワリスは、祖母の計らいで英国へ出国。ロンドンのソマリア大使館で、ハウスキーパーとして働き始めます。
 6年後、ソマリアの政変でロンドンの大使館は閉鎖となり、職員たちは全員ソマリアへ帰ることに。しかし、帰国を拒否したワリス(リヤ・ケベデ)は、路上生活者となるほかありませんでした。
 未だ英語も話せないワリスは、ある日バレエダンサーを夢見るマリリン(サリー・ホーキンス)と知り合い、彼女の部屋に寄宿して、ファーストフード店で働くことになります。
 その店で、売れっ子カメラマン(ティモシー・スポール)に見出されたワリスは、思いがけず写真のモデルとして成功。そのお陰で、ファッションモデルへの道を歩み出すワリスでしたが、手元にあるのはとっくに有効期限の切れたパスポートだったため、不法滞在に問われてしまいます。

 ワリス・ディリー本人によると、原作に比べて、映画はかなり省かれている部分があるようですが、映画を観る限り、なんて運の強い女性だろうという印象です。
 周囲の支援と強運、美貌を武器に、故郷に戻ることを拒否して、何が何でもロンドンで生きて行く覚悟をするその意志の強さとバイタリティーには目を見張るものがあるし、成功の結果として彼女が抱いた使命感が素晴らしい。
 この作品の何より重要な点は、女性の貞操を守るためにアフリカで現在も続けられているFGM(女性性器切除)というおぞましい因習を、ワリスが自身も経験者として告発、世界中に向けて撤廃運動を繰り広げる過程を映像で我々に示している点でしょう。
 わずか5歳の時にワリスが体験したFGMの野蛮さは目を覆いたくなる残酷さで、ワリスの妹二人もFGMのために命を落としているという事実に身体が震えます。
 ワリスたちの活動が功を奏して、FGMを法律で禁止したアフリカの国々があるにもかかわらず、今も日に約4000人の少女がこの因習の犠牲になっているとは。女性を男の所有物としてのみ価値のある存在と見なし、衛生観念を度外視して幼い少女の心身に決定的な傷をつけることを、母親たちが受け入れるだけでなく、奨励・強要していることに、救いがたい闇を見る思いです。 
[PR]
# by cheznono | 2011-01-10 01:32 | 映画

シチリア!シチリア!

b0041912_1174866.jpg 新年あけまして、おめでとうございます。
 今年もどうぞよろしくお願い致します。

 さて、2010年最後を締めくくった映画は、ジョゼッペ・トルナトーレ監督の自伝的作品「シチリア!シチリア!」。地中海に照りつける日差しのまぶしさに、大晦日の東京にいることを忘れるようなひと時で、映像の美しさと音楽、そしてイタリア史の一端を堪能できる作品です。 
 題名の通り、シチリア島バーリアを舞台にした、3代に渡る一家族の大河ロマンですが、どちらかというと、家族物語というよりも20世紀初頭から後半までのシチリア風俗史のようでしたが。

 1930年代、首都パレルモに近い小さな町バーリアに生まれた牛飼いの息子ペッピーノは、気骨のある父親チッコと兄ニーノと共に貧しいながら、まずまずの子供時代を送っていました。
 とはいえ、ペッピーノは学校そっちのけで、幼い時から家計を助けるために、農作業や牧童として労働に駆り出されます。
 子供の頃から横暴な雇い主と搾取される農民たちの中で、嫌というほど不公平さを目の当たりにして来たペッピーノは、やがて世直しの理想に燃えた青年に成長。第二次大戦後はイタリア共産党に傾倒して行きます。
 ムッソリーニによるファシズム下においても、牛飼いながら文化的な教養を身につけた父親チッコの影響もあって、政治運動に関わり始めたペッピーノは、町で見初めたマンニーナと情熱的な恋に落ち、彼女の両親の大反対を押し切って結婚。次々に子供に恵まれます。
 家族を養うため、パリに出稼ぎに行ったペッピーノは、かつての同士から、シチリアに戻って政治家の道を歩むように説得されて、議員に立候補する決心をするのですが、、
 
 土地はやせているものの、アフリカとヨーロッパの間に位置し、地中海の交差点とも言えるシチリア島は、ギリシャローマ時代からさまざまな民族に入れ替わり立ち替わり征服・支配されて来たため、住民たちは独特の気質を持っていると言われます。
 ドイツ、フランス、スペイン王による相次ぐ統治と圧政に耐え、疫病や飢饉、動乱にもまれて来たシチリアは、第二次大戦後の産業化にも遅れ、農民は貧困に喘ぎ、マフィアによる不正義がはびこっていました。
 そうした歴史と風土の中で培われた、逆境に強く頑固なシチリア気質が、ペッピーノの一族の行動にも色濃く感じられます。

 全編を通してバーリアの魅力を余すことなく捉えた映像は美しく、ジョゼッペ・トルナトーレのシチリア讃歌とそこに住む家族の絆の強さは、はっきりと伝わって来ます。
 ただ、2時間半という長さの特に後半は、人生の一幕の羅列が続いたせいでしょうか?バーリアの町がくぐって来た激動の20世紀を、ノスタルジックな絵はがきにしたような映画で、前作「題名のない子守唄」で引き込まれたドラマ性や盛り上がりが、ここでは散逸してしまった感じが否めません。ペッピーノを初め、登場人物の心の動きがもう少し描かれていたのなら、もっと作品に入り込めたと思うのに。

 ペッピーノを熱演した新星フランチェスコ・シャンナは、どこかリチャード・ギアを彷彿とさせる面持ちで、イタリア美人らしい大作りな顔立ちのマルガレット・マレ(妻マンニーナ)は、巨大な瞳が印象的。二人ともこれから多いに期待できそうです。
 ところで、モニカ・ベルッチはいったいどこにいたのでしょう?しかも 「青春の輝き」で私をすっかり魅了したルイジ・ロ・カーショが、なんとあの物乞い女性の息子だったとは!こんな大物たちを惜しげなく端役に使うなんて、何とも贅沢。これもきっとトルナトーレ監督の人徳ゆえなのでしょうね。  
[PR]
# by cheznono | 2011-01-01 01:18 | 映画

人生万歳!

b0041912_191888.jpg 帰国したら、恵比寿ガーデンシネマが来月末に閉鎖されることになっていたので、びっくりしました。それほど通ったわけではないけれど、フランス映画の上映も多く、なかなか良いセレクションをする映画館だったのに、閉館とは残念です。
 ならばと早速「クリスマスストーリー」を観に行ったら、なんと満席で入れてもらえませんでした。やむを得ず、同時上映されているウディ・アレンの「人生万歳」を観ることに。
 ニースでは既にウディ・アレンの最新作が通り過ぎた所で、アンソニー・ホプキンスが家庭を捨てて、若い女性に走る辺りが、本作に似てなくもないような。。
 この映画、ユニクロが協賛しているようで、もしかしてユニクロの宣伝作品?と思うような場面も。これも世界制覇作戦の一端かしら?
  
 舞台は久々にニューヨーク。ノーベル賞候補にまでなったことのある頭脳明晰な物理学者ボリス(ラリー・デヴィッド)ですが、理屈っぽい皮肉屋で人間嫌い。現代社会と人間に失望し、世をはかなんで自殺を図ったものの失敗、続いて離婚。
 今や近所の子供たちにチェスを教えて小銭を稼ぎながら、カフェで仲間相手にくだを巻く毎日でしたが、ある夜、食べる物も寝る所もなく震えている若い家出娘メロディ(イヴァン・レイチェル・ウッド)を見つけ、数日間(のつもりで)自宅に泊めてあげます。
 まだ高校生のようなメロディは、無邪気で陽気な性格。初めは彼女の存在を煙たく感じていたボリスでしたが、自分とは正反対の無教養で純粋なメロディを相手に偏狭な自説を説くうち、次第に惹かれて行きます。
 無垢なメロディもボリスのあふれる知識やネガティブな哲学を刷り込まれるうちに、彼こそ運命の人だと思い込むようになり、やがて二人は結婚へ。

 一年後、不釣り合いながら楽しく暮らす二人の元にメロディの母親マリエッタ(パトリシア・クラークソン)が訪ねて来て、夫(メロディの父親)が、自分の親友と駆け落ちしてしまったと泣きつきます。
 やっと探しあてた一人娘が遥か年上のボリスと結婚していることに憤慨するマリエッタですが、またたく間にボリスの友達レオと恋仲に。
 同時にマリエッタは、メロディに一目惚れした好青年と娘の縁結びに奔走。幸せな新婚生活を送っているつもりのメロディを揺さぶります。
 そんな折り、駆け落ちに失望したメロディの父親まで、娘と妻を探しに現れたから、話はややこしくなって。。

 無邪気で世間知らずな娘と、強い自負心を抱えながら人生を斜に構えている中年男性とのラブコメディならありがちだから、初めは、中年男が孫のような田舎娘を教育しながら恋に落ちるというピグマリオン風かと思いましたが、さすがにウディ・アレン。もっと複雑、かつ何でもありの展開で、飽きさせません。
 監督自身を反映させたようなボリスのシニカルな人生訓がそれなりに興味深いし、ボリスの偏った哲学に染まって行きながら、持ち前の成行き任せ的楽天主義を失わずにいるメロディを好演しているイヴァン・レイチェル・ウッドが可愛いです。
 ボリスの厭世観や偏屈な哲学に反して、作品自体のメッセージはあくまでポジティブ。人間、幾つになっても何があるかわからない、思いがけない出会いがあったり、隠れていた才能が見出されたり、年齢を重ねても可能性は常に目の前にある、と唱えていて、元気が貰えます。
 フランスでもメディア評、観客評共にかなり好評だった作品だし、サービスデイのガーデンシネマは、あっという間に満席となっていました。でも、私は「クリスマスストーリー」のマチュー・アルマナックとメルヴィル・プポーが観たかったのよ。後ろ髪惹かれながら、恵比寿を後にしたのでした。
[PR]
# by cheznono | 2010-12-23 01:10 | 映画

b0041912_1451533.jpg
  この夏、マンハッタンの高級ブティックやエンパイヤーステートビルなど、ニューヨークのあちこちでナンキン虫が繁殖して大騒ぎになった、という報道から3ヶ月経った11月末、ちょうどパリのホテルに泊まっていたら、ニューヨークのナンキン虫がパリに上陸したというニュースが流れたので青くなりました。
 だって、まずナンキン虫騒動に震え上がったのは、米国人旅行者の利用が多いパリのホテルというではないですか。ナンキン虫が一度ベッドやシーツに取り憑くと、もう始末に負えないそうで、個人で駆除するのはものすごく難しいとか。何せメスの生む卵は500個にも上るため、その繁殖力は推して知るべし。
 よって、パリ市の衛生局も対処に乗り出し、既に600件以上駆除しているし、害虫駆除業者の電話は鳴りっぱなしで、大忙し。今やホテルだけじゃなくて、パリの普通のアパルトマンがナンキン虫の恐怖にさらされているなんて、そら恐ろしい。
 駆除業者によると、汚いアパルトマンから高級住宅街のきれいな住宅まで、ナンキン虫は所を選ばず広がっているようです。ベッドに取り憑くナンキン虫はまさに小さい吸血鬼で、さされると一週間は絶えられないようなかゆみに悩まされるのが特徴。
 ナンキン虫は温度が13℃以下だと活動を停止するらしいのですが、雪に見舞われた寒いパリでなおも話題になるのは、たいていのアパルトマンがセントラルヒーティング利用で室温が高いためでしょう。
 もちろん、既にパリだけでなく南仏トウールーズを初め、ナンキン虫はフランス中あちこちに出没しています。
 加えて、子供の頭にたかるシラミも増加中らしく、学校でシラミを移された子供に親がいくら除菌シャンプーを使っても効果が見られなくて、困りきっているという話も。シラミに耐性ができてしまって、市販の虫除けシャンプーではなかなか駆除できないのが現状なのだとか。
 なんとフランスの子供の30%が、シラミの保持者というから、旅行者だって人ごとではすまなくなるかも知れません。
 こうなると、うっかりTGVの背もたれに頭をつけることもできないじゃないの?と思いますが、やっぱり電車や飛行機などの乗り物は、ナンキン虫やシラミが移動する格好の場所なので、用心するようにと報道されています。
 しかし、どうやって避ければ良いのでしょう?頭にシャワーキャップをかぶってTGVに乗るわけにも行かないし、防護服を着て飛行機に乗るわけにも行かないのに。パリに劣らずニューヨークとの行き来の多い東京に、ナンキン虫が上陸していないと良いのですが。。
[PR]
# by cheznono | 2010-12-16 01:47 | 不思議の国フランス

ネズミ騒動

b0041912_032436.jpg 11月としては異例の寒波で、早くもあちこち雪が積もったフランス。さすがのコートダジュールも例外ではなくて、朝夕はかなりの冷え込みです。それでも、パリの凍り付くような寒さとは違うけど。
 どうも何かとついてない11月でした。今回は電気料金を自動引き落としにせず、請求書を持って郵便局に払いに行ったら、銀行カードで支払った後で、「手数料3ユーロ頂きましたよ」とさらっと言われた。えっ!郵便局で電気代を支払うと手数料3ユーロもかかるの?「現金で支払えば良かったんですか?」と聞いたら、現金でも手数料は変わらないのだとか。

 ウィンドウショッピングはしても、もはや殆ど洋服は買うことのないこの頃だけど、ほしかった編み込みセーターを見つけたので、2週間も迷った挙げ句に購入。40ユーロのセーター1つでも、やっと決心して買ったのに、うちで試着してみたら、なんと袖口の毛糸が切れている。
 翌日、すぐにお店に持って行ったら、もう私のサイズが残ってないという。フランス中どこにでもあるチェーン店だから、「自分で他の店に行って、サイズを探して交換してね。」と言われ、がっくり。
「隣町でもパリ店でもどこでも良いのよ。」と言うけれど、サイズが合わなかったのならともかく、毛糸の切れた不良品だったのに、自分で交換品を求めてよその街まで探しに行かなきゃいけないなんて、ついてない。ユニクロなら、セール品でも他店舗から取り寄せてくれるのに。
 ぶつぶつ言いながら店を出て、ふとショーウィンドウを見ると、私の買ったセーターが飾ってあるではないですか。急いで店内に戻って、サイズを見てもらったら、ばっちり私のサイズでした。あー良かった。

 そんな朝がた、うとうとまどろんでいたら、ベッドの枕元、頭の上の方を何かがかすめたような気がして、飛び起きました。
 一瞬、ベッドの端に見えたのがハムスターのような生き物。まさかネズミ?そんなばかな!?
 敵はあっという間に視界から消えたので、寝ぼけただけという気もするが、ベッドの下でガタンと音がしたのは確か。でも、あとはしーん。
 あまりの驚きに頭から布団をかぶって善後策を考えたけど、良い案が思いつかない。だいたいどこから寝室に侵入できたのか?食べ物はいっさい置いてないけれど、お天気が良かったので、昼間少し窓を開けていたせいかしら?
 噂によると、うっそうとしている庭には体調25cmほどのネズミが住んでいるらしい。でも、私がベッドで瞬間見たのはハツカネズミほどの小さい生き物です。
 その日、大家さんはイタリアに栗拾いに行って不在だったため、ネズミ騒動を相談することもできず、かといっていつまでも布団をかぶっているわけにもいかないので、恐る恐るベッドの下を覗いてみたら、、、ネズミの陰も形もありません。敵はどこに消えたのか?
 折しも大家さんの猫が台所に朝ご飯を貰いに来たので、いかにも迷惑そうな猫を抱えて寝室に戻り、ネズミを探すように依頼。でも、明らかに猫は気乗りがしない様子で、真面目に探索してくれません。ということは、ネズミの匂いがしないのかも?
 仕方なく、その日は一日中窓を明けっ放しにして、ネズミが出て行ってくれるよう祈るのみ。
 夕方遅く、栗拾いから帰宅した大家さんと一緒にネズミの出入りしそうな穴を探したけど、どこにも見つからず、ネズミが嫌うというラベンダーとレモンのオイルを寝室中にまき散らして、ようやく一件落着?というか、それ以来ネズミは現れないので、無事に出て行ってくれたのでしょう。
 
 写真は、カーニュ・シュル・メールの栗祭り。ついてない11月の中で、これはなかなか楽しいお祭りでした。栗祭りのマルシェは意外に規模が大きくて、シャンゼリゼのクリスマス・マーケットにも劣らない賑わい。友達がお勧めというグリーントマトのジャムを買って帰りました。スイカのジャムにも興味があったけど、今回はパス。
[PR]
# by cheznono | 2010-11-30 00:05 | 不思議の国フランス

ガフールの伝説

b0041912_222781.jpg 久しぶりに映画のご紹介、しかも珍しくアニメーション・ファンタジー。でも「ガフールの伝説」は日本で10月初旬から公開されているみたいで、遅ればせながらのレビューとなってしまいました。
 米国の児童小説作家キャスリーン・ラスキーのベストセラーの最初の3巻を映画化したものらしいですが、原作に関する知識は皆無の私、ただただフクロウとミミズクが大好きなため、宣伝記事が気になってシネマに足を運んだ次第。映画館に入る時は子連れでもないのに何だか恥ずかしいと思ったけど、全くの杞憂でした。観客は全員大人。と言っても私を入れて5人のみ。フランスでの公開後2週間でこれじゃあ、もう次週はないわね。
 しかし、子供向けのフクロウ・アドベンチャーと侮るなかれ。3Dの魅力いっぱいの凝った映像が堪能できる作品です。

 家族水入らずで楽しく暮らしていた少年フクロウのクラッドとソーレンの兄弟は、飛行訓練中に謎のフクロウグループ純血団にさらわれてしまいます。
 純血団とは自分たちメンフクロウこそ最優秀なフクロウと信じ、他種のフクロウを征服して、支配しようと企んでいる好戦的なやから達で、よそのフクロウのひな鳥を次々に誘拐しては、自分たち純血団の戦士として洗脳、教育を試みています。
 日頃から攻撃的な兄のクラッドは、メンフクロウの女王に気に入られ、さっさと純血団の戦士として順応してしまいますが、正義感が強く心優しい弟ソーレンは友達になったジルフィーと共に命からがら純血団の巣城を脱出。父親から聞かされていた正義の味方ガフールの勇者たちを探す旅に出ます。
 どこか遠い伝説の地に住むガフールの勇者たちなら、悪の集団からフクロウ王国を守ってくれる筈。まだ飛ぶことを覚えたばかりで、長距離飛行に不安のあるソーレンとジルフィーですが、叩き付けるような雨の中もガフールの神木を目指して、必死で飛び続けるのでした。

 本当は鳴り物入りで始まったローマン・デュリス主演のスリラーを観るつもりだったのだけど、5ユーロで観られる割引チケットがあったので、フクロウのファンタジーにしばし身を投じるのも良いかと思ったのが正解でした。
 カラフルな「アバター」は3Dのせいで、気分が悪くなった観客も少なくなかったけれど、「ガフールの伝説」は全体的に色を統一させていて、隅々まで強いこだわりとセンスの良さが感じられます。
 フクロウの羽の動きや産毛の震えまで、3Dならではリアルな描写に目を見張るし、胸躍る雄大な飛行や冒険も体験でき、まさにフクロウ版「ロード・オブ・ザ・リング」という感じ。
 純血団フクロウとガフールの勇者フクロウとの決戦は、いくら猛禽類とは言え、武器を使った激しいアクションにちょっと眉を顰めましたが、兄クラッドとソーレンのいきさつ等、勧善懲悪に終わらせずに兄弟間のビターな側面を描いている点など、なかなか興味深かったです。
 ただし、なぜか風邪を引いて帰宅。映画館は何せ私を入れて4人しか観客がいなく、がら空きだったから、シネマのせいではないと思うけど。仕方なく、今日はショウガとレモンのお茶を飲んでゴロゴロしています。明日以降、症状が重くならないことを祈るのみ。
[PR]
# by cheznono | 2010-11-11 02:28 | 映画