超一流の絵画鑑定士ヴァージル(ジェフリー・ラッシュ)は、世界中のオークションで引く手あまた。潔癖性で人間嫌いの彼は、一方で長年の相棒ビリー(ドナルド・サザーランド)と組み、八百長スレスレな方法で名だたる名画を自分の秘密のコレクションに加えています。
多忙な日々を送る中、両親の遺した美術品を売りたいという若い女性から鑑定を依頼され、古い屋敷に赴くヴァージル。しかし、依頼人クレア(シルヴィア・ホークス)は、思春期のある事件をきっかけに広場恐怖症になって以来、引きこもり状態で、殆どいっさい人との対面を拒絶。ヴァージルは声だけで姿を現さない彼女に翻弄されます。
ある日、ついにクレアの姿を垣間見たヴァージルはその外見に魅了され、何とか彼女を普通の暮らしに戻したいと尽力します。息子のような歳の美術品修復家ロバート(ジム・スタージェス)にその経過を逐一報告。これまで女性と交際した経験のないヴァージルは、ロバートのアドヴァイスに従ってクレアと信頼関係を築き、親密な関係に進むべく情熱を傾けるのですが、、
年末に沢木耕太郎氏が「今年の一作」とも言うべき作品かも知れないと書いていたので、うーむ?と思いましたが、こう言っている男性は多いですね。もしかして、この映画は男性と女性で感想に結構差があるかも知れません。
ある種のサスペンスとしてはかなり面白いけれど、ミステリーとしては背景に深みが足りないと感じましたが、沢木氏も結論で書いていたように、私もこの映画は一種のハッピーエンドに違いないという印象です。代償は大きかったにせよ、私生活はいたって単調だった主人公がこれまで知らなかった世界を知り、ドラスティックな体験したわけだから。だからこそ、ヴァージルはプラハを訪れたのではないかと思うのです。
ミステリー仕立ては監督の遊び心、ジョゼッペ・トルナトーレはここでも人間の本質を浮き彫りにしています。