b0041912_0582314.jpg 万聖節のヴァカンスというのに嵐が南仏を通過したため、あいにく大雨の週末となりました。これまでパラパラと散っていた
オリーブの実も、この嵐でいっきにたたき落とされてしまった感じ。
 万聖節はお彼岸のようなもので、本来ならシクラメンか菊の鉢を抱えて先祖のお墓参りに行く日なのに、この雨ではお墓参りも容易ではないでしょう。まあ、クリスマス前の最後のヴァカンスとあって、今やお墓参りに出かける人よりも、旅行に出かける人の方が多いけれど、燃料所のストは終わったとは言え、まだガソリンが足りないスタンドもあるのだから、ドライバーも大変ですね。
 
 さて、インペリアの向こうに愛の伝説が伝わる美しい街があるというので、電車で出かけて来ました。数あるイタリアンリヴィエラの浜辺の中でも際立って細かくきれいな白砂を誇るリゾート地アラッシオ。延々と続く長い白浜と海に沿った旧市街が特徴の歴史あるシックな街で、10月末でも海辺で水浴びをする家族連れで賑わっていました。
 10世紀、神聖ローマ帝国の初代皇帝でドイツ皇帝でもあったオットー1世の姫君アデラッシアが、父王の召使いアレラーモと恋に落ちたものの、身分違いの恋愛にオットー1世は猛反対。やむなく若い恋人達はこの地方まで駆け落ちします。子供をもうけ、幸せに暮らしていた姫を見つけた父王は、やがて二人を許し、彼らが居を構えたこの街はプリンセスとその夫の名前にちなんでアラッシオと呼ばれるようになったとか。
 アラッシオ駅に向かい合った公園の壁には、角にある古いカフェバーに通った芸術家やスターを記念して焼かれたタイルがはめ込まれていて、アーティストの壁と呼ばれ、この街の名所の1つとなっています。
 旧市街の古い町並みは隣のアルベンガと似ているけれど、より洗練されていて、小粒。けれどいかにも高級なリゾート地という雰囲気です。アルベンガとの境に辺りに、ぽっかり浮かぶ可愛い島は、鳥の島と呼ばれ、かつては野生の鶏が住んでいたとか。今の主な住民はカモメだそうです。中世にはカンヌ沖のレランス島のように修道院が建てられ、ベネディクト派の修道士で賑わっていましたが、今や修道院は消えてしまい、島は個人の所有物に。島自体、売りに出ているとい噂も。夏の間のみ、島の周囲を巡る船が出ているそうです。
[PR]
# by cheznono | 2010-11-02 01:00 | イタリア絵日誌

パリでデモに参加

b0041912_23135754.jpg
  お陰さまで、パリではグラン・パレで開催されている話題のクロード・モネ展も鑑賞でき、会いたい人にも会えたし、年金改革反対デモにも参加したりと、滞在を楽しめました。それなりの思い出を胸に帰途についたものの、帰りのTGVも朝と夕方遅くしか動かないとのこと。仕方なく、朝のラッシュアワーをくぐって、9時40分のTGVに乗り込んだ私。パリリヨン駅のホームで確認した所、行きと同じく最後の4両の車両ならどこに座っても自由と言われたので、またしっかり一等車の4席を一人で独占していました。
 で、エクサン・プロヴァンスまではノンストップの列車の中でまどろんでいると、車掌さんに起こされ、切符のチェック。寝起きでぼーッとしている私を見下したように車掌は「マダム、あなたは一等車に座っているんですよ、切符はニ等車なのに」と冷ややかに告げるではないですか。「ホームの国鉄職員の女性が、どこに座っても構いませんよ」って言うから、ここに座ったのに?と抵抗する私に車掌さん、「誰がそう言ったか知らないけど、このTGVの責任者は私です。この4両の間なら座って構わないけど、二等車の切符の人は二等車に座らないといけません」はあ?いったいどうなっているの。誰のせいで、自分が前もって予約した電車に乗れないのよ?
 私は、ストでご不便ご迷惑をかけられた乗客へのせめてもの償いとして、一等車に座らせて貰っていると信じていたので、車掌の言葉にふくれっつら、しばし奮然としてしまいました。
 
 くだんの車掌は車両の奥のお客の切符を確認しながら、何やら話し込んでいます。すると、嫌々立ち上がって車両を移ろうとした私の所に戻って来て、手を振り、「マダム、やっぱりそこに座っていて下さい」だって。車掌の態度の豹変にぽかんとした私を振り返りもせずに、さっと次の車両に消えて行きました。やれやれ。
 私たちのやり取りを見ていたカップルが「こんなにガラガラなのに、当然よねえ」とニコニコしています。恐らく、奥に座っていたムッシュウが、私より遥かに論理的、理性的にストの影響で別の電車に乗ることを余儀なくされた乗客が一等車に座る正当性を主張したに違いありません。
 その後、ほぼ時間通りニースに到着してほっとしたのもつかの間、ニースではバスもトラムも走ってなくて、数台のタクシーが稼ぎ時とばかりにフル回転しているだけでした。あー、本当に疲れる国。
 バス停に座っていたかわいいお爺さんが「バスない、バスない」と教えてくれたので、「またストのせいですね」と言うと、「ニコラのせいだよ」とにっこり。その通り、全てニコラ・サルコジ大統領の金持ち優遇税制+年金改革のせいだわ。パリで反対デモに参加しておいて、本当に良かったわ。
  フランス人の年金改革への抵抗は非常に強くて、特に大手の燃料製油所がストによる封鎖で麻痺しているため、とうとう大統領命令で警察が乗り出す事態に。政府は必死で大丈夫と言っていますが、燃料不足は深刻で、今日から約10日間のヴァカンスに突入というのに、ガソリンが足りないガソリンスタンドが続出。ニースでも一人49リットルまでしか買えません。うちの大家さんもガソリンを求めてイタリアに行って来るそうです。
[PR]
# by cheznono | 2010-10-23 23:20 | 不思議の国フランス

ゼネスト中のパリ往復

b0041912_0385545.jpg
  年金改革への抵抗・連帯ストの真っただ中、何とか無事にTGVでパリに行って来ました。とはいえ、往復とも自分が予約していた電車はあっさりキャンセルに。何せここ10日間、ニース-パリ間で動いたTGVは一日2本のみ。それもニース発は連日朝の6時半発と夕方16時半発だけ、マルセイユ発パリ行きは結構動いているのですが、そのマルセイユまで行くローカル電車がないのですよ。
 旅行当日、パリ到着が22時過ぎと遅いためちょっとひるんだけど、朝のTGVは始発のバスが間に合わない時間のため、やむなく夕方のTGVに乗ることを決断。しかし、果たして全席指定のTGVで、私のような他のTGVから流れた客は座れるものだろうか?第一、乗客が多過ぎて、旧正月前の中国の里帰り列車みたいな混雑状況だったらどうしよう。
 前日の夕方に駅で確認すると、最初の駅員は冷たく言い放ちました。「明日の切符を持っているならTGVには乗れるけど、席はもともとその電車の予約を持っている人優先だから、まあ座れないかもね」なんとパリまで5時間半も立って行けとおっしゃる?
 それはないよねと、今度は見栄えも感じも良い駅員さんを見つけて、同じ質問をぶつけてみました。「大丈夫、大丈夫。あなたのように他のTGVの予約を持っている人のための車両をもうけてあるから、絶対座れますよ。僕が保証する。何なら明日の出発15分前にここで僕と待合せしましょう」ばかに調子が良いけど本当かね?
 でもまあ、ひとまず安心してうちに帰り、友達に「イタリア人みたいな駅員さんが座れるって保証してくれた」と話すと、「そんなのいい加減なでまかせ言ったに決まってるじゃない」とばっさり。あー頭イタい。
 翌日、本当ならもうパリに着いている時間なのにとぼやきながら、1時間以上前に駅に向かった私ですが、案の定、出発直前になってもくだんのイタリア系駅員さんは現れず、席を確保してあげるから待ち合わせしようなんて、やっぱりでまかせだったのね、と苦笑い。
 でも、結論から言えば、しっかり一等車に座れました。ホームで聞いた所、長ーいTGVの最後の数両の車両ならどこに座っても良いとのこと。だったら、そういう風に駅構内に明記するか、アナウンスしてよね。何にも情報がないと、荷物を引きずってぐるぐるしたりと戸惑うじゃないの。
 結局、2階建てTGVの上階はガラガラでした。下階の二等車もガラガラ。眠れないほど心配して損したわ。
 因みに、スト中だと電車はわずかしか動かず、対面販売の切符売り場も閉まっているけれど、駅構内に駅員さんはゴロゴロいました。主要なデモがある日以外は、スト中でも働く人が多いのは、やっぱりこの経済危機のさなかに無給で何日もスト参加するのは懐にイタいと躊躇われるからでしょうね。つづく
[PR]
# by cheznono | 2010-10-23 00:40 | 不思議の国フランス

テロとストの脅威

b0041912_2373318.jpg
  先週アメリカ、イギリスに続いて、日本の外務省もフランス、ドイツへの渡航警戒を出しましたね。フランス当局は「信頼できる情報として、重大なテロの危険性を示す深刻な兆候があると、当地における差し迫ったテロの脅威につき言及。なので、フランス滞在者や旅行者は、テロ事件や不測の事態に巻き込まれることのないよう、百貨店を含む大勢の人の集まる施設や地下鉄駅やその他交通機関を利用する際には十分警戒し、周囲の状況に注意を払うなど安全確保に十分注意を払うように」とのこと。
 《差し迫ったテロの脅威》とは、なんて恐ろしい。しかし、こういう警報を出されても、いったいどう注意したら良いのでしょう?不振な荷物が置いてあったら、避ける、程度のことはわかるけど。。
 時は文化と芸術の秋。パリはもちろんのこと、フランス中あちこちで展覧会や見本市が開かれるシーズンです。ギャルリー・ラファイエットは今週末からバーゲンですが、デパートに近寄るのは危険らしいし、美術館も心配。第一、バス,メトロ、トラム、鉄道と、日常生活の中で交通機関を利用しないわけにはいかないのに、どう注意するべきか?
 しかも、12日の火曜日からフランスは全国で期間未定のゼネストに突入予定。このストには、サルコジ大統領が進めている年金改革に対する国民の反対を支援するためのシンボリックな意味があり、生活や通勤に支障をきたすにもかかわらず、フランス人の6割以上がこのストを支持しています。
 折りも折り、私は木曜にパリ行きを決めていて、今回は何が何でもパリに行って来たいけど、果たして無事にたどり着けるものかどうか。国鉄や地下鉄が大規模ストを打つ最中の移動は初めてなので心配です。一応フランスの法律では、スト中も最低限の電車は動かさなければいけないことになっていて、自分の予約したTGVがキャンセルになっても、他の電車に乗って良いそうです。
 だいたい3本に1本くらいのTGVは動く筈。ただし、当日いったい何本のTGVが動いてくれるかは前日の夕方にならないとわからないため、ネットや駅で運行状況を確認しなくてはいけません。
 前回のストの最中にモンペリエからニースに帰ろうとしたニースの友達は、乗り換えのマルセイユで5時間待ちを強いられたため、帰宅まで13時間もかかったとか。先週もこれは故障でナント-パリ間のTGVが22時間もかかっているから、それに比べれれば所要13時間はまだマシとも言えますが。
 まあ、電車も地下鉄もストップすれば,少なくともその期間はテロの可能性が低くなるがせめてもの幸いですが、郵便局もガス電力会社もストに参加する以上、かなりの混乱が予想されます。 
 12日前後にフランス旅行を計画している方は、テロ情報に加え、スト情報にも是非ご留意を。
 写真はサンジャン・カップフェラ。
[PR]
# by cheznono | 2010-10-10 23:10 | いつもの暮らし

中世の村チェリアーナ

b0041912_2162638.jpg
  先週末は、BSの番組「小さな村の物語 イタリア」で紹介されていたリグーリア地方の村チェリアーナに連れて行ってもらいました。サンレモから峠をぐるぐると上ること30分、オリーブや栗の木に囲まれた細い山道をさんざん上った後にちょっと下ると、谷底から鷲ノ巣村状に高く築かれた中世の村チェリアーナが現れます。
 典型的なリヴィエラ地方の鷲ノ巣村の姿ですが、意外に規模が大きく、しかもかなり山奥にある割には今なお住人の多い活気のある村でした。それもその筈、チェリアーナはリグーリア地方のオリーブ街道の一画にあり、この村は日本でも知られるオリーブオイルのブランド:クレスピの本拠地だったのですね。
 
  直木賞作家:坂東眞砂子氏の「聖アントニオの舌」に 《鞭打ち苦行の儀式が行われるチェリアーナ》が紹介されているようですが、それはこのチェリアーナ村のことなのでしょうか?
 この村の人たちはとても信心深く、中世からなんと21もの教会を建立して来たそうです。中でも12世紀に建てられたサンピエールとポール教会は、国の文化財に指定されています。
 今や村の主要な産業はオリーブオイルと花の装飾品。サンレモに近いだけあって、音楽祭も開かれる明るく穏やかな村は、フランス側のコートダジュールの鷲ノ巣村が観光化されがちなのと対照的に、住民が日常生活を送っている点が魅力的です。 細い道に次々現れるカーブを上り詰める割には、ちゃんとバスも通っているし、学校も近いので、子供たちも生き生き遊んでいるし、村人が親切なので住みやすいと聞きました。
 ロス・アンジェルスからチェリアーナに移り住んだというアメリカ人のカップルにたまたま出会ったので、村での生活を聞くと、とても満足しているとか。なるほど年を取ったら、こういう村で引退生活を送るのも悪くないかも。と思って何気に不動産広告を見たら、小さい家のお値段は450万円から。確かにニース辺りよりははるかに安いけど、まあイタリア語ができればねえ。
[PR]
# by cheznono | 2010-10-09 21:11 | イタリア絵日誌

セクシーな見本市

b0041912_20232692.jpg
 秋到来でめっきり冷え込んだフランスで、唯一暖かく太陽いっぱいのコートダジュールに戻って来ました。お陰で蚊も元気なため、早速蚊よけの液体を購入。9月末ならもう蚊取り線香も液体ムヒもいらないだろうと高をくくっていたのが甘かったみたいです。
 フランクフルトで乗り換えたニース行きの便に、珍しく日本人の乗客がちらほら、というか結構目立ったので、今頃コートダジュールで何か催し物ものがあるんだっけ?と思いきや、ニースでエロティカ見本市が開かれたという情報をキャッチ。なるほど、だからドイツからの乗り継ぎ便に日本からの男性客が目立ったのか?!
 というのは冗談で、私が着いた日は今年のエロティカ見本市の最終日。なので、欧州内便で乗り合わせた皆さんは、純粋に観光か国際会議か何かのイベントにやって来たのでしょう。
 エロティカ・ドリーム見本市は、さまざまな大人のおもちゃの展示と説明、セクシーな下着の紹介、そしてポルノ女優達によるショーで構成され、入場に30ユーロもかかるのに、今年も盛況だったみたいです。
 女性やカップルでの来場も多くて、《もはやセクシートーイはタブーではなく、開けっぴろげに明るく語る時代》なのだそう。好きだねこの国は、と半ば呆れてしまいますが、このエキスポ、フランスだけでなく10月半ばにはオーストリアのシドニーで開催予定だし、既に世界あちこちで開かれていたのですね。もしかして、東京ビックサイトでも開催されていたりして? 
 見本市に出展したお店によるとオンラインショップが好調で、顧客の年齢層は25歳から80歳と幅広く、しかもお客の80%は女性なのだとか。別のお店もこの不況の中、昨年の売上高は前年より30%も高かったらしいです。
 地元紙が取材した去年のエロティカ・ドリーム見本市の様子は以下のリンクから。
 http://www.nicematin.com/video/salon%20erotica
 
 因みにこの見本市、次は12月にリール市で開かれます。
画像の絵画は、アンリ4世の公式寵妃ガブリエル・デストレとその妹
[PR]
# by cheznono | 2010-09-29 20:24 | 不思議の国フランス

瞳の奥の秘密

b0041912_184420.jpg 本国アルゼンチンで大ヒットを記録し、去年のアカデミー賞外国語映画賞を受賞した「瞳の奥の秘密」。サスペンスと大人の恋を交差させながら、政情不安定だった当時のアルゼンチンの司法の歪みを告発するエンターテイメントで、評判通り、見応えのある作品でした。

 刑事裁判所を定年退職したベンハミン(リカルド・ダリン)は、25年前に担当した殺人事件について回想的な小説を書くべく、かつての職場に当時の上司イレーネ(ソレダ・ビジャミル)を訪ねます。
 その残酷な事件は、米国で法学博士の学位を取ったキャリア組のイレーネが、ベンハミンのいる裁判所に配属されたことと重なっていて、25年間ベンハミンの心に忘れ得ぬ記憶を残していたのです。
 ブエノスアイレスで甘い新婚生活を送っていた23歳の美人教師が、自宅でレイプの上に殺害された現場を検証したベンハミンは、被害者の夫リカルドの協力のもと、顔見知りの犯行と断定。犯人を割り出しますが逮捕に至らず、事件はいったん捜査打ち切りに。
 一年後、リカルドが一人で妻殺しの犯人探しをしている姿に胸を打たれたベンハミンは、上司のイレーネに頼み込んで捜査を再開し、ついに犯人逮捕にこぎつけます。
 軍事政権下ながら、既に死刑制度が廃止となっていた当時のアルゼンチンで、犯人は終身刑に服す筈でしたが、軍事警察の思惑は別にあり、実際にはベンハミン達の予想もしない現実が待っていました。
 ベンハミンが思いを寄せるイレーネは唐突に同僚との婚約を発表、事件の捜査の結果、ギャングから命を狙われる身となったベンハミンは遠い地方裁判所へ転勤に。以来、定年退職を迎えた今まで、二人は別々の人生を歩んでいたのですが。。

 リカルドの亡き妻への深い愛情と強い喪失感に触発されたベンハミンの事件へのこだわりが、そのままイレーネへの秘めた想いに重なる点が、この作品の大きな要となっています。
 25年経た後、事件についての小説を書くことで、自分の心に正面から向き合い、決着をつけようとするベンハミン。
 その小説を書くのに使うのが、かつての職場にあったAの文字が打てない古いタイプライターというのが、ラストに素晴らしい意味をもたらします。その辺、細部まで本当にうまい演出です。
 加えて、「瞳の奥の秘密」というタイトルが素晴らしい。主要人物それぞれの瞳が、実に雄弁におのおのの思いを語っていて、これだけ厚みのある話をこの題に集約させているのは見事と思います。

 ベンハミンの捜査を手伝うアル中の部下パブロが「時とともに全て変わる。何もかも変わるけど、ただ1つ変わらないものがある。それは情熱だ!」と酔っぱらう度に叫ぶのが、さすがラテンのお国柄という感じ。日本人の感覚からすると、情熱こそ時と共にフェイドアウトし易いような気がするのに。
 一方、職場でのキャリア組とノンキャリアの差に怯んでか、今一歩イレーネとの恋に踏み出せないベンハミンの非常に抑制した情念は、ラテン系とは思えない慎重さです。フランスにも意外にこういう男性がいるから、簡単に”ラテン系”とか”草食系”なんてくくれないのかも知れません。
 この映画も「フェアウェル さらば哀しみのスパイ」も、80年代に入っているのに政治状況に翻弄される主人公を描いているため、このすぐ後にバブル景気に突入した日本に照らし合わせると何とも複雑な思いがします。 
[PR]
# by cheznono | 2010-09-17 01:14 | 映画

b0041912_1301093.jpg あの名作「戦場のアリア」のクリスチャン・カリオン監督による東西冷戦時代の実話フェアウェル事件の映画化。今回も私の好きなギョーム・カネ出演と聞いて、もっと早く観たかったのに、あまりの暑さに気がくじけ、先週ようやく観て来ました。
 ペレストロイカに至る過程で、ソ連を揺るがしたスパイ事件があったとは、さすが今尚、体制に不都合なジャーナリストがロンドンの日本食レストランで毒を盛られたり、イギリス人ビジネスマンと結婚したロシア人美人妻が、実は国際スパイだったというようなお国柄だけあるけれど、暗澹とさせられる結末でした。
 でも、こうした事実を知って良かった。日本のような国に生まれて良かったと思いました。

 1981年、ブレジネフ政権下のモスクワ、フランスから派遣された民間人技師ピエール(ギョーム・カネ)は、上司からの依頼で、KGB幹部のグリゴリエフ大佐(エミール・クストリッツァ)が西側に流す機密情報を仲介するはめになります。大佐のコードネームはフェアウェル。
 万が一バレたら、自分はおろか愛する妻子をも危険にさらすことになる任務に巻き込まれたピエールは、上司に抗議して役目を降りようとしますが、次第にグリゴリエフ大佐に不思議な友情を感じ、彼が流す国家秘密をフランスに持ち込みます。
 時の大統領ミッテランは、その情報を持ってアメリカのレーガン大統領と対応を協議。西側はグリゴリエフ大佐に亡命を提案したり、情報漏洩への報酬額を交渉しようとしますが、どちらも大佐は拒否します。
 命がけで見返りを求めずに極秘情報を西側に流すグリゴリエフの真意がつかめぬピエールでしたが、「ソ連の体制を変えなくてはいけない、自分には間に合わなくても息子の時代には違う未来のある国にしなければ」と大佐に打ち明けられ、二児の父として共感を覚えます。
 折しも、ゴルバチョフがソ連にはペレストロイカ:改革が必要だと主張し始めます。 
 しかし、KGB当局の手がグリゴリエフ大佐とピエールに迫っていました。

 当時のモスクワでは、フランス人居住区の住人の日常生活も厳重にチェックされ、外出・帰宅時間、交際範囲なども把握されていて、寝室には隠しマイクが仕込まれていたというのが驚きです。
 グリゴリエフ大佐の私生活の問題も織り込みながら、機密情報を渡すためにピエールと会うシーンを丁寧に積み重ねて行きますが、後半はいっきに緊張が高まり、そして、あっという裏事情も明らかに。
 図らずも素人スパイになってしまったピエールの戸惑いと祖国を憂い息子を思うグリゴリエフの苦悩が、淡々と進むドラマの中で浮き彫りになって行く過程を、ギョーム・カネとエミール・クストリッツァが熱演しています。特にクストリッツァ監督が素晴らしい。この方、俳優として観るのは初めてですが、すごい存在感ですね。
 冒頭の雪原に出て来る狼が、中盤から大きな意味を持って来るのも印象深かったです。後半にグリゴリエフが暗唱する《狼の詩》には目頭が熱くなりました。 
  ゴルバチョフ書記長がペレストロイカを進めるのは、この事件から4年後。この映画のフェアウェル事件は、その後の鉄のカーテン崩壊に大きく貢献したと言われています。
[PR]
# by cheznono | 2010-09-07 01:37 | 映画

セラフィーヌの庭

b0041912_0303117.jpg  去年のセザール賞で、各メディアの予想をみごとに裏切り、7部門を総なめ受賞した「セラフィーヌの庭」。今のフランス映画界の常套手段になっているテレビ局とのタイアップもなく、少ない予算で製作された地味な作品ながら、じわじわと口コミで人気を呼んでロングランとなった佳作で、実話を元にしています。

 幼い時に孤児となったセラフィーヌ(ヨランダ・モロー)は、パリ近郊の田舎町サンリスで家政婦をしながら絵を描いています。人との交流を避けるセラフィーヌは口数少なく、自然の中で花や木々の声に耳をすますことが唯一の楽しみ。
 昼間は黙々と働き、一人暮らしの狭い部屋に戻ると一心に絵に向かうセラフィーヌ。40歳を過ぎてから、ある日突然、神から絵を描くようにとの啓示を受けて以来、かつかつの生活の中でひたすら絵を描いて来ました。
 1912年、サンリスにやって来たドイツの画商ヴィルヘルム・ウーデ(ウルリッヒ・トゥクール)は、偶然セラフィーヌの絵を目にしてその才能を見抜き、彼女を激励します。ウーデの支援を得て、セラフィーヌは絵の製作に専念しますが、折しも第一次大戦が勃発。ウーデはドイツに帰ってしまい、セラフィーヌとは10年以上音信不通に。
 1927年、13年ぶりにサンリスに戻ったウーデは、セラフィーヌが絵を描き続けているのを知って喜び、作品を買い上げて、パリで個展を開くこと約束します。既にセラフィーヌ63歳。
 若い時から働きづめで切り詰めた生活を送って来たセラフィーヌですが、絵が売れ始めると堰を切ったようにお金を使い始めます。次々に物を買い込み、不動産屋に立派な一戸建てを斡旋させ、ウェディングドレスを特注し、と買い物がエスカレートした頃、ウーデ兄妹が沈痛な顔で告げます。世界恐慌のために、もはや絵画の買い手はいなくなってしまったと。
 しかし、情報メディアとは無縁の生活を送るセラフィーヌには、経済状況もウーデの窮地も理解できず、パリでの個展が実現不可能になったことに打ちのめされるのでした。

 前半はセリフを抑え、自閉的なセラフィーヌの素朴な生活を映像だけで淡々と綴ります。仕事先と自宅の往復の中で、豊かな自然といったいになるかのように花と語り、鳥のさえずりに耳を傾け、草木と交信するセラフィーヌ。
 絵の具も草花から色を作り出し、独学自己流で友達のような花や草木を鮮やかな色彩で描いてゆきます。
 人と殆ど口をきかないセラフィーヌが、涙を浮かべて沈み込むウーデを見かけ、思い切って声をかけるシーンが深く印象に残ります。「悲しいときはね、ムッシュウ、野原に出て花を眺めたり鳥の声に耳を傾けるのよ。そうすると、必ずいつの間にか悲しみが消え去って行くから。本当だからね」早くから孤児となって苦労を重ねたセラフィーヌの言葉ゆえに胸に沁みるセリフです。
 物欲とは無縁のつましい生活を送って来た彼女が、絵の評価が高まったとたん、これまで夢見るだけだった別世界を全部手に入れたいがごとく、いっきに物を買いまくる姿が切ないが、これはどういう現象でしょう?純真無垢で社会性も社交性もない生き方と突然顕著になる物欲や誇大妄想とのギャップにとまどいますが、もしかして、この二つはまさか表裏一体なのでしょうか?
 仏語では天啓(霊感)を受ける人と幻影(妄想)を見る人は同じ単語(visionnaire)なので、世界大戦や世界恐慌という時代状況に翻弄されたにせよ、元はと言えばジャンヌ・ダルクのように天から啓示を受けて絵筆を取り、一心不乱に作品制作にのめり込んだセラフィーヌのたどる道は避けられないものだったのかも知れません。
[PR]
# by cheznono | 2010-08-27 00:31 | 映画

ルンバ!/アイスバーグ

b0041912_1175322.jpg  パリで道化師の修行を積んだというベルギーのカップルが主演はもちろんのこと、道化師仲間と共同で脚本、演出、監督もこなした作品「ルンバ!」と「アイスバーグ」。サイレント映画の手法で作られた手作り系の2本立てはちとしんどそうだけど、フランスではどちらもとても評価が高かったので、やっぱり観ておこうと思いました。
 ベルギーのドミニク・アベルとカナダ人のフィオナ・ゴードン夫妻、共に50代とは思えないほど身のこなしが軽く、しかもパントマイムによるギャグを自ら演出しながら演技したとはすごいです。ただ、笑いのつぼは日本人とは少しずれるかも。
 二本立ては先に作られた「アイスバーグ」からで、観客の笑いはこちらの方が多かった気がしますが、私には断然「ルンバ!」の方が面白かったです。

 ブリュッセル近くの小さな町で小学校教師をしているフィオナとドム夫妻は仲睦まじく、得意のルンバを踊ることが生き甲斐。ある日、いつものようにルンバ大会で優勝して幸せいっぱいの気分で帰宅途中、路上に立つ自殺願望の男を避けようとした夫妻の車が崖に激突してしまいます。
 妻のフィオナは事故で左足を失い、夫ドムは記憶喪失に。妻の顔も思い出せないばかりか、今したことも忘れてしまう有様です。
 もうルンバを踊れないフィオナは、過去の優勝トロフィーを全て燃やしますが、その火が木製の義足に引火して、自宅が全焼。相次ぐ不運に二人は呆然とするばかり。おまけにパンを買いに出かけたドムが帰り道を忘れて迷子になり、自宅の焼け跡で待つフィオナと離れ離れになってしまい。。

 映画は、幸福で満ち足りていたカップルにこれでもかこれでもかと見舞う不幸のオンパレードを、セリフを極力抑えたパントマイム式でコミカルに綴る手法が新鮮です。(サイレント映画ファンには懐かしい面も?)
 それに、事故で完全に人生がひっくり返ってしまった二人が、悲しみに沈むことなく現実を受け入れ、流れに身を任せて次に進もうとするところが印象的で、希望さえ感じられます。
 特筆すべきは映像の中の色彩の美しさ。これは「アイスバーグ」にも共通で、目を奪われる鮮やかな色使いは、この猛暑の中で観るにはぴったりかも。
b0041912_113193.jpg 「アイスバーグ」は、ファーストフード店でマネージャーを務める女性が、店の冷凍庫に閉じ込められたことから氷の魅力に取り憑かれ、自分に無関心な家族に失望したこともあって、唐突に家出。北フランスの港町へ行って、アイスバーグを見たいと漁師にせがみます。
 妻を取り戻すべくやって来た夫と漁師と妻の奇妙な三つどもえの中、氷山に向かって船は大海原を進むのですが。。
 
 「アイスバーグ」も映像的には涼しげで真夏向きだったけど、ちょっと長過ぎ。もっと短くまとめてくれたら、中だるみなく楽しめたのにね。まあ、二本立てだからお盆にのんびり観る分に損はないでしょう。
[PR]
# by cheznono | 2010-08-08 01:13 | 映画

華麗なるアリバイ

b0041912_154747.jpg 第二次大戦直後の1946年にアガサ・クリスティが発表した「ホロー荘の殺人」を、舞台をフランスの現代に移して映画化した「華麗なるアリバイ」。高校時代に読んだクリスティの原作は、幸い?全く忘れてしまったので、新鮮な気持ちで観て来ました。
 パスカル・ボニゼール監督が原作に登場したエルキュール・ポワロを排除した劇場版のシナリオを採用したのは正解ですね。お陰でミステリーの女王の代表作臭さが消え、ちょっと軽めのフレンチ・サスペンスとして楽しめます。

 上院議員夫妻のアンリ(ピエール・アルディティ)とエリアーヌ(ミュウミュウ)が田舎の屋敷に招いた客9人。売れっ子精神科医のピエール(ランベール・ウィルソン)と妻クレール(アンヌ・コンシニ)、彫刻家でピエールの愛人のエステル(ヴァレリア・ブルーニ=テデスキ)、エステルに横恋慕しているアル中の作家フィリップ(マチュー・ドウミ)、フィリップを慕う靴屋勤務のマルト。
 そこへイタリア人女優のレア(カテリーナ・ムリーノ)が加わったことで、表面的には和やかだったホームパーティに緊張が走ります。かつてピエールと恋愛関係にあったことを露骨にほのめかすレアに、妻クレールも愛人エステルも気が気ではありません。
 思いがけず再会したレアに誘われるまま、熱い一夜を過ごしたピエールは、翌日、プールサイドで撃たれ、傍らにはリボルバーを手にしてクレールが震えていました。瀕死のピエールに呼びかけていたエステルは、ピエールがこと切れると、なぜかクレールの手から銃を払い落とし、凶器はプールの中へ。
 すぐに警察に拘束されたクレールですが、彼女が握っていたリボルバーからは発砲されていなかったことが証明されて、無事釈放されます。二人の子供をもうけながら、浮気者のピエールに悩まされて来たかわいそうなクレールにエリアーヌは同情しますが、実は彼女自身も昔ピエールと関係を持った過去があり、夫アンリは全てを知りながら、今なお妻を愛しています。
 ピエールから「一人だけ本気で愛した女がいた」と聞いていたエステルは、それがレアだったのではないかと思いつつも、捜査官には自分こそが彼のお気に入りの愛人だったという自信を見せます。
 火花を散らす女性たちもピエールに嫉妬する男達も、それぞれピエール殺しの動機があったと言える状況で、今度はパリの高級住宅街にあるホテルで第2の殺人が。それはピエールが女性との逢引に使っていたホテルでした。

 しかし、普通ならかち合わせるのを避けるようなワケありメンバーばかりを集めて、週末のお泊まり付きパーティを企画したエリアーヌとアンリ夫妻って何者?しかも、精神科医ピエールはエリアーヌの昔の不倫相手で、アンリは今も苦い思いをしているというのに。

 レアが連れて来た運転手(なんと人気歌手のダニー・ブリヨン)も含めて、登場人物みんなに動機があるようなないような状況の中で、第2の殺人が起きる割には中盤に緊張感が感じられません。
 とはいえ、果たしてピエールが心から愛し、守りたかった女性は誰なのか?その女性はピエールの行動をどう受け止めていたか?という観点から見ると、この映画が俄然面白くなります。 
 サスペンスとしての面白さはイマイチだけど、意外な人物が見せる深い愛情にちょっと感動して、ル・シネマを後にしました。それにしても、やっぱり人間て複雑だわ。
[PR]
# by cheznono | 2010-07-31 01:17 | 映画

b0041912_14323953.jpg  人気実力とも押しも押されぬ美形女優セシル・ド・フランスの熱演が観たくて、猛暑の中を出かけて行った「シスタースマイル」、予想以上に良い作品でした。後半、かなり悲惨な末路をたどる実話に対して、映画は意外に明るさと希望を失わない仕上がりになっている点も救われます。
 60年代に世界を席巻し、日本でも大ヒットしたという「ドミニク」の歌を知っている人なら更に興味深く鑑賞できるのではないでしょうか?

 今から50年前のまだまだ保守的なベルギーで、ボーイッシュで自立心の強いジャニーヌ(セシル・ド・フランス)は、自分探しと母親との葛藤との間でもがいていました。修道女から聞いたアフリカ救援活動に憧れるジャニーヌは、早く結婚し家業のパン屋を継ぐのがあなたの生きる道という高圧的な母親に反発。大好きなギターを片手に修道院の扉を叩きます。
 しかし、修道女になる修行は禁欲的で厳しく、自由を愛し、何かと型破りなジャニーヌは、シスター達との摩擦が絶えません。
 ある時、彼女が即興で歌った聖ドミニクを讃える歌に目を付けた神父の尽力で、ジャニーヌの人生は急展開を始めます。
 ミステリアスな歌う修道女として、顔も名前も隠したまま売り出したドミニクの歌は、あれよという間にミリオンセラーを記録。しかし、レコード会社との契約はこの歌の印税を殆ど修道院へ献金するというものでした。
 やがて、修道院から念願のアフリカ行きの機会を与えられたジャニーヌですが、コンサート活動をしたいという気持ちがまさって、準備のための勉強に身が入りません。旧弊なシスター達の価値観にも嫌気がさした彼女は、ついに修道院を飛び出し、学生時代から自分を慕う女友達アニー(サンドリーヌ・ブランク)の元に転がり込みます。
 けれども、還俗し独立した歌手として再出発を図るジャニーヌを、レコード会社は冷たく拒否します。加えて、超ヒット曲の印税にかかる多額の納税義務が発生し、ジャニーヌは金銭的に追い詰められて行くのでした。  

 26歳で修道院に入ったジャニーヌが大ヒットを飛ばしたのが1963年から。古い価値観への決別と女性の解放を求める5月革命がフランスで起きたのが1968年だから、ジャニーヌの誕生がもうちょっと遅ければ、その人生はかなり違ったものになっていたでしょうに。 
 エネルギッシュで個性的、自我の強いジャニーヌは、修道女としては型破れでも、現代っ子ならば珍しくない女性像ですが、若い時、彼女が心から愛せたのは姉妹同然に育った従姉妹だけ。母親との確執がトラウマになっているせいか、ジャニーヌが誰も愛することができないと苦しむ姿が切ないです。
 同性愛者ではなかったジャニーヌが、紆余曲折を経て、レズビアンのアニーを受け入れて行く辺りも、無理なく描かれています。
 この作品では、あたかも還俗してからの生活がとても短かったように見えますが、実際には33歳で修道院を出たジャニーヌが亡くなるまで20年近くあり、死の当日には著作権協会に彼女の重い借金の6倍近い寄付金が集まっていたというから、何とも皮肉なものですね。
[PR]
# by cheznono | 2010-07-25 14:37 | 映画

b0041912_23311560.jpg リュック・ベッソン監督構想10年という新作「アデル〜ファラオと復活の秘薬」、フランスで4月半ばに公開され、評判を呼んだ作品がもう東京で観られるなんて、何だか嬉しいなと思って早速観て来ました。
 脚本はかつてフランスでヒットしたアニメがベースで、原作ではヒロインが男好きはするけれどたいていの女性には敬遠される、というキャラだったのを映画向けに男女を問わず受け入れ易い人物像にアレンジしたとか。
 お天気お姉さん出身の新星ルイーズ・ブルゴワンが、その名(ブラン=セック)の通り辛口なセリフを機関銃のように乱発して奮闘しています。

 100年前のパリ。植物園付属の博物館に展示されていたジュラ紀の恐竜の卵が突然ふ化し、巨大な怪鳥が夜空へと羽ばたきます。老教授エスペランデュー(ジャッキー・ネルセジアン)が1億3500万年も眠っていた卵を蘇生させてしまったのでした。
 一方、秘境専門のジャーナリスト:アデル・ブラン=セックは、事故で植物状態の双子の妹を救うべく、なぜかエジプトのピラミッドに赴き、ラムセス2世の侍医のミイラを探し当てます。何でも侍医が《復活の秘薬》を使えるとかで、妹を治療するには侍医のミイラが必要だと、王家の谷に潜入したのでした。
 やっとの思いでミイラをパリに運んで来るアデルでしたが、頼みの綱のエスペランデュー教授は凶暴な怪鳥を復活させた罪で逮捕され、死刑の宣告が下されていました。
 エスペランデューが医者のミイラを蘇生させてくれなければ、妹を救うことができません。焦ったアデルは、思いつく限りの方法で、エスペランデューの脱獄を試みるのですが、死刑の日が刻々と迫って来て。。。

 こう書くと、何だか本当に漫画だなという感じですが、映像だと案外自然?に展開します。ただ、鳥の恐竜を手なずけたアデルが空飛ぶシーンは、「アバター」にそっくり。もう少し工夫がほしかったかも。
 「アメリ」と女性版「インディアナ・ジョーンズ」が混じったような、何ともゆるーい感じのアドベンチャー劇、とはいえ、100 年前のパリが舞台だとあまり違和感を感じません。これがニューヨークだったら、いくら20世紀初頭でも中途半端過ぎてお話しにならないでしょうが、パリなのでレトロな映像も美しく、後半のルーブル美術館での「ナイト・ミュージアム」的なシーンも無理なく楽しめました。
 私の好きなマチュー・アマルリックの役には愕然としたけれど、奇想天外なストーリーに加えて、フランスらしいユーモアとエスプリの利いたセリフが魅力の愉快な作品です。
[PR]
# by cheznono | 2010-07-10 23:32 | 映画

あの夏の子供たち

b0041912_0483816.jpg  家族が腰椎圧迫骨折で入院していたため、すっかりブログから遠ざかってしまいました。遅ればせながら、去年のカンヌ映画祭のある視点部門で審査員特別賞を受賞した「あの夏の子供たち」をUPします。フランス映画界の憂鬱と主人公の自殺という重いテーマを提示しつつも後味のさわやかな作品でした。

 主人公グレゴワール(ルイドー・ド・ランクザン)は、ミニシアター系の映画を手がける映画プロデューサーで、これと見込んだ作品は海外の難しい企画でも何とか完成させ、上映にこぎつけるべく、骨身を削って努力しています。
 しかし、独立系映画プロデューサーのご多分に洩れず:グレゴワールの経営する会社の経済状況は苦しく、アシスタントは再三グレゴワールに資金繰りの悪化を訴えますが、グレゴワールは問題を先送りするばかり。
 一方、私生活ではイタリア人の妻シルヴィア(キアラ・カゼッリ)と三人の娘達に恵まれ、家族を心から愛する良き父親でした。多忙な中で家族と過ごす幸福な時間が丁寧に描かれます。
 折からの資金難にも関わらず、いろいろな企画を進めるグレゴワールですが、会社の負債は膨らむばかり。採算性を度外視して来たツケが周り、次々に問題が発生して、前向きで常に明るいグレゴワールも追い詰められて行きます。
 そして、唐突に拳銃の引き金を引くグレゴワール。
 優しく頼もしく教養のある父親の突然の自死に呆然とする娘達。でも、妻シルヴィアは、残された破綻寸前の夫の会社の再建と彼がこだわっていた製作中の映画の完成に奔走します。その過程で改めてグレゴワールの人間的な魅力と、しかし問題には向き合わずに逃げ腰だったという弱さが浮かび上がって来るのでした。

 実在したプロデューサーの自殺をベースにしたこの作品には、独自の映画文化を誇って来たフランス映画界の抱える問題が色濃く反映されています。企画制作と配給と同時に映画プロデューサーの大きな仕事として予算の確保がありますが、《フランス映画》でないと助成金は出ないため、グレゴワールのように質の良い外国映画の紹介にこだわるプロデューサーは、資金繰りに四苦八苦するのが必然とか。
 嵩む製作費と採算性の帳尻を合わせるには、テレビ局が共同出資した大作か、低予算の作品と二極化してしまい、さほど興行成績を見込めない芸術系や独立系のプロデューサーは、常に資金集めに頭を悩まさなければいけない状態です。
 
 そんな中で、膨らむ負債に押しつぶされてしまうグレゴワールですが、人を失望させたく無いあまり、陽気に振る舞いながら無理を重ねる姿勢と、家族想いで存在感のある父親像が融合して、独特の魅力的を放つ人物として描かれています。
 そのグレゴワールが突然いなくなってしまった後の家族と仲間達の対応が、この映画の見所でしょう。映画製作に問題多しだけど、全編を通じて映画への愛情と情熱が感じられるのが嬉しい作品です。
[PR]
# by cheznono | 2010-06-30 00:49 | 映画

b0041912_1244771.jpg フランスと香港のコラボレーションによるフィルム・ノワールでジョニー・アリデイ主演、「インファナル・アフェア」のアンソニー・ウォンも出演という組合せに興味を持った「冷たい雨に撃て、約束の銃弾を」。フランスではメディア評がこぞって良くて、一般の感想はイマイチだったという作品です。
 男の美学とフィルム・ノワール的な銃アクションが特徴のこの映画、ジョニー・トー監督はアラン・ドロンを起用したかったのに断られたため、急遽ジョニー・アリデイに話を持って行ったとか。結果的にこれはジョニー・アリデイで正解だったのではと思いました。
 因みにジョニー・アリデイは昨年末、米国で受けた椎間板ヘルニアの手術後に昏睡状態に陥って、生死の間を彷徨い、フランス中をハラハラさせたという国民的大スター。シルヴィー・バルタンを初め5回の結婚や自殺未遂など、私生活も話題にこと欠かないロック歌手兼俳優で、昏睡事件も当初は医療ミスが引き起こした合併症による昏睡の筈だったのに、実は本人がアル中ぎみだったのが原因という噂も。
 この作品ではワンパターンな演技という辛口批評も何のその、コステロはなかなかはまり役ではないでしょうか?
 
 中国人会計士とマカオで幸せな結婚生活を送っていたアイリーン(「サガン」のシルヴィー・テスチュ)でしたが、ある日突然、三人組に自宅を襲撃され、夫と二人の子供を惨殺されてしまいます。
 自身も重傷を負ったアイリーンの元に、パリから駆けつけた父親フランシス・コステロが復讐を誓うのでした。
 アイリーンの証言を頼りに、殺し屋を探してマカオを彷徨うコステロは、偶然知り合った三人の中国人殺し屋(アンソニー・ウォン他)に娘一家の復讐を依頼します。
 復讐の報酬は、大金とコステロがシャンゼリゼで経営しているレストラン、加えてパリの屋敷。いくら孫の敵討ちとは言え、そこまで大盤振る舞いしていいものか?と思いきや、そのわけもおいおいわかって来ます。
 犯人の三人組は意外にすぐに割り出せて、誰が彼らにアイリーン一家の襲撃を命じたかもわかり、いよいよ復讐に突入。殺し屋同士が紳士的に交流したりするシーンが興味深いです。
 共に行動するうちに、復讐を依頼された三人の殺し屋とコステロの間に不思議な友情と絆が生まれ、やがて互いに命をかけて義理と人情を貫こうとする所が見ものでしょう。復讐を依頼したコステロが、ラストには依頼した殺し屋達のために報復を遂げる、といった展開が、セリフを最低限に抑えて描かれます。
 ただ、そもそも三人組にアイリーン一家の惨殺を命じた理由がいかにも弱いのが惜しい。秀逸なのは邦題で、原題の「復讐」に比べて、なんとロマンのあることか。それにしても、香港やマカオでは銃撃戦が珍しくないのでしょうか? 
[PR]
# by cheznono | 2010-06-07 01:30 | 映画

17才の肖像

b0041912_191222.jpg 未知の大人の世界を同級生達より一足早く知り、うっ頂点になった才色兼備の女子高校生が目の当たりにする残酷な現実。深く傷ついたもののその経験を肥やしに、また次の大きな一歩を踏み出して行くヒロインに扮したキャリー・マリガンの演技が各方面で絶賛された「17歳の肖像」。
 甘やかでちょっとイタい思春期の話なら、これまで何度も読んだり観たりして来たから、今さらと思ったけれど、これが意外に完成度が高い。フランスでもメディア、一般ともに好評だった作品です。

 60年代初めの英国、成績優秀な高校生ジェニーは、親からも先生からもオックスフォード大への進学を期待され、息苦しい気持ちで家と学校を往復する毎日を送っています。
 そこへ現れたデイビッド(ピーター・サースガード)は、ジェニーの倍の年齢、といってもまだ30代初めなのに、高級車を乗り回し、紳士的な物腰で、経済的にも心理的にも余裕がありそう。
 それまでつき合っていた同い年のシャイなボーイフレンドとは比べものにならないデイビッドの大人の魅力に夢中になったジェニーは、デイビッドのエスコートでしゃれたレストランで食事をし、ナイトクラブに音楽会、そしてギャンブルと、次々に知らなかった世界を味わいます。
 極めつけは、ジェニーの17歳の誕生日を記念して、憧れのパリへ二人だけの週末旅行。「17歳になるまで待って」というジェニーの意思を尊重したデイビッドと、パリで初めての夜を迎えたジェニー。大人の女の仲間入りをしたという誇りが全身に漂っています。
 制服を脱ぎ、ドレスアップして美しくメイクを決めたジェニーには、学業を優先する同級生や教師、両親が狭い世界に暮らす住人に見えてしまい、ついに彼女は進学よりも結婚を選ぶと宣言してデイビッドのプロポーズを受けるのですが、、

 戦後の復興期を経て、自由や女性の地位向上と飛躍的な経済成長という変動期のイギリス。まだ階級社会の名残が強く残る中、想い通りの未来を切り開くには女性にも学歴が大切、という教師や父親の考え方に反発を感じるジェニーが、デイビッドと出会ったことで、さなぎが蝶に変わるように、いっきに美しく洗練されて行く姿は目を見張るよう。
 自分は他の人たちとは違うという優越感と自信に対して、両親や先生、同級生たちがなんて陳腐に見えることか。しかし、背伸びして味わっためくるめくような体験は、実はガラスの城だったと知った後のジェニーが、学業に戻る決心をするまでの立ち直りの早さも若さゆえで、羨ましいくらいです。
 傷心のジェニーをそれ見たことかなどと言わずに、彼女を支援する父親や担任教師が良いですね。若気の至りでうっとうしく思っていた周囲に励まされ、現実的な選択をするジェニーの心の動きをキャリー・マリガンが繊細に演じています。「プライドと偏見」では、キーラ・ナイトレイの妹役だったというのに、全然思い出せなくてちょっと残念でした。 
[PR]
# by cheznono | 2010-05-24 01:09 | 映画

オーケストラ!

b0041912_126155.jpg 昨年秋にフランス公開されてからこの春までロングランした「オーケストラ!」。今年の初めにニースで観た映画第一弾でした。
 確かに面白い切り口のコメディだけど、そこまでヒットする内容かな?と思いながら観ていたのは中盤まで。いよいよコンサートが始まったラスト十数分にこの作品の真骨頂が発揮されます。チャイコフスキーのバイオリン協奏曲がこれほど魅力的な曲だったとは!おすぎの言う通り、最後の12分のためだけにでも充分に見る価値のある秀作です。

 ロシアのボリショイ交響楽団で劇場の清掃員をしているアンドレイ(アレクセイ・グシュコブ)は、偶然目にしたパリのシャトレ座からの出演依頼FAXを見て、ボリショイ交響楽団になりすまし出演することを思いつきます。
 実は、アンドレイは30年前、前途洋々の天才指揮者として活躍していたのに、ブレジネフ書記長の命令で当時のボリショイ交響楽団からユダヤ人演奏家達が追放されることに抵抗したため、自らも指揮者の座を追われ、今や清掃員として何とか劇場に関わっている身でした。
 千載一遇のチャンスと、なりすまし楽団を結成してパリの晴れ舞台を踏むべく、親友の元チェロ奏者が運転する救急車に乗って往年の楽団員を訪ねるアンドレイ。かつての仲間達は、蚤の市業者やポルノ効果音担当、ジプシー等、それぞれ全く違った世界で細々と暮らしている連中ばかりです。
 突然降って湧いたシャトレ座での演奏計画に張り切る元楽団員を引き連れて、パリに乗り込んだアンドレイですが、フランスに着いたとたん、リハーサルもそこそこにてんでんバラバラ、パリの街に散ってしまった演奏者達に手を焼くはめに。 
 アンドレイは、パリでの演奏曲をチャイコフスキーと決め、バイオリン協奏曲のソリストはフランスの新星アンヌ=マリー(メラニー・ローラン)と指名しますが、アンヌ=マリーのマネージャー(ミュウミュウ)がホテルに現れて、彼女に過去の話をしないようにとアンドレイに釘を刺すのでした。
 
 30年間も演奏とはかけ離れた職業についている元楽団員達をまとめ、人数分の偽造旅券まで調達してパリに向かうアンドレイのもう一度オーケストラを指揮したいという情熱とそれを超える何かへのこだわり。こんなことあり得ないよねという感じのハチャメチャなパリ行きと、コンサートが始まってからのシリアスなクライマックスとのコントラストが実に鮮やかです。
 共産主義下で、才能がありながら自分の力ではどうしようもできない不遇に見舞われた登場人物たちが、辛い過去をユーモアの奥に隠して、つましく、でも逞しく生きている様子が生き生きと描かれているので、中盤過ぎまでのストーリーの寓話調を薄めているように思えます。
 バイオリン協奏曲が始まって、アンドレイを包んでいた謎が解けて来ると、それまでのコメディタッチがいっきに吹っ飛んで、情感あふれる演奏にいつまでも浸っていたい気持ちになりました。
[PR]
# by cheznono | 2010-05-17 01:28 | 映画

b0041912_23141152.jpg ずっと気になっていた「ドン・ジョヴァンニ」をやっと観て来ました。監督はスペインの美の巨匠カルロス・サウラ。オペラ「ドン・ ジョヴァンニ」誕生までを脚本家ダ・ポンテの半生と共に描いた作品で、その映像美には圧倒されます。
  あの名作「アマデウス」と重なる部分も多く、歴史絵巻とモーツァルトのオペラが同時にたっぷりと楽しめる作品でした。

 映画は、1863年のヴェネチアで、ユダヤ系一家の少年が、半ば強制的にカトリックに改宗させられ、名前もロレンツォ・ダ・ポンテと改名する所から始まります。
 成長してカトリックの神父となったものの、女性を誘惑したり、体制に批判的な詩を書いたりしたために宗教裁判にかけられ、教会への謀反の罪で ヴェネチア共和国から15年間追放されることに。 
 同じユダヤ系として何かと世話になったカサノヴァの助言でウィーンに渡ったロレンツォ(ロレンツォ・バルドゥッチ)は、ウィーンの革命児と言われていたモーツァルト(リノ・グアンチャーレ)と出会い、皇帝ヨーゼフ2世とサリエリの提案でモーツァルトの新作オペラの台本を書く仕事を得ます。
 その結果、ロレンツォの台本による「フィガロの結婚」は大成功。ソプラノ歌手を愛人にして絶好調のロレンツォは、恩人カサノヴァから「ドン・ジョヴァンニ」の台本を書くことを要望されます。
 古くから伝わるドン・ジョヴァンニに、自由奔放なドン・ファンを地で行くカサノヴァと自分自身の生き方を投影させるべく、台本作りに情熱を傾けたロレンツォ。ドン・ジョヴァンニの作曲にあまり乗り気でないモーツァルトを口説いて、その気にさせたものの、既にモーツァルトは健康を損ねていました。
 そんな折り、ロレンツォは かつてヴェネチアで出会った忘れ得ぬ美女アンネッタ(エミリア・ヴェルジネッリ)と再会。彼女に夢中になるあまり、愛人であるソプラノ歌手の嫉妬をかって窮地に立たされます。

 前半は、教会から追放を言い渡されるまでのロレンツォが暮らしたヴェネチアがそれは美しく神秘的に描かれていて、画面に釘付けでした。 既に衰退していたとはいえ、独自の文化を誇っていた18世紀のヴェネチア共和国に迷い込んだよう。当時のカーニヴァルのシーンも興味深かったです。
 舞台がウィーンに移ってからは、ロレンツォとモーツァルトによるオペラ製作とオペラ「ドン・ジョヴァンニ」が同時進行して行く構成。ちょっと中だるみはあるものの、天才モーツァルトの人間味あぶれる姿が良かったです。

 ロレンツォが「ドン・ジョヴァンニ」の初演を迎えるのは1787年。フランス革命の2年前ですね。退廃したヴェネチアで革新的な詩を書いて追放され、サリエリを頼ってウィーンにやって来たロレンツォを保護したヨーゼフ2世は、マリー・アントワネットのお兄さんで、文化芸術には理解のある皇帝でした 。
 ヨーゼフ2世亡き後、オーストリア宮廷に居ずらくなったロレンツォは、英国へ脱出。その後、アメリカに渡って89歳の生涯をまっとうしたというからすごい。波瀾万丈の充実した一生だったようです。
[PR]
# by cheznono | 2010-05-05 23:35 | 映画

b0041912_23371089.jpg ロベルト・アラーニャは、シラク前大統領の時のパリ祭でフランス国歌ラ・マルセイエーズを歌い上げたことで国民にその存在を大きく印象づけ、とかく下に見られがちだった「イタリア移民の子」としてではなくまぎれもない「フランス人」として認められたと言われます。その後2008年には、大統領から授かる騎士勲章のレジョン・ドヌール、シュバリエ(5等級目)を授章。
 その人気の秘密は、彼の気さくで飾らない性格とイタリア的な陽気さにありそうです。「僕はロマンティストなんだよ。女性を誘惑するのも好きだし」といたずらっぽく笑うアラーニャは、女性の外見より声と視線に弱いとか。
 頭をリフレッシュするために料理も大好きで、オリジナル料理を創作するのが得意という一面も。

 そして、アラーニャの強みはイタリア系らしく、オペラやコンサート活動が全てファミリービジネスで成り立っているところでしょう。
 オペラの作曲や構成を引き受けている10歳年下の弟ダビッドを初め、家族や親戚がアラーニャの音楽活動に関わっていて、互いに信頼しながら仕事をしているから、今の自分があると語るアラーニャ。とりわけ家族の絆が強いシシリア系ということに加え、そもそも芸術の才能に恵まれた一家らしく、石工のお父さんは、パリのヴォージュ広場やエリゼ宮の修復にも大きく貢献したそうです。
b0041912_23382611.jpg しかし、アラーニャの成功は家族で勝ち取ったものとはいえ、ロベルト自身の私生活は波乱続きでした。最初の奥さんとは死別し、残された一人娘も夭逝。
 何度も共演した二人目の妻でソプラノ歌手のアンジェラ・ゲオルギューからは、すれ違い生活を理由に12年の結婚生活の清算を要求されるし、2006年暮れのミラノスカラ座のアイーダ公演では、客席から口笛でやじられたために怒って退場。スカラ座でやじられた有名歌手は少なくないけれど、公演途中での舞台放棄は前代未聞だったため、大きなスキャンダルとなり、以来、アラーニャはスカラ座へ出入り禁止となってしまいます。
   
 半世紀足らずの人生で成功も地獄も味わい、人一倍の苦楽を経験して来た今、アラーニャはそれでも常にポジティブ。辛いことがあっても人前ではいつも陽気で人当たり良く、「僕の役目は、僕の歌を聴いた人が、日頃のうさや悩みをその間だけでも忘れることだよ」と語る穏やかな表情が印象的です。
 ロベルト・アラーニャは、これからますますその甘くかつ力強い声で、幅広い音楽の分野で私たちに元気を与えてくれることでしょう。
[PR]
# by cheznono | 2010-04-21 23:20 | いつもの暮らし

b0041912_055978.jpg 今フランスでTVにラジオに引っ張りだこのオペラ歌手ロベルト・アラーニャが、ニースに来る!と聞いて、私もコンサートに!と思ったのもつかの間、チケットも取れず、日程も許さずで仕方なく「シシリアン」のCDを買って帰って来ました。
 名前を聞いたことがある程度だった私がロベルト・アラーニャに注目するようになったのは、東京のアラーニャ大ファンのお友達のお陰です。
 2年前の5月、アラーニャのコンサートに行きたい!という熱い想いで、勇気を振り絞ってフランス一人旅を決行した友達とパリで待ち合せ、映画にもなったモンテーニュ通りのシャンゼリぜ劇場に送って行った時、アラーニャの人気ぶりを肌で感じ、興味を持つようになりました。

 貧しいシシリア移民の子としてパリ郊外で生まれたアラーニャは、子供の頃は両親が借りたガレージに家族で暮らし、並々ならぬ音楽の才能がありながら、母親の期待に応えるべく会計士の資格を取得。
 でも、歌への情熱覚めやらず、パリのバーやキャバレーで約 70曲にも上るポップスを歌い始めたアラーニャは、その素晴らしい声でたちまち店の人気者になり、あっという間に一族の稼ぎ手に。
 オペラの作曲や演出をしているアラーニャの弟によると、「ロベルトはハンサムでカリスマがあって、昔から家族のヒーローだった」ということですが、そういう彼の方が典型的なラテン系のイケメンで、役者になったら受けそうです。

 1988年、アラーニャはパバロッティ国際コンクールで優勝したのをきっかけにオペラ歌手としてデビューし、テノール歌手として活躍しますが、音楽学校に通う機会のないまま、自己流でオペラを歌ったため、「アラーニャをオペラ歌手とは認めないね」と批判するフランス人も少なくありませんでした。アラーニャ自身も「いつも自分よりみんなの方が優れていると思っていた。オペラの世界ではまるで宇宙人のように見なされたし」と語っています。
 やがてアラーニャは、個人レッスンを受けたり自助努力を積んだ末に発声方法が大きく改善され、今やパパラッティを継ぐ世界的なテノール歌手として注目される存在に。

 一昨年、アラーニャは両親の出身地であるシシリア島の民謡を集めたCD「シシリアン」を発表。お父さんに最高の親孝行と喜ばれたという「シシリアン」はこの種のアルバムとしては記録的な大ヒットを飾り、コンサートツアーも大好評を博しています。
「シシリアン」は殆どの曲をシシリア方言で歌っているにもかかわらず、南仏ニームのコンサートでは観客が一緒に歌い出したというからすごい浸透ぶりですね。
 
 でもなぜ今、フランスでアラーニャがここまで注目されるのでしょう? つづく
[PR]
# by cheznono | 2010-04-17 00:50 | いつもの暮らし

NINE ナイン

b0041912_1232640.jpg 「シカゴ」のロブ・マーシャル監督によるブロードウェイ大ヒットミュージカルの映画化、しかも超豪華キャスト起用ということで「NINE」を観て来ました。フランスで公開された時のメディア批評は、どれもかなり低評価だったのでさして期待はせず、お目当てはもっぱらダニエル・デイ=ルイスと華やかな女優陣。ベースになったというフェリーニの「8 1/2」を観てないので、比較できないのが残念です。

 舞台は、1960年代初頭のローマ。世界的に名を馳せた映画監督グイド・コンティーニ(ダニエル・デイ=ルイス)は新作「イタリア」の発表を前にナーヴァスになっています。主演女優もスタッフも決まり、もうじき撮影開始というのに、実は脚本もできてないどころか、出だしさえ思い浮かばないという有様。
 グイドは妻ルイザ(マリオン・コティアール)に助けを求めたり、愛人(ペネロペ・クルース)を呼びつけたりしますが、作品の構想は湧かず、衣装係(ジュディ・デンチ)に叱咤激励されたり、母親(ソフィア・ローレン)の幻覚を見たり。刻々と撮影開始が迫って来て追い詰められたグイドは、メディアやプロデューサーから逃げ回るうちに、子供の頃の思い出の中へとトランスして行きます。
 主演女優(ニコール・キッドマン)がローマ入りしても、渡す脚本がなくて、笑ってごまかそうとするグイド。夫の女好きにうんざりしたルイザに愛想をつかされ、グイドはますます過去の思い出へ現実逃避を図るのですが。。

 フェリーニの作品を知らないせいもあって、ストーリー的には予想以上に拍子抜け、ダニエル・デイ=ルイスの存在感がなければ映画としてもたなかったのでは?と思うほどですが、ミュージカルとしてみればかなり楽しめます。
 セクシーな記者役のケイト・ハドソンが歌う「シネマ・イタリアーナ」を初め、グイドのイタ・セクスアリスとも言える娼婦役のファーギーの力強い歌いっぷり、そして、愛する夫の不実に苦しむマリオン・コティアールのせつない歌と、次々に堪能できるのが良いですね。
 ただ、劇場で生で観るミュージカルならこれで充分だけど、映画なのでもう少し主人公の内面に迫る心理描写を入れたり、女性達の心の動きを描写してほしかった。ローマ周辺の風景やモノクロの回想シーンは素敵でした。
[PR]
# by cheznono | 2010-04-07 01:24 | 映画

b0041912_23262018.jpg かの名作「輝ける青春」で影のある弟を演じて印象的だったアレッシオ・ボーニが破天荒の画家カラヴァッジョに扮し、才能あふれるアーティストの生涯を熱演している「カラヴァッジョ/天才画家の光と影」。ちょっと中だるみはあるものの、とても見応えのある作品です。

 16世紀後半、ミラノで画家の修行をしていたカラヴァッジョは、法王のお膝元ローマにやって来ます。
 子供の時から憧れていたコロンナ侯爵夫人のお陰で、デル・モンテ枢機卿の庇護を受けることになったカラヴァッジョは、教会の宗教画を任され、めきめきと頭角を現して行きます。
 独特な光と影のコントラストとリアリズムあふれるその画風は、人々を感嘆したり唖然とさせたり。ライバル画家はモデルを使うカラヴァッジョの手法を邪道だと批判しますが、本人は意に介しません。
 作品が高く評価される一方、酒に娼婦、バイセクシャル、そして喧嘩早い激しい気性と無軌道な私生活のせいで、しょっちゅう周囲との摩擦を起こしてしまうカラヴァッジョ。
 法王庁から依頼された聖母の絵を、普通の庶民をモデルに写実的に描いたために教会の反発を買い、しかも決闘騒ぎを起こして相手を刺し殺してしまったが故にお尋ね者となったカラヴァッジョは、ほうほうのていでマルタ島に逃亡。
 コロンナ侯爵夫人の息子の支援で、マルタ騎士団に迎えられたカラヴァッジョは、マルタで描いた絵も絶賛され、つかの間の平穏を得るのですが、ここでも挑発に乗って問題を起こしてしまい、マルタ島脱出を余儀なくされるのでした。

 今年はカラヴァッジョの没後400年。カラヴァッジョの絵は有名でも、画家自身については全く知識のなかった私には、これ 1本でカラヴァッジョの栄光と不遇の38年の人生を知ることができた充実の歴史ドラマです。
  故郷のカラヴァッジョ村からミラノ、そしてローマ、ナポリ、マルタ、シチリアと、流れて行ったカラヴァッジョは、流浪の画家とも言われ、絵画の報酬が入ると放蕩三昧に走り、激情的な性格も災いして敵も多かったとか。
 この映画は、無軌道な生活と生み出される作品の芸術性との対比をわかり易く際立たせています。
 そして、三人の女性:侯爵夫人(エレナ・ソフィア・リッチ)と娼婦フィリデ(クレール・ケーム)、聖母のモデルとなった恋人レナと画家で同性愛の相手であるマリオ(パオロ・ブリグリア)という、カラヴァッジョが愛した4人が、それぞれ自分の身を危険にさらしてもカラヴァッジョを助けようと努力する点が印象的です。

 本国イタリアやフランスではテレビ用シネマとして製作された作品ですが、カラヴァッジョの名作が仕上がるまでを丁寧に描き、ロケもふんだんに使って当時の様子を再現しているので、まるで本当に16世紀のイタリアの生活を観ているような気分になりました。
 でもやっぱり映画は楽しい方が良いという面々には「モリエール:恋こそ喜劇」の方がお勧めかも。こちらは歴史ドラマというよりも喜劇の要素が強いので、それほど入り込めなかったけど、ラストはじーんと来て、余韻が残りました。 
[PR]
# by cheznono | 2010-03-31 23:26 | 映画

すべて彼女のために

b0041912_0255160.jpg  この所、出演する映画が次々に高く評価されているヴァンサン・ランドン主演の「すべて彼女のために」。「ジョボーダンの獣」辺りからフランスシネマ界で流行っているフランス映画の精神とハリウッド的エンターテイメントをブレンドした作品の中でもこれは出色の出来なので、帰国したらこの映画が公開されていたのがとても嬉しかったです。

 高校教師の夫ジュリアン(ヴァンサン・ランドン)と幼い息子と幸せな家庭を築いていたリザ(ダイアン・クルーガー)がある日突然、逮捕されます。勤務先で彼女が上司と口論した日、職場の地下駐車場で上司が殺害され、たまたま居合わせたリザが犯人だと疑われたのでした。
 愛する妻の無実を信じるジュリアンは、男手ひとつで子供を育てながら、リザの釈放に尽力しますが、状況証拠からリザの有罪が確定。弁護士の努力もむなしく20年の禁固刑が言い渡されます。もともと持病を持っているリザは、絶望から精神不安定となり、ついに刑務所内で自殺未遂を図るほどに。
 リザが生きる希望をなくしてしまったことに動揺したジュリアンは、「脱獄人生」という自叙伝を執筆した脱獄の達人(オリヴィエ・マーシャル)に接触、脱獄の極意を伝授してもらいます。
 脱獄王のアドヴァイスに従い、偽造パスポートを用意して、命がけで多額の費用を手に入れるジュリアン。しかし、いくら脱獄が絶えないフランスとはいえ、実際の脱獄はたいていグループによる組織的な支援の賜物です。果たしてジュリアン単身で、最新構造の刑務所からリザを脱獄させ、無事に逃走することができるのでしょうか?

  後半は少し荒っぽい手口が続くものの、覚悟を決めたジュリアンが、目的達成のために裏社会と取引し、とりつかれたように表情が険しくなってゆく様子を演じるヴァンサン・ランドンは、さすがという感じ。サスペンスとしても一級の面白さだと思います。
 長編映画デビュー作とは思えないフレッド・カヴァイエ監督の手腕にはただただ感嘆するのみ。リザとジュリアンが熱々カップルだったこと、リザがなぜ逮捕されたか、実際にはどういう事件だったのか、などの大事なプロットをわずかなカットを挿入するだけで明確にしてゆく手法が実にうまいです。
 
 この映画を観て、最愛の家族が思いもかけない冤罪で投獄された時、いったい自分にどういう行動ができるか?を真剣に自問したフランス人も多かったとか。
 ただ、すべて彼女のために、という邦題の「すべて」には、ちと引っかかるものが。確かに原題は「Pour elle :彼女のために」だけど、中盤でジュリアンが呟くように《自分にも息子にもリザが必要》だから、また家族三人一緒になりたいがために全身全霊をつぎ込んで一世一代の賭けに出るわけで、それを「すべて彼女のために」とすると、必要以上に甘いニュアンスが加わって、全編に漂うキリッとしたリズムや緊張感が少しそがれるように感じられるのです。
[PR]
# by cheznono | 2010-03-25 00:33 | 映画

誤認逮捕の顛末

b0041912_17397.jpg バンジーが警察に捕まったらしい、と大家さんから聞いた時、「おお、ついに?」と思った私。なぜなら、彼は敷地内のガーデニング用品やガレージに置かれた資材などを無断拝借することで知られ、バンジーが通ると物が消えると囁かれていたのです。
 私の予約していたアパルトマンを昨年末に不法占拠した輩を手引きしたのも、実はバンジーではないかと疑われていました。
 ハンガリー人の平均月収は約500ユーロ(約62500円)と言われ、フランス人の平均の三分の一以下、加えて経済危機が追い打ちをかけているので、ニースにもハンガリーを初め東欧からの流入者が目立ちます。
 フランスに出稼ぎに来て2年余りになる23歳のバンジー君もその一人。ちょっとモラルには欠ける彼だけど、まさか他所で悪さするとは思えないのに、警察に捕まったとは!?
 そんなバンジー君ですが、飼い主に虐待されていた大型犬ロットワイラーを自分で引き取ったり、ネズミ獲り用に飼った子猫を溺愛するような優しい心の持ち主でもあるのです。

 しかし、よく聞いてみたら、バス停にいたバンジーの年格好が押し込み強盗未遂犯に似ていたというだけで、彼が警察にしょっぴかれたことが判明。まずいことにバンジー君はまだ仏語がイマイチのため、警察官とのやり取りもツーカーとは行かなかった模様です。
 しかも、警察に通報したヴィラのマダムにバンジーを見せたところ、「そう、この人だと思うわ!うちに押し入ろうとしたのは」と証言したため、ニース警察は気合を入れてバンジーを取り調べたのでした。バンジー、ピンチです。
 たまたま身分証明書を携帯していなかっただけで、なぜ自分が強盗未遂犯に仕立てられているのか、全く事情が飲み込めないまま、署で質問攻め合ったバンジー君、「殴られこそしなかったけど、警官の取り調べ方はものすごく乱暴だった!僕の携帯電話も床に叩きつけられたし」と後でぼやいていました。

 そして、家宅捜査状もないのに、警察官は彼の住まいを強制捜査。身分証明書は無事出て来たものの、身に覚えのない罪を被せられたバンジー君、強制捜査には内心ヒヤヒヤだったとか。  
 というのは、彼は夜勤が多くて不眠症ぎみのため、睡眠導入剤の代わりに寝る前にマリファナを吸う習慣があったというのです。フランスではマリファナは簡単に手が入るため、吸っている若者は多いようですが、非合法には違いありません。
 不幸中の幸いか、警察はベッド脇のマリファナには目もくれず、盗難品らしき物も発見できずに虚しく家宅捜査を終了。またバンジーを連れて署に戻った所に、くだんのマダムの夫から電話が入り、強盗未遂犯の仏語には訛りがなくて、バンジー君ではあり得ないことが判明しました。

 捕まってから半日後、晴れて無罪放免となったバンジー君。もちろん、ニース警察からは謝罪のひと言もありませんでした。やれやれ。
 それを聞いた大家さん、「なぜバンジーは弁護士を立てると言わなかったのかな?家宅捜査状もなしに自宅の強制捜査なんて、警察権力の横暴だよ。しかし、君も身分証明書は携帯してないとダメだよ、何があるかわからないからね」と私も釘を刺されました。

 何ともお粗末なニース警察の誤認逮捕劇。でも、現大統領になってからの外国人労働者の締め付けは厳しくなるばかり。日本人旅行者だから平気、と思っていても、日本人のフランス滞在は3ヶ月以内ならヴィザ不要であることを知っている警察官は稀というのが現状です。
 なので、フランス滞在中はやはりパスポートを常に身につけていた方が無難かも知れません。因みに隣のイタリアは、あまりにスリが多いので、パスポートのコピーがあればOKと聞いています。
[PR]
# by cheznono | 2010-03-16 01:17 | 不思議の国フランス

ニースは安全か?

b0041912_192021.jpg
  イタリア国境に近く、観光客も多いことから、決して治安が良いとは言えないニースやカンヌの犯罪率が、不況下にもかかわらず2009年はぐっと下がったとの警察発表がありました。フランスの大都市の中で、際立って犯罪が減ったのはニースだけ、とニース市は自らの治安対策と警察官の有能ぶりをアピール。でも果たして実態は、どんなものでしょうか?
 犯罪と言っても血生臭い事件は稀で、多いのはスリ、泥棒、空き巣、押し込み強盗の類。特に目立っていた路上に駐車中の二輪車や車の盗難がカンヌでかなり減少、ニースでも放火される車は大幅に減ったとか。
 車が放火?なんて恐ろしい街、という感じですが、さすがにニースの街中で車が燃えているというわけではなくて、被害は主にニース郊外の要注意地域に偏っています。
 路上の盗難が減った理由は、お巡りさんが増えたのとビデオカメラの設置が進んだから。とはいえ、ニースだけで一年間で2000台近いバイクと1000台余りの車が盗まれ、しかも空き巣と押し込み強盗は増加傾向で、昨年度ニースとカンヌで泥棒に《訪問》された世帯は4000件に上ります。

 そんな中、1月の末、ニースの我が滞在先から遠くない丘の上にあるヴィラに泥棒が入ったと警察に通報がありました。駆けつけたパトカーに、ヴィラのマダムが、「私たちが気づいたから何も盗られなかったけど、怖いわ。」と言うので、事情聴取をした警察官、犯人はどんな男でした?「そうね、白人の若い男で、身長が180cm位あったわ」そうですか、マダム、では犯人を探してみましょう。
 いくらラテン系で小柄な人が多い南仏と言っても、一応ヨーロッパなので、180cm位で若い白人なんてゴロゴロいるのに、警察はそれだけの情報を得て満足したのか、パトカーを転がしてヴィラ付近の探索を始めまたのです。

 その頃、いつもはスクーターで職場に向かう我らが隣人のハンガリー出身のバンジー君が、なぜかその日、一人ぽつんとバスを待っていました。そこへ通りかかったパトカー、バンジー君を見て、「おい、あいつの身長180cm位じゃないか?」と顔を見合わせたお巡りさん達、早速バンジーに近寄って、身分証明書の提示を要求したそうです。
 あいにく身分証明書を自宅に置いて外出したバンジー君、弁明しても警察官は有無を言わさず、署に来るようにとパトカーに誘導。バンジーは素直に警察署に連れて行かれたのでした。バンジーの運命はいかに? つづく
[PR]
# by cheznono | 2010-03-13 01:15 | 不思議の国フランス

b0041912_13449.jpg  うかうかしていたら、もうホワイトデーまで1週間となってしまい、バレンタインの話なんて気が抜けたシャンパンみたいですが、今年のバレンタインは珍しく日曜日だったせいか、例年以上に男女を問わず赤いバラの花束やケーキの箱を抱えた人を見かけました。私は14日の午後はイタリアに出かけましたが、イタリアではレストランでも意外に家族連れやグループが多くて、ニースの方が花やお菓子の箱を持った人が目立ったのは、やっぱりアムールの国フランスだからでしょうか?
 とはいえ、かつてはカップル至上主義だったフランスも、現在《特定の相手がいない人》は1500万人。フランスの人口は日本の半分で、子供は日本よりずっと多い国だから、この数字は案外高めです。
 そこで、ここ数年、バレンタインが近づくとメディアに引っ張りだこになるのが、フランス初のプロのラブコーチ、フローランス・エスカラヴァージュさん。彼女はいわゆる恋愛相談師を目指してアメリカに渡り、既にラブコーチが職業として普通に市民権を得ている(らしい)米国で修行をした後に、帰国。
 その後、恋愛関係についての本を出したり、アドヴァイスのビデオを販売したりして、恋に悩める男女や、カップル生活に問題の生じたフランス人のメンターとして活躍しています。
 そのフローランスさん曰く、女性が男性を夢中にさせるコツとは、自信を持って(これが肝心)長所や自分らしさをアピールすること。加えて、女性らしさを伴った自立と自主性が大切とか。彼女自身は理解あるパートナーと10年間余りうまくやっているそうです。
 
 因みにニースを初めアルプ・マリティーム県では3月14日までラブレター、または愛の詩を募集中。特定の相手に宛てたものから、イメージを膨らませて創作したものまで、期間中この地方にいて、渾身の愛の手紙や詩を仏語で書いた人は、県内のあちこちに設置された愛の郵便箱に投函してみて下さいね。
 写真は、アーティストと高校生達のコラボによって完成した愛の郵便箱。この中に投函された手紙は、来週末から21日まで開催されるポエト・ポエトのお祭りで読み上げられたり、地元のラジオで取り上げられたりするようです。
詳細はhttp://www.unepetitevoixmadit.com/actualites.html
[PR]
# by cheznono | 2010-03-07 01:10 | フランスの四季

b0041912_1492895.jpg 27年間も狭い独房に投獄されていたネルソン・マンデラが72歳で解放されてから20年。この映画もお付き合い半分で観に行きましたが、自分の生活からは遠い南アの歩んで来たイバラの道を映像で知ることができて、良かったです。何よりも、マンデラ氏の人柄が素晴らしい。クリント・イーストウッドの監督作品としては珍しく素直で爽やかな仕上がりとなっています。
 
 アパルトヘイトに反対して反逆罪に問われたネルソン・マンデラ(モーガン・フリーマン)は27年後に釈放され、1994年に南アの大統領に就任します。アパルトヘイト政策は終わったとはいえ、積年の黒人×白人の対立は国の運営に大きな影を落とし、白人社会は初の黒人大統領の登場に疑心暗鬼でした。
 マンデラ氏はそうした南アの人々の心を一つにまとめるべく、翌年に南アで開催される予定のラグビーのワールドカップに目を付けます。イギリス人が持ち込んだラグビーは、南アでは白人のスポーツ。しかも、当時の南アチーム:スプリングボクスは弱くて、ワールドカップに勝ち残る可能性はないと思われていました。そこで、マンデラはチームの主将のフランソワ・ビナール(マット・デイモン)をお茶に招待し、南アにとってのワールドカップの重要さを静かに語ります。
 マンデラ大統領の人柄に魅了されたビナールは、ワールドカップを機に根強い人種差別から脱皮し、祖国を一つにまとめたいというマンデラの夢をかなえるべく、チームを鼓舞します。次第にメンバーの一人一人の意識も変わって行き、弱かったチームが強い連帯の元にこれまでにない力を発揮。クライマックスのワールドカップでは、ついに当時最強と言われていたニュージーランドチームとの決勝戦を迎えるのでした。

 試合の結果も当然わかっている実話ですが、映画はさりげないエピソードを織り込みながら、当時の南アの緊張や、大統領の人柄、姿勢、そしてビナール率いるラグビーチームの変化を描いて行きます。でも、ワールドカップ開催からは完全にスポーツ映画。ラグビーに興味がないとちょっと入り込めないかも。
 「インビクタス」の意味は多分、負けないということだろうと思いながら辞書を引きましたが、仏語英語とも出ていない。インビクタス(征服されない)はラテン語で、英国の詩人ウィリアム・アーネスト・ヘンリーの四行詩の題だったのですね。「私が我が運命の支配者、私が我が魂の指揮官」マンデラ氏はこの詩を獄中で支えにし、苦しい時のピナールにも贈っています。
 マンデラ氏解放20年のお祝いを報道したフランスメディアも強調していましたが、27年という長い月日を狭い独房で床に寝るような投獄生活を過ごしたマンデラ氏に全く恨みや屈折した感情が見られず、ひたすら白人との和解と調和に尽くそうとする姿が感動的です。マンデラ大統領に共感したスプリングボクスの奇跡的な活躍も、人間その気になればできるという大きな希望を与えてくれます。
 クリント・イーストウッド監督の幅の広さを感じさせられる気持ちの良い映画でした。
[PR]
# by cheznono | 2010-02-18 01:51 | 映画

アバター:Avatar

b0041912_3545578.jpg 興行収入が「タイタニック」を超え、フランスでも大ヒット中の「アバター」。ハリウッドアクション映画にもSFにもあまり興味がない私なので、東京で予告編を観た時は何じゃこれはという感じ、ハナから観るつもりはなかったのに、成行きで観たらこれが結構面白かった。
 「タイタニック」程には入り込めなかったけど、ヒューマニズムと人類のエゴとの対比、特にこれまで白人の行って来たことへの批判と反省を、ジェームス・キャメロンが子供にもわかり易い形で映像化した点がかなり評価できる大エンターテイメントです。

 事故死した双子の兄の代わりに、スパイとして資源豊富な衛生パンドラに送り込まれることを承諾したジェイク(サム・ワーシントン)。パンドラに住む先住民ナヴィ族は人間とは異なる肉体を持つため、ジェイクは遺伝子操作の結果作られたアバターとなって、パンドラに潜り込みます。とはいえ、アバターを活動させる機械は地球人の手元にあるのですが。
 ジェイクの使命は二つ。まずパンドラに眠る高価な鉱物資源を人類が略奪し易いよう、ナヴィ族が住居にしている森からの立ち退くよう説得すること。そして、ナヴィ族の習性や文化を研究する科学者グレース(シガニー・ウィーバー)に彼らの生態を報告すること。
 青いアバターの肉体に変身してパンドラに着いたジェイクは、圧倒的な自然の美しさとその自然と共存して暮らすナヴィ族の《人間性》と連帯の強さに感銘を受けます。ナヴィ族のリーダーの娘と出会って恋に落ちたこともあり、自分の使命を果たすことに疑問を感じ、逆になんとか地球人の身勝手な計画を阻止しようと人間チームの説得を試みるのですが、しびれを切らした地球人開発グループ側は、最新兵器を使ってナヴィ族の聖なる森を破壊し始めるのでした。

 ストーリー的にはシンプルなのに、2時間40分を持たせるのは、3Dの技術と映像の美しさでしょう。しかし、後半の戦争破壊アクション場面はやり過ぎ長過ぎの感あり。
 青い宇宙人の出て来る映画なんて観たくないと思っていた私は、友達夫婦に映画に誘われた時、80歳近い旦那さんに「アバター」を観ようと言われて、結構引きました。友達も同じ気持ちだったらしく、何かかんか理由をつけて、秋からフランスでロングランしている映画「コンサート」の方を観ることに成功。これは、ロシア出身の不遇なオーケストラ指揮者を巡る感動作だったので、三人とも大満足で家路に着いたのですが、翌週、「やっぱりどうしてもアバターが観たい」と言う旦那さん。
 「(あのお歳で)アバターが観たいなんて若いよね」と友達に呟いたら、「子供と同じだから」という明快なお答え。前回は半ば無理矢理フランス映画を観る方向に持って行ったので、まあ仕方ないから「アバター」につき合おうかという運びになったのです。でも、食わず嫌いしないで観て良かった。
 映画は6ユーロ、3D用のメガネが2ユーロで、計8ユーロ。フランスにしては珍しく、メガネ拭き用の紙お手拭きをつけてくれたのが印象的でした。やっぱり、新型インフルエンザの影響かしら?欧州の中でも患者数の多かったフランスは、2月になって新型インフルの危険は終ったとしていますが、まだまだ気は抜けません。何てったって、ものを食べる前に手を洗っている人が少な過ぎる。
 もっとも、友達に言わせれば私のようにアルコールで手のひらを拭きまくっていると、もともと持っている筈の免疫が消えてしまうとか。確かに、こちらではお店での試食も手づかみだし、手を洗わない、ワクチンは副作用が怖いからイや、と言うわりに、日本と比べて蔓延度がそれほど変わらなかったのは、ウィルスへの日頃の鍛えが違うせいでしょうか?
[PR]
# by cheznono | 2010-02-06 03:59 | 映画

借家人同士の摩擦

b0041912_2135371.jpg
  12月中、何者かに不法占拠されていたため、めちゃ汚れていたアパルトマン。壊れた家具を片付け、ごしごし床を拭き、大掃除を済まして、やっと荷物を運び入れ、食料品を買いそろえた頃、ある朝気がつくと誰かがお勝手のドアに鍵を差し込んだまま、ドアも少し開けっ放しになっています。
 というのは、12月から下のアパルトマンの浴室にあるボイラーが壊れていたため、大家さんの提案で、そこの住人3人(フランス人男性二人とチェコ人の女学生)が私のアパルトマンのシャワーを利用していました。12月中は公式に空室だったこのアパルトマン、実際には何者かが不法入居していたのですが、おかまいなく下の3人の若者が鍵をかけずにいたアパルトマンのシャワーを使っていました。
 が、私が戻って来て入居した以上、当然アパルトマンに鍵をかけなくてはいけないので、シャワーを拝借に来る3人にも台所の鍵が渡され、彼らはそれを使って順番に私のシャワーを浴びに来ることに。彼らのシャワーの後は浴室の床がびしょぬれだし、浴槽の縁には所狭しとシャンプーやら入浴剤やらシェイバーとかが並んでいて結構邪魔だし、私はあまり気分がよくありません。
 そんな折り、彼らの一人が台所のドアに鍵を差して、ドアも開けっ放しのままで外出してしまったのです。自分のアパルトマンが開けっ放しにされていた私は怒り心頭。貴重品は鍵のかかる寝室に入れてあるとはいうものの、アパルトマンのおかってドアに鍵をさしたまま半開きでほおっておかれたら、誰が入って来るかわからないじゃないの。
 夕方になって、やっとチェコ人の女の子が鍵を取りにやって来て、私の姿を見てびっくり。「すみません、人が住んでないと思ってたので」それはないでしょう、何のために鍵を渡されているの?危ないじゃないの。大家さんから聞いているでしょう。と怒る私におののいたのか、彼女は黙って階下に戻って行きました。
 そして、翌朝。私が台所で遅い朝食の用意をしていると、横のドアが開いてくだんの彼女が入って来ました。昨日は昨日、今日は今日なのでボンジュールと挨拶したのに、それを無視した彼女、沈黙のまま私の脇をすり抜けてバスルームへ。長々とシャワーを使った後、浴室からのそっと出て来たと思ったら、ありがとうもオーヴォアールも言わないで、黙々と台所のドアに鍵をかけて行ってしまいました。
 住人の私がいるのに黙って勝手にシャワー浴びて、無言のまま帰ってった、と大家さんに不満をぶつけると「あなたに昨日鍵のことを注意されたのが気に入らなかったんじゃない?若い人はしょうがないのよ」はあ、人のうちにシャワーを借りに来る以上、やっぱりそこの住人に挨拶は必要では?ニース大学では哲学を専攻しているらしいけど、哲学の前に学んでほしいことがあるような。
 不機嫌な私の様子に、大家さんは日曜大工のお店に部品を買いに走り、その日にうちに自力で階下のボイラーを修復。「これでもう彼らがあなたを煩わしたりしないから」とお勝手の鍵も返してくれたので、一安心しました。大家さんによると、そもそも階下のシャワーが壊れたのも彼らの使い方が悪かったせいで、おまけにチェコ人の彼女は月末になってもまだ家賃を払っていないのだとか。
 そうこうしているうちに、今度は上のログキャビンに住んでいるハンガリー人が警察に誤認逮捕されるという騒ぎが勃発。全く、何が起こるかわからないニース暮らしです。
[PR]
# by cheznono | 2010-01-27 21:39 | いつもの暮らし

b0041912_23222341.jpg
 氷点下のリヨン駅でサンドイッチをかじっていると、意外に一時間遅れだけでニース行きTGVが入構。席についてほっとしたものの、いっこうに出発する様子のないTGV。雪のために車両に問題ありだそうで、ほぼ満員の電車はホームに張り付いたまま。乗り合わせた客はみんなで顔を見合わせては、もしかして、全員降りろと言われるのでは?と不安げです。 
 なので1時間後、ついに動き出した時は、周りの乗客と「やったね!」と喜び合いました。
 一面雪の原のようなフランスを南下した我らがTGV、マルセイユを過ぎトウーロンまでは雪だらけだったホームだけど、トウーロンから少し走ったら、嘘のように雪が消えたのが印象的です。やっぱりプロヴァンスはトウーロンまでで、その後はコートダジュールなのだと実感しました。
 結局、2時間半遅れで22時に終点ニースに着いた時は気温の緩さに(といっても東京程度)にほっと一息。「だから、皆がコート・ダジュール避寒に集まって来るわけがよくわかるでしょう」と迎えに来てくれた友達。本当、氷点下のパリから来ると、ニースの気温はありがたい限りです。
 パリから8時間もかけニースに戻ってほっとしたものの、私の愛用のアパルトマンは大家さんがクリスマス休暇でヴァカンスに出ていた1ヶ月間、何者かに無断占拠されてしまってたため、めちゃくちゃ汚れていて、すぐに入れる状態ではなく、しかも家具付きアパルトマンの備品や食器、毛布などが盗まれていたのです。よって、やむなく私は大家さん宅に居候の身に。
 北の雪の代わりに雨が続くので、居候の身のままぐずぐずしているうちに日が流れ、いくら何でも自分のアパルトマンに落ち着かなくてはと思った木曜もあいにく大雨。そんな中、大家さんの猫(グレイのでか猫)が後ろ足を怪我して戻って来たので、動揺した私たちは猫の望むまま、私のベッドで猫を休ませることにしました。
 でか猫は知り合いのイラン人夫妻があまりのやんちゃさに持て余していた子猫の頃にここに養子に来た時から知っているので、私にもよくなついています。
 そして夜中、しばらく猫と添い寝していた私の目が覚めたのが明け方5時半。でか猫がよっこいしょと我が足下に乗ったので、重い!と感じた瞬間、何だか妙な熱が足に伝わって来たので、イヤな予感がしてがばっと起き上がると、なんと猫のおしっこが厚い掛ふとんからベッドのマットレスまで濡らしているではないですか!
 慌てて濡れたパジャマを履き替えた私。お陰で5時半から殆ど寝付けず、朝食の後はシーツや毛布,掛け布団の大洗濯をする羽目に。痛々しげに後ろ足を引きずっている猫をしかるわけにもいかないし、大家さんにぶつぶつ文句を言いながら洗濯をし、匂い消しにラベンダーオイルをベッドに振りかけて、さえない半日はおしまい。
 フランス国鉄からは、ニース行きTGV遅延のお詫びのメールと、天候不良のための遅れなので、特急料金の払い戻しはありませんとの弁解が。40ユーロだし、まあパリ-ニース所要8時間でも電車が動いてくれただけありがたいと思わなきゃね。
 しかし、12月中空いていた私のアパルトマンを不法占拠した犯人は未だ不明。もちろん、計9人いる借家人の誰かが手引きしたに違いないのだけど、誰に聞いても、「何にも知りません」とか「さあ、背の高い男が出入りしてたかな?」なんて、みんなしらを切るばかり。「この国にモラルはないのよ!」大家さんはあきらめ顔です。
[PR]
# by cheznono | 2010-01-17 23:24 | フランスの四季