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フェア・ゲーム

フェア・ゲーム_b0041912_233856100.jpg ブッシュ政権によるイラク戦争突入に強い疑問を持ったが故に、ホワイトハウスに裏切られた実在の夫婦を描いた政治サスペンス「フェア・ゲーム」。国家による大いなる嘘の恐ろしさに震撼とさせられます。

 CIA勤務のヴァレリー(ナオミ・ワッツ)は一度に幾つものプロジェクトを抱え、世界中を飛び回る活躍ぶりで一目置かれるタフで優秀な諜報部員。家庭的には元大使の夫ジョー(ショーン・ペン)と双子に恵まれ、表向きには金融キャリアウーマンとして充実した日々を過ごしていました。
 2001年9月の同時多発テロ後、米国務省は、イラクが核兵器製造に使用するためにニジェールから大量の濃縮ウランを買い込んでいるふしがあると疑います 。
 イラクへのウラン輸出を調査すべく、元ニジェール大使のジョーがアフリカに派遣されますが、現地を見たジョーは、ニジェールがイラクにウランの大量輸出をしている様子はないと政府に報告。
 妻のヴァレリーもイラク国内の化学者と接触し、パパブッシュが引き起こした湾岸戦争後は戦車の部品も不足しているイラクで、核兵器の開発などできる状況ではないと確信します。

 しかし、夫婦それぞれの報告は闇に葬られ、2003年アメリカはイラクに戦線を布告。ジョーは新聞への寄稿を通して、自分の調査結果にもかかわらず戦争に突入した政府に疑問を投げかけます。
 しかし、激しい攻撃の末、イラク国内に核兵器を初めとする大量破壊兵器が見つからないことに焦りを感じていたホワイトハウスは、ジョーの寄稿に大困惑。腹いせに妻ヴァレリーがCIAの諜報部員であることをメディアに漏らしてしまいます。
 その日を境にヴァレリーとジョーの生活は一変。ヴァレリーはCIAを追われ、一家は世間の白い目にさらされ、夫婦のストレスは最高潮に。
 ホワイトハウスの権力には抵抗できないと黙り込むヴァレリーに対して、政府の間違いを積極的にTVで告発するジョー。国を愛し、国に尽くしてきた二人の間にも溝が広がって行くのですが。。
 
 ジョーもヴァレリーもそれぞれがアメリカを愛し、強い愛国心と信頼の元に活動して来たのに、その国家がいとも簡単に自分達を裏切ったという事実が、妻を黙らせ、夫を言葉による抵抗に向かわせます。
 先進国でも政府は平気で国民に嘘をつくし、個人を見捨てるということを原発事故で身に沁みた後では、国家権力とその嘘がいかに怖いか、この映画で更に強く感じさせられました。しかし、こうした生々しい話題をすぐに映画化する(できる)点でもアメリカはすごい。
 国家が自分を見捨てた時、個人としていったい何ができるのか。。ラストに登場する実物のヴァレリー本人の映像に拍手を送りたくなる作品です。
by cheznono | 2011-11-05 23:54 | 映画