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タルタルステーキの憂鬱

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 パリのマドレーヌ寺院の地下にある食堂は、登録するとランチを8.50ユーロで楽しめるという大変ありがたいサービスを提供していて、いつも賑わっています。ハイカラなこの界隈では破格のお値段で、一応アントレとメイン、デザートが選べる、というのがミソ。内容とお味は学食に近いとはいえ、教会ボランティアと思われるスタッフの感じ良さも人気の秘密かも。
その登録カードの期限がもうすぐ切れることに気がついて、冷たい雨の中、久しぶりに行ってみました。

 その日のメインは、タルタルステーキかグラタン。そもそも、四つ脚動物はあまり食べない今日この頃なのに、何を血迷ったかついタルタルステーキを注文。スタッフのマダムが心配そうに私の顔を覗き込んで「生ですけど?」と言うのに、「まあ挑戦してみます」と返した私。生肉でも本当に大丈夫だろうか?
いやいや、確か昔学食でタルタルステーキを食した時は表面を焼いてあった。要はハンバーグの中身が生ぽいイメージだったし、たまには保守的な食生活から脱してみよう、と本気で思った時、登場したのは、スーパーで売っている挽きたてのひき肉そのもの、でした。
生ハンバーグなら玉ねぎやパン粉が入っているはずだが、そんな様子もなく、恐る恐る口にすると冷たい。えらく冷たい。うーむ。
そこへ、知的な印象の紳士が来て私の向かいに座り、同じものを注文。運ばれてきた皿のひき肉を付け合わせのソースとぐちゃぐちゃに混ぜて、パスタソースさながらにしてから、あっという間に平らげた。
ああ、ソースとしっかり混ぜればひき肉っぽさが消えるのね。でも、やはり私の一番の心配は食中毒なのです。確かユッケは日本で禁止になったはず。もう既に一口食べちゃったけど、このあとお腹を抱えてのたうちまわったらどうしよう?万が一O157とかが付いていたら命だって危ないかも知れない。なにせ私にはナマ肉に免疫がないのだから。

 くだんの紳士が途方に暮れている私に哀れみの目を向けているので、「牛の生肉って本当に健康上問題ないんでしょうか?」と聞いてみました。「はあ、と言うと?』「つまり、その寄生虫とか何か、、」と私の失礼な質問ににやっとして、「フランスではちゃんと基準が守られているから全然大丈夫」とのお答え。スタッフのマダムは一言も「だから言ったでしょう」的なことは言わないできた人で、私に同情して「野菜を足してあげるわ」と付け合わせの野菜チーズ炒めを足してくれました。
「頼む前にに周りで食べてる人の皿をチェックしなきゃ」と紳士からはごもっともなアドヴァイスを頂き、泣く泣くタルタルステーキは諦め、デザートのチョコタルトでなんとかお腹をくちくした次第です。
 結局生肉はわずかしか食べなかったにもかかわらず、しばらくお腹が消化にとまどっていたのは明らかですが、腹痛もなく無事に翌朝を迎えることができて本当に良かった。
しかし、このタルタルがもし、マグロのひき肉だからわさびと醤油でどうぞと出されたら、難なく食べていたかも知れません。
by cheznono | 2015-05-04 03:08 | 不思議の国フランス