ブロッコリー騒動の結末

b0041912_23301418.jpg カットしたブロッコリーを見つめながら躊躇う私にマダムが言いました。 「さあ、ブロッコリーを鍋に入れていいわよ」 そう言われても、彼女の手に握られたピンクのルームスプレイが、まるで水鉄砲の銃口のごとくこちらに向いています。
 ブロッコリーを沸騰しているお湯に入れたら、彼女はその消臭剤を噴射するつもりでしょうか?腹ペコの私の大事な夕食用のスープに向かって、スプレイを撒かれたらたまりません。しり込みする私にマダムは、「何しているのnono、いいから早くブロッコリーを茹でなさい!」まるで、もう悪臭が匂い始めてるかのように、彼女は眉間にシワを寄せていらだっています。普段から電気代を気にしているため、電気レンジ台の上でぐつぐつと煮立つお湯が気になるのでしょう。
 「さあ、早く!」マダムの声に押され、もうなるようになれと、ついに私は恐る恐るブロッコリーを鍋に入れ、その後は、もううんざりしてマダムの顔を見ないよう、下を向いて炒飯の用意をし始めました。鍋の中のブロッコリーは、当然たいした匂いも出さずにお湯の中で踊っています。
 気がついたら、いつの間にかマダムは私の真後ろの椅子に座っていました。「Ca va?何か匂いますか?」と聞くと、マダムはこちらに背中を向けたまま、「別に」。さすがに我に返ったのか、憑き物が取れたようにおとなしくなったマダムに、私は勝ち誇ったように畳み掛けました。「ブロッコリー、特に匂わないでしょ?悪臭なんてしないでしょ?」
マダムは振り返りもせずに黙々とパンをかじっています。ともあれ、消臭スプレイを噴射されずにすんでほっとした私は、スープと炒飯を作って、無事に夕食を済ませることができました。
 しかし、マダムは一度もブロッコリーを料理したことがないのでしょうか?最初は会計士、次はイギリスの外交官と結婚して、2度離婚したマダムですが、ずっと専業主婦でしたから、夫や子供と暮らしていた頃は毎日お料理をしていたとか。一人暮らしになって10年、アリアンス・フランセーズなどの学生を朝夕2食付きでホームステイさせることも多いのに、私が見た限り、彼女はいつもパンにチーズを塗ったり、冷凍食品を食べて済ませてました。
 かくゆう私も、カリフラワーを茹でたことがありません。そこで、南仏の友達数人にカリフラワーの悪臭について聞いてみました。何せカリフラワーは、プロヴァンス料理の代表:アイオリには欠かせない野菜の一つです。
 果たして、全員答えは同じで、「確かに独特に癖のある匂いはするけれど、窓を開ければ済む程度、耐え難い悪臭と騒ぐような匂いではない」とか。良かった、これで安心してアイオリに挑戦できる、と思いましたが、未だにカリフラワーを見ると、マダムの叫びが蘇るのでした。
 写真はマダムに勝ったと喜ぶ私、ではなく、パン焼き厨房を再現したものです。 
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by cheznono | 2008-02-02 01:34 | いつもの暮らし