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Dear フランキー

Dear フランキー_b0041912_12337.jpg 女性監督ショーナ・オーバックがスコットランドを舞台に、元夫の暴力によって難聴になった幼い息子との半ば逃避行のような生活と母子の絆を描いた「Dear フランキー」。いつもイギリスの労働者や恵まれない生活をしている庶民に目を向けてリアリティのある映画を撮っているケン・ローチ監督の作品を彷彿とさせるような味わいのある映画です。
 アル中で暴力を振るう夫から逃れ、息子と母親との3人であちこちを点々としながらひっそりと暮らしているリジー。8歳の息子フランキーは、父親は船乗りだと思い込まされ、リジーが内緒で書き送る手紙を父との文通だと信じて楽しみにしています。フランキーは賢い子供ですが難聴のため殆ど言葉を発することがないので、リジーにとってはフランキーが父親宛に書く手紙が唯一息子の気持を知る手がかりとなっていました。ところが、リジーが息子に教えた架空の筈の船がスコットランドの港に入港し、父親が乗っていると信じているフランキーは、パパが自分に会いに来るのを半信半疑で待つことに。仕方なくリジーは見ず知らずの流れ者を1日だけのパパ役に雇うのですが。。パパ役のジェラルド・バトラーはさして子供が好きそうでもないのに、たった1日フランキーの相手をしているうちに子供のまっすぐな気持に触れて、父性愛が目覚めたかのように変わってゆく姿が良かったです。子供を守るために一生懸命突っ張って生きてきたリジーの淋しさにも寄り添うような流れはありがちだけど、お互いに感情を抑制するところも好感の持てる展開でした。
 そして、何よりも印象的だったのが、EUの中で一人勝ちとも見えるほど好調な英国経済の中で、スコットランドのグラスゴーに近い港町のさびれた様子や人々のつましい暮らしぶりです。このところイギリスにしてはけばけばしいくらいに華やいだロンドンなどイングランド側の都市とは対照的な暗い映像に、ここにも英国の光と影がくっきりとあるって強く感じさせられました。
by cheznono | 2005-07-31 01:48 | 映画