ミュンヘン
2006年 03月 09日欧米によってやっと自分たちの国を得たイスラエルと、そのために祖国を奪われたパレスチナとの長く深い軋轢を小出しに織り込みながら、あくまでも中心は、オリンピック村で起きた残虐な事件とその報復に命をかけるアブナーチームが、危ない橋を渡りつつ一人また一人と暗殺してゆく過程に置かれています。初めは祖国のため同士のための復讐だと暗殺を正当化していたアブナー達が、やがて自分たちの行為に疑問を持ち始め、やっと相手を消してもすぐにその後釜が出現するといった図式に頭を抱えます。そして、人を殺めれば自分たちや家族も相手から報復の的にされることに気づいて苦悩するアヴナー。テロにはテロの復習劇の虚しさや報復しても問題は何も解決しないということが強いメッセージとして伝わって来ます。
でも私が最も注目したのは、フランス人キャストの多彩さでした。アブナーチームの爆弾製作担当を熱演しているマチュー・カソビッツ。アブナーたちに標的の動向を知らせては報酬を得るフランス人情報屋の親子にミシェル・ロンスダールとマチュー・アマルリック。他にもイヴァン・アタルやヴァレリア・ブルーニ・テデスキetcと、さすがスピルバーグ作品。お互い腹を探りあいつつもアブナーと不思議な友情を交わす情報組織の父子の「国は裏切るから、自分たちは国のため組織のためには働かない」というモットーが印象に残りました。