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南仏ミモザ祭り

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  脳梗塞を患って以来、長らく一線を退いていたジャン=ポール・ベルモンドの9年ぶりのシネマ復帰作“男と犬” un homme et un chienという何とも素晴らしい映画を観たせいで、今週は涙なみだで始まりました。実は55年くらい前のヴィットリオ・デ・シーカ監督による「ウンベルトD」というイタリア映画のリメイク作品だと知ったのは、映画を観た後のこと。「ウンベルトD」もニースの名画座でやっているのですが、また大泣きしてしまうに違いないと思うと観る勇気が出て来ません。
  再婚を決めた愛人に住まいを追い出された老人とその愛犬の悲哀を描いた作品で、老いと社会、犬との絆などが少ないセリフで淡々と綴られます。ベルモンドが年老いて動きも鈍いという辛口批判もあったそうですが、なんのなんの、その存在感は圧倒的。彼の表情と雑種犬でこれだけ胸を打つ映画ができるのだから、みごとなもの。ベルモンド主演作品のため、脇をかためる俳優もちょい役も含めて豪華メンバーでした。日本での公開が待たれます。
 
  さて、やっと春らしくなって来たコート・ダジュールは、カーニヴァルの真っ最中。ミモザも満開で、冬木立の所々が日溜まりのように黄色く染まっています。そして、今年はやっと憧れのミモザ祭りに行くことができました。
  カンヌの隣町マンドリュー・ラ・ナプールでは、毎年ミモザをふんだんに使った10日間のお祭りが行われます。ヨットの浮かぶ海岸通りをミモザの山車がパレードするという日曜日の午後、ピクニック用のサンドウィッチを作り、気合いを入れていたのに、皆でニースを出発したのは既にパレードが始まりそうな時間でした。しかもドライバーがなぜか高速の降り口を見落とした!カンヌに近づくに連れ、高速の周りもミモザの木立が並んで気分よかったのに、何だか道路脇からミモザが消えたと思ったら、車はサン・ラファエルに向かっていたのです。
  慌てて高速を降り、ニース方面へ乗り直して、やっとマンドリューの海岸に着いた時は、もうミモザの花を抱えた人たちが戻って来る頃でした。それでもどうにかこうにかミモザパレードの最後の一周に間に合った私たちは、遅れを取り戻そうと必死でミモザの争奪戦に加わって、山車から投げられるミモザの枝に手を伸ばしました。その甲斐あって、今も私の部屋はミモザの心地よい香りに包まれています。
  今年のテーマは《世界の音楽とダンス》。ミモザの山車の合間には、タンゴ、インド人のダンス、ロシアの音楽とダンス、テクノDJ、ロック&ブルーなど、それぞれの国の参加者による幅広いダンス音楽が続々と。ニースのカーニヴァルの華麗なるフラワーパレードに比べれば、ミモザ一色の素朴な山車だけど、その分、地元の人たちが力を合わせて作り上げた春祭りという感じが良かったです。
  何とかミモザの花束を獲得した我々は、パレードの終わった4時過ぎにやっと昼食のピクニックとなり、海岸通りに仮設された見学席が空になったのを利用して、用意したお弁当を広げました。パレード用の見学席は本来有料で13ユーロ、でも祭りの後はお掃除の人が片付けるばかりです。「食ってる人がいるのにどうするの?」と掃除機を片手に迷惑顔の作業員に「まあ別にかまわないさ」と見逃してくれた上役の人、どうもありがとう。
  ミモザの黄色い花粉が舞い上がる中、解散して家路につく見学者たちの好奇の目もものともせず、平気でサンドウィッチをかじっていた私、ああ、また日本では絶対できないことをしてしまったわけです。それにしても、花粉症の人にはあまりお勧めできないお祭りかも知れません。 
by cheznono | 2009-02-27 07:56 | フランスの四季